500年後からの来訪者After Future7-18(163-39)

Last-modified: 2016-12-17 (土) 18:03:30

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future7-18163-39氏

作品

告知も残り五か所となったが、香港であれだけのマフィアが襲ってきたんだ。台湾、中国でもおそらく同じことになるだろう。だが、幸いなことにヒロインがナイフや拳銃に対して恐怖心を抱かず、逆にアクション俳優としてマフィアを蹴散らしているくらい。流石元気100倍になっただけのことはある。戦闘力たったの5じゃゴミも同然だ。年末に丸一日かけて作ったカレーを食い散らし方から、当分の間はカレーは作らないと宣言したんだが、W有希が揃って土下座。それも無視して告知へと向かったが、こちらから妥協案を提示してようやく納得した。これでまた以前と同じような食べ方になるようなら二度と作らないことにしよう。

 

『ちょっとキョン!あんた、先に寝てるってどういうつもりよ!』
『俺は寝ると言ったはずだ。「今まで寝てなかった分、そのくらい当たり前よ!」と言い放ったのもハルヒ達だ。今さら何を言ってるんだ?早くジョンの世界に来たらどうだ?』
『あたし達に自分でお風呂に入れって言うの?』
『おまえらが俺に寝ろと言ったんだろうが。少しでも催眠を解いてクマを無くしたいんだ。寝かせてくれ』
『も――――――――――――っ!!またキョンに乗せられた!!』
くくく……結局三人とも自分で風呂に入ってジョンの世界に現れた。明日はどういう行動に出るのか楽しみだな。
『キョン、時間だ』
「ちょっとあんた!何であんたまで先に抜ける必要があるのよ!あたし達と試合しなさいよ!」
「昨日説明しただろうが。ホテルで自家製パンを振る舞うんだよ。じゃ、お先に」
やれやれ、一度言ったことをその場で理解はできても応用できないのがハルヒの短所だ。毎度毎度同じことを二回も言わなきゃならんこっちの身にもなってもらいたいよ、まったく。
影分身と共にホテルのレストランに辿り着くと各テーブルには自家製のジャムを配置してレストラン中央でフランスパンやドイツパンの切り分け作業を始めていた。食パンは手でちぎってもらった方が良いだろう。午後から仕事に向かうのか、まだ午前六時を過ぎたばかりだというのにレストランの半分のテーブルが埋まってしまった。パンの香ばしい匂いにつられて女性客が集まってくる。

 

「二日間おススメ料理が出せなかった分、自家製のパンをご用意させていただきました。テーブルのジャムをつけてお召し上がりください。このパンに関しての料金は一切かかりません」
その一言に歓声や黄色い声がレストラン内に響いていた。パンの焼き窯も多数用意しただけあり、種類も量も豊富に取り揃えることができた。余ったら、昼にでもみんなに食べてもらえばいいだろう。告知の方もフィリピンのホテルで一泊してTV局に向かっていた。スカ○ターをつけた本体が今朝のニュースをチェックしていると、やはり現れたのが韓国での事件について。VTRを貰ったのはいいが、リムジンに隠れてほとんど様子が分からず仕舞い。こんな取引なんてしなければいいのに……やれやれだ。これで三日連続で俺の記事で一面を飾ることになってしまったな。明日以降も続くだろうが、マフィアさえすべて沈黙させてしまえば、あとはこっちから攻めるだけだ。
 残ったパンを本社に持ち帰り、朝食と一緒に焼き立てパンの味と香りに酔いしれていた。
「今日から楽団の練習を始める。今日、明日の午前中はに練習。リハーサルは今夜行い、明日のコンサートライブが終わったらハレ晴レユカイからフレ降レミライに変更する。その時間他の仕事ができない」
「心配には及びません。今日やることと言えば怒涛のチェックアウトの対応とこちらの世界での電話対応、青鶴屋さんのお宅での電話対応がメインになりそうです。僕が第二人事部で電話対応、彼にビラ配りと青鶴屋さんのお宅での電話対応を担当していただいて、あなたがホテルの厨房とフロントでいかがです?」
「今の青俺ならフロント担当を任せても支障はない。俺は厨房で若手政治家の指南と食事作り、本体は安比高原の中腹にある各店の状況をサイコメトリーしてまわる。告知の方もフィリピンで最初のTV局に向かっているところだ。告知が終わり次第、県知事に連絡を取って数日後には人事異動を行う。それとコンサートライブが終わった翌日から天空スタジアムの一般開放だ。報道陣に撮影を頼まれた一般客も当然入れない。夜がピークになるだろうが、解放は午後十時までとする。その時間帯の見回りを頼みたい。毎日でなくても交代制でも構わない」

 

「キミはそう言うけれど、僕にはそれに該当する人物が一人しか浮かんでこないんだけどね」
「奇遇だな。俺も一人しか思いつかない」
「わたしも一人しか思いつかないわ。この際だからみんなで指名したらどうかしら?」
「んじゃ、その一人とやらを発表してもらうことにしよう。せ~の!」
『(青)古泉(君)!』
「また僕ですか?しかも、僕一人だけということは毎日行くことになります。どなたかいらっしゃらないのですか?」
「あたし達とOG達はキョンのシャンプー&マッサージを受けている最中だし、こっちのキョンと有希もそう。黄チームのOG達は夜練もあるし、黄古泉君だって園生さんに同じことをしていてもおかしくないわ。黄涼子は冊子の編集、涼子はおでん屋、エージェントは寝る直前まで各国回ってくれているんだから、あとはあんただけでしょうが」
「しかしですね。僕が行くと黄僕のファンに囲まれてしまいます」
「あたし達が行ったところで似たようなもんでしょうが!催眠をかけていけばいいわよ!」
「まぁ、さすがに青古泉一人で毎日というのもキツイだろうし、影分身できる奴も入ってくれないか?シャンプーとマッサージは本体さえいればいい」
「仕方がない。これも修行だと思って俺も行くか」
「では、僕も。エージェントの催眠をかけて向かうことにします」
「それで、その一般開放の告知についてなんだが、デザイナー募集の垂れ幕を降ろす以上、垂れ幕はあまり増やしたくはない。有希、大画面に映す映像を作ってもらえるか?閉館時間も記載して欲しい」
「問題ない」

 

「では、僕はこれで電話対応に向かうとします。社長がいないと分かっていながら馬鹿な電話をかけてくる人間がいますので。社員の負担の軽減と敷地外の報道陣を撃退してくることにしますよ」
「私も向かうことにしよう」
「っと、すまん青俺。担当変更だ、フロントのチェックアウトは俺がやる。オフィスの電話対応が青圭一さんと愚昧だけじゃいくらなんでも厳しすぎる。そっちにもまわってくれるか?オフィスがそんな状態じゃ、いつまで経っても青鶴屋さんの家の電話が鳴り止まない」
「なら、俺もすぐ向かうことにする」
「片付けは僕がやっておくよ。僕も影分身を使いこなせるようになりたいからね」
「旦那様がこんなに頼もしくなって有希さんも胸を張って自慢できそうね?」
「それは……その……でも、自慢する相手がいない。あんまり自慢し過ぎると黄キョン君と瓜二つなのがバレる」
ドッと笑いが飛び出たところで、各自の仕事に散っていった。ステルスを張った状態で安比高原のスキー場内の店をサイコメトリーしてまわると、一ヶ月で大分仕事に慣れて暇な時間もできた。だが、週末は厳しい……か。しかし、一人でも多くホテルにまわってもらわないと来年以降の運営ができん。スカ○ターで今朝のニュースを確認していると、新聞の一面は全社香港での記事。『もっといい写真はなかったのか?』と聞きたくなるくらい、写真のほとんどがリムジンで隠れていた。イタリアとは違って、日本も香港の報道陣もチキン野郎ばかりだということが良く分かる。台湾のときは空港についた直後にキューブ化することにしよう。昼食時、やれやれと言いたげな表情で古泉や圭一さん、父親が降りてきた。
「予想通りか?」
「いいえ、日本の報道陣どころか、世界各国から昨日の件で取材の電話が来ています。我々では対応しきれない国もありましたし、午後は変わっていただけませんか?日本の電話はあなたへの取材に寿司を作ってくれという依頼、パフォーマンスのことと、タイタニック号をどうやって修理するのか……まったく、毎年恒例行事になりつつありますが、バラエティの豊富さに飽きれましたよ」
「だったら、午後は三人とも休んでくれ。俺が三人の催眠をかけて出る。古泉はマフィア狩りの続きでもいいし、漫画を読んでいてくれて構わない。それに、夜のことを考えて今のうちに寝ておくとかな。ジョンの世界にテレポートすれば必然的に寝ることになる」
「それは名案ですね。ジョンのリクライニングルームにお邪魔することにしましょう。あとはお願いしますよ?」
「問題ない」

 

「上役会議で決定した。しばらく他国からの電話が続きそうだから、人事部はもう三,四日は正月休みでいいそうだ。これで退勤してもらって構わない。時間を有効に使ってくれ」
圭一さんの催眠と声帯で人事部の社員に声をかけ、嬉しそうに退勤していく社員を見届けると、第二人事部も使って電話対応をし始めた。三、四日じゃ足りんかもしれんな。再度集まってきた報道陣の機器をすべて破壊しておいたし、これ以上は死んでも俺たちには一切影響がない。有希に警告文じゃなく記事にして送ってもらうか。『警察も呆れた!!今後は命の保証はできない!!』とでも見出しで作っておけばいい。
『古泉、夕食だ。そろそろ起きてきてくれ』
『了解しました』
異世界の電話対応はあと二日ほどで済みそうだな。ハルヒ達が午後からデザイン課に行っていただろうし、報告するのは俺だけになりそうだ。
「まずは人事部の電話についての報告だ。香港での事件について五ヶ国語では対応できないほど世界各国から電話がかかってきた。人事部の社員には三、四日休むように伝えて昼で退勤させたが、このあと台湾、中国もとなるとそれでも足りない可能性がある。とりあえず明日以降は俺が人事部。圭一さんたちは異世界の方に回ってください。古泉は今週のディナーやおススメ料理の仕込みを頼む。それがまず一点。次、スキー場の様子をサイコメトリーしてきたが、平日は暇な時間が多いが週末は厳しいとサイコメトリーで情報が流れてきた。だが、一人抜く分にはそこまで負担がかからないようだから、俺たちが抜けていけばいい。料理指南とおススメ料理だけでることになりそうだが、リフトの監視から客室の布団の準備まで人員が不足していることに変わりはない。それについては告知後に県知事と話をつけてくる。三つ目、香港まで俺たちに攻撃を仕掛けてきているというのに未だに敷地外に報道陣が溢れ返っている。警察に連絡してもらったし、午後は機材を全部破壊した。だが、それでも尚やって来るだろう。有希、新聞記事を作って各メディアに送ってほしい。見出しは『警察も呆れた!今後は命の保証はできない!!』とでもつけておいてくれ。警察も逮捕に出向くたびに防弾ジャケットを着て身の危険を感じながら報道陣を逮捕しているってな」
「問題ない」
「最後に、今朝の新聞記事を見たメンバーは知っていると思うが、ほとんどの新聞社がリムジンに隠れて良い写真が載せられない状態になっていた。フィリピンの空港でリムジンから降りたら、影分身ごとキューブに収めるつもりだ。香港では日本の報道陣の方が多いくらいだったが、イタリアの報道陣と違って場慣れしていない上にただの臆病者だということだ。香港で起こったときと似たようなことが起これば、今度は報道陣にも巻き添えを喰らわせる。『命の保証はできない』と記事を送っても来る連中に関してはもう俺たちが責任を負う必要はない」

 

 俺が報告を終えるとWハルヒの影分身が現れた。
『じゃあ、あとはさっさと片付ければいいんでしょ。本体が食事して、キョンにシャンプーとマッサージをしてもらえばいいだけよ!蹴散らしてくるわ!!』
「あんまり時間がかかるようなら俺も出るからな。さっさと始末してこいよ?」
『フフン!あたしに任せなさい!』
「そういうことなら俺もハルヒ達を見習うとするか」
「そのようですね。ですが、我々の場合は『一体だけ』などという規定はありません。申し訳ありませんが、相応の修錬を積んだ分、有効活用させてもらいますよ?」
古泉と青俺の後ろに影分身が数体現れた。これだけの影分身で一気にマフィアを潰せるってことになりそうだな。
「わたしも出る」
「わたしはどうしようかしら?台湾に先回りするのも悪くなさそうね。空港の様子でも調べてみることにするわ」
「もうそろそろフィリピンの空港に着く頃だ。今夜は台湾のホテルに宿泊することになっている。ホテルに閉鎖空間を張っておくから周辺に蔓延る奴等を蹴散らしてくれ。誰かに見られるようなことが無いように注意していてくれればそれでいい」
「分かった」
「キョン君、どうして香港のマフィアがキョン君たちを襲ってくるんですか?イタリアなら支部があるのでまだ分かりますけど……」
「『麻薬密売の相手を俺たちが潰したから』だそうだ。逆恨みもいいところだ。その後イタリアのマフィアがどういう状態に陥ったのかもちゃんと聞いておけばいいものを……アホな連中ばっかりで本当にストレスが溜まる」
「今日の当番はわたし。そのストレスも全て取り払う」
「ああ、よろしく頼む」

 

「くっくっ、こっちのキョンや黄古泉君の影分身を見て呆れたよ。こんな人数でマフィアを潰されていくんじゃ、いくら組織の数が多くても、数日で壊滅できそうだね」
「俺も意外だったんだが、昨日牢屋に入れられたマフィア連中に『ハリウッドでの俺のパフォーマンスを知っている奴は?』と聞いたらほとんどの奴が手を上げたよ。世界中で報じられていると見て間違いなさそうだ。だが、あのパフォーマンスの本当の意味を分かっていなかったようだったから思い知らせておいた。毎日同じ目にあうよう催眠をかけてな」
「くっくっ、それは面白そうだ。香港マフィアを相手にどんな暴れ方をしたのか教えてくれないかい?あのパフォーマンスの本当の意味は例のイベントのための準備だと思っていたけれど、どうやら違うようだね」
モニターに昨日の様子を映し出した。強制ドッジボールのルールを説明して超サ○ヤ人ブルーに変身、140マイルの球を喰らうシーンが映っていた。
「それが告知前までの本当の目的だった。今もそれは変わらないんだが、ヒロインのマネージャーのところに記者会見を開けという電話が殺到してな。告知が終わった後すぐにでも記者会見に出ることになるだろうが、マフィアに対する脅しも含んでいたんだ。オ○リスクが着地しただけで建物が壊れる。それと同様にアジトごと踏みつぶせると頭の中に叩きこんでやりたかったんだが、ただのパフォーマンスとしてしか見てもらえず、香港に行ったらああなったってことだ。それを実体験させてやったんだよ」
「ってことは、これと同じことが俺にもできそうだな。同期して遊んでみるか」
「ちょっとあんた!元はあたしの力なんだから一旦返しなさいよ!!」
「おまえや佐々木じゃ超能力として換算されないから超サ○ヤ人になることすらできん。だが、もう一つの方は可能だ」
『もう一つの方?』
「モニターを見ていれば分かるさ」

 

 マフィアの一人の顎にボールが命中し、連中が一安心した後、ラ―の○神竜を召喚して奴等を焼き尽くしている映像が映った。朽ち果てたマフィアが気絶して映像は終了。
「今回は監獄に入れられた連中だったから、全身を焼かれているという催眠で対応したが、これを現実のものにすると骨の一欠片も残らん。ただ、あまり大規模でやると俺がやったとバレてしまうから、程々にしておいてくれ」
「俺も影分身で漫画を読むことになりそうだ。どんなモンスターがいたのか調べてくる。ご馳走様」
「凄い……でも先輩たち、これをどうやって現実のものにしているんですか?」
「おまえらだって修行しただろう?それを応用しただけだ」
『応用?』
「まず、パーティの前にアメリカ支部の上に積乱雲を作る。これについては閉鎖空間と掃除機のような膜で空気を操作してつくることが可能になる。中学の理科で習う知識を応用したものだ。パーティで見せたオ○リスクは催眠をかけた俺の影分身をキューブの拡大縮小の要領で拡大したものだ。そして舞空術で雲の上に隠れていたオ○リスクが下降してきた。拡大すれば当然体重も増大して建物くらい造作もなく破壊できる。あとは正拳を一発放つだけだ。タネを明かせば、どれもできそうだと思えるだろ?あとは規模が大きいか小さいかってだけだ。二月号が出来上がった段階でOG達にも冊子の情報結合を手伝ってもらう。俺も古泉も青俺も最初は一部ずつから初めて、10部ずつ、50部ずつ、100部ずつとステップを踏んでいったんだ。こっちの世界では440万部、異世界の方は120万部冊子を作る必要がある。二月号は間に合いそうにないが三月号はOG達だけで作ってもらうぞ」
『よっ、440万部もですか!?』
「今なら俺も、古泉も青俺も一回の情報結合で用意することができる。バレーや楽器と同じ修練の積み重ねだよ」
「だったら、二月号の完成を少し急がせてみようかしら。この子たちだけで期日までにどれだけ作ることができるのか楽しみになってきたわね」
「それなら二月号で掲載が決定したランジェリーを12人分渡してくれないか?今日から情報結合の訓練をさせる。最初だし……ノルマは一人30着だな」
『あたしに任せなさい!』

 

 そのセリフを吐いたからには達成するまで寝かせない様にしようと思っていたら、一つずつ着実に進めていく奴とセンスの良い奴は一回の情報結合で二つずつ作っていた。朝倉がすでに仕留めてしまったのかどうかは分からんが、何の問題もなくホテルに辿り着くことができた。その夜、マフィア狩りをしていたハルヒ達が不満そうにジョンの世界に現れた。
「どうかしたのか?」
「張り合いが無くなってやる気が失せたわ。あんたがイタリアのマフィアを襲撃していたときと一緒よ。『今後あたし達に危害を加えようとすれば、香港の全マフィアを叩き潰す』って宣言してきてやったわ。こっちであんたと試合している方がよっぽど面白いわよ!さっさと始めるわよ!」
「僕の方も似たようなものです。台湾や中国の方にも知らせておくよう指示を出しておきましたが、どちらも『はい、そうですか』と引き下がるとは到底思えません。とりあえず、香港は制圧したということになるかと」
「だったら準備体操を…ってそれももう終わらせてきたか。すぐ試合にしよう」
『問題ない』
OGは零式(アラタメ)の練習で一人が抜けて、残りのメンバーがハルヒ達のチームに混じっていた。ENOZ達も青チームを相手にチームを組み、隣のコートで試合をしていた。生放送はENOZ+ハルヒ&有希で問題なさそうだな。岡島さんも正セッターとしての技術を会得したようだ。
『みんな、集まってくれ』
「珍しいですね。ジョンが我々を召集するとは。何かあったんですか?」
『今朝のニュースの内容だ』
そんなもの、有希がFAXした記事に決まって……はぁ!?
『全世界で遊戯○カードとドラ○ンボールヒーローズカードが売り切れ続出!?』
子供たちのお年玉の使い道のほとんどがこのどちらかのカードになっていると記事が載せられていた。
「有希がFAXした記事はどうなったんだ?」
『一部の新聞社で二面、三面で取り上げられているがそれ以外は全くの無視。TV局もいくつか報道はしている』
「……なら、こっちが気にする必要はないな」
「それよりあんた!この見出しどういうことよ!?」
ハルヒが指差した先の新聞記事には『キョン社長を中心に世界が動く!!』と書かれていた。そういえば、高一のときのコイツの七夕の願い事が『あたしを中心に世界が回るようにせよ!』だったな。それを俺に横取りされて怒っていたのか。
「だったら、来年のパフォーマンスはおまえがやるか?俺はタイタニック号に案内するだけでも構わないぞ?」
「あんたがあんなことやるから、それ以上のものなんて思いつかないわよ!!」
「心配いらん。考える時間なら一年間たっぷりあるからな」
「そういう問題じゃないわよ!」
『とりあえず、時間だ』
『お疲れ様でした!』

 

 目を覚ましてまず気になったのは敷地外の様子………やれやれ。
『予想はしていたんだろ?早く身支度を整えたらどうだ?』
それはそうだが、この後全世界からの電話に対応しないといけないと思うと………もう中国マフィア全部潰しても俺の気が収まりそうにない。あぁ……気が重い、気が重いったらありゃしない。眼の周りの催眠を解いてみたが、ちゃんと寝るようになったのに以前と大差がないどころか、さらに酷くなっているような気がするのは俺だけか?
「黄キョン君、どうかしたの?」
「有希、ちょっとは察しろ!あの新聞記事やニュースがあったにも関わらず、敷地外の様子を見てみろ!本社前だけ片側通行になっているだろうが!」
「今日のコンサートライブの邪魔ね。どうするつもりかしら?」
「問題ない。香港マフィアからの攻撃を待つだけ。報道陣以外の観客には閉鎖空間をつける。今後も本社を訪れる客も多いはず」
「午前中からSPだな。俺が牢屋の中に押し込んでおく」
「もう一枚閉鎖空間を張ってはいかがです?観客をも巻き込んでテロ行為に及ぼうとするものは入れないと」
「それでは逆効果。ヘリで上空から攻撃を仕掛けられるはず。本社を訪れる目的の人間にわたし達と同じ閉鎖空間をつけると条件づけた方がいい。当然報道陣は除外する」
「午前中は楽団の練習があるからいけないけど、午後は電話対応手伝ってあげるから、あんたもシャキッとしなさいよ!シャキッと!」
「キョン君、本当に大丈夫ですか?」
「ああ、まぁ、なんとかする。まずはあの報道陣達からだ」
「黄キョン君、それはキョンが押し込むってさっき……」
「押し込もうとするだけ労力の無駄だ。閉鎖空間で囲んでから空間を小さくする」
「分かった。ならその方法で俺が対応する」
『困ったね、手伝いたいのはやまやまだけれど、現状を打破できるのはキョンしかいない』
「俺が電話対応するからいい。それぞれで自分の仕事をこなそう。俺は先に降りる。あとは任せた」
『キョン!』

 

 ハルヒがOKしなければ残りの多国語の情報を渡すわけにもいかんし、それ以外の国からの電話もありえる。英語すら話せないような人間がかけてくるのなら即刻切ればいい。名前と会社名だけ確認してあとはどうにでもできるだろう。とにかく、やる気がでないとか言ってられないし、もうすぐ台湾のホテルから出て来る頃だ。よりストレスを溜める前にさっさと対応してしまおう。もう一枚閉鎖空間を張る件に関しては有希の案で構わない。
 台湾のホテルから出たところで台湾と日本……それ以外も混じってそうだな。とりあえず報道陣に囲まれたのと……視線が二つか。兆弾で報道陣が巻き添えを喰らえばそれで良い。リムジンを出せるスペースを確保したところでホテル前から移動を始めた。
「昨日の一件で、また事件のことから聞いてきそうだ。例の手でいこうと思っているんだが、それでもいいか?」
「あら、わたしは昨日みたいなやり方が溜まったストレスを発散できるんだけど……TV局をジャックでもされない限り難しそうね」
「じゃあ、入った時点で状況を知らせる。そのどちらかでいこう」
「ええ、私もそれでいいわ」
結局、打ち合わせはしたものの、これまでと同様、最初のTV局でヒロインが怒る芝居をすることになった。空港で銃撃戦になった場合はリムジンをキューブに収めて報道陣にも被害に遭ってもらい、アクション俳優だってことを知らしめてやろうということで意見が一致した。本社の敷地外では、青俺に伝えた方法で歩道が報道陣で満員電車よりも過密な状態になっていた。帰る気がない限りずっとそうやってろ。SPも午前中から立っているようだし閉鎖空間も有希が展開した。何の問題もない。

 

 昼食時、影分身たちに電話対応を任せて81階へとテレポート。
『キョン!』
「本体だけ昼食を食べに戻ってきた。朗報は何もない。すまん古泉、青ハルヒ、明日のディナーと週末のおススメを頼んでいもいいか?しばらくは収集がつきそうにないんでな。調理には俺も参加する」
「では、異世界支部の87階を使わせていただきます」「あたしに任せなさい!」
「みくる、書き初めはもう青鶴屋さんに渡ったか?」
「はい、青わたしとも話をして10日(月)の夕食でどうかと考えています。こっちの新川さんも参加できますし」
「青古泉たちが俺に寄って来ないってことはトリックの解明はまだのようだな?」
「最終話放送前には何としてでも解き明かしてみせますよ」
「そうかい?じゃあ僕が先に答案を提出してみようじゃないか。採点をしてくれないかい?」
人に『僕を慌てさせないでくれ』と言っておきながら自分だけは対象外とでも言いたげだな。いつものことか。
「問題ない。満点だよ」
『あ―――――――――――っ!!また先を越された!!』
「参りましたよ。僕の方が慌てることになってしまいました。佐々木さん、ちょっとズルくありませんか?」
「満点で返ってくるなんて僕も想定外だったんだ。あと何点分足りないのか知りたかったんだよ」
「青俺、青鶴屋さんの家の電話の様子はどうだ?」
「ほぼ沈静化した。福袋に関することだけだったからな。鶴屋さんからも『あとは家の者に任せる』だそうだ」
「圭一さん、年末に来たCMの依頼、こちらから折り返していただけませんか?人事部があんな状態なので」
「君に言われるまですっかり忘れていたよ。分かった、私の携帯で確認しておこう」
「告知の方はホテル前で狙撃しようとしていた奴がいたが、TV局まわりは至って順調だ。何かあるとすれば空港くらいだろう。ヒロインともアクション俳優らしい対応をするってことで意見が一致した。ヒロインも暴れるそうだ」
『ヒロインも暴れる!?』

 

「備え付けたのは閉鎖空間だけでコーティングはしていないんじゃないのかい?」
「ああ、それでもジョンが作ったスカ○ターによると戦闘力が100まで上がるらしい。武器を持っているマフィアの戦闘力はたったの5、ゴミだ。それに、二人で闘っているシーンがカメラに収まればいい宣伝になるからな。その代わり、相応のリスクは背負ってもらう。香港のときのようにリムジンに隠れるなんて真似は絶対にさせない。ちなみに、香港のときだって最初に行ったTV局のボスを殴り飛ばしたのはヒロインの方だ。顔が代わって戦闘力が100倍になりましたとさ」
香港での様子をモニターに出してみた。
『キョン、これ、本当に私がやったの?』
『だから言っただろ?顔を変えただけで戦闘力が100倍になるヒーローと一緒だよ』
『あら、それは私の脳みそが全部漉し餡で出来ているって言いたいのかしら?』
『今自分でやってみせただろ。パンチ一発でバイバイ○―ンってヤツだ』
「くっくっ、確かにパンチ一発でボスが倒れれば自信がつくだろうね。閉鎖空間だけでこうなるのなら、僕も行ってみたくなったよ。アジトの情報は全部ジョンが持っているんだろう?」
「行くのは構わんが、俺に付き合えとか言うなよ?ただでさえストレスが溜まっているんだ。今夜にでも余計な記憶を処分するつもりだ」
「影分身でもいいから来てくれないかい?」
「駄目だ。一人で行けないなら行くな。俺の方が暴れたくなってしまう。とりあえず、コンサートライブについてはSOS団とENOZ、青俺に任せるが、ENOZはあの曲どうするつもりなんです?今日演奏するんですか?」

 

 ス○イルプリキュアの曲の著作権関連については有希が解決済み。やろうと思えばいつでも可能だ。四人でしばらく相談していたがやる方向で決まったらしい。
「どちらのグループも自分の好きなカバー曲を取り入れてみたらどうだ?もっとも、ギター関連で中西さんと有希が曲を取り合うことになりそうだけどな」
たった一言で二人の視線が合い、火花が飛び散っているような演出でも入れたいところだが、カバー曲についてなら中西さんがやりたかったものがいくつかあるはずだ。有希が情報を集めている間に確定してしまえばそれ以外を選択せざるを得ない。
「じゃあ、これについてはグループで話し合って早い者勝ちにしよう。しりとりと似たようなもんだ。一度言った言葉は使えない。集約は俺がここにいるからいつでも渡しに来てくれればいい。Wハルヒや青古泉たちの事件の真相も含めてだ。俺はみんながライブをしている間も影分身で電話対応をしている。時差の関係もあるし、いつになっても朗報が入って来ないからな」
「ちょっと待ってください!キョン君がそこまで背負うことはありません!」
「どの道夜練もあるからその間暇なだけだ。影分身は減るが、明日以降のことを考えればそっちの方がいい。俺の分の仕事はみんなが負担してくれているし、今は寝る時間だって確保できる。電話対応をしたときの情報を毎日消していけばいいだけの話だ」
「朝比奈さん、彼を心配する気持ちは皆同じです。ですが、自分がやらなければいけないと決意したものを他のメンバーに投げることは一度たりともありませんでした。今は彼に託しましょう。朝比奈さんも明日のディナーのホールスタッフとして来て頂けませんか?」
「分かりました。でも、キョン君、無理しないでくださいね!」
「なら、お茶を煎れてもらえないか?それから青俺、夜練で選手全員に伝えて欲しい。一週間以上の間があるからまずはストレートに慣れてから変化球を入れるってな」
「分かった」

 

 81階では本体がみくるのお茶を啜りながら、SOS団とENOZがカバー曲を話し合い、決まったものから俺に情報が集約されていく。その間台湾のTV局を回り、各国からの電話を片っ端から排除していた。時刻は五時を過ぎ、SOS団、ENOZのカバー曲のリストが出揃った。どちらもアルバムにしてもいいくらいだが、まずはライブをいつやるか検討しないとな。青俺のSPが客を入れ始め、車道の反対側では動画サイトに載せるネタになりそうなトラブルが起きないかとスマホをずっと構えている奴もいた。しかし、チケット屋はいつになったら気付くんだ?会場内の様子もスカウターで見ていると、突如、明らかの外人だと分かる男がバッグから取り出した拳銃を乱射。列の反対側で警備していたSPが『ゆっくりと』その男を抑えに向かい、チケットを切っている方は「早く中へ入ってください」と次々と観客を敷地内へと避難させていった。被害に遭うのは無論報道陣のみ。
『青俺、そいつから得た情報をジョンに渡してくれるか?俺が他の連中を壊滅させてくる。警察や救急車は報道陣に呼ばせる。SP達で観客をガードしつつ、素早く入れてくれ。警察には「観客には被害者は一人も出なかった」と伝えてくれ』
『分かった』
『キョン、既に組織が壊滅しているのにそれを知らずに日本に入ってきたようだ。数が多いが一人でいいのか?』
どの道、少数だ。ハルヒ達に知らせても何の面白味も味わえずに終わる。
『これがそうだ』
ジョンから伝わってきた情報を元に本体でアジトへと向かう。少数でも武器は選び放題だな。ヘリや車まで用意しているとは思ってなかったぞ。武器は死体と一緒に消し飛ばすことにしてヘリや車は先にキューブ化してしまおう。銃弾が当たって傷をつけたくはない。キューブ化に気付いた連中がようやく俺を見据える。
「貴様、まだ台湾にいるはず……どうしてここにいる!?」
英語……香港からの侵入者で間違いない。
「生憎とおまえらに説明したところで理解できるはずもない。ヘリと車はいただいた。あとは現金とおまえ等が持っている他の組織の情報だけだ」
すかさず拳銃で撃ってきたが、兆弾で跳ね返る。そうだな……バラバラにされているのにどうして自分が生きているのか考えながら消えてもらうことにしよう。長刀を情報結合して半球を作りだす。
「“room”」

 
 

…To be continued