500年後からの来訪者After Future6-5(163-39)

Last-modified: 2016-11-04 (金) 07:57:09

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future6-5163-39氏

作品

セカンドシーズンのドラマの一つとして閃いた案を全員の前で発表。案の段階でそこまで細かく考えられていては反論する余地もないと古泉が呆れかえっていたが、青古泉がデザインした制服の中からそのたった二週だけしか着ない制服が決まり、名前も「SOS女学園」とハルヒが命名。着々と準備が進められていた。いよいよ明日は、古泉のドラマ撮影最終日。なんとか妥協策をと人事部にかかっていた電話も青俺がすべてカットし、夕食の頃には「さすがにもう諦めて記者会見を開く方向に切り替えたんじゃないか?」と発言が飛び出した。その後、青俺たちは青有希の部屋で青俺の両親と一緒に夕食を摂り、幸は祖父母との時間を満喫していた。撮影終了の打ち上げのディナーの仕込みも終わったし、後は明日の朝のニュースがどうなるかを待つだけとなった。

 

 夕食後、早く制服が着てみたいからとこちらのOG達がすぐにでもシャンプーを始めてくれと要求。夜練がなくなったんだから、もうちょっとゆっくりしてもいいだろうにと思いながらシャンプーを始めていた。
「ところで、水曜にでも二人でドライブに出かけようと思っているんだがどうだ?火曜だと夕食後の夜練が入ってくるからな。夕食を食べた後すぐにでもこうやってシャンプーした方がいいだろう?」
「ようやくわたしも連れて行って貰えるんですね!先輩たちが結婚式を挙げたチャペルを早く見てみたいです!」
「まぁ、早く行ってみたいというのも分かるが、道中の景色も堪能してもらいたいという部分もある。どうする?午前中から出かけるか?それとも午後から全速力で向かうか?」
「じゃあ、全速力の方で!有希先輩たちみたいに、わたしもキョン先輩にヘアメイクをしてもらいたいです!」
「それは構わんが、急いで食べるようなことはするなよ?」
「あんなに美味しい料理を急いで食べろなんて言われても無理ですよ!」
「やれやれ……有希やハルヒ達も、ちょっとは見習って欲しいもんだ。いくら注意しても食べるスピードが落ちることが無いからな。あいつらだけは」
 全身マッサージまで終了して、温泉でくつろいでいる12人に話しかけた。
「今日は制服のこともあるし、特別ルールを設ける。昨日と同じく選んできたベビードールを縮小して拡大。成功した場合は制服にドレスチェンジして、その状態で寝ても構わない。そのかわり、失敗したら昨日と同じように強引に引っ張ってでも着ること。これでどうだ?」
『問題ない!』
『それより先輩、どんな制服になったのか見せてください!』
「今朝見せた中からアレンジを加えることなくこの一着に決定した。青古泉のデザインって部分は眼を瞑れよ?」
青古泉の名前を出しても顔がゆがむことなく、どんな制服になったのか楽しみで仕方がないという表情をしていた。まぁ、午前中に確認した通り、この回は青古泉は出ることができないし、このメンバーが好んで着ようとするのなら問題ないだろう。六人の前にサイズを調整したドラマ用の制服が姿を現した。

 

『超可愛い!!』
「他にも最終選考まで残っていたものをSとM二つずつ用意してあるから、見てみるといい。昨日拡大に失敗したベビードールも置いてあるからついでに選んで来い。早くキューブの練習をして、制服着てみたいだろ?」
俺のセリフを機に、全員同時に立ち上がって他の制服も見に行った。見慣れたとはいえ、全員裸で制服を吟味している光景もどうかと思うぞ?イヤリングと同様、朝倉には紺系のブレザーの方が似合うと話していたが、OG達も人によっては選出された制服より他の制服の方が似合いそうなメンバーもいる。初回ですら四分の三がキューブの縮小、拡大に成功したんだ。制服を着たい一心で全員が成功し、それぞれ制服に着替えた。この回の場合はみくるだけでなく他のメンバーのランジェリーも映ることになりそうだな。各自のベッド横にある姿見で制服姿を確認して影分身がベッドに押し倒された。ブラインドフィールドと遮音膜も文句一つ言えやしない。
「折角時間が空いたのにもう寝るのか?」
「その分先輩に抱いて欲しいんです!お願いします!」
すでにすべてのベッドにブラインドフィールドと遮音膜で覆われていた。同期しなくても全員同じ考えとみて間違いなさそうだ。太股の内側を蔦って秘部に触れると、ドレスチェンジしたばかりのショーツがもう濡れていた。スカートまで濡れてしまわないよう配慮しながら、全員を抱いて69階の照明が切られた。
 100階でも同様に制服を身に纏った妻達を中央のベッドで抱いていた。今日は全員同じものだが、明日からは俺がチョイスしたものに着替えさせることにしよう。
「ところで有希、この制服を使う回はみくる以外もカメラの角度を調節してランジェリーを見せるつもりか?」
「そう。あなたの案なら、校舎内での生徒の様子を映すときだけでなく、部室内で更衣中の様子も撮影できる。ショーツだけでなくブラの方も可能。バレー部とソフトボール部が着替えている最中のシーンもあるはず」
「明日からしばらくは、俺が有希の制服を選んでもいいか?」
「問題ない。あなたに任せる」

 

 夜練が半分になり、寝静まる時間が早くなった分、他のメンバーはジョンの世界で練習する時間が増えたが、俺の方は暇な時間が増えてしまった。明日のニュースが楽しみで仕方がないというのに何で時間を潰したものか……結局何も思い浮かばず、人事部の改装を確認して、漫画喫茶で時間を潰すことになった。
 翌朝、スカウターでジョンの世界の様子を確認すると、他のメンバーもニュースを確認するところらしい。今回は例の局以外のTV局でのニュース。すでに謝罪会見を終えている日テレで見るのが一番いい。昨日の青俺の発言通り記者会見を開く方向に切り替えたようだ。謝罪会見の様子もVTRとして映し出されていたが、取り繕った回答や謝罪よりも土下座したかどうかと、それに対する各新聞社の一面記事。『記者会見で土下座謝罪!本当の目的はSOS天空スタジアムか!?』という内容の見出しが多く、他のメディアをも責める記事が掲載されていた。しかし、例の嘘記事を載せた週刊誌に対するものは無く、明日発売の今週号でどういう行動に出るか……だな。
「くっくっ、これでようやく『甘んじて受けた』ことになりそうだ。どうして今頃になって謝罪をしたのか他のメディアにはバレていたみたいだけどね。残りのTV局はどうするつもりなのか僕にも教えてくれたまえ」
「年末年始に向けた特番で使わせて欲しいという電話が来るはずです。今回の局のように、OKしてもいないのに勝手に決め付けるようなことをすれば、すべて白紙に戻すことになるでしょう。加えて、いくら謝ったからとはいえ、そう易々と使えるわけではないということを思い知らしめる必要があります。明日発売の例の週刊誌も楽しみで仕方がありませんよ」
「第二人事部も出来たことだし、今日は古泉も電話対応する影分身を増やせるだけ増やしてくれ。青俺もヘリに一体、電話対応に二体から始めてもらいたい。倉庫に行ける影分身が作れるまでは青有希が倉庫のチェックにまわってくれ。それから、今日の五時から、五階で古泉のドラマ撮影終了の打ち上げがある。調理場には俺と青ハルヒ、俺の影分身の三人で対応する。交代で夕食を取りながらホールスタッフとして来て欲しい。OGが来る場合はどちらのチームであっても必ず催眠をかけた状態で来ること。まずはここまでだ」
『絶対行きます!』
『僕も入らせてくれないかい?』
『キョン君、わたしも行きます』
青OG四人とW佐々木、Wみくるか。自ら名乗り出てくれるのはありがたいが、大事なことをすっかり忘れていた。
「ちょっと待ちなさいよ!直接関係していなくても、みくるちゃんは主題歌を担当したゲストじゃない!あたしは調理場でいいけど、ゲストがホールスタッフになってどうするのよ!!」
「それに、例のネックレスを見せて欲しいって言われそうね。当然カメラマンだっているわけだし、大丈夫かしら?」
「黄古泉、ドラマ撮影の監督やスタッフから、何か言われていないのか?」

 

 『困りましたね……』なんて言いながら策を考えている古泉なら何度も見てきたが、本当に困っている古泉を見るのはいつ以来だ?ニヤケスマイルをする必要もなくなって大分経つが、これだけ返答に時間を使ったのは久々だ。
「そうですね……これまで話題にはあがりませんでしたが、今日、スタッフに話せば間違いなく『来て欲しい』と言われるでしょう。ですが、ネックレスの件が出るのも事実ですし、カメラも確実に入ってくることになります。カメラが無ければ、ディナー後に天空スタジアムからの景色を堪能させるという提案を彼から受けていますし、できれば僕の方から話したくはありません」
「出てもらいたいけど、出すわけにはいかなくなってしまったね」
「問題ない。本社入り口を通った時点で彼のサイコメトリーに引っかかる。カメラがあったとしても、映らないように催眠をかけておけばいい。あとはネックレスを外して触らせないようにするだけ。古泉一樹が、『このドラマを影から支えたスペシャルゲスト』という形で紹介すればいい。ただし、涼宮ハルヒにも催眠をかける必要がある」
「確かに、催眠をかけていないと調理場に立っている涼宮さんも……ってことになりかねないわね」
「あたしはそれでいいわよ!みくるちゃんだけで十分だわ!」
「ディナーを一人分追加することくらい、どうってことはない」
「では、先ほど有希さんから提案された流れで青朝比奈さんを紹介ということでよろしいでしょうか?」
『問題ない』
「でも、わたし一人だけなんて、皆さんに申し訳ないです!」
「黄キョン君にディナー五人分増やしてもらって、涼宮さんが調理場に立てないような状況になるよりはいい。わたしも黄わたしの意見に賛成」
「ということは僕も催眠をかけた状態でホールスタッフということになりそうだ。どちらか一方に催眠をかければいいと思っていたけど、そうも言ってはいられないようだね」
「わたしも催眠をかけた状態でホールスタッフですね!」
「決まりのようね。わたしも自分に催眠をかけて参加しようかしら?」
「でも……みくる先輩に主題歌を歌って欲しいなんて言われそうです!羽を広げて跳び回って欲しいって…」
「うん、それ、無理。精々羽を生やすところを見せるくらい。このフロアの高さで飛び回るなんて、いくらなんでも無茶よ!ちょっと浮き上がるくらいで十分じゃないかしら?」
「なら、曲を流すのと羽の情報結合は俺がやる。青みくるは古泉に呼ばれた段階でディナーに参加でいいな?」
『問題ない』

 

「次だ。いよいよ明日からいわき市の引っ越しが始まる。まず、今週から昼食は毎日俺が用意するというのが一点。加えて、宮古市のときと同様、すぐにでも漁に出る住民が多く出る可能性が高い。魚介類の仕分けにまわる住民が揃うまで、古泉の影分身で対応するか青新川さんに出てもらうかで迷っている。青新川さんがそっちに向かうことになれば、夕食も俺が作る。どちらかと言えば、引っ越しにも電話対応にも臨機応変に対応できる古泉よりも、青新川さんに向かってもらう方がいいと思っている。因みに、青チームの森さんにもエネルギーを分けてサイコメトリーしながら面談に入ってもらいたい。二人がかりで面接をすれば、俺たちが手伝いに向かう日数も少なくて済むはずだ」
「昼食に夕食まで作るって、あんたの負担が増える一方じゃない!」
「告知に行っている分、みんなに俺の仕事をやってもらっていた状態だ。それが元に戻るだけであって、これまでずっとやってきた仕事だ。それに加えて影分身を使うから、この人数でも時間短縮が可能だ。夜の時間も使えるし朝食もすべて俺で構わないくらいだ」
「あんた、少しは休んだらどうなの?」
「心配してくれるのはありがたいが、みんなが仕事している間にドライブに出かけたり、アクセサリーを買いに行ったり、そのデザインを考えたりで十分休めている。ジョンの世界に行っていないだけで二、三時間でも寝るときは寝ているから心配はいらない」
「くっくっ、この前は驚いたよ。僕が食器の片付けをしている間に昼食の支度を終えていたんだからね」
『えぇ―――――――――っ!?』
「キョン君、この人数分の昼食を作るのにそんな短時間でいいんですか?」
「どちらかと言えば、この人数分の食器を洗う方がよっぽど大変だし、時間がかかる。だが、そのくらいの時間で終わることは事実だ。だからこそ、魚介類の仕分けを任せて、俺が夕食をと考えている」
「分かりました。わたしも明日からツインタワーの面接の方にまわります」
「そういうことであれば、古泉よりも青チームの新川の方が適任だ。人事部の負担も減らしてもらいたい」
「では、明日からわたくしが向かうことに致します」
ハルヒは心配そうにしていたが、他のメンバーは納得の表情ってところか。

 

「じゃあ、俺からはこれが最後だ。青古泉、おまえに頼みたい事がある」
「何でしょう?」
青古泉に頼みたい事と言った時点で女性陣のほとんどの表情が曇った。俺が何を頼むつもりなのか気が気でならないって面構えをしていた。
「昨日決まった制服でドラマ撮影をするんだが、女子高に潜入したみくると青ハルヒが仮入部の際に着る体操着を考えてもらいたい。もう決まっているのならその情報を俺にくれ。冬のドラマだし、長そで長ズボンのジャージとあとは精々半そでくらいだ。ハーフパンツ、短パンは無し。当たり前だがブルマなんて問題外。佐々木たちの書いた脚本によってはグラウンドの様子を見つめているみくる達のシーンがあるかもしれん。頼めるか?」
「分かりました。制服に合ったジャージを考えておくことにします」
「ハルヒ、昨日言っていた学校の校章を青古泉に渡しておいてくれ。場合によっては入れることになるかもしれん。俺からは以上だ。何か他に議題はあるか?」
「あんた、あの子に会いに行かせてくれない?あんたの言ってた通り電話対応はしないから」
「それなら後で俺が送る。戻ってくるときも俺にテレパシーで連絡してくれ。それと、青俺の両親に挨拶するようなことはしないこと。もう聞いているだろうが、いきなり話しかけても愚妹には自分の母親だと分からんはずだから、それだけ気を付けろよ?」
「今日はSPも必要なさそうだし、ヘリと電話対応に集中できそうだ」
「あら?キョン君には他にも集中することがあるんじゃないかしら?」
「あ、いや、朝倉さんそれは……」
「有希、話題に上がったなら今日でいい。有希にも早く見せたかったし、早くつけてもらいたかったからな」
「ってことは……わたしもちょっとおせっかいだったかしら?」
「ちょっとした事情があって、有希にはそれまで待ってもらっていたんだ。有希のネックレスやイヤリングを考えていたら、朝倉のイヤリングの方が先に浮かんできてしまってな。俺のデザインで良ければなんだが、つけてみてくれないか?」

 

 青朝倉も、どうやら自分は失態を犯してしてしまったらしいと慌てている。その上、自分にまでイヤリングを渡すと言われて、必死に青ハルヒに助けを請う動作をしていたが、青俺がどんなイヤリングをデザインしたか見てからでも遅くは無いだろう。小箱が三つテレポートされて一つは青朝倉の目の前に置かれた。無情にもこのタイミングでアラームが鳴る。
「問題ない。今日はわたしが双子を連れて行く。青わたしは残って」
『有希お姉ちゃんと一緒に保育園行けるの!?』
「そう。忘れものしてない?」
『問題ない!』
「すまん、黄有希。助かる」
幸と四人でエレベーターを降りていった。
「なんでこんなデザインになったのか分からないと思うから、ちゃんと説明する。まぁ、朝倉と言えばってヤツだ」
『おでん!?』
「そう、おでんをテーマに作ったものだ。開けてみてくれ」
ピアス穴には髪の色と同じ青のサファイア、ゴールドのドロップにおでんの具材に見立てた宝石が三つ並んでいた。
「黄朝倉と同様、まずは、朝倉の髪の色と同じサファイア。おでんの出汁と似た色ってことでゴールドのドロップに、一番下の宝石はそれぞれおでんの具材をモチーフにしたものだ。餅巾着をイメージして形を整えたカメレオンダイヤモンド、大根に見立てたラウンドシェイプのダイヤモンドに、最後は半熟卵のおでんをキャベツで包んだ状態を宝石で表現したエメラルドだ」
「確かにそれなら有希よりも涼子の方が作りやすそうだけど、あんたもよくあんなデザインに仕上げたわね」
「こんなに綺麗なものを、わたしがもらっちゃっていいのかしら?」
「おでんに見立てたイヤリングなんて、青涼子がつける以外に考えられないわよ!早くつけて見せて!」

 

 ハルヒの一言で渋々……というわけではなさそうだが、頭の中がパニックになっていることは間違いなさそうだ。言われるがままにイヤリングを両耳につけて周りの反応を見ていた。
「どっ…どうかしら?」
「朝倉さん、凄く似合ってる」
「彼女の良さが更に引き立った感じがするよ」
「うん、うん!凄くいいわよ、涼子!仕事に影響することもなさそうだし、毎日つけてきて!」
「じゃあ、これで青わたしのジュエリーも決まったみたいだし、わたしのイヤリングは外してもよさそうね」
『えぇ――――――――――っ!!黄涼子先輩、それ外しちゃうんですか!?』
「黄わたしも折角似合っていたのに、外しちゃうなんて、なんだかもったいないわよ」
「そうだね、どちらの朝倉さんも『唯一無二』のイヤリングと言っても過言ではなさそうだ。もうしばらくつけていてもらえないかい?」
「そのままの方が絶対いいわよ!黄涼子らしいじゃない!」
「みんながそういうんじゃ仕方がないわね。もうしばらくだけよ?」
なるほど……青有希に渡せない何かしらの理由ってヤツがようやく判明した。青朝倉が朝倉と区別できるものをつけてしまうと、朝倉がイヤリングを外してしまうってことか。言い方はどうあれ、顔には嬉しいと書いてあるぞ。やれやれ……ってことは俺のせいで青有希を待たせてしまったようなものってことか。待った甲斐があるものがでてくるといいんだが……

 

「じゃあ、有希。今度はおまえの番だ。開けてみてくれ」
「えっ?キョン、これチェーンが二つあるってどういうこと?」
青ハルヒや青みくる青朝倉が横から覗きこみ、ハルヒ達も身を乗り出していた。
「黄佐々木のネックレスと似たようなもんだ。アレキサンドライトは一つだけだと孤独になると言われているから黄俺も同じものをつけることにした。これは俺と有希でつける二つで一つのペンダントだ」
ゴールドと……おそらくプラチナのネックレスを取り出し、青俺の方はゴールドのハート枠を首に下げ、青有希はプラチナのハート型の枠に小型のダイヤモンドをびっしりとあしらったものが渡された。指輪と被らない様に、チェーンの長さが補正されている。
「くっくっ、キョンからは親友の証と言われてこのネックレスを貰ったけれど、二つで一つのネックレスなんて羨ましいじゃないか。『夫婦の証』ってことかい?」
「イヤリングもあるんならそっちの方も早く見せなさいよ!」
青ハルヒに急かされて、もう一つの小箱を開ける。青みくるの口から思ったことがそのまま出てきた。
「綺麗……」
「有希ならではのイヤリングってことになりそうね!」
『青有希先輩!私たちにも見せてください!!』
誰に頼んだのかは知らんが、既に開けられていたピアス穴にイヤリングをはめた。『有希ならでは』と言っていたのが良く分かる。アクアマリンとダイヤモンドで雪の結晶をあしらったもの。土台にはプラチナが使われているようだ。これも値段がつけられそうにないな。

 

「困っちゃったわね……」
「いきなりどうしたのよ、黄涼子」
「デザイン課の社員には、この土日で閃いたものがあればとは伝えていたんだけれど……青有希さんと青わたしがつけているものも採用したくなったわよ。アレンジが必要な部分も少しありそうだけれど……どうしようかしら?」
「男性誌の方も同様です。二つで一つのネックレスということであれば、男性誌の方にも採用できます。今日の夕食までには男女とも冊子が完成する予定でしたが、社員にもう一度検討させてみる必要がありそうです」
「くっくっ、それだけどちらのキョンもデザインセンスがあるってことかい?」
「認めるしかなさそうね」
大分変わってきたとはいえ、もう少し言い方がどうにかならんのか?おい。
「時間ならまだ余裕がありますし、そこまで慌てる必要はありませんよ。アクセサリーだけでどのくらいのデザインが出来上がったのか僕も見てみたくなりました。朝倉さんや森さんの納得のいく冊子ができあがるのをお待ちしています。僕はそろそろ迎えが来ていると思いますので、これで失礼します」
『くっくっ、これが最後の撮影なんだ。感動的なラストシーンを仕上げてきてくれたまえ』
「よし、じゃあこれで解散する。今日も一日宜しく頼む」
『問題ない』
しかし、今日は青圭一さん達は休みだ。オフィスには愚妹一人ってことになるのか?その前にアイツは今日は来る予定なのか?まぁいい、あまり気は乗らないが昼食の支度を終えた後影分身を向かわせて様子を見よう。母親をオフィスへ送って、青チームの森さんにエネルギーと、これまでこちらの森さんがどのように対応していたのか、サイコメトリーのやり方を含めてすべて受け渡した。しかし、月曜日は休みだと言うのにみんなよく働くよ。青チームの圭一さん達には少しでも休んでもらわんとな。

 

 昼食の支度を終え、青みくるの分のディナーも用意できた。オフィスの様子を見に行くと電話も取らずに母親と話している。まぁ、無視して電話対応にあたることにしよう。昼食時に戻ってきたハルヒと有希に、明日以降ではほとんど時間が取れないからと、いわき市のツインタワービルの店舗のことを頼み、ランジェリーを置くスペースを広く取るようにと連絡しておいた。あとは、移動予定だった近くの店舗から服を移動させてくるだけでいい。ビラ配りから戻ってきた青俺がヘリからバスに乗り換え、古泉主演のドラマに携わった全員を本社ビルまで連れてきた。報道陣は……今頃どこに行っているのやら。三階の社員食堂に『本日五階は使用できません』と立札を置き、五階中央にも調理場を情報結合。オフィスに行っていた影分身も戻して精涼院ハルカの催眠をかけた青ハルヒと夜のスタッフに化けた俺の影分身で古泉たちの到着を待った。エレベーターから人が降りてくる度に、俺がいることにそれぞれが驚いていたものの、社長自ら調理場に立って料理を振る舞うということが伝わればそれでいい。入口のサイコメトリーに引っ掛かったスタッフもいなかったし、青みくるのネックレスや天空スタジアムからの夜景を見せても大丈夫だろう。全員席についたところで司会から古泉がマイクを受け取った。
「会に先立ちまして、ここにいる皆様に紹介したい方がいます。間接的ではありますが、このドラマに大きく関わってくださった方をお呼びして参りますので、少々お待ちください」
既に誰のことを言っているのか察しているスタッフが大多数のようだ。音響で主題歌をアレンジしたものを使っているんだ。当たり前か。エレベーターが開いてライブ用のドレスを身に纏った青みくるが現れた瞬間、撮影スタッフ、俳優陣全員から盛大な拍手が送られた。古泉の誘導に従って、監督や脚本家、主演女優たちの座っているテーブルについた。青みくるの紹介を終えた古泉の更なるマイクパフォーマンス。
「そして、もう一方。『副社長の撮影終了祝いを社長がやらなくてどうする』と映画の告知の過密スケジュールの中、秘密裏に本社に戻って来てくださいました。今日は社長自ら料理を振る舞っていただけるそうです。皆様、宜しくお願いします」
周りからの拍手を受けて、四方に一礼。司会者が乾杯の音頭を取った。催眠をかけたみくるや青佐々木、青OG達が降りてきて一品目が運ばれていく。カメラに映らないという催眠をかけたネックレスも話題にはなったが、青みくるが拒否しても尚強引に見せてくれという人物もいないし、どうやら問題なさそうだな。報道陣がどれだけアホなのかというのが良く分かる。今日かかってきた電話はどうなのか、結局冊子はできたのか、そういえばあのアホはまたガリガリ君に戻っているのかなど、気になることは多かったが、会が進むにつれてどうでもよくなっていった。監督や脚本家の挨拶、古泉や主演女優の挨拶、青みくるのパフォーマンスを無事に終え、すべての料理を出したところで祝賀会も終盤。最後に天空スタジアムからの夜景を一望して終わりを迎えた。やれやれ……古泉が羨ましくなってしまった。俺もさっさと告知を終わらせてしまいたい。せめてアフレコで日本に戻ってきているときくらい試合に出てもいいだろう。子供たちからの要望もあったことだしな。

 

 81階のフロアに戻ると既に青ハルヒ達が夕食にありついていた。俺の席にも夕食が配膳され、横にはようやく完成した男性誌と女性誌の両方が置かれていた。気になったのは無論アクセサリーの特集がどうなっているのかということとその値段だ。あまりに安過ぎても偽物ではないかと疑いをかけられてしまう。そのときはそのときで本物だと確認させればいいだけなんだが……まぁ、とにかく中を見て確認すればいいだけのこと。あまり行儀がいいとは言えないが、食べながら冊子のチェックを開始した。アクセサリーの方は俺や青俺がデザインしたものが全て採用され、青俺のデザインでアレンジを加える必要があると朝倉が話していたのはどうやら青朝倉のイヤリングらしい。流石に餅巾着の形に削ったものを出すわけにはいかなかったようだ。宝石の種類や形状は変えられていたが基本的にはほぼ同じ。デザイン課で考えられたネックレス、イヤリング、結婚指輪などが所狭しと並び、こちらの世界のように店舗まで確認しに来なくても、首回りとチェーンの長さでおよそどのくらいの位置になるのか、指輪のサイズの確認の仕方など細かに掲載されていた。男性誌は例の二つで一つのネックレスとその他アクセサリー、結婚指輪、婚約指輪。加えて『女性にプレゼントするなら』という見出しで女性物のアクセサリーが掲載されていた。値段も相応の価格からおよそ三割程度安価になった数字が記載されていた。相変わらず、文句のつけどころが無い。
「いや~ようやく終えることができましたよ。ディナーの準備から片付けまで、色々とお手数をおかけしてしまってすみませんでした。明日から本格的にこちらの仕事に参戦することができそうです」
「こっちも早く告知を終わらせて、さっさと日本代表と試合がしたいと思っていたところだ。こんな言い方をするのも失礼にあたるが、例のパーティに呼ばれているせいで、折角天空スタジアムがあるのにSOS団の年越しライブができやしない。まぁ、代案として日本代表の年越しディナーなんて話も出ていたが、年越しライブで天空スタジアムを使わせてくれなんて電話が、これからかかってきそうだな」
「ええ、フジ系列は特にと言ったところでしょう。今回の一件で社長の謝罪が無ければ天空スタジアムは使わせないと知らしめましたからね。近日中に他のTV局が記者会見を開いてもおかしくありません。明日からの引っ越しも手早く終わらせて僕も練習試合に参加したいですよ。青チームのOG達の修行の方はいかがですか?」
「キューブの拡大・縮小の修行も始めたばかりだし、引っ越しの方は無理だろうな。テレポートも一人なら大丈夫でも多人数となると難しいはずだ。まぁ、こっちのOGも今までやって来なかった分両チームの差はほとんどないし、入れ替わったとしてもツインタワーで商品を並べる作業になるはずだ。ところで、ドラマの告知関連でバラエティ番組に出るようなことは聞いているのか?」
「それが、まだ何も。ドラマの放送もようやく中盤に差し掛かったところですから当然です。どんな番組になるのかによって青僕と僕のどちらが出るのか決めることになりそうです。こういう面では、ボードゲームの強弱がはっきりしている方が分かりやすくていいくらいですよ」
「自分が弱い方だと分かっていて、よくそんなに堂々と発言できるわね。まぁ、こっちの古泉君も違う意味で堂々としているけど……」

 

俺たちの話を聞いていた青OG達が青ハルヒの発言に頷いていた。というより、食べ終わったのならここに居座らなくてもいいだろうに。確かに傍目から見ればこの会社のTOP3の会話に見えるかもしれないが、そんなもの俺も古泉も青ハルヒもこれっぽっちも気にしちゃいない。どこぞの社長と一緒にしないでもらいたいもんだ。
「それが事実ですからね。いくらお二人のためとはいえ、宝石をあそこまで知り尽くしていたのを目の当たりにしたときは呆れましたよ。あなたからもらったエネルギーさえあれば、アレキサンドライトもレッドダイヤモンドも自分一人で採りに行くことができたはずです。あれだけの知識を持っていて、どうしてお二人にプレゼントしなかったのか未だに疑問を感じているくらいですよ」
「あたしも黄あたしも物でつられるようなタイプじゃないからかな。あんたからの物なら別だけど……」
「ハルヒの方は大分嫉妬していたみたいだぞ?『20億』と『世界一』って辺りで特に…。かといって青佐々木に渡してしまった以上、同じものやそれと同等くらいじゃ満足しそうにないけどな」
「あんたね!今あたしが言ったばかりなのに、どうしてそんな発言が出てくるのよ!『あんたからの物なら別』だって言ったじゃない!」
「何だ、自分のことを言っていたもんだとばかり思っていたぞ。こっちのハルヒも含まれていたのか。あぁ、そうだ。年末のパーティに着て行くドレスが決まったら教えてくれないか?それに合ったアクセサリーのデザインを考えたいから。肌身離さずつけていて欲しい気持ちもあるんだが、ドレスとアクセサリーが全然合わないんじゃな。かといって、映画のヒロインのように、一年に一度着るかどうか分からなくなるくらいの服をもっているのもどうかと思うぞ?」
「ホントに!?んー…でも、黄あたしのイヤリングの方が先なんじゃないの?」
「青有希に渡すものを考えていたら青朝倉に似合うデザインを思いついたってのと一緒だよ。佐々木たちの研究もそうだし、みくると青ハルヒの女子高潜入捜査の件もそうだ。違う事を考えていたときの方が閃きやすい。どの道青ハルヒにも渡すつもりだったんだ。どっちが先かくらいで文句を……言う奴か、アイツは。とにかく、『ウェディングドレスでも着るの?』と聞かれてしまうようなものだけじゃなくて、オールマイティなものを渡したいというのは本当だ。まだ時期としては早いが、決まったら教えてくれ」
「あなたの正妻ということもあるでしょうが、一番でないと気が済まないのは確かですね」
「ところであんた、黄あたしやみくるちゃん達と個室に入って一体何してるのよ!?」
「ん?んー…ここで隠してもどの道バレそうだし、話してしまうか。古泉の結婚式の式場探しだよ。俺たちのときは古泉に厳選してもらった中から選んだし、ハルヒも『そんなのどこだっていいわよ!』なんて言いそうだったからな。そういう意味じゃ夫婦の時間を持つことができなかった。だが、古泉の式場となれば話は別だ。冊子を見ながら、世界各国の式場でいいところがないか探しているだけだ。もし古泉には合わなくても、ハルヒやみくるたちが気に入れば、そこまで行ってみるのも悪くないしな」
「そんなことしてたの!?」「そんなことをしていたんですか!?」
「面白いじゃない!個室じゃなくてもブラインドフィールドがあればいいわよ!あたしも混ぜなさい!」
「いやはや、そんな話になっていたとは驚きました。確かに、今の我々なら世界各国どこの国でも可能でしょう。あなたに渡した残り五ヶ国の言語を使う国だったとしても、ハルヒさんからOKが出てしまいそうですね。いくらここにいるメンバーだけで可能とはいえ、結婚式をするつもりは二人ともありませんでしたから」
「ちょっと待ちなさいよ!『ここにいるメンバーだけで可能』って一体どういうことよ!?ここに集まるメンバーの中に黄古泉君の相手がいるってこと!?」

 

 今朝と同様、古泉ではありえない間が生まれてしまった。青ハルヒの質問に対して、もうYesと答えてしまったようなもんだ。まさか、こんなに早く次の機会が来るとは思ってなかったな。流石の古泉も今回ばかりはニヤケスマイルで固まっている。撮影も終わって、結婚式場の話が飛び出て油断していたらしい。青OG達も『とんでもない事実を知ってしまった』と言いたげな顔をしていた。
「本当……なのね?」
「参りましたね……またしても僕の方が先に失態を犯してしまったようです。すみませんが、他の方には秘密にしておいてもらえませんか?『彼女』と話した上で、近日中に発表することになりそうです。すでに彼には見抜かれてしまっていますからね」
そこまで告げてエレベーターで自室へと戻っていった。おそらくその相手が待っているに違いない。俺たちもそろそろ69階と100階に……と言いたいところだが、そうさせては貰えそうにないなぁ……やっぱり。
「ちょっとキョン!あんた、黄古泉君の相手が誰なのか知ってたってこと!?白状しなさいよ!!」
「別に今じゃなくたっていいだろ?『近日中に発表することになる』って本人が言ってるんだ」
「じゃあ、どうしてあんたがそんなこと知ってるのよ!?あんたまさか、サイコメトリーで秘密を探ろうとしたんじゃないでしょうね!?」
「いや、探ろうとしたわけでも自動で発動したわけでもない。さっきも古泉が『またしても僕の方が先に失態を犯してしまった』って言ってただろ?周りはそこまで気にしていなかっただろうが、俺にはそのたった一回のミスに違和感を覚えたってだけだ。青俺が古泉は結婚指輪を作って隠していると言っていたのよりもっと前だ」
「ってことは、あんたがダイヤモンドやプラチナを仕分けているときには、黄古泉君は結婚指輪を作るつもりでいたってことじゃない!!」
「そうなるな。まぁ、俺からはこれ以上話すわけにもいかん。本人たちが言う前にあまり騒ぎ立てるなよ?俺がそのことに関して触れなかったことまで全部無駄になってしまうからな」

 
 

…To be continued