500年後からの来訪者After Future7-16(163-39)

Last-modified: 2016-12-16 (金) 20:51:45

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future7-16163-39氏

作品

セカンドシーズンの撮影も終えて、いよいよ待ちに待った大晦日の日、全員で年越しを祝った後、妻やOG達との姫始め。そしてついにハリウッドでの年越しパーティが始まった。本マグロの踊り食いをパフォーマンスとして体験させ、パーティが本格的にスタートした。何度同じ説明をしたかは忘れたが、これが最後になるだろうな。だが、翌朝の分も含めて、パフォーマンスとしてはまだ四分の一にも満たない。寿司の味を体感して小皿をごっそりと持って行かれたがそのくらい今までにもあったことだ。有希に字幕を付けることと、翌日のパフォーマンスはTBSには送らないことをテレパシーで伝えて次のパフォーマンスに入った。

 

 みくるの煎れたお茶の影響で、椅子よりも畳の上に座布団を敷いた方が合うんじゃないかと思うほど、和んでいるハリウッドスター達。次のパフォーマンスにやや入りにくい部分もあるようだが……まぁ、いいか。ステージの上に立った俺にハリウッドスター達の視線が集まりカメラが近づいてきた。
「それでは、ここからが本番です。先ほども申し上げましたが、今年のパフォーマンスは日本の文化を伝えるパフォーマンスです。今皆様が召し上がっているお寿司もその内の一つです。俺の映画の試写会後にも披露しましたが、世界中で有名になった日本の漫画の世界観を現実のものにしてご覧にいれましょう。やることは至って簡単です。街を一つ粉々に破壊して、元に戻します」
『街を破壊する!?』
「そんなことをしたら、その街の人たち全員死んでしまうわ!」
「ご心配には及びません。その街の方々には一時的に避難していただきます。これだけ大掛かりなパフォーマンスです。つい先日、一度リハーサルをやっているのですが、『街が消えた!』とか『一つの街が消し飛んだ!』などというニュースをご覧になった方はいらっしゃいますか?今このパーティをTVで見ている皆さんも思い出してみてください。避難勧告が出た地域はありましたか?……あるはずがないんです!俺が勝手にその街の人々を避難させて、勝手に街を破壊し、元に戻しました。今からその光景、その映像をとくとご覧にいれましょう。はっきり言っておきます。絶対に安全です!これだけ言ってもおそらくパニックになってしまうでしょうが、死者どころか掠り傷一つ負った人間すら出さずに元に戻してご覧にいれましょう」
「本当に誰も傷つかないの?」
「ええ、パニックにならなければ、絶対にそんなことはありえません。元に戻した後、街を回っていきますので皆様もファンサービスをお願いしたします。さて、じゃあどうやって街を破壊するんだ?という疑問を持った方もいるかと思います。先に説明してしまいましょう。カード一枚で街を消し飛ばします」
『カード一枚ぃ!?』

 

「カード一枚きりでどうやって破壊するというのかね!?壁どころか窓ガラス一つとして壊せないはずだ!」
「カードゲームで世界的に有名になった日本の漫画を現実のものとしてご覧にいれましょう。このデュエルディスクを使ってね」
「キョン、それってもしかして『King of the Game』に出てくるヤツかい?」
「ご存じの方もいらっしゃるようですね。ですが、実際にご覧に入れた方が速そうです。今回破壊する舞台にこれからテレポートします。空中ですが、絶対に落ちませんので慌てることのないようにお願いします」
これから始まるパフォーマンスに皿や飲み物をテーブルに置き、ハリウッドスター達が心の準備を始めている。テレポートした先はアメリカ支部周辺。さっき仕掛けておいた膜と閉鎖空間で見事に積乱雲ができ、雷が鳴り響いていた。
「こんな街の中心部を破壊するって言うの!?あなたの会社もあるじゃない!」
「よくご覧になってください。どの建物にも明かりがついていません。俺が強制的にこの地域に住む方々を避難させました。これで一人たりとも怪我人を出すことはありません。今この映像をご覧になっている方もご安心ください。知らない間に避難した状態なんです」
「どうして?本当に明かりが一つも灯ってないわ!?」
「カード一枚で一体どうなるんだ!?誰も怪我しないというのならその瞬間を見せてくれ!」
「それでは参ります。俺のターン、ドロー!くくく、これはいいカードを引きました。今ここにいる皆様と、この映像をご覧になっている皆様に神をお見せしましょう。クレイジーゴッドの名のもとに神を召喚する!降臨せよ、オ○リスクの巨神兵!!」
デュエルディスクにカードを装着してバチバチと静電気が走る。黒い積乱雲が渦を巻き、青白い光がいくつも差し込んでくる。しばしの間をおいて巨神の足が雲の下に現れ、次第に街に降りていく。

 

「本当に神が降臨した……?」
「こんなことが現実にありえるのか!?」
ありえるんだから仕方がない。使っているのは情報結合とサイコキネシスのみ。オ○リスクが地上に降りただけで建物が踏みつぶされている。その光景に腰を抜かす女性もいたようだ。さっさと攻撃して元に戻すとしよう。
「オ○リスクの巨神兵の攻撃!アメリカ支部に鉄槌を下せ!ゴッ○ハンドクラッシャー!!」
オ○リスクの眼が光り、右の拳でアメリカ支部に正拳を一発。アメリカ支部を残して周りの建物が粉々に消し飛んだ。因みにデュエルディスクはこの神のカードが出た当時のもの。俺もその後の話は実際のところ知らないからな。
「隕石でも落ちたのか?どうしてあのビルだけ破壊されずに残っているんだ!!」
「神の一撃をもってしても、我が社のアメリカ支部は破壊されないと証明されたようなものです。では、今から街を元に戻してご覧にいれましょう。心の準備はよろしいですか?」
「駄目だ、これ以上見せられたら俺はもう立っていられそうにない!」
「本当に元に戻るのか早く見せて!街の人たちの安全も確認したいわ!」
「では、いきます。3……2……1……0!」
『!!!』
「ははは……やることがクレイジー過ぎる……まさにクレイジーゴッドだ!」
「見て!さっきまで暗かったのに今度は明かりが灯っているわよ!」
「では、街の人々の様子を見てまわることにしましょう。ファンサービスもお願いしますよ?」
閉鎖空間をゆっくり移動させながら街の人々の様子を伺うと、窓を開けて手を振っている人達も見てとれる。ハリウッドスター達もようやくこのパフォーマンスを受け入れることができたようで、少しずつ笑顔が見られるようになった。街のあちこちに手を振っていた。

 

「さて、今宵のパフォーマンスをこれで終わりにしようと思ったのですが……街の上空にこんな暗雲が漂っていては折角の年越しも気分が台無しです。全て吹き飛ばしてしまいましょう」
「全て吹き飛ばすって、またカードを使うのかしら?」
「そうですね……それだけではあまり面白くありません。おっと、一ついい案を閃きました。今度はまた別の漫画をご紹介することにしましょう。先ほどのものよりもより世界的に有名になった日本の漫画です」
「遊戯○よりさらに有名な日本の漫画……?」
「今からちょっとした変身をします。何の漫画か当ててみてください。ついでに声帯も日本のアニメのものに変えてしまいましょう」
『声帯を変える!?』
「日本のアニメじゃこんな声なんだ。知ってる奴いるか?……どうやらいねぇみてぇだな。じゃ、変身するぞ?」
ハルヒのオーラを全身に廻らせて力を解き放った。
「Super…サ○ヤ……ジン?」
「ご名答。ちなみに、こっちの方にもなれるんです」
一旦ハルヒの力を押さえ、催眠をかけた状態でもう一度力を解放した。
「はっ!」
「嘘だろ……今度はSuperサ○ヤジンGodのSuperサ○ヤジンなんて……」
「ただ見た目が変わっただけではありません。パワーも上がっているんです。そうですね……試しに野球のボールを投げてどれくらいのスピードが出るか見てもらうことにしましょう。スピードガンでどなたか球速を測ってもらえますか?」
「キョン!私にやらせて!140マイルの投球するんでしょ!?」
『140マイル!?』
「そこまで出せるかどうかはちょっと自信がありませんが、思いっきり投げてみることにします。横で見るよりは後ろで見た方が分かりやすいと思いますよ?」

 

影分身はパーティの最初に見せているし、今さらキャッチャーが現れたところで驚くこともない。俺の指示通りに素直に従い、ほぼ全員がキャッチャーの後ろに移動した。まずは第一球。
「138マイルよ」
『138マイル!?』
「凄い。私にはボールが光ったようにしか見えなかったわ!もう一回投げて見せて!!」
なら、ご要望にお応えしてもう一球。
「ひゃっ、141マイル!?」
「じょ、冗談じゃねえぜ。こんなものメジャーリーガーでも打てるかどうか……」
「ああ、いくらメジャーリーガーが金属バットを使ったとしても絶対に打てません。これからその証拠をご覧にいれましょう。カメラさん、バットがボールにあたるところを映していただけますか?」
影分身がバットを構えて、カメラがその瞬間を捉えようと緊張が走る。第三球、影分身がバットを振りボールに命中させた。その光景にハリウッドスター全員の歯が見える。「い――――っ」と叫びそうな口の形をしていたが、声に出ることはなかった。
『きっ、金属バットが砕けた!?』
「ちょっと待って!ボールは!?ボールはどこよ!?」
「ボールならミットの中に収まっていますよ?」
キャッチャーミットを上にあげて、手首を180°回転させた。
「金属バットをもってしてもボールの軌道すら変えられんというのか!?」
「この球に対抗できるバットを作らせてみたくなったよ!!」
そういえば、世界一のバットと言っておきながら簡単に壊れていたな。どっちの世界だったっけ?まぁいいや。
「それでは、パワーアップしたこの状態で雲を消し去ってから戻ることにします」
ジョン、代わるか?
『いい相棒を持って俺は幸せ者だよ。是非やらせてくれ!』
タッチして前に出たジョンが、声帯はそのままに必殺技を放つ。

 

『か~~め~~○~~め~~波――――――――――――――――――――――――――――――っ!!』
積乱雲を貫き、ジョンが両腕をまわすと周囲の雲も吹き飛ばされていく。
『もう一発!か~~め~~○~~め~~波―――――――――――――――――――――――――――っ!!』
今度はエネルギーをためきったところで大ジャンプ。雲がある位置まで跳びあがるとかめ○め波を放って360°回転すること数回。見事に積乱雲が消え、街中から歓声が聞こえてくる。全力のかめ○め波二発でジョンも満足したようだ。入れ替わって最後の挨拶をした。
「最後に一つ視聴者の皆さんに注意しておきたいことがあります!明日遠足や運動会だから雲を吹き飛ばして欲しいなどという電話だけはしないでください。あまりやり過ぎると農作物の採れ高に影響を及ぼしてしまいますので。では、これにて今宵のパフォーマンスを終了いたします。まだまだ料理や寿司がございますので、そちらの方もお召し上がりください。ありがとうございました」
歓声と拍手と笑いが入り混じる中、パーティ会場に戻り残りの料理に手をつけていた。今回は青ハルヒもハリウッドスター達と話をする時間があまり取れなかったかもしれん。「この後の分は俺が握る」と告げると、カクテルグラスを持ってハリウッドスターと話していた。さて、肝心なのはこの後だ。カメラマンに催眠をかけて撤収したところでSPを会場内に入らせる。SPと入れ替わりにと思っていた閉鎖空間も張ることができたからな。寿司の方は中トロや大トロも出しつくし、ハリウッドスター達の腹も満たすことができたようだ。残りは撮影を任せた有希にでも食べてもらおう。大皿に握った寿司を乗せられるだけ乗せて、余った寿司ネタは明日の朝の料理にするか、青新川さんに使ってもらうかだな。
現状維持の閉鎖空間を取りつけて本社81階にテレポートした。見れば誰でも分かるだろう。主催者がマイクを持ったところでカメラマンにかけた催眠が発動した。部屋へと戻っていくハリウッドスター達の幻影を撮影してパーティ会場を後にした。入れ替わりにSP達がパーティ会場に集まってくる。
「今日は最初から最後までキョンのパフォーマンスだと聞いていたけれど、どんなに信じられないことでも実行に移してくれるなんて、流石クレイジーゴッドの異名をもった人物だとは思わないかい?このあとは彼女にマイクを預ける。ここにいる全員の不安を払拭してくれることは間違いないよ!」

 

「えっと……なんて説明したらいいのかしら?とりあえず、これからキョンが回ってみんなに二つのものを取り付けてくれるわ。一つ目は刃物や拳銃をすべて弾き返す上に空調管理やUVカットもしてくれるもの、もう一つは低周波を浴びせて私たちの体型を維持してくれるものよ。キョン、こんな感じの説明でいいかしら?」
間違ってはいないが、実際にやって見せないと駄目だろう。SP達も含めて全員に取り付けた閉鎖空間に青い色をつけた。
「今、青く色をつけてみました。その直方体が半永久的に皆さんについて周り、空調管理やUVカット、そして皆さんが今不安に思っていらっしゃるであろうテロ対策のものです。どうなるのか実際にやってみましょう。ハルヒ、すまないがステージに上がってきてくれ」
「分かった」
「見やすいように色を再度透明にします。先ほども申し上げた通り、何も無いように見えていても、ずっと皆さんの傍についてくれています。まずはナイフがどうなるか実際にやってみましょう」
パーティ前に主催者に対してやってみせたように、青ハルヒに向かってナイフを振り下ろした。数時間前と同様ナイフが折れる。
『おぉ――――――っ!』
「今度はマシンガンを乱射します。ハルヒにはあたらず兆弾になりますが、この会場の壁に埋まってしまうことはあっても、皆さんにもハルヒと同じものがついていますので絶対に怪我をすることはありません」
ガガガガガガガ………とトリガーを引きっぱなしの状態で銃弾が切れるまで撃ち続けた。無論、誰も傷を負うことは無い。
「皆さんは無事ですが、会場のあちこちに銃弾が飛び散っています。先ほどと同様、元に戻しておきましょう。次は、空調を弄ります。まずは条件を30℃にしてみました。いかがですか?」
会場全体がざわついて「暑い」のフレーズが飛び交っている。
「では、今度は条件を0℃にしてみましょう」
0℃にした瞬間に腕を組む男性、二の腕を何度もさする女性の姿が見受けられた。
「これが空調管理のシステムです。今は19℃設定で、夏は涼しく、冬は暖かい。UVカットについては実際に太陽の当たるところで数時間居ていただかないと実感は得られないでしょうが、本当かどうかは機会があるときに試してみてください」

 

「次は皆さんに取り付けた低周波についてです。今の状態であれば、寝るときも何も気にすることもなく眠ることができるでしょうが、これから少しずつ強くしていきます。痛くなる一歩手前でストップと叫んでください。では、まいります」
「これが低周波……?」
「全身の筋肉に力が入っているみたい」
「すっ、STOP!」
「ストップの声がかかりましたので、最初の状態に戻しました。先ほどの空調完備と同様この低周波にも条件が付けられています。『その人物の理想とする体型を維持する』という条件をつけています。何も感じなくとも24時間今の低周波でトレーニングをしている状態ですので、極度の食事制限や過度なトレーニングをする必要はもうありません。自分の理想とする体型ですから、脂肪の付きやすい二の腕やウェスト、太腿に余計な脂肪が付くことなく、逆にバストやヒップなど、強調したいところはそのままの状態で低周波が浴びせられるようなこともありません」
説明を終えると、特に女性陣の歓声というか甲高い声が聞こえてきた。俺に向かって抱きついてきたり、両手を掴んできたりと女性陣の反応は様々だったが、パーティ前の張りつめていた緊張の糸がとけたようで何よりだ。俺もハルヒも他のハリウッドスターとの会話を楽しみながら、指定された部屋へと辿り着いた。

 

「すまなかったな。ハリウッドスターと喋る時間をあまり取ってやれなかった。明日は料理さえ出してしまえば俺のパフォーマンスを見せるだけだ。存分に話してくるといい」
「あれくらいがちょうど良かったわ。話のネタが尽きるところだったわよ!ところであんた、今夜も寝ないで仕込みをするの?さっき来たときだって一時間ちょっとしかジョンの世界に来なかったじゃない!」
「ほとんどはもう完成しているからそのまま出すだけだ。あとはパンを焼き立てのものにしたいのと、寿司ネタの残りをカルパッチョにする程度だな」
「それくらいならあたしがやるわ!あんたは休んでなさい!」
「それがな、興奮が収まりそうにないんだ。これで有希が今日のパフォーマンスが収録されたDVDを各TV局に送っているはず。例のイベントの前段階として説明が必要だった。それがようやく出揃ったんだ。それに、異世界支部の運営も始まるし、何より双子は四月から小学一年生だ。バレーの方も俺が出るのは二月のオンシーズンになってから。二月三日だけは俺一人で戦う。零式(アラタメ)を見せるのと、これまでになかった三枚ブロック、ダイレクトドライブゾーンは一月末までに全員ができるようになってもらう。さっき見てみたら、青古泉よりもあの変態セッターの方が読みづらくなっていたからな。あそこまで飛躍的にレベルを上げているとは思わなかったよ。ENOZや青朝倉の方も見てみたい。おっとDVDを鶴屋さんにも送ってもらうようみくるに伝えておかないとな。こんな風に使わせてもらったってな。女子高潜入事件と最終回のDVDも一緒に送ってしまうのも悪くない」
「どっちの鶴ちゃんも最終回のトリックを解明したいんじゃない?第九話だけにしておいた方が良いわよ!」
「それもそうだな。ところで、福袋がどうなったか聞いているか?」
「あたし達の世界の方でも大行列ができていたらしいわ。カシミヤのコートが当たった客は大喜びしていたそうよ」
「毎日ビラ配りに行っていた甲斐があったな。一段落して寿司をつまんでいる頃だろうし一旦戻るか?どうせ眠れないだろう?」
「あたしは眠れなくてもあんたは寝なさい!何を準備しておけばいいかさっさと情報を寄こしなさいよ!黄古泉君だって手伝ってくれるはずよ!」
「仕方がない。お言葉に甘えさせてもらうとしよう」

 

 青ハルヒの提案のおかげもあり、四時間ほど眠ることができた。キューブの中身をパーティ会場にテレポートすると、焼きたてのパンの香ばしい匂いや自家製コーンスープ、ビーフシチューのいい匂いが漂っていた。あとは昨日残った寿司ネタのカルパッチョにクラブハウスサンド、パンに塗る自家製のジャムにハンバーグ等々。ワインに合う朝食が出揃っていた。会場内に足を踏み入れたハリウッドスター達が料理を鼻で味わっていた。
「ん~いい香ばしくていい匂い。早く食べてみたいわ!皆早く来ないかしら?」
次第にハリウッドスター達が集まっているが、女性陣の怒りのボルテージがどんどん上がっていく。
「遅いわよ!女性をいつまで待たせるつもりよ!いつまで経っても料理が食べられないじゃない!」
遅れてきた男性ハリウッドスターが怒られていた。主催者がマイクを持って朝食が始まる。
「みんな、おはよう!不安も払拭されて、昨日はよく寝られたんじゃないかい?僕も早く食べたくてしょうがないんだ!キョン、何か皆に説明しておくことはあるかい?」
マイクを受け取って軽く説明を始めた。まったく無いわけでもないからな。
「今漂っているパンの香りはつい先ほど焼き上がったものです。これから切り分けますので、焼きたてのパンの味、食感を楽しんでいってください。自家製のジャムも何種類か用意してあります。そちらも是非お試しください。尚、ジャムが残った場合は、持ち帰りたいという方に差し上げたいと思いますので何かありましたらお知らせください。それでは、存分にご堪能ください」
マイクを主催者に返して、パン用の包丁で小分けにしていく。すでにパンを食べようと小皿を持った女性たちが列を作っていた。フランスパンだけでも、胡桃やチーズ、チョコチップを混ぜ込んだものなど数種類を青ハルヒに焼き上げてもらっていた。パンを切り分けるだけでここまで時間がかかるとは思わなかったが、ジャムも含めて焼きたての自家製パン&ジャムとワインを堪能していた。コーンスープやビーフシチューの方も反応は上々。青ハルヒも男性ハリウッドスターに囲まれて楽しそうに話していた。様子を見計らってステージに上がった。

 

「それではそろそろパフォーマンスの方に移りたいと思います。昨日とは違って、見て楽しむパフォーマンスになるはずです。テーブルも一緒にテレポートしますので小皿や飲み物を持っていても構いませんが、このあと暗闇に包まれますのでご注意ください」
「暗闇に包まれるって一体どういうことかね!?」
「今回は俺はただの案内役に過ぎません。パフォーマンスを見せていただくのはこの中の誰かになるはずです。海面下4000mの深海へと皆様をお連れします。そこにあるものが眠っています。明かりはつけますが、しばらくの間、何も見えなくなりますのでご注意ください。では、参ります」
各々が何か言いたそうな顔をしていたが、一瞬にして闇に飲み込まれた。会場にいた全員がざわついている。
「本当に何も見えないわね。明かりはつけられないの?」
「今から照明をつけます。周りに奇怪な深海魚がいるかもしれませんので、ご注意ください」
ハリウッドスターたちの表情は確認できなかったが、静まりかえったところで明かりをつけると、全員の視線が豪華客船のなれの果てに向いていた。
「これ……もしかしてタイタニック号?」
「ご名答。この船を題材にした映画の主役を演じたお二人がいらっしゃることですし、あの映画の名シーンを本物のタイタニック号で再現していただきたいと思っているのですが皆さんいかがでしょうか?」
俺の提案に歓声が湧き起こり二人に向けて拍手が送られた。まさか本物のタイタニック号であのシーンをやれと言われるとは夢にも思ってなかった二人があっけにとられ、TV局のカメラはここぞとばかりにカメラを近づける。閉鎖空間を拡大して浮上、船首に二人を乗せたところで準備は整った。あとは閉鎖空間を透明にしてカメラマンが撮影すればいい。
『有希、このシーンを映画の同じシーンと同時に見せて編集してくれ。映画のテーマ曲も入れてな』
『分かった』
以前ハルヒ達とやったときのように、女優が両手を広げその後ろから男性俳優が抱きつく。約20年ぶりになるのか。映画が放映されたときに、いつか本物のタイタニック号でもう一度とアルタイルに向かって願い事をしていれば、その願いがようやく叶ったというべきだろうな。名シーンを演じ終えた二人に周り全員から拍手が送られた。

 

「さて、ここからが俺のパフォーマンスです。これから本物のタイタニック号と一緒に浮かび上がり、海上へと移動します。そんなことが可能かどうかは見ていただければお分かりになるかと思います」
タイタニック号にも閉鎖空間を取りつけて二つ同時に浮かび上がっていく。ワインをこぼさない様に注意しないといけないが、何せ4000mも浮上しないといけないんだ。一分で1000mだな。
「ははは……また腰が抜けてしまいそうだ。100年以上経った今でも誰もできなかった偉業を成し遂げようっていうのか?」
「タイタニック号をサルベージするつもり?」
「その通りです。海上に出るまでの間に、一つ皆さんに提案したいことがあります。タイタニック号をサルベージしたあと、来年のパーティまでに俺が船を修理しておきます。当時は豪華客船だったとしても、今はそうでもないかもしれません。多少手を加える部分もあるかと思いますが、来年はこのタイタニック号に乗って一泊二日の旅に皆様をご招待致します。タイタニック号の無念を我々の手で晴らしてみせるというのはいかがでしょうか?」
「凄いよ!本物のタイタニック号でクルージングなんて夢みたいだ!豪華客船の客室にぜひ泊めてくれないか!?」
「私もよ!さっき二人がやってみせたシーンを私もやってみたいわ!」
「キョン、そのときはわたしの相手役はあなたがやってくれない?」
ようやく海上に辿り着き、海水でよく見えずにいたタイタニック号が本来の姿を現した。キューブで縮小して俺の掌へと収まった。
「では、ここにいる皆様と俺との約束です。来年の年越しパーティはこの会場に集まってからタイタニック号の船上に移動してディナーを満喫する。それまでに俺が修理をしておくということでよろしいでしょうか?」
俺たちならここで全員からの『問題ない』が炸裂するんだが、盛大な拍手と歓声をもってOKだと返ってきた。会場に戻り料理を堪能すると、女性陣が自家製ジャムの取り合いをしていた。情報結合した小瓶に均等に振り分け、特に人気の高かった苺ジャムはじゃんけんで決めることになった。
『別に今日争わなくても告知している間にいくらでも作れる。他の人たちに譲ってやってくれ』
『もう!それを早く言ってよ!あぁ……でもあと数日であなたとの生活も終わってしまうのね。なんだか胸が痛くなってきたわ。また一年間待たなくちゃならないなんて……』
『残りの数日を大事に過ごすことにしよう。この後もな』

 

 パーティに参加した全員と挨拶を交わした後、影分身を残して青ハルヒと本社へテレポート。影分身はこのまま空港へと逆戻りだ。
「ただいまぁ」
『おかえり~!』
「ちょっとあんた!見に行ったついでにサルベージまでしてくるなんてどういうつもりよ!これじゃ、あたし達来年の正月が終わるまで乗れないじゃない!!」
「おまえ、英語力が下がったんじゃあるまいな?俺は『タイタニック号の無念を晴らす』とは言ったが『処女航海に出る』なんて一言もいってないぞ。まずは俺たちで行くに決まっているだろうが!」
「それもそうね。あんまり意味が変わらないような気がするけど、それならいいわよ」
「それで、福袋の方はどうだった?異世界の方も青ハルヒから行列ができていたと聞いたんだが……」
「どの店舗でも売り切れて多くの方々に謝罪をしていましたよ。これが今日の新聞記事です。今頃こういうのもどうかと思いますが、もはや、毎年恒例となりそうですね」
編集したDVDを送ったところとそうでないところでの差が歴然だな。DVDを送った二社はオ○リスクの攻撃途中のシーンを静止画として載せ、他の新聞社は俺の超サ○ヤ人ブルーになった姿を乗せていた。『224km/hの投球の秘密が明らかに!超サ○ヤ人ブルーでパワーアップ!』という見出しや『オ○リスクの巨神兵の攻撃!アメリカ支部に鉄槌を下せ!ゴッド○ンドクラッシャー!!』と俺のセリフをそのままパクったもの、『「遠足や運動会の日に雲を吹き飛ばして」は駄目!?驚異の超サ○ヤ人ブルーかめ○め波!!』等々、英字新聞の方は超サ○ヤ人ブルーになった俺の写真に『CRAZY GOD became SSGSS!』と書かれていた。「SスーパーSサ○ヤ人GゴッドのSスーパーSサ○ヤ人」で「SSGSS」らしい。要するに、クレイジーゴッドが超サ○ヤ人ゴッドの超サ○ヤ人になったってことだ。

 

「有希、DVDはどうなった?」
「TBSを除くTV局と新聞社二社には送付済み。あなたの注文通り編集した」
「助かったよ。これで来年度のイベントに繋げられる」
「キョン先輩、朝の分は別に送らなくても良かったんじゃ……?」
「ちゃんと謝罪したところとそうでないところの区別をつけたかったのと、ニュアンスの違いばかりのものを字幕に載せられたくなかった。ついでにこっちからすでに編集した映像を送れば、それ以上何もできないだろう?有希の編集に敵う奴なんていやしない」
『なるほど!』
「それとみくる、今朝の件はすまなかったな。ヒロインだけでなくあの場にいた全員に紹介したかったんだ。それに、女子高潜入捜査事件と最終回の第九話を鶴屋さんに送ってみたらどうかなんて話を青ハルヒとしていたんだが、鶴屋さんと連絡をとってみてくれるか?多分ニュースのVTRでも見ていると思うが、鶴屋さんが書いてくれた字をああいう形で使わせてもらったことと、ドラマの中の鶴屋さんはみくる達に催眠をかけて役を務めたことも伝えて欲しい」
「それはいいけどキョン君、次に『あたし』を怒らせたらどうなるか分かっているわよね?」
「ああ、分かってるよ。今朝の償い分は今夜にでも返させてくれ。それにしても刑事役が随分身についてしまったようだな?脚本さえ出来上がってしまえばサードシーズンも撮影できそうだ」
償い分は今夜返すと言ってみくるが黙り込んでしまった。何を妄想しているんだか。
『くっくっ、それならサードシーズンの脚本はすべてキミが書いてくれたまえ。僕は研究の続きと週末にはホテルに出向かなければいけないからね』
「昨日接客にも向かわずにここで古泉たちと話していた奴の言えるセリフか!?今日はちゃんとレストランにいったんだろうな?俺の影分身はパフォーマンスにしか使ってないんだ。明日になって人手が足りなかったなんて言われかねん。明日くらいはおススメ料理を作ってもいいかもしれん」
「それならあたしと黄古泉君で作っておくから、あんたはさっさと寝なさい!どうせ香港までの飛行機で時間があまるんでしょ?」
「まだリムジンに乗っている最中だ。空港に着くまでに書き初めでも書いてしまうか」
「それなら99階に道具をみくるちゃんに用意してもらったから、青あたしと二人でそれを使いなさい」
「配慮が隅々まで行き届いている妻で本当に助かる。終わったらみくるに返す」

 

 どの道シャンプーやマッサージをしないと寝られなかったんだ。青ハルヒも何を書くかは決まっていたらしい。筆を洗って用具一式をみくるに返しておいた。
「ところでみくる。償い分を返したいんだが何がいい?さっきは黙りこんで色々と考えていたようだったからな。俺にも教えてくれないか?」
「えっ!?あっ、でも、あの、そんなの恥ずかしくて言えません!!」
「じゃあ、どうして欲しかったのかサイコメトリーしてしまうが、それでもいいのか?」
返事は返ってこなかったが、みくるが首を縦に振った。シャンプーを続けながらサイコメトリーで情報を引き出す。
「分かった。なら今日は個室に入ろう。望みどおりにしてやるよ」
全身マッサージを終えたみくるをお姫様抱っこで抱えて個室へ。俺の分身と触手がみくるの秘部を貫き、もう二体影分身を増やして両乳房から母乳を搾り、うち一体の触手がみくるの後ろの穴を更に押し広げ、最後の一体の触手は秘部の突起に吸いついて離れようとはしなかった。限界ギリギリの刺激の中で、みくるが俺の分身を口に咥えていた。影分身だからまだ良かったがみくるが絶頂に達するたびに、俺の分身が噛みちぎられてしまいそうな思いをしていた。そしてもう一人、お姫様抱っこで抱きかかえて個室に入った。
「くっくっ、周りから見られずに済むから恥ずかしくなくていいけれど、急にどうしたんだい?」
「赤ん坊が出てきやすいように今のうちから道を広げて通りやすくしておくんだよ。貴洋が生まれたらハルヒやみくる達のようなトレーニングをおまえにもやってもらうからそのつもりでな」
「目的は分かった。でも一体何をするんだい?」
「やってみせた方が早い」
尾が二本の人柱力ではないが、片方はいつも通り後ろの穴に入り込み、もう片方は普段俺の分身が出入りしているところへ入ると少しずつ太くなっていく。
「キョン、これ以上は苦しいよ」
「ならこれで一旦止める。慣れるまでは後ろと胸だけの刺激で我慢してくれ」
「それだけでも十分すぎるくらいだよ。少しでも私の苦しさを和らげてくれないかい?」
「ああ、分かった」

 

 69階では、ベッドの情報結合を解除するところをみたOG達からブーイングが浴びせられた。変態セッターは当然としても、それ以外のメンバーもとは驚いたな。
「だったらフロアの配置を少し変えよう。ベッドと温泉の両方を情報結合して中央に二つを並べる。ベッドの方は俺が遮音膜を張っておくがブラインドフィールドは無しだ。その分、雰囲気がでるだろう?毎日あのベッドじゃ嫌だろうし、そのまま寝たい奴もいるはずだ。そのときは個人のベッドで眠ればいい。それでいいか?」
『問題ない!』
「しかし、昨日は特別だったからだが、まさか周り中からクレームが来るとは思わなかったぞ。精々アイツ一人だけだと思っていたからな。100階には行けなくともここでなら周りに見られてもそこまで気にならなくなった……か?」
「キョン先輩、私たち青私に似てきちゃったんですか!?セッターとしての実力もほとんど変わらなくなっちゃいましたし……」
「ああ、ジョンの世界に行ってあれには俺も驚いた。青古泉より読みにくくなっていたからな。だが、正確さや読みにくさで対抗するならまだまだおまえの方がレベルが上だ。妻二人は結婚してからまだ四か月しか経っていないし、夫婦の時間を大切にしたいのは当たり前。それを羨ましいと思っているのと、あとは誰もが持っている本能ってだけだろ?ようやく次の段階に入った、それだけの話だ。もう交代してもバレないだろう。たまにはホテルで料理作ったり、店舗の店員をしたりするのも悪くないんじゃないか?自分が日本代表の一員だってことに間違いはないんだ。プラス思考で考えていけばいい。いいライバルができたんじゃないか?」
「……そうですね。先輩が言ってくれたように捉えることにします。私も青私と同じようにして欲しいです!」
「お安い御用だ」

 
 

…To be continued