500年後からの来訪者After Future7-17(163-39)

Last-modified: 2016-12-29 (木) 14:24:44

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future7-17163-39氏

作品

ようやくだ。ようやく年越しパーティが終わり、告知もあとは香港、フィリピン、台湾、中国、モンゴル、そして日本のみ。日本ではアフレコしたときにジョンが中尾さんと交わした約束のパフォーマンスを見せられる。妻との時間を堪能した後、久しぶりにジョンの世界に最初から最後までいられるという嬉しさをどう現していいのやら自分でもよく分かってない。バレーのコートも一つ分増やして派手に暴れてみたが、気付いた頃にはほぼ全員コートの中で横になっていた。

 

「どうした?誰でもいいから相手になってくれ」
「無茶言うんじゃないわよ。あんたの変人速攻に全員攻撃で闘ってたら、こっちが先にバテるに決まってるじゃない!」
「同感です。攻撃の後は、全身の力を使ってブロックに入りたいところですが、それすら許してもらえないんですから。全身のバネも使わないで、そのまま飛ぶだけではブロックになりませんよ。しかし、それでもセットを取られてしまうというのは納得がいきませんね」
「何が何でもあんたに勝ってみたくなったわよ!」
「問題ない。次は取る」
『くっくっ、済まないが僕はしばらく観戦させてもらえないかい?』
「わたしも、負けっぱなしは嫌です!」
「大いに賛成したいわね。あなたの鼻っ柱をへし折ってやるわ!」
「さて、あと一人、誰が出てくるんだ?」
「フン、このあたしに決まっているでしょうが!!」
「なら、さっさと始めるぞ」
俺六人に対して、Wハルヒ、有希、朝倉、古泉、青みくるでチームを組んだ。その後もメンバーを入れ替えながら休憩と観戦。俺は試合に参加し続け、全セット白星をあげた。翌朝の妻達の機嫌はあまり良いものとは言えなかったが、朝食で集まる頃にはいつも通りの表情を浮かべていた。

 

「さて、いよいよ告知の方も日本を入れてあと六つだ。だが、以前から懸念している通り、再度マフィアに襲われる可能性は十分ある。リムジンの手配についてはマネージャーにキャンセルしてもらった。俺自ら動かすつもりだ。もし、マフィアに囲まれるようなことがあれば、暴れたい奴は夜間にアジトを襲ってくれて構わない。サイコメトリーで得た情報はジョンにすべて預けておく。軍資金と麻薬もすべて奪ってきてくれ。これについても集約はジョンだ。無事に日本での告知と披露試写会が終わってもマフィアとの戦いは続きそうだ。なにせ、中国に至っては200万人とも言われているくらいだからな。みんながマフィア相手に暴れている間、俺は……」
『俺は?』
「寝る」
有希より短い2文字にほぼ全員がズッコケた。
『このバカキョン!そのくらい間を溜めないで普通に言いなさいよ!!今まで寝てなかった分、そのくらい当たり前よ!あんたが居ない方が暴れられる場所が増えて都合が良いくらいだわ!!』
「まぁ、そういうわけだ。襲われた時点で連絡はするが、決行は夜。時差も精々1時間だ。何の支障もない。それから、本体はリムジンの運転をしているが、料理指南の影分身以外は異世界支部の87階にいる」
「こちらの新川たちの一つ上のフロアのようだが、一体そこで何をするのかね?」
「二日間おススメが出なかった分、明日の朝は自家製パンをタダで振る舞うつもりだ。そのための調理台と窯を用意した。巨大炊飯器もあるし、寿司やカレーを作るときもそこを使うことにした。古泉や青ハルヒも必要なら使ってくれて構わない」
「カレー?黄キョン君今度はいつ作るの!?」
「作りはするが、ここにいるメンバーの分じゃない。社員と、楽団員、それに日本代表チームの分だ。OG六人も当然除外される。寿司セットと同様、社長のスペシャルランチとして出すつもりだ」
「わたし達の分は!?」
「当分作らん」
『え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!』
『キョンパパ!わたしもカレー食べたい!!』
「問題ない。あなたからの命令であれば何でも受け付ける。作って」
「なら、命令だ。半年間カレーは食べるな」
『半年間!?』

 

「キョン、キミの逆鱗に触れるようなことを僕たちがしてしまったのなら正直に謝る。理由くらいは教えてくれないかい?」
「カレーを食べているときの様子を見ていれば一目瞭然だ。丸一日かけて大量に作った料理を、一時間もかからずにすべて平らげられるような状態を見せられて、また作ろうと思えるか?しかもその半分以上はたった二人に食べられてしまったんだ。これ以上やってられるか」
「そう言われれば確かにそうね。折角作った料理を味わいもせずに平らげられたら、黄キョン君が怒って当然よ!」
「とりあえず、俺はそろそろ香港に行かなきゃならん。青みくる、青鶴屋さんにもドラマの第七話から第九話のことを伝えてくれ。それと、昨日の福袋の件でまた電話が鳴りだす可能性がある。迷惑電話に対応していられるほど、青鶴屋さん自身も家の人間も暇じゃない。そのときは青俺の影分身が遮音膜を張って対応してくれ。それだけだ」
「あっ、はいっ!分かりました!」
食器をシンクに入れてリムジンの入ったキューブと一緒に香港へとテレポート。空港前で二人を待っている間に今朝の新聞記事をチェックしていた。まぁ、見出しが違うだけで内容はほぼ同じ。DVDを送った新聞社二社は映画のシーンと重ねたものをそのまま掲載。『キョン社長粋な計らい!20年ぶりの名シーン再び!』、『本物のタイタニック号をサルベージ!来年のパーティはタイタニック号の船上で!!』他から見れば偉業だろうが、大したことは無い。空港前には香港の報道陣より日本の報道陣の方が多いんじゃないかというくらいだ。懲りもせず敷地外に蔓延っていそうだな。俺は日本にはおらんというのに……そろそろパンも作り始めるか。しかし、狙撃も十分あり得ると思ったが一切それがないな。思い過ごしならそれにこしたことは無い。ようやく到着した二人を連れて最初のTV局へと向かった。

 

「ここでもキョンの影分身が運転をしてくれているの?」
「ああ、残りの国は全部俺がやるつもりだ。それと、ジャムを作るのはいいが、保存料は一切使っていないジャムだからな。一応、現状維持の閉鎖空間で状態は保っていられるが、あまり長くはもたないと思った方がいい」
「そう、あなたのことを一年間待っている間はそれで何とかしようと思っていたんだけど……」
「そういう顔をするなって。残り数日だが、満足できる生活になるようにする」
「じゃあ、リムジンの中でもあなたに抱きつかせて!運転手もあなたなら人目を気にしないで済むわ」
「お安い御用だ」
ようやく一つ目のTV局に到着か。ここでも日本の報道陣の方が多いくらいだな。扉を開ける瞬間、本体と影分身が入れ替わった。閉鎖空間で報道陣を押しのけてTV局内に立ち入る。
『キョン』
ああ、分かってる。まずは相手の出方を見てからだな。ヒロインにも遮殺気膜だ。受付嬢にスタジオを聞いて収録現場へと向かった。質問事項は最初から映画に関する内容。通訳の必要もないので怒って帰ろうとしていたヒロインが肩透かしを食らった。何度かやりとりをした後、
「すみませんが、パフォーマンスを見せていただきたいのですがよろしいでしょうか?映画と同じパフォーマンスなら大丈夫かと思いまして、TV局側で呼び寄せた手練れと闘っていただきたいのですが、お願いできませんか?映画の予告通りであれば、この人数をもってしても、あなたを殺すつもりでかからないと勝てそうにありません。いかがでしょうか?」
「殺すつもりですって!?」
「いいですよ。その代わり、こちらからも条件を一ついいですか?」
「何なりと」
「アクションシーンを映すとなるとこれだけのカメラでとらえきれるかどうか分かりませんので、毎回超小型カメラで撮影させてもらっているんです。もし、カメラワークが遅れてしまった部分があれば、映像のコピーをそちらにお渡しします。例えば……このように」
指を鳴らすと十数秒前の映像がモニターに映し出される。
『この人数をもってしても、あなたを殺すつもりでかからないと勝てそうにありません』
「いかがですか?」
「ちなみにこの映像はどこで保管されているのか教えていただけませんか?」
「日本の僕の会社です」
「分かりました。では、見せていただきましょう。お願いします」

 

 アナウンサーが後ろに下がると両手に巨大な曲刀を構えた男が前に出る。それぞれで武器を構えて俺たちの周りを囲んだ。銃を構えている奴は俺たちの背後に味方がいない様に配慮している。
「キョン、こんなの大丈夫なの?」
「心配いらん。『殺すつもりで』とか言っておきながら、まったく殺気が感じられん。『殺すつもりで』ってのはこうやるんだ!」
20%の殺気でも十分だったらしい。武器を所持していた全員が咄嗟に俺との距離を取った。
「匂いと一緒で殺気はカメラには映らないんだよ。さっさとかかって来い」
俺が放った殺気に慄き、じりじりと後退していくばかり。やれやれ、だからこんな連中には付き合ってられないんだ。ジョンの言っていた通りスカ○ターで測っても戦闘力たったの5、ゴミだ。
「殺れ!殺ってしまえ!!」
どうやらここのボスは先ほどまで会話していたアナウンサーだったらしい。ビビりながらもボスの命令には逆らえず、曲刀を持った男が攻撃を仕掛けてきた。『殺すつもり』がまったく感じられない曲刀をわざわざ受ける必要はない。コイツらの情報だけをいただいて殴り飛ばすと、マシンガンを構えた男が銃を乱射。両手で弾をつかみ取っていると、ヒロインの後ろから大剣を持った男が後ろから忍び寄る。大剣を振り下ろした瞬間に右腕だけ部分テレポート。大剣を素手で受け止め、剣を折る。ようやく背後から近づいていた男に気が付き、すかさずヒロインが間合いを取った。いつまでもマシンガン一つを相手にしている暇はない。弾丸を受け止める手を右手にシフトすると、左手の親指で弾丸を弾いた。寸分の狂いもなくトリガーに命中する。マシンガンはもう使えない。
「おい、狙う相手を間違えてないか?」
ヒロインを斬り捨てようとした奴に目配りをすると、それだけで腰を抜かしてしまった。

 

「こんな状態じゃパフォーマンスにならないだろう?手練れを用意したんじゃなかったのか?」
「殺せ!こいつらまとめて殺してしまえ!」
ADやカメラマン達まで銃を構えて発砲する始末。さっさとここから出ることにしよう。時間がない。身動きが取れないように一人ずつ深手を負わせると、残ったのはボスただ一人。
「ひとつ、面白い話があってな。ジョンが本物のスカウターを作ったことがあったんだよ。どういう基準で数値化しているのかまでは俺にも分からんが、ジョンですらフ○ーザの戦闘力530000には及ばないらしい。どんなアスリートであろうと通常の人間の戦闘力は1、武器を持っていたとしても戦闘力はたったの5のゴミだ。だが、パーティ会場でみんなにつけた閉鎖空間をつけるとそれだけで100にあがるらしい。顔を変えただけで戦闘力が100倍になるヒーローじゃないが、コイツ一人くらい、試しに片付けてみないか?」
「私が!?」
「他に誰がいるんだ?」
「ふざけるな!俺がそんな女に負けるはずがあるか!」
「だから戦闘力たったの5のゴミだと言ったんだ。足が震えているぞ。ちゃんと狙いを定められるんだろうな!?もっと近づいて撃ちやすくしてやれ」
不安げな表情を見せていたがそれも一時だけ。カツカツとボスの傍へと近寄っていく。
「あなた、ボスの座を明け渡したらどう?こんな調子じゃ部下に示しがつかないわね。キョン、カメラでしっかりと映像を収めておいてくれないかしら?」
「分かった。そいつがどれだけみじめな運命を辿るかはっきりと記録しておこう」

 

「ぐっ、ふざけるな!こんな女なんかに!」
「そのセリフ、もう二度目よ?『こんな女なんかに……』さっきは何て言ってたかしら?」
「やかましい!………ぐふっ、どうして……」
近距離でヒロインに発砲した弾丸が跳ね返りボスの身体を貫いた。
「ついでに一発殴ってみろ。パンチ一発で吹き飛ばされる瞬間を映像に収めておいてやるよ」
「パンチ一発で吹き飛ばす!?私にそんなことできるの?」
「できないことは提案したりしないさ。今までずっとそうだっただろう?」
「それもそうね。試しにやってみようかしら?一応アクション映画の主演女優だもの」
少しズレたものの、パンチ一発で吹き飛んでいったボスにヒロインが呆れていた。
「キョン、これ、本当に私がやったの?」
「だから言っただろ?顔を変えただけで戦闘力が100倍になるヒーローと一緒だよ」
「あら、それは私の脳みそが全部漉し餡で出来ているって言いたいのかしら?」
「今自分でやってみせただろ。パンチ一発でバイバイ○―ンってヤツだ」
「それもそうね。でも、スタジオ内の全員が敵ってどういうこと?」
「このスタジオどころかTV局全部ジャックされて、芸能人達と一緒に一つのフロアに監禁されているらしい。アクション映画のヒロインらしく人質を助けに向かうってのはどうだ?」
「それも面白そうね。行きましょ!」
パフォーマンスシーンも若干使えるだろうしカメラには触れない様にしておこう。局内に蔓延っていた連中を片っ端から潰して情報を奪い、先ほどのスタジオへとテレポート。『警察が来ないと出られない』と条件づけた閉鎖空間の牢獄に閉じ込めておいた。当然、受付にいた奴も敵。ロープで縛られていた人質を救出し、この後の行動を伝えると二人で悠々とTV局を後にした。TV局前にいた本物の報道陣たちが中の様子を見て建物内に入り込もうとしていたが、残念だったな。アホの考えそうなことなんてお見通しだ。不法侵入の届け出でも出してやろうか迷ってしまう。

 

「次のTV局もあんな状態になっていたらどうしようかしら?」
「これ以上時間をかけているわけにはいかない。告知が終わったら敵を全部潰して次に行く。影分身も何体か出すから時間短縮にはなるだろう。今の連中はあのTV局だけで俺たちを殺せると踏んでいたらしいが、新しく別の組織が待っているかもしれん。まぁ、建物内に入るだけで分かるから心配はいらない。告知を終えたらアクション俳優らしく出てくることにしよう」
「ふふっ、今度は色々と試してみようかしら?」
「試す相手がいればだけどな」
そろそろ日本でも昼時か。報告も兼ねて一度戻ろう。影分身でも俺がいればヒロインも今のような自信を持っていられるはずだ。
『ごめんなさい!!』
本社81階に戻ってすぐ、報道陣の各メディアの社長じゃあるまいし、W有希が土下座で俺の前に座り込んだ。
「戻って早々、二人揃って何のつもりだ。娘と妹が見ているぞ?早く昼食にしよう。俺も告知の方が忙しくなってきたんでな」
「おや?どうやら我々にとって朗報のようですね。ですが、その二人のことも少しは気にしていただけませんか?」
「だから、当分作るつもりはないし、あんな光景を見せられたばっかりでそんな気が起きない」
『そこをなんとか!!』
「駄目だ、話にならん。さっさと食べて告知に戻る。次もどうなるか分からない」
「キョン、二人ともそこまでしているんだ。何とかならないのかい?」
「『土下座したからカレーを作れ』なんて虫が良すぎるんだよ。あれだけのことをしておいて今頃そんなことをしても遅い。レストラン前の報道陣と何も変わりがないだろうが」

 

土下座をし続ける二人を放置して告知へと戻った。同期した情報によると、別の組織の人間がTV局をジャックした……か。先に他の場所に出向いて片付けた方がよさそうだ。このTV局での告知はもう収録されているし、俺たちがしっかりと映っていれば問題あるまい。各テレビ局に影分身を送って情報を同期した。手口は似たようなものか。まわる順番が決まっているのに全部のTV局をジャックしているとは思わなかった。場所がTV局でなければ心臓を一刺しするだけで終われたものを……面倒臭いにもほどがある。
『暴れたい奴は今すぐ香港のTV局に来い!全TV局がマフィアにジャックされている。今二つ目を襲っている最中だ。こんな調子じゃいつまで経っても告知が終わらん!情報を奪ってアジトも壊滅させろ!あとはさっき確認した通りだ』
『問題ない』
リムジンは……二つ目のTV局を回って三つ目に向かっている最中か。影分身と入れ替わって一息ついた。
「どうしたの?」
「まさかとは思っていたんだが、残りのTV局も全部ジャックされていた。ハルヒ達に任せて局の人間をさっさと仕事するように指示を出しておいた。どういう形であれ、報道陣が俺たちに迷惑をかけているのは変わりがない」
「次のTV局もってこと?」
「そうだ。ハルヒ達が壊滅しておいてくれればあとはスムーズに告知ができる……と、いいんだが、また事件のことで聞かれそうだな。面倒なトラブルを起こす奴ばっかりだ……報道陣もマフィアもな」
「だったら、去年とおなじでいいじゃない!ストレス解消には丁度いいわよ!」
「そう言ってくれるだけでも十分ありがたいよ、まったく」

 

結局、三つ目以降はハルヒ達の手によって潰された後。何台もパトカーが止まっていたが、ちゃんと事情聴取をして犯人の動機を世界中に広めてくれるんだろうな?ネットで調べたら香港だけで大量のマフィアグループの名前が一覧に出ていた。台湾や中国のマフィアを潰しているあたりで朝倉が「もう張り合いが無さ過ぎて飽きたわよ」などと言い出しかねない。香港中のTV局を回り終える頃には既に夕食時。アジト潰しで一段落して戻っている奴もいそうだが、このまま空港に向かわせてはくれんだろう。パン作りにまわしていた影分身をおススメ料理に向かわせた。安比高原の厨房に送られていたキューブを展開して、すぐさま調理に入る。さて、空港前でどんな手口を使ってくるのやら……空港に到着してリムジンを開けると多方向からの狙撃と駐車スペースに停めてあった車に乗っていた連中が全員外に出てきて拳銃を乱射。
「キョン!どうするつもり?」
「銃弾が尽きるまで撃たせてやるだけだ。閉鎖空間が付いているから隠れる必要なんてない。もっと堂々としてていいんだぞ?報道陣は放っておけ。逃げればいいものをスクープを撮りたいだけで居座っている奴らだ自業自得だ」
銃弾が尽きたところで狙撃手をテレポートで呼び寄せた。さて、何体出せるか楽しみだな。
「にっ、逃げろ―――――――――――――――――――っ!!」
攻撃する手段が無くなりすぐに車に乗り込んで逃げようとしたところで車の前に影分身が立ちはだかった。当然影分身の閉鎖空間にあたってそれ以上前に進むことは叶わず。慌てて車から降りて逃げようとしたところでマフィア全員を俺の影分身が囲い殺気を放つ。
「先に仕掛けてきたのはそっちの方だ。さて、ここからどうするつもりか言ってみろ」
じわじわと影分身がマフィア連中に詰め寄ると空港に潜んでいたマフィア連中がようやく一つに固まった。
『ひぃぃぃ……助けてくれぇ……』
「助けてくれ?あれだけ銃弾を浴びせておいて今さら言うセリフがそれか?」
『よ、よせ、やめてくれぇぇ』
「拳銃を持っただけで強気に出るからだ。監獄の中でたっぷりと遊んでやる。それまで首を長くして待ってろ」

 

『銃刀法違反及び傷害罪、殺人未遂罪です。逮捕してください』と看板をぶら下げ、空中で金縛り。ヒロインを連れて空港へと入っていった。警察に取り押さえられるまで金縛りは解除されない。当然リムジンも無傷だ。リムジンを囲んだ報道陣を押しのけるかのように閉鎖空間を拡大。ブレーキペダルを少しずつ緩めていく。リムジンの前にいた奴が尻もちを付き、カメラがコンクリートの上に落ちた。尚も進み続けるリムジンに向かって報道陣が何か叫んでいるようだが生憎と何も聞こえない。カーブに差し掛かったところで閉鎖空間からようやく逃れることのできた奴等が壊れたカメラに手を伸ばしていた。
「ただいま」
『おかえり~』
「随分遅かったですね。やはり空港ですか?」
「ああ、撃つだけ撃って逃げようとしたから、影分身で囲んで追い詰めておいた。まだ、サイコメトリーもしていないし、あいつらは暴れたがこっちは飛行機の時間に遅れそうで暴れられなかったんだ。それくらいは俺にやらせてくれ。組織の情報は全部ジョンに渡しておくから。で、青鶴屋さんの方はどうだった?」
「黄俺の予想した通りだ。福袋の件で取材が何本も来ていたがすべて断ったよ。明日も俺が行く」
「明日は第二人事部が影分身で埋まりそうだ。フィリピンとモンゴルなら大丈夫だろうが、中国と台湾は無理だろうな。最初のTV局で武器を持った連中相手に闘うところをパフォーマンスで見せてくれと言われたんだが、こっちが小型モニターを使って撮影していると言ったら映像はどこに保管されるのか聞いてきたよ。ここだと答えたらあっさり承諾しやがった。不法入国してでも本社に攻撃を仕掛けるつもりだったってことだ。集めた麻薬はすべてあのアホの家に隠しておく。何かあればそのときに通報して再逮捕させるまで。とりあえず、この後も大いに暴れてくれ。ドラマで言うところの服部の胴体のようにしておいてくれればいい」
『問題ない』

 

「ところで、書き初めの発表はいつにするんです?もう鶴屋さん達の手に渡っているんですか?」
「キョン君とジョンのゴールデングローブ賞のこともあるのでそれを避けて鶴屋さん達の都合のいいときにってことになりそうです。ドラマのDVDも全部渡してきました」
「こっちの鶴屋さんも同じです。黄鶴屋さんの審査が終わり次第連絡を取るつもりです。DVDに関しても一緒です」
「ゴールデングローブ賞ならこっちの時間で一月十一日の朝四時から九時までの予定になっているが、式典後はパーティだからな。早くても昼食前になるはずだ」
「ちなみに、第九話については鶴屋さん達には話したのかい?僕も彼女たちには負けたくないからね」
『「あたしが絶対に真相をつきとめてやるにょろ!」だそうです』
『あたしも鶴ちゃんにだけは負けられないわ!!ちょっとあんた!齊藤と園部をもっと簡単に呼び出す方法なんて本当にあるんでしょうね!?』
「あるから正解者が何人も出ているわけだし、青ハルヒに至っては似たような文面を突き付けられているんだから、どんな方法で誘惑すれば齊藤と園部が関わってきそうか考えてみろ。あと20点分くらいすぐにでも付きとめられるだろ。マフィア潰しに飽きたら、それを考えながら潰していけばいい」
「おっと、そうなると僕や有希さん、朝倉さんは飽きてしまいそうですね。何か興味を引くものはありませんか?」
「俺もやってみたかったんだが、古泉がパフォーマンスをするのに相応しいものが一つある。やってみるか?」
「相変わらず士気を高めるのが巧いですね。どんなものか見せていただけませんか?」
影分身で声帯を変え、催眠をかける。煙草を吸い、足が紅く染まっていく。
「“悪魔風脚”」
もう一体には今日監獄に入れられた例のボスの催眠をかけた。
「“首肉シュート!!”」
技名通り首肉に蹴りを入れられた影分身が天井に激突して横たわっていた。

 

「くくく……なるほど、『僕がパフォーマンスをするのに相応しい』というのはそういうことですか。確かにこれなら、あなたから頂いたエネルギーを使うことなく僕自身の超能力だけで可能ですね。この後が楽しみになってきましたよ。他にどんな技があったか調べておきましょう」
「それなら異世界支部の89階に行くといい。告知の間、特に暇になる夜間はそこに設置した漫画喫茶で漫画を読んでいたからな。他のメンバーも持ち出してもいいが、必ず返せよ?サイコメトリーですぐ分かるからな。今87階でパンとジャムを作っている最中だが、88階はまだ埋まってない。何かいい案があれば教えてくれ」
「では、僕も使わせていただきます。これで失礼します」
「黄キョン君、あの……」
「有希、もうやめておけ。これ以上は逆効果だ」
「テレビ朝日のときは向こうが勝手に決めつけたことだったからバッサリ切ってやったが、妥協案がないわけでもない」
『ホント!?』
「いきなりだったから吃驚したわよ。黄有希さんでもこんな大声出すのね」
「前に作った量と同じ量を用意するが、全員均一で一皿ずつ。残りは社員と日本代表達の分。ルーが余ったとしてもおかわり可能なのは社員や日本代表だけ。おかわりなら今まで散々やり続けてきたからな。ついでと言っては失礼にあたるが、鶴屋さんを呼ぶ日に合わせるのも悪くない」
「それでも半年間我慢するよりはいい!作って!!」
「黄キョン君わたしもそれでいい!!黄キョン君の作ったカレーが食べたい!!」
「ちょっと有希!あんたまででかい声出し過ぎよ!!でも、書き初めと一緒なら楽しみが増えそうね!」

 

「ん~~~~今回も同率一位が出そうな気がしてならない。俺の書いたものはここに飾りたいという意味も含んでから別に一位を狙っているわけじゃないんだが……二人に敵う奴がいるとは到底思えない。少なくとも今回は鶴屋さん達の意見が割れそうな気がする」
「同率一位って子供たちを除くんじゃないのかい?」
「いや、それでも二人が争うことになりかねん」
「キミの予想は当たる確率が高いから逆に怖いよ。今日も香港の全TV局がジャックされていたんだ。これもイタリアや韓国を回ってすぐキミが言っていたことだ。二人っていうのは誰のことなのかヒントくらいくれないかい?」
「もし同率一位なら、二つ同時に垂らさず、横に伸ばしていくことになるはずだ。あくまで個人的な予想だからな。俺はこの二人には敵わないと思っているだけだ」
「ちょっと待ちなさいよ!ってことは英語で書き初めを書いた二人ってことじゃない!!」
「くっくっ、涼宮さんは英語で書き初めを書いていないってことにもなりそうだね」
「勝機が見えてきましたね。今回は僕がいただきます!」
「いかん、罰を受けた時期があっただけに今回ばっかりはそうなりかねん。見た目は黄古泉でも頭脳は変態なんだからハルヒとのツーショットなんて撮られでもしたら……ドラマの最終回のラストもキスシーンだったしな」
「おっと、そのことをすっかり忘れていましたよ。早く謎を解かないと撮影に参加できません」
「あんな恥ずかしいシーン、あたし自ら撮ったものでないと絶対に認めないんだから!」
「だったら早く謎を解いて提示してこい。俺は牢獄に入れられた連中に制裁を加えてくる。これから香港に向かう奴は急げよ?秘密裏に日本に来られても困るんでな」
『問題ない』

 

 アジト潰しはあいつらに丸投げしたし、あのパフォーマンスの本当の意味を見せてやることにしよう。監獄上空にテレポートすると俺のパフォーマンスは閉鎖空間に入れた奴以外絶対に見えないと条件をつけ、カメラに催眠を施して今日の連中を閉鎖空間に呼び集めた。誰がどこの牢屋に入れられていたかはサイコメトリー済み。どこに逃げようが、閉鎖空間外に逃げ場はない。
「よう」
「でっ、ででで出たぁ……」
「さっき暴れられなかった分、暴れに来てやった。空港前じゃ銃弾を撃ちこむだけ撃ちこんで逃げようとしていたからな。飛行機の時間もあって俺の方は暴れられなかったんだ。ところで、ハリウッドのパーティでやった俺のパフォーマンスを見た奴はいるか?」
二、三人いればいい方だと思っていたが、ほぼ全員とは驚いた。こんなところにまでVTRが来ていたのか。
「それなら話は早い。VTRで見た映像をこれからたっぷりと体感させてやるよ」
超サ○ヤ人ブルーに変身して大量の野球ボールを情報結合、手にグローブをはめて準備万端。
「まっ、まさか140マイルの投球で……」
「冴えてるねぇ。これから行うのは俺の一方的なドッジボール。球は違うが顔面にあたってもセーフにしてやるよ。球が切れるか、誰かの頭部に命中した時点でこのゲームはおしまいだ。それまでしっかりと避けろよ?」
「ひっ、ひいいぃぃぃ……た、たす、助けてくれぇ」
これだけ的があるとどこを狙おうか迷ってしまうな。まぁいい。どこにあたろうが死ななければ関係ない。あばら骨が折れ、肩が脱臼し、膝の骨が複雑骨折とどんどん怪我人が増えていく中、顎に命中して骨が折れ、むち打ち状態になった奴が出てしまった。
「あ~あ、よかったな。このゲームはこれでおしまいだ」

 

 動けなくなった奴、当たらずに済んだ奴と様々だったが、全員がようやく安心できたという表情を見せた。
「おまえら、何か勘違いしていないか?俺は『「この」ゲームはこれでおしまいだ』と言ったんだ。次のゲームに行くとしよう」
『もっ、もうやめてくれええぇぇ!!』
「今頃自分たちのしたことを悔やんでも遅いんだよ。おまえらにも神を拝ませてやる」
変身を解きデュエルディスクを情報結合した。
「ま、ま、まままさか、俺たちを踏みつぶす気じゃ……」
「牢屋ごと踏みつぶしてもよかったんだが、それでは面白味に欠ける。もっと面白いショーを見せてやる。光臨せよ!ラ―の○神竜!!」
雲が裂け神々しい光と共に丸い球体が現れる。ヒエ○ティックテキストを読みあげて特殊能力発動。
「ラ―の○神竜の攻撃!!罪人に裁きを下せ!!○ッドフェニックス!!」
業火に包まれた不死鳥が宙を舞い、マフィア共を焼き尽くす。
『ぎにゃあああああああああああああ………』
本当にこの能力を使うと骨も残らないからな。全身を焼かれ朽ち果てる催眠をかけ続けることしばらく。全員が精神的ダメージで倒れ動かなくなったところで牢屋に戻しておいた。毎日同じ時間にこれと同じ苦痛を受けると催眠をかけ、あまり叫ばれても迷惑だから遮音膜も牢屋に張っておいた。俺たちを狙った動機は、やはりイタリアとの密輸ができなくなったせい。あとはアイツ等に任せてさっさとジョンの世界に行くか。明日も早いしな。Wハルヒや有希が後悔することになりそうだが、気付かなかった奴が悪いということにしておくとしよう。

 
 

…To be continued