500年後からの来訪者After Future6-4(163-39)

Last-modified: 2016-11-02 (水) 20:25:20

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future6-4163-39氏

作品

SOS団の生番組出演を受けて、古泉がTV局に脅迫し月曜の朝までに記者会見を開いた上で社長が土下座しなければSOS天空スタジアムは貸さないと担当者に宣告。これで明日明後日のニュースがどうなるか楽しみだ。土日は人事部では電話対応はしないという対策から圭一さんと父親は異世界で電話対応をすることに。まだ未完成とはいえ、そこに出てきたのが異世界移動装置。来週の試合前に鶴屋さんたちを連れて未来へ行くことになり、有希とのドライブの後、突如として閃いたセカンドシーズンのドラマの内容について話し始めた。

 

「くっくっ、面白いじゃないか。その回では古泉君は、二人が女子高から持ってきたものしかサイコメトリーできないってことかい?」
「わたしが女子高生役をするんですかぁ!?」
「あれだけ大人びた格好をして、イヤリングを身につけても、北高の文芸部室の奴等に『可愛い』と言われてしまったんだ。今の二人に女子高生役をやらせたって不自然には見えないだろ?事件の大まかな概要とトリックについてももう考えてある。すでにいくつかの事件が起きていて、潜入初日から二人ともソフトボール部の部員として仮入部をする。部活の練習シーンだけみくるを青みくると入れ替えるが、ソフトボール部内で起こったトラブルを元に発生した男性顧問の焼死と部員の火傷事件。手編みのカーディガンやマフラー等の防寒着に無記名のメッセージ入りでプレゼントとして贈られていて、過酸素状態になった部室や教室で、防寒着に編み込まれたリンに静電気が通った瞬間発火してしまうというセカンドシーズンならではのトリックだ。今、話を聞いて青ハルヒの女子高生姿を妄想しているであろう青古泉から制服のデザインを俺が受け取る。無論、北高や光陽園学院の制服は却下。ハルヒや佐々木たちの納得のいくようなものがあれば採用するが、青ハルヒやみくる達それに青OGはその制服を自分が来て撮影すると思っていてくれ。青OGは顔だけ別人に変えるが、青ハルヒとみくる達はそのままだ。『青古泉がデザインした』という部分だけは、今回は眼を瞑ってくれ。もしダメそうなら制服のデザインを考えて欲しい。各シーンで青古泉が鼻血を流してNGを連発しかねないし、この回のみ青古泉じゃなくて古泉が撮影に入る」
青古泉をOG達が侮蔑の視線で見ていたが本人はまったく気にしてない……というより妄想で頭がいっぱいらしい。俺が提示した案を反芻して、それぞれがどんな内容のドラマになりそうかイメージを脹らますと、口火を切ったのは古泉。
「それは本当につい先ほど思いついたばかりの案なんですか?女子高に潜入捜査するという設定や、防寒着の静電気を使ったトリックまで、そこまで細かく練られていては反対のしようがありませんよ。部活をソフトボール部にしたのも、涼宮さんのアンダースローをドラマ内でも映えるようにするため。そして、青僕の性癖までをも女子高の制服のデザインとして昇華してしまうとは……もはや、呆れて何を言っていいのか分かりません」
「最初はバレーボール部で催眠をかけたOG達に加わる予定だったんだが、急遽変更した。『そういや、青ハルヒのアンダースローの腕をもう一回転させて投げれば、ソフトボール部の期待のホープとして活躍させることができる』ってな」
「くっくっ、じゃあそこに僕が新たな設定を追加しようじゃないか。その女子高の制服を見に纏った朝倉さんの後ろ姿が映り、既に青古泉君たちに正体をバラしたキミも、怪我で入院した教諭の代わりで入った若手教員として高校に潜入させる。勿論、バレーボール部顧問。1mmとしてズレることの無い正確な球出しとトス、加えてその鍛え上げられた筋肉で人気急上昇中。OG達を相手に練習試合をしていた頃の僕の苛立ちを思い出させないでくれたまえ。サーブ権が終わったら交代だと言われていたにも関わらず、一向にサーブ権が切れる気配を見せなかった。当時は『いつになったら僕の出番がまわってくるんだい?』と、僕はキミにずっと問い続けていたんだからね。まさにあの頃のキミそのものの設定だよ。教科は……くっくっ、数学なんてどうだい?会社を立ち上げてから今に至るまでのキミの先読みは、古泉君ですら驚きを隠せないくらいなんだからね」
「予習とチョークで板書する練習をする必要がありそうだ……って、ちょっと待て。英語でいいだろ」
「私は保健体育の方が……」
ジトーっとした眼が青OGを襲う。その視線を送った他のOG達も人のことは言えないが、どうしてそこでそういう発言を入れてくるんだ?コイツは。それに、佐々木と同様『無記名のメッセージが入っていた』というのは朝倉とジョンが一戦交えた日の出来事。朝倉もさっきの表紙の件も入れて、更に苛立っているかもしれん。

 

「そういえば、その頃からキョン先輩に惚れてたよね。トス上げるのも教わりに行ってたし、キョン先輩の上半身触りまくってたし、ハルヒ先輩の理不尽サーブや、青ハルヒ先輩のブロードまで成功させてたし……」
「うるさいな!恥ずかしくなるようなこと思い出させないでよ!!」
『左足あげろ――――――――――――!!』
「もう!……バカ」
『おーおー…照れてる、照れてる』
その頃はOGの一人としてしか見てなかったからな。『トス上げるところを見せてください!』と言いにきたのが本当にコイツだったのか俺にも覚えがない。しかし、あの短期間でWハルヒの技まで盗んだところは賞賛に値するのは間違いない。
「このあと青古泉の妄想が一段落してから制服のイメージを受け取る。これまでのコイツのことを鑑みると、ランジェリー、アクセサリー、宝石、そして今回の制服。どちらかと言えば、制服はコスプレ衣装に近いが、Wハルヒが関係しそうなことや、興味を示しそうものに関する情報量は群を抜いている。この前の宝石鑑定のときのことを思い出してくれれば一目瞭然だ。ハルヒ達が関心の無さそうな絵画や骨董品などについては有名なものについては俺たちと同程度の知識はあるだろうが、それ以上は駄目だろう。どこぞの大泥棒のように、一族の財宝の在り処を巡って様々なトラップが張られた迷宮や遺跡、洞窟を攻略するなんて筋書きやそのためのキーアイテムでないとハルヒは納得しない。初めて孤島に行ったときに圭一さん達とやった推理ゲームを思い出したよ」
「あのときはエージェントに刑事役や鑑識役まで頼んでいたのに、二日目になって台風が巻き起こって、本当にクローズドサークルになってしまいましたからね。しかし、あなたの仰る通りのようですね。もしも一族の財宝の在り処を記したキーアイテムなんて代物があるのだとすれば、そんな情報、いくら青僕でも調べきれるわけがありません。前回のアクセサリー、宝石について飛び抜けた情報を持ちあわせていたのも、すべては涼宮さんたちのためだったというわけですか。ランジェリーについて朝倉さんが疑問を抱いていたのも、それで説明がつきそうです」
「ちょっと待ちなさいよ!ってことあんた、青古泉君からもう一度情報を受け取るってことじゃない!」
「ああ、流石に今回は受け取ったら不必要な情報は記憶から抹消する。前回も言った通り、青古泉の妄想は女性陣からすれば気分が悪いかもしれんが、俺からすれば鼻で笑う程度にすぎん」
「では、その情報を渡してしまいましょう。僕の考えているものの中のどれかが採用されることを祈っています」

 

「ようやく妄想が終わったか。そろそろ夜練にも行かなきゃならん。青古泉待ちだったんだ」
「黄俺、本当に平気なのか!?」
「今回は受け取った後、雑念はすべて消去する。問題ない」
席を立った青古泉から情報を受け取った。4、5種類くらいかと思ったら、選り取り見取りだな。中には実際に使用されている高校のものもあるようだが、こちらでデザインしたものだと言っても、とある高校の制服と全く同じだったなんてことになりかねん。トリックとして使うと無理があるものを除去して佐々木たちに決めてもらうことにしよう。余計な情報は影分身が本体の記憶操作を行って排除した。
「あんた、本当に大丈夫なの?」
「ああ、だが、俺も四種類か五種類程度だと思っていたら、豊富に情報が流れてきて驚いたよ。実際に高校で使用されているものも入っている。今夜中に、今回のトリックにはあまり向かないものを消去して明日の朝にでも渡す。今選べと言われても種類が多すぎて選びきれないくらいだ。マネキンに着せたものを見せて全員で決めた方がいいかもしれん。じゃあ俺たちは夜練に向かうが、今回から催眠をかけた俺、青俺、ジョンの三人でいく。変化球も投げるから最初はOGがキャッチャーについてくれ」
『変化球も投げる!?』
「告知で影分身を使っているというのに、大丈夫ですか?」
「残りの意識でもゾーン状態に入れるようになった。これなら変化球の注文が来てもいける。OG達から他の選手にも伝えてくれ。ストレートしか投げないよりも変化球があった方がいいだろう。それに、そろそろ夜練は一日おきくらいでも十分なレベルになっているはずだ。他の選手にも聞いて、可能ならジョンか青俺から監督に進言してみてくれ。大会前ならまだしも、今の時期に毎日やることでもない」
OG達は全員に聞いて回ると告げ、青俺も監督に聞いてみると一言。特に目立った議題もなく、解散となった。
夜練後、青俺からの提示を受けた監督から選手に向けて一言。今月中は火、木、土に夜練を行い、ディナーが木曜日になる十二月からは月、水、金に変わると全員に伝えられた。選手たちも歓声をあげ、俺たちも負担が半分に減って一安心。四月頃にまた戻せばいいだろう。

 

 69階と100階で待機させておいた影分身を起動させて本体は69階に降りた。超能力の修行も次のステップに入ってもいい頃だ。シャンプーから全身マッサージまでを終え湯船に浸かったOG達に話を切り出した。
「今日から、超能力修行の第三段階に入る。選んだベビードールを立方体のキューブに入れて縮小と拡大を一回ずつ行ってからベビードールを着る。失敗した場合は圧縮した大きさのものを強引に引っ張って身につけること。要は普通のベビードールでもちゃんと拡大できないと、俺が温泉旅行から帰ってきたときにみんなが着けていたような大胆ランジェリーになってしまうってことだ。無論、紐が千切れてしまった場合は、長さを調節して紐パンということになる。これが失敗せずにできるようになれば、みんなにも復興支援の引っ越し作業を手伝ってもらいたいし、まだ退社できない二人もこれをマスターしてしまえば、必要なものを全部まとめてキューブに縮小して持って帰ってくることも可能だ。これを人間に応用すると、子供たちのように幼稚園児でもバレーができるだけの身長にすることができる。日本代表の前では使えないが、やろうと思えばここにいるメンバーの身長を伸ばしたり、身体を縮小して飛びまわれば妖精のようになることだって可能だ」
『面白いじゃない!!』
「フフン、この中で何人が大胆下着になるか勝負することになりそうね」
「青私もお願いだから、この前の遮音膜みたいにわざと失敗するようなことだけはしないでよ!?」
「あたしに任せなさい!」
やれやれOG達だけになると、ハルヒや有希、朝倉のセリフを使いたい放題だな。さすがに佐々木の口調を真似る奴はいないか。エージェント達はやってみたら全員できてしまったが、超能力を使い慣れていないOG達では当然失敗者が現れた。他のOG達から嘲笑われている。
「え――――――!?これを伸ばして着るの!?絶対Tバックになるじゃない!」
「それじゃ、前の方もTになっちゃうでしょ」
「ほとんど裸と変わらないよ……」
それでも強引に引っ張って着ると、またもや周りから笑いが飛び出した。胸は乳首が隠れることすらなく乳房が絞めつけられ、ショーツも前後ともT字になり、秘部を刺激しているような状態になっていた。それでも失敗したのは三人だけか。大分使い慣れてきたらしいな。
「プッ……あっはははは…もう縛られているようにしか見えない!」
「ふふっ、縛るにしても、こんなの下手過ぎだよ!」
「今日は先輩とどんなプレイをすっるのっかな――?」
「この後の遮音膜も失敗しないようにね~。声が聞こえていたら、明日の朝教えてあげる~」
『あはははははははは……』

 

 キューブの拡大に成功して油断をしたOGが出るかと思ったが、恥ずかしい思いをしないために必死らしい。この調子なら半月もしないでマスターしそうだな。100階の方も佐々木たちを除いたメンバーに秘部のトレーニングのことを提案した。みくるやハルヒ達だけでなく、一緒にシャンプーしていた青有希まで恥ずかしそうにしている。みくる達の方は『キョン君のためなら、わたしやります!』と即OKしてくれたのだが、ハルヒ達は『あたしにそんなもの必要ないわよ!』と拒否。
「青古泉とほぼ同程度の思考回路をしたOGとほとんど変わりがない。どちらも俺が満足できるまでやると、以前のようにダウンしかねないからな。特にハルヒは双子を産んで筋肉が緩んでいるし、青ハルヒもほとんど毎日抱き合っている状態だ。今後のことも考えると必要になってくるだろう。恥ずかしいトレーニングになるかもしれんが、結果女性ホルモンの分泌量が増して肌のツヤにも影響する。毎年のパーティで撮影されるんだ。少しでも見栄えがいい方がいいだろ?」
『ふむ、そういうことならやってもいいわ』
「キョン、わたしもやってみる。もっとキョンに満足してもらいたい」
 翌日のニュースでは昨日の今日で動いているとは到底思わず、案の定、記者会見のVTRは無し。だが、昨日の予定を覆しかねない新聞の一面の見出しが目に留った。『時価数億円!?鑑定士でも値が付けられない脅威の技術力とは!?』という見出しを筆頭に、青みくるのネックレスに関する話題でもちきり。他の会社の社長を執拗に責めるんじゃなかったのか?こんな調子じゃ昼の間は電話対応になりそうだな。再三偽名は通用しないというのに、またかけてくるアホの谷口と同レベルが何百人もいるんじゃ無理だな。敷地外の報道陣も昨日の約二倍。車道に立っている奴も一人や二人のレベルじゃない。車が混雑しないうちに撒いてしまおう。

 

 これだけ大勢の人数が来ているんだ。マシンガンで乱射したところで負傷を負わせることができない奴も出てくるだろうが、目配せだけで機材は全て破壊できる。とりあえず、交通の邪魔をしている連中からだな。両サイドからマシンガンを撃ち、報道陣の下腹部に穴を開けていく。最初の一回で倒れた報道陣が出た時点で攻撃を中止。一番内側に張っていた連中は一目散に逃げていった。しばらくしてサイレンの音が次第に大きくなってくる。本来なら報道する側の人間が警察の事情聴取を受けている。一通りの説明を終えてパトカーが帰っていくと、残りは機材を取りに戻っていった。
「キョン君の技術力だけで時価数億円にまで膨れ上がるなんて思いませんでした」
「青みくる先輩のものがそれくらいの額になるのなら、私のもってこと?」
「みんなが出揃うまでに一度報道陣を撒いたが、それでも残りの奴等は機材を持ってまた来るだろうな」
「残りの奴等って全員怪我させちゃえばよかったんじゃないの?」
「生憎と、それをマシンガンでやろうとすると、倒れた奴の頭部を撃ち抜くことになりかねん。本当に見せたいのは、SPは無傷で報道陣だけ弾丸を喰らうところだ。あんなアホな連中殺したところで何の意味もないんだよ。メリットどころか、デメリットにしかならない。よくあるだろ?『こんな奴殺す価値もない』ってヤツだよ」
「それもそうね。あんな連中にトドメを刺したところで、面白くも何ともないわ」
「それで、結局今日も休みでいいのかね?」
「いえ、そう言ってはいられなくなりました。再三忠告してきたはずですが、本名や会社名が出鱈目の電話がかかってくることになるはずです。社員に対応させて相手を調子に乗せる前に我々で叩いておく必要がありそうです」
「なら、今日は俺一人でやる。黄古泉は異世界の方に向かってくれ。例のテレビ局からは『社長の土下座謝罪以外に妥協案は無い』と伝えておけばいいんだろ?」
「では、今日はあなたにお任せすることにして、圭一さん達には休んでもらいましょう。よろしくお願いしますよ?」
「ああ、問題ない」

 

「さて、あんな連中のことだけに時間を割いている暇は無い。青俺が人事部で電話対応をする以上、青有希は自分の部屋の掃除になりそうだな。ついでにメンバーの確認も取って見ても良ければ携帯も確認しておいてくれ。それから、今週のディナーだが、鉄板料理食べ放題でいこうと思っている」
『鉄板料理食べ放題!?』
「ああ、上げていくと色々とバラエティに富んでいてな。以前、古泉が行った牛肩ロースの赤身肉を焼いてみたり、広島風お好み焼き、ジンギスカン、回鍋肉、焼き肉、玉子焼きなどオーダー制にするつもりだ。栄養のバランスも考えて、ご飯とノンドレッシングサラダは食べ放題。あとは……選手はソフトドリンク、監督やコーチはアルコールもアリになるかな。またOGたちで栄養士に聞いてきてくれるか?ジンギスカンや回鍋肉は食べ放題として出すといくら切り方が良くても料理の味が落ちる。それで、注文が入った場合のみこちらで人数分用意する。それに、前回いいアイディアを貰ったんでな。今回から夜のスタッフに見えるように催眠をかけて俺も参戦する」
『今日の練習で聞いてきます!!』
「涼宮さんと二人ですと正直きつかったんですが、あなたが入っていただけるのであれば百人力です。あとは飲み物のこともありますし、ホールスタッフをいつもより増やす必要がありそうですね」
『私やります!!』
青OG達が名乗りを上げた。みくるや佐々木たちも入りたそうにしている。
「やってくれるのは嬉しいが、青OG達には注意してもらいたいことがある。まず一つ目『○○先輩』とは絶対に呼ばないこと。『古泉さん』や『涼宮さん』と呼んで、特に古泉の方は『黄古泉さん』にならないようにすること。二つ目、これはみくる達にも当てはまるが、今回は俺は関係者にも夜のスタッフに見える催眠にする。呼ぶときは偽名で構わないが、みくるや佐々木たちも『四郎君』にならないように注意してくれ。『鈴木さん』で統一する。よろしく頼む」
『問題ない』

 

「わたし達の分は?」
『へっ!?』
「わたし達の分はあるの?」
「ああ、前回、前々回と同様、日本代表が食べ終わったら今度は俺たちの番だ。子供たちもシャミセンも一緒に全員で降りてこい。青朝倉、米も野菜も肉も大量に発注しておいてくれ」
「わかった」
『キョンパパ!わたしもお好み焼き!!』
「ああ、欲しいものいっぱい作ってやるから楽しみに待っていろ。シャミセン用のミネラルウォーターも三階に用意しておくから、誰かシャミセンにも選ばせてやってくれ。文字通り猫舌だからな。なるべく冷ましてから渡すようにする」
「それなら俺がやる。俺たちの出番になったらOGや朝比奈さん、佐々木たちも席についてくれ。飲み物はセルフでいいだろう?圭一さんやエージェントたちはお酒になりそうだ」
「それは嬉しい提案だ。ぜひそうさせてくれ」
「じゃあ次、元旦の福袋についてだが、今年は青圭一さんや青OG達もいるので、最初から説明しておく。異世界の方は月曜定休になっているが、基本こちらの本社は年中無休の営業だ。元旦は俺と青ハルヒはハリウッドスターが集まるパーティに参加して料理を振る舞う。その間、カシミヤ100%の品物が最低一個入った福袋を5000円で販売する。運が良ければカシミヤのコートが大当たりだ」
『カシミヤが入ってたったの5000円!?』
「そう、その福袋をこっちの世界では、本社に3000袋、各店舗にも女性300袋用意する。今回みんなに聞きたいのは、異世界の店舗でどのくらい販売するかだ。俺の個人的な考えでは、都内の三店舗は200袋、地元に店舗は100袋ずつ女性のみの福袋を予定している。価格や中身はこちらと変わらず、サイズ比はS:M:L=4:4:2だ」
『3000袋!?』
「それだけの量の福袋を毎年販売していたんですか!?5000円で?」
「ああ、青チームのメンバーが来る前までは、確か青俺だったと思うんだが、『本社と異世界を同時にやるなんて無茶だ』って話になっていたと思う。だが、今のアルバイトに年末年始のシフトを組ませて各店舗にOG達を向かわせれば心配ないと思うんだが、どうだ?」

 

 こちらの方は例年通りで特に問題はないだろう。青圭一さんもレジ担当なら、店舗に入っても問題ないはず。
「僕はそれでいいと思うよ?これだけの人数が加わったんだ。青OGも元旦なら六人ともいけるはずだ」
「確かに、都内で200袋なら売れるでしょうが、地元は100袋に抑えておくのがよさそうですね」
「他に異論がなければそれで行く。今回はデザイン課の青OGにもカシミヤのコートをメインにしたフルコーディネートを考えてもらって、それを福袋にしたいと思っている。できそうか?」
「……やります!やらせてください!!」
「俺からは最後だ。昨日青古泉から貰ったデザインの中から、俺が絞ったものをこれからマネキンに着せてみんなに見せる。絞ったと言っても、トリックに使えないもの、無理があるものを排除しただけだ。特にみくる、朝倉、青ハルヒ、両方のOG達は自分が着るならどれがいいか選んでみてくれ。催眠をかけてクラスメイト役になったり、エキストラを務めてもらったりすることになる。ちなみに、実際に高校で使われているものもある。今回はこちらでデザインしたが、学校と被ってしまったということにしたい。日本全国のすべての高校と同じにならないようになんて不可能だ。アレンジを加える程度だったら、それでもいい」
フロアの四方にマネキンが情報結合され女子高の制服が着せられた。実際に学校で使われているものは学校名を記入したタグをつけておいた。
「ちょっと待ちなさいよ!キョンが絞っても、まだこんなにデザインがあったわけ!?古泉君、あんた、本当にあたしや黄あたしに似合うデザインだと思って選んだんでしょうね!?」
「ええ、髪型や眼鏡をかけるかどうか、スカート丈をどれくらいで合わせるかなど、細かいこともあるのですが、僕の考えていたものをすべて彼に渡しました。本当に似合うのか疑問に思うようなものがあれば、詳細を説明しましょう」
そんな説明誰も求めていないだろうが、バラエティ豊富な制服の数々に女性陣が席を立って一つずつ品定めをしている。
「あっ、これ可愛いかも!キョン先輩、選ばれなかったものはどうなるんですか?」
「いくつかはコスプレ衣装として69階と100階に置くのも悪くないと思っている。採用されなくても、着てみたいものがあれば、後で教えてくれ。監督もこの中のものから決まりそうか?」
「そうね、こんなに種類があるのなら、デザインを考えるよりも、あんたが言った通りアレンジの方がいいかも」
「他に議題がなければ、今朝はこれで解散だ。ただ、制服のデザインについては遅くとも今日の昼食までには決定してくれ。ドラマ二週分のためだけの制服に時間をかけている暇は無い」
『問題ない』

 

 ランチの仕込みがある新川さん、電話対応をするのに人事部に降りた青俺、ドラマ撮影に向かった古泉、81階のキッチンで明日の打ち上げの仕込みに入った俺。それ以外のメンバーはフロアに飾られた制服を見てまわっている。今日の片付け担当は一体誰なんだ?おい。もしかしたらみくるとハルヒあたりかもしれんな。佐々木たちも今日は脚本作りになるかもしれん。SPに移動型閉鎖空間をつけて一人に携帯を持たせた。いつものように車道を開けて牢屋に閉じ込めると、その場所で待機。報道陣が間近で狙撃されたのを見て、まだこんなに集まってくるとは……本当に馬鹿な連中だ。しばらく仕込みを続けて周りに視線を向けると、いくつかのマネキンの情報結合が解除されていた。要するに却下ということで間違いなさそうだ。圭一さんもドラマの中では学校の資料と制服を用意する役回りになるからな。一つずつ制服を見定めていた。
「ところで、学校名どうする?」
「そんなの『SOS女学園』に決まっているでしょうが!校章も考えたから後で見せてやるわ!あんたはラスベガスに校舎を建てておきなさい!」
「建てるのは構わんがどんな構図にするか検討をつけてからにしてくれ。図面がないと建てられん」
「くっくっ、面白いじゃないか。校舎と体育館の配置、グラウンド、部室、周辺の建造物についても考えなくちゃならなさそうだ。キミもいい案が出たら、僕に知らせてくれたまえ」
「発案者は俺だからそれは構わんが、あまりにも良すぎて『他のドラマの撮影で使わせてくれ』なんて電話が人事部にかかってくるようなことにはなるなよ?『ラスベガスまで行って撮影してこい』なんて言えるわけがない」
OG達もそろそろ練習があるんじゃないのか?ったくしょうがないな……そろそろ頃合いか。報道陣を撒いてくることにしよう。

 

 道路に閉鎖空間を展開して車を除外すると、SPを含めて敷地外にいる奴全員にマシンガンで発砲。機材も全て破壊して閉鎖空間を解いた。SPは撃ってきた犯人を探す振りをして、警察と救急車を呼ぶ。朝食前と合わせて、本日の出動はこれで二回目。警察と救急隊員にお疲れ様ですと言いたいね。文句があれば、ここに倒れているアホ共に言ってくれ。パトカーが到着し、「また此処か…」と言いたげな表情でSPに事情聴取を開始した。これまでと違って今回はSPがいるからな。状況が掴みやすいだろう。
「襲撃を受けたとき、あなた方もここに立っていたということでよろしいですか?よく無事で済みましたね……」
「ええ、イタリアでの事件を受けて、社長が秘密裏に本社に戻り、我々や社員、従業員、それに楽団員に張った防護膜のおかげでしょう」
「防護膜と言いますと?」
「私にもよく分かりませんが、『ナイフや銃弾は効かない』と説明された程度で……実際に弾が反射されたのを目の当たりにして驚いています」
「あなた方なら犯人を目撃したのではありませんか?」
「それが、我々も周りを隈なく探していたのですが、それらしい人物はどこにも……警察や報道陣が監視カメラを設置しているようなので、そちらで確認していただければ分かると思います」
「何か狙われるような心当たりは?」
「我々も雇われた身ですので、そのような内部事情については何も……。報道陣に対して何度か警告文が送られたようなことを上から聞いています。それでも報道陣がこうやって集まってくる状態ですから……警察の方から注意喚起の文面を各メディアに送っていただいた方がいいかと」
「分かりました。ご協力ありがとうございました」

 

 これでSPは1%の意識で十分。夕食時まで立たせておこう。二度も狙撃されておいて、本日三台目のカメラを持って現れる報道陣もいまい。青みくるが一階に降りてくるとでも思っているのか?バカ共め。
81階に戻るとほとんどのマネキンが情報結合を解除。ほぼ全員が一つのマネキンの周囲に集まっている。
「他はコスプレ衣装として残して、ドラマの方はそれで決まりってことでいいのか?」
『そうだね、これなら着ても構わないとみんな納得してくれたよ』
そこまで派手ではない……がおとなしめの制服と言える程でもない。こげ茶色のブレザーにワインレッドのリボン、クリーム色のシャツに同じくワインレッドを基調に濃いグリーンも混ぜたチェック柄のスカート。黒いハイソックスにローファーか。まぁ、あとは校舎と教室の雰囲気だな。
『黄キョン先輩!この制服着てみたいです!!』
こっちのOGはどうやら練習に向かったようだな。時間的にも厳しかったようだ。
「それで、青OGの他に着てみたい奴は?」
みくる、青ハルヒ、青OG六人、朝倉まではまぁいい。だが……
「どうしてハルヒや有希、青みくる、佐々木たちまで手が上がるんだ?」
『くっくっ、クラスメイトやエキストラ役が必要だと言ったのはキミじゃないか。顔だけ別人に変えれば僕らが出たっていいだろう?』
「総監督までエキストラとして出るつもりかよ」
「有希のカメラで撮影した映像をチェックすれば心配いらないわよ!」
「やれやれ……仕方がない。青古泉、鼻血が出るようなら自分でティッシュでも用意しておけよ?」
「分かりました。彼女たちの要望に応えてあげてください」
朝倉以外全員抱いているんだ。有希に情報結合してもらう程のことでもない。マネキンと一緒に制服を情報結合してドレスチェンジ。窓ガラスをマジックミラーに切り替えた。

 

 ドレスチェンジで切り替わった制服を互いに確認し合い、黄色い声をあげている。
『フフン、あたしもまだまだ捨てたもんじゃないわね』
『みくる先輩可愛い!!すっごく似合ってます!』
「しかし、みくるたちは栗毛の髪に良く似合っているが、朝倉は後ろ姿だけにしてもあまり似合わないんじゃないか?紺系のブレザーなら似合いそうなもんだが……」
「そこまで気にしてたらいつまで経っても決まらないわよ!主になる二人が女子高生として不自然じゃなければそれでいいんじゃないかしら?」
「まぁ、それもそうだな。佐々木は母校の制服と似ているから十分似合っているし、みくるも青ハルヒも問題なさそうだ。それにしても、有希のブレザー姿なんて新鮮だな」
「ちょっと待ちなさいよ、あんた!あたしには何もないわけ?」
「青ハルヒが制服姿でも問題なさそうなんだ。身長の低いおまえの方が似合うに決まってるだろ?」
「フフン、分かればよろしい!」
「しかし佐々木、ソフトボール部がメインなのにバレーボール部の練習風景なんてどうやって組み込むんだ?」
「潜入した二人が仮入部として回っているときに体育館での様子も映せばいい。潜入初日の最初の授業でキミが出てくれば、休み時間に周りの生徒にキミのことを聞くことになるだろう?」
100点満点の回答が返ってきた。部活中は朝倉がソフトボール部の様子を見ることにすればいいのか。板書の練習もチョークをサイコメトリーすれば筆記体で問題なく書くことができそうだ。授業での細かい内容については二人に任せよう。やはりと言うべきだろうな。青古泉はいくらティッシュを追加しても鼻血が収まる気配がない。自分が考えた制服をハルヒ達が着ているんだ。コイツの妄想を俺が叶えたようなものだからな。だが、これで撮影に加われないことが発覚したも同然だ。青俺が人事部で電話対応をしている分、ヘリの運転には佐々木が名乗りを上げ、青佐々木はドレスチェンジしないままラボへと向かっていった。閃いたものを今のうちにまとめておくらしいな。朝倉も着替えてラボの上層部へ。いつの間にかジョンもいなくなっていた。
『黄キョン先輩、この制服69階にしまっておいてもいいですか!?』
「ああ、どの道撮影で使うことになるんだ。コスプレ衣装として着ても構わんが、撮影がある日まで無くすなよ?」
『問題ない!』
残りのマネキンに着せられた制服はSとMを二つずつくらい100階と69階に用意しておけばいいだろう。全マネキンの情報結合を解除して仕込みに戻った。案の定、今日の片付け当番はハルヒとみくるの二人。ハルヒはそのまま昼食の準備にかかりそうだな。邪魔にならないうちに99階に避難してしまおう。

 

「やれやれ……朝比奈さんのネックレスを鑑定させてくれって電話が一向に鳴り止まん。偽名ではないんだが、同じ奴が何度もかけてくるってところだ。何回目か警告してから切っているが、それでもしぶといって状態だ」
昼食時、青俺からの人事部へかかってくる電話の報告から話が始まった。
「青みくるのネックレスでそうなると……今後のバラエティ番組でのみくるのイヤリングの方も対応を変えなければならん。みくる、例のイヤリングは『購入した』ではなく『購入した原石を俺が加工した』と伝えてくれるか?」
「はぁい」
「その様子では明日以降も続きそうですね。社員には見られず、我々だけで対応できる部署が必要になりそうです。そうですね……人事部のフロアを改装して第二人事部を作ると言うのはいかがです?面接室もそこまで多くは必要ないはずです」
「社員の負担を軽減できるのなら、そうしてもらえると助かるよ」
「分かった。なら、改装は俺がやる。多少移動することになるかもしれんが、人事部の今の配置をキープしたままなら問題ない。あとはファンから非売品として売ってくれという電話と、例の局から何度かかかってきている。妥協案も聞かずに切っているから、午後もかかってくるだろうが心配いらん」
『キョン先輩!私たちも制服着てみたいです!!』
「夜練も無くなったし、全身マッサージまで終わってからだ。修行の方はベビードールでやるから心配しなくてもいい。青チームのOG達にも言ったが、しわだらけになるようなことが無いようにしろよ?」
『問題ない!』
「くっくっ、彼女たちの修行って一体何の話だい?」
「なぁに、寝るときに着るベビードールを閉鎖空間の中に入れて縮小、拡大するキューブの修行だ。昨日もやってみただけで12人中9人が成功した。これをマスターすることができればOG達も引っ越しの手伝いに加わることができる。引っ越しのことが出たついでに話しておこう。来週火曜からいわき市の引っ越しをスタートさせる。その日に引っ越す世帯に明日から人事部の社員で連絡してもらいたい。かかってくる方の電話は、青俺、古泉、俺が第二人事部で対応する。青俺、今日は人事部の方に集中してもらって構わないが、ヘリの運転をしながら人事部に何体影分身を置けるかやってみてくれ。SPは当分の間は俺でいい。警察には各メディアに注意喚起の文面を送るように伝えた。SPを配置するのも精々コンサート当日くらいで、そこまで必要もないだろうからな」
「分かった」
「社員には私の方から伝えておこう」
「それから、ハルヒ。異世界のビラの件だが、異世界での試合が終わったら、元旦の福袋について記載されたものを作ってくれ。都内、地元、その他の地域で三種類作る必要があるが、そこまで差はないから時間はかからないはずだ。ビラ配りチームも、場所によって配るビラを注意してくれ。特に今月と来月は都内と地元を中心に頼む。あと火曜から池袋店がオープンする。店舗組で今の社員やアルバイトに任せられるところは池袋店に向かって欲しい」
『あたしに任せなさい!』
「ディナーの確認はできたか?」
「今回も無条件で管理栄養士からOKをもらった。大丈夫」
「ご馳走様!織姫早く!試合!!」
『わたし、キョンパパも一緒じゃないとヤダ!!』
「もう少しの我慢だ。その後は毎日でも付き合ってやるから楽しみに待ってろ」
給食を食べているときのような落ち込み方をしていたのはそういうことか。でもまぁ、俺も早く試合に出たいし、今の一言でみるみるうちに表情が変わった。次のセリフが決まったも同然だ。
『フフン、あたしに任せなさい!』

 
 

…To be continued