500年後からの来訪者After Future7-19(163-39)

Last-modified: 2016-12-18 (日) 15:15:10

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future7-19163-39氏

作品

年越しのパフォーマンスを受けて、世界中が俺を中心に動き出してしまったことに対してハルヒが嫉妬。高一の頃、短冊に書いた内容だっただけに、悔しさを隠しきれない様子でいた。また、以前から懸念していた香港マフィアが動き出し、その件も含めて人事部には古泉や圭一さんでも対応しきれないほど、他国からの電話が殺到。俺一人で人事部を取り仕切ることになった。そしてコンサートライブの直前、ついに本物のテロが本社前で起こってしまった。観客には怪我人は一人も出さず、報道陣のみ死傷者が出る事態となった。まぁ、死んだかどうかは明日のニュースで確認すればいい。その前に反乱分子は排除しないとな。

 

オペ○ぺの実の能力で切り裂いているとはいえ、あの場面とあんまり変わりがないな。ジョン、代わるか?
『いや、最後だけ代わってくれ。俺がやるとエネルギー波まで撃ってしまいかねない』
それもそうだな。エネルギー波を撃つまでが一連の流れとしてジョンのルーティンワークになっている可能性が高い。本社前にはようやくパトカーと救急車が到着。青俺が事情聴取で「我々でガードしていたので、観客には一切怪我人はでなかった」とコメントしていた。俺の方も武器と切り刻んだマフィアを閉鎖空間にテレポートさせて次へと向かっていた。幸いにも……もとい、不幸にも無傷でその場に残っていた報道陣達も機材を担いで逃げていく。その瞬間もバッチリ動画として収められていた。日本国民の大多数が報道陣を見下しているに違いない。そろそろ台湾も荒れる頃だ。電話対応は止めにして夜練とマフィア狩りに集中しよう。
TV局での告知を終え、リムジンが空港に到着する前から影分身が視線を感じていた。一つ…二つ……三つ……残りは着いてから数えるとしよう。
「派手に暴れられそうだ。すでにリムジンを狙撃しようとしている奴もいる。狙撃手はテレポートで落とすから、車から出てきた奴らを相手に暴れ回ってくれるか?なるべく深手を負わせておいてくれ」
「ふふっ、不満が残るような数じゃないといいんだけど」
「セリフがハルヒに似てきたな。じゃ、行くぞ!?」
「ええ、いつでもOKよ!」
まずリムジンから降りた俺に狙撃が計五発、ヒロインにも五発の銃弾が飛んできた。香港と同様、駐車場に停めてあった車の中から何人も出てくる始末。せめてリムジンが着くまで身を隠すくらいしていればいいのにそういう素振りすら見せない。本当に馬鹿な連中だよ、まったく。すかさずリムジンをキューブ化すると、狙撃手を空中にテレポート。服部やシドもこんな気分だったのかねぇ?ダメージはケタ違いだろうがな。ヒロインと同時に走り出すと、最初の一人をドルフィンキックで蹴り上げた。おいおい、アクション俳優の素質が十分ありそうだな。報道陣にもある程度致命傷を与えることができたようだし、二手に分かれることにした。深手を負わせながらサイコメトリーで情報を集めていく。今回はいくつものマフィアが混じっているようだ。中国同様、『台湾黒社会』と呼ばれているらしいからな。トップの首でも刎ねてきたいもんだ。俺たちが闘っている間に報道陣がパトカーと救急車を呼んだようだが、銃を乱射している状態で入りたくても入れずにいた。ついでにカメラを全部破壊しておくことにしよう。チキン野郎が撮った映像よりよっぽどいいものを送りつけてやるよ。すでに壊れているものもあるが、データとして残っている可能性もある。機材を全て爆破してからしばらくようやく銃声が止み攻め手を無くした連中が俺とヒロインの挟みうちに遭っていた。

 

「あっけなさすぎるわね。もう終わりなのかしら?」
「なんでおまえら拳銃が効かないんだ!?」
「学習能力のない奴に説明したところで俺たちにメリットはない。中国黒社会もおまえらと同じことをして、同じように負け犬に成り下がる。もう眼に見えているんだよ」
「フン、俺たちを捉えたところで仲間が総出でおまえらを襲いに来るぞ!!」
「それでもこうして俺たちは生きている。イタリアも香港も白旗を振ったぞ。組織を襲いに行った仲間が不満そうに帰ってきて俺にこう告げた。『張り合いが無くなってやる気が失せた。「今後、俺達に危害を加えようとすれば、香港の全マフィアを叩き潰す」と宣言してきた』そうだ。もう一つ『台湾や中国の方にも知らせておけと指示を出しておいたが、どちらも「はい、そうですか」と引き下がるとは到底思えない』だとさ。まさに、今この瞬間のことだ。引き下がらず、武器を手にしただけで強気になったが、どいつもこいつもチキン野郎に変わりはない。さっさとこいつらを片付けて空港に入るぞ。もう時間がない」
「了解」
『やめてくれぇ~~~~~~!!!』
カメラを失った報道陣が俺たちに近寄ることもなく、閉鎖空間にぶつかって尻もちをつきながら呆れ果てていた。
「それで?本当にあっけなさすぎたのか?」
「物足りなさは否めないわね。それより、さっきあいつ等に何を話していたの?」
一語一句違わずヒロインに伝えると、二人で空港内を歩いている間にヒロインが止まった。まぁ、衝撃的事実も紛れ込んでいたから当然か。
「香港マフィアが白旗を振った!?私たちがフィリピンにいる間に?」
「ハルヒ一人で一晩に四つか五つは潰しているだろうし、古泉や青俺は影分身で一体につき一つの組織を潰しに行った。組織が潰されていくと情報が回ったころには、ビビりまくっていて張り合いが無くなっていたとさ。なんなら、今夜俺たちに付き合ってみるか?台湾マフィア潰しに。通訳なら俺が引き受ける。ハルヒ達の暴れっぷりを見るのも悪くない。もっとも、今はミュージシャンとしてライブをしている最中だけどな」
「ミュージシャン!?あなたもハルヒさんも本当に何でもアリなのね」
「なんでもは出来ない。俺たちに出来ることをやってるだけだ。それで、どうする?」
「物足りないし、混ぜてもらってもいいかしら?」
「機内じゃそこまで時間はないし、ホテルについてからになる。皆には説明しておくよ」
「なんだかワクワクしてきたわね」
こっちが影分身で良かった。ジョンが聞いたら何かしら文句を言ってくるに決まってる。試しに同期してみるか。
『あ―――――――っ!俺の特権が奪われた!!』
やっぱりな。本体の方はとっくに反乱組織を根絶やしにした後、ジョンのかめ○め波で全て吹き飛ばした。遅い夕食を一人で食べていとライブを終えたメンバー達が戻ってきた。青新川さんが用意してくれた料理もあるんだが、どう切り出したものか……とりあえず、告知の方もまだ飛行機の中だし、乾杯してからだな。
「それじゃあ、年末年始のコンサートライブもこれで全部終わりね!ファイナルライブお疲れ様でした!乾杯!!」
『かんぱ~い!!』

 

「それで、テロリストの方はどうなったんです?」
「とりあえず、観客は全員無傷で入れたし、無傷で返した。負傷を負ったのは報道陣だけで死人が出たかどうかまでは俺にも分からん。とりあえず、テロリストは警察に引き渡したし、それ以降は黄俺に任せてある」
「どうなったのか早く教えなさいよ」
「説明していたら日付が変わってしまいそうなんでな。ライブの間にいろんなところで色んな事があったんだ。全部伝えるから机の上に手を置いてくれるか?」
「それほどの大事になったというんですか?」
「いいから手を置けって。全部伝えるから」
集約した情報、映像、ジョンのセリフに至るまですべて指先に込めて全員に受け渡した。
「分かった。TBSを除くTV局、新聞社二社、及びアメリカのTV局各局にこの映像を送る」
「ヒロインさんがマフィア相手にここまで戦ってたんですか!?」
「イタリアで襲われた直後とはまるで別人ですね。ですが、やはり引き下がりませんでしたか」
「面白いじゃない!二人がホテルについた段階で台湾に乗り込むわよ!」
「ところでキョン、日本の報道陣だけならまだしも、どうしてアメリカのTV局すべてに映像を送る必要があるんだい?映画の宣伝というわけではなさそうだけれど……」
「他のハリウッドスターを安心させるために決まっているわ!キョンが閉鎖空間を取り付け終わるまではみんな脅えてたんだから!」
「とりあえず今伝えた通りだ。俺はヒロインの通訳としてしか仕事はしない。あとはみんなに任せる。SOS団らしく派手にやってくれ」
『問題ない』

 

 影分身がヒロインを連れて来る頃にはWハルヒ、有希は影分身、古泉と青俺は影分身を大量に情報結合。ジョンも自分の身体を情報結合して意識を移していた。因みに俺の本体はハルヒのシャンプー&マッサージを堪能中だ。
「キョンから聞いてはいたけど、こんな光景を見ることになるなんて想定外よ。この人数で一人に一つ組織を潰されたら白旗を挙げて当然ね!ハルヒさんが暴れているところも是非見てみたいわ!」
「ということだ。睡眠時間は確保したいしさっさと行こうぜ!」
「じゃあ、今回は一番大きいところをハルヒさんに譲るわ!暴れている光景を見たら自分も暴れたくなるでしょ?」
「問題ない。二番目に大きければそれでいい」
「僕は小さな組織ばかりで十分です」
「俺もそれで良い。黄ハルヒが決めてくれ」
『現時点で一番大きいのはここだ』
ジョンから情報を受け取ったハルヒが俺とヒロインを連れてテレポート。あとはジョンに任せておけばいいだろう。って……ちょっと待て!古泉と青俺、それに青ハルヒは中国語が分からん!青古泉が残らなかった理由がようやく判明した。まぁいい。とりあえず滅ぼして帰ってくるだけだ。ジョンの世界でどうだったか聞くことにしよう。しかし、流石は現時点で一番大きいといわれた組織のアジトだけのことはある。まずは門番にご挨拶といこう。
「おまえら、上海に向かったはず!どうしてここにいる!?」
聞いた言葉をそのまま通訳すると、ヒロインがいい返してきた。
「『あれだけじゃ物足りないわ!みんなまとめて潰しに戻ってきたのよ』だそうだ。俺はただの通訳。おまえらを潰すのに俺が出る幕はない。さっさと潰して次に行くぞ」
「なら、おまえから潰れろ!!」

 

 曲刀を俺に向けて振り下ろしたが、ハルヒの指二本に遮られた。いくら力を入れても刀が動くことは無い。そのハルヒを狙ってもう一人が横薙ぎで曲刀を振って来るも、こちらも指二本で塞がれた。
「言葉が分かると逆に面倒ね。こんな奴等さっさと片付けましょ!」
曲刀と一緒に門番を持ち上げると、門目掛けて男二人を投げつけた。SOS団団長らしいったらありゃしない。ケ○シロウか?こいつは。って、そういう方面で使うのも悪くないな。本当に頭部が破裂するのか確かめてみたいな。これだけ広いアジトならあっちの技も使えるし、はぁ……やっぱり来るんじゃなかった。俺まで暴れたくなった。
「キョン?ハルヒさん、もう行っちゃったわよ?私たちも早くいきましょ?」
「ああ、先に行っててくれるか?あの調子じゃ通訳の必要がなさそうだ」
「分かった」
「あの女ぁ……どこに行きやがった!?」
「なんだ、まだ立てる元気があったのか?」
「うるせぇ!まずはてめえからだ!!」
「ほぉあ――――――っ!あたたたたたたたたたたたたたたたたほぅあったぁ――――――っ!!北○百烈拳!!」
さて……急所はすべて突いてみたものの、どうなることやら。
「ひでぶっ!」
おいおい、嘘だろ……漫画の世界だけかと思っていたらこれも現実に起こるのかよ。セリフまで一緒とは思わなかった。とりあえず、こんな死体をヒロインに見せるわけにもいかんし血と一緒に牢屋に入れておこう。俺の服が破れずに済んで良かった。気絶していたもう一人……というより、屍を見るたびにテレポートだな。返事が無くても屍が残ったらこっちが困る。

 

 ようやく二人に追いついたと思ったら大広間で大乱闘が始まっていた。拳銃が床に転がっているところを見ると、既に撃ち尽くした後らしい。ん~しばらくコンサートも無いが、既に日本に向かっている奴もいるかもしれん。同期して有希に閉鎖空間の条件を変えてもらうことにしよう。新聞社二社を除いて明日の一面は報道陣の死傷事件についての記事になるはずだ。それでもイラつくことになりそうだが……もういい。やれやれ、通訳からただのゴミ拾いという雑用に変わってしまった。ボスはもう脅えているしもういいんじゃないのか?ヒロインも戦闘スキルを磨いてどうするつもりなんだか。ようやく俺の仕事が通訳に戻りそうだ。
「ここよりも規模のでかい組織の場所を教えなさい!そしたら他の連中と同じところに送ってやるわ!」
「おっ、おまえらうちの連中をどこにやった!?」
「俺が作った牢獄の中だ」
「だそうよ。で?あんた、どうする気?」
「金ならいくらでも払う!見逃してくれ!!」
「コイツもボスの器じゃないわね」
「この女……儂が下手に出ていればいい気になりおってからに」
「その女二人におまえの部下全員が負けたんだ。ハルヒ、コイツをサイコメトリーして次に進め。後始末は任せろ」
「嫌よ!こんな奴にふれるなんて!あんたがやりなさいよ!!」
やれやれ……俺だって御免だよ。容赦なく蹴り飛ばして牢獄行き。持っていた情報をハルヒに渡すと、ヒロインと一緒にテレポートしていった。またゴミ拾いからスタートすることになりそうだな。

 

牢獄と一緒にロシア連邦最北端までテレポート。外気温が何℃かは知らないが、意識を取り戻した連中が寒がっていた。まぁ、俺には一切関係のない話だ。
「お、おい貴様!一体俺たちをどうするつもりだ!?」
「ここで放置して俺は帰る、じゃあな」
「待て!いや、待ってください!俺たちも一緒に連れて行ってください!お願いします!」
「は、やなこった」
「このまま放置されたら死んでしまう!」
「あれぇ?おまえら、さっきまで俺たちに何をしようとしていたんだっけ?」
「あっ、あれは謝る!謝るから、許して!ねっ、お願い!!」
「謝って済んだら警察はいらん。男がぶりっ子をしても気色悪いだけだ。そんなにここにいるのが嫌なら、全員まとめて地獄に送ってやるよ」
さて、技名通りになるのかどうか確かめてみよう。声帯を変えて掌にエネルギーを一点集中。
「ワール○――――――――――――――――っ!!シェイキング!」
どうして地面に撃ちつけたエネルギー弾が途中で浮かび上がって相手のところに飛んでいくのかは謎だが、最初だけちょっと揺れたな。技を放った瞬間だけだから俺の勘違いかもしれん。閉鎖空間ごと爆破してハルヒ達の後を追った。現金や麻薬はすべてジョンの世界にテレポート済み。しばらくの間は日本円と交換できそうにないけどな。

 

 ハルヒの「面倒臭くなった」の言葉を皮切りに、二つ目の組織を潰したところでおしまい。ヒロインは影分身と自宅へ戻り、俺とハルヒはジョンの世界へと足を踏み入れた。どうやら、俺たちが最後だったらしい。
「おかえりなさい。随分時間がかかったようですね。どうされたんです?」
「ハルヒが一番大きな組織のボスに向かって、『ここよりも規模のでかい組織の場所を教えなさい!』なんていうもんだから、もう一か所まわっていたんだよ。『飽きた』という理由だけで戻ってきた。ヒロインも物足りなさは十分拭えたようだし、明日また闘うことになりそうだからな。ところで、こんな大量の麻薬どう処分したらいいものか困ってしまってな。あのアホの家に隠せるような量じゃなくなった。ブラックリスト入りした政治家の家に隠しておいて半年後辺りに内部告発でもしようかと思ったが、まず間違いなく首相が俺たちがやったと気付くだろう。もう少し谷底につき落としてやりたいくらいなんだが……何かいい案はないか?」
「機会があるまで此処に保管しておく以外にないでしょう。報道陣の家に隠すという案も、あなたが既に却下してしまっているようですし」
「やれやれ……潰したら潰したでまた困ることになるとは……心底使えない連中だよ」
「今に始まったことではありませんよ」
念のためと思って社長室の金庫に入れていたものも、ジョンの世界におかせてもらうことにするか。
『今朝の新聞が出た』
ジョンの一言を皮切りに、廃れつつあったルーティンワークが復活した。映像を渡したTV局はそのVTRを流し、新聞社二社はヒロインのベストショットを掲載。報道陣の死人が出たことよりもこちらの方が優先らしい。まぁ、当たり前か。見出しも『華麗なる舞い!台湾マフィアを撃破!!』、『ゴールデングローブ賞に影響!?主演女優の絢爛たる闘い!!』と俺が勝つのは当たり前、ヒロインの意外な戦いぶりに圧倒されたらしい。それ以外はテロと台湾での被害について。テロの方は死者11名負傷者18名、台湾の方は日本人死者はいないが、負傷者五名か。見出しも俺たちの批判より死んだ人間の行動のせいだと言いたげなものばかり。観客にはSPのガードにより被害は出なかったと書かれている。そうでもしないと新聞が売れないとでも勘繰ったんだろう。散々警告したのにあの様だからな。満員電車よりさらに酷い状態まで詰め込まれたにも関わらず誰も帰ろうとしなかった。実に滑稽だよ。

 

「そういう行動は確かにしていましたけど、死んだ人をこんな風に扱うなんて酷いです!」
「こういう人間の集まりだという証拠が明らかになっただけです。これで敷地外がどうなるのか見物ですね」
「俺はもう見たくもない」
『数人いるだけだ。曲がりなりにも、それなりの武装はしてきたらしい』
「うん、それ、無理。ガードになってないわよ」
「これだけ死人が出ているのにまだ蔓延っているわけ?今度は台湾マフィアに襲われるわよ!?」
「問題ない。わたし達には何の影響もない。それにわたしの閉鎖空間内に入った時点でサイコメトリーするような仕掛けを彼の指示通り施した。閉鎖空間内に入ればテロの被害に遭う前に撃退可能」
「撃退する必要なんてないわよ!アジトの方を潰しにいきましょ!」
「ところで有希、どこからかかって来るかによって受信できる電話を指定することはできるか?」
『キョン、僕たちにもよく分かるように説明してくれたまえ。キミが一体何を言いたがっているのかまるで分からないじゃないか。電話回線がどうかしたのかい?』
「要するに、日本人からの電話は社員が、五ヶ国語を話す海外からの電話は古泉や圭一さん達が、それ以外の国の電話は俺が第二人事部で受けるなんてことは可能か?って話だ」
「なるほど、それは名案です。それなら僕や圭一さんも電話対応に参加できますよ。社員が出社してきても支障がありません。有希さん可能ですか?」
「できるかどうかは不明。かかってきた電話の主をあなた達の影分身がサイコメトリーして送り先を決めるようなもの。閉鎖空間の条件で可能かどうか試してみないと分からない」
「でも、それでキョン君の負担が減らせるなら試してみてください!有希さん、お願いします!」
『みんな、時間だ』
『お疲れ様でした!』

 

 妻やOG達を着替えさせた後、影分身に俺の記憶を操作してもらい、必要のない情報はすべて排除。サイコメトリーをしたという事実だけ残しておいた。眠っている間に頭の中で情報を整理するなんて話を聞いたことがあるが、どうやらそれと同じらしい。記憶操作前よりすっきりした気分になることができた。コンサートライブも終わって一月六日(木)まずはディナーの準備がどうなっているかだな。
「ディナーの方は何ら問題ありません。あとはあなたにも調理に加わっていただくだけです。おススメ料理の方も今日中に作っておきましょう」
「私の方からも一つ報告がある。例のCMの件だが、明日の10時と15時に指定の場所まで来て欲しいそうだ。メモで渡すよりサイコメトリーの方が詳しく伝わるだろう。後で渡すことにするが、都合は大丈夫かね?」
「わたしは大丈夫なんですけど、ネックレスをアップで撮られたりしないかどうかが心配で……」
「だったら青キョンに運転も含めて付いてもらえばいいわよ!ズームで取っていたら破壊して撮り直しさせればいいだけよ!日本に入りこんだマフィアから強奪した車だってたくさんあるんだから!」
「それはいいんだが……ヘリと車の両方を同時に運転できるか自信がないな」
「問題ない。今のあなたなら十分可能。さっきジョンの世界で話題に挙がった電話回線についても問題ない。でも、五ヶ国語以外の国の言語専用のものはそこまで台数は必要ない。三台だけ用意した。社員の電話は国内からの回線のみ繋いだ。出社してきても平気」
「何にせよ俺は今日も人事部だな。父親と圭一さんも参加できるだろう。回線が仕分けできるようになって俺もホッとしたよ。有希、ありがとな」
「問題ない」
「すまないが、我々も電話対応に参加できるというのは一体どういうことか説明してもらえないかね?」
「要するに、日本人からの電話は社員が、五ヶ国語を話す海外からの電話は古泉や圭一さん達が、それ以外の国の電話は俺が第二人事部で受けることができるようになったという話です。勿論圭一さん達も日本国内からの電話も取れますし、社員が出社してきても他国からの電話に慌てることもなくなるということです」
「なるほど、対策を講じてもらえたというわけか。我々も助かった。社員にもそう伝えることにするよ」

 

「突然で申し訳ないんだが、SOS団とENOZのライブを14日と28日に入れたいと思ってる。どちらとも金曜の夜七時からスタートの予定だ」
「ホントに突然で吃驚したわよ。一体どうしたのよ!?」
「コンサートは一週間置き、野球の試合がいつ組まれることになるか分からないとなると、ライブのできる日がいつまで経っても決まらない。ライブの方なら金曜の夜でも観客が集まりそうだし、コンサートとライブは全く別物だ。昨日のようなコンサートライブではオーケストラの曲が制限されてしまう。ドラマの告知も含めて、まずは今月14日。翌週月曜の夜にセカンドシーズン放送開始だから丁度いいだろ?そろそろ番組出演の依頼が来るだろう。カバー曲の話も昨日出たし、著作権関係は有希に頼んでライブ毎に曲を変えていけばいい。どうだ?」
「なるほど、絶好の宣伝になりそうですし、客も集まるでしょう。すぐにチケット屋に依頼することにします」
「古泉君、ライブをする人間がOKしていないのに先走り過ぎよ!でも、そうね。野球は野球で専念したいし、コンサートは15日と29日にやるんでしょ?」
「ああ、そのつもりだ」
「問題ない。サイトにライブの件を乗せておく。大画面でも告知予定。著作権についても任せて」
「では、まずは14日(金)にライブということでよろしいでしょうか?」
『問題ない』
「もう一つ、告知が終わって落ち着いたところでタイタニック号の修理に入る。外観はほぼそのままだが、ディーゼルエンジンに変えるつもりでいる。修理に参加したい奴は?」
全員の手があがった。おいおい、OG六人は正月休みも終わっているんだぞ。眠気を取ってということになりそうだ。俺は不参加だな。

 

「全員参加するとなると、眠気を取ってということになりそうだ。時差を計算して明るいところで修理に入る。まずは船を動かすのに不要な錆やコケを取るところからになる。当然人骨も磁場に吸着してくるだろうから心の準備はしておいてくれ。情報結合で不足部分を補ってようやく海に浮かべられる。残りの細かい部分は何にするかアイディアをまとめておいてくれ。その間、俺は……」
『俺は?』
「寝る」
二回目でもズッコケる奴がほとんどとは驚いた。
『このバカキョン!同じことを二度も言わせるんじゃないわよ!』
やれやれ、それはこっちのセリフだ。理解しても応用できずに文句を言ってくる奴の言えることじゃない。
「どちらのOGも参加するんじゃ、告知が終わっても俺が寝られないだろうが。とにかく、当時は乗客意外にも乗組員だけで何百人といたんだ。それを影分身で補うというのも無茶な話だし、俺たちだって客としてクルージングを楽しみたい。レストランやカフェ、バー、遊戯室、船上プールくらいなら可能だが、他の場所をどうするか考えておいて欲しい。ゴールデンウィークが終わって、その次の週末あたりで社員や楽団員を連れて二泊三日ってところだな」
『面白いじゃない!』
「キョン先輩、いくら豪華客船でも普段でも遊びに行けるような設備は必要ないですよ!」
『キョン君、わたしは素敵な客室に泊ってみたいです!』
「だから、それをまとめておけと言ってるんだ。船体の修理が終わったら細かな部分を俺が作っていく」
『問題ない』

 

「涼宮社長、異世界の方はどうするんだ?」
「どうするってこのまま三月まで店舗の店員に経験を積ませるに決まっているじゃない」
「いいえ、こちらのOGも五人になりましたし、店舗の数を増やします。一人はデザイン課、一人は退職したばかりですが、残りの三人にはそれぞれ一店舗を任せてもいいでしょう。森さんや裕さんにも出向いていただく方が良いかと。冊子の売れ行きも低迷していますし、ビラ配りだけではこれ以上の進展は見込めません。本社のお披露目の前に少しでも店舗を増やすべきです」
「それもそうね……古泉君、場所はどうするか決めてあるの?」
「都心は浦和店、大阪は二号店、地元は三号店、それから、広島と新潟に新境地を開拓します」
『五店舗同時オープン!?』
「スキー場の運営については彼からも話がありましたし、我々が抜けていくことを考えれば、あとは日本代表のディナーとおススメ料理のみ。以前も六店舗同時にオープンしたこともありましたし、新メンバーも加わっているんです。十分可能なはずですよ?」
「くっくっ、面白いじゃないか。広島はこちらの世界でも新境地開拓のときにあがったところだからいいけれど、どうして新潟を選んだのか教えてくれないかい?」
「もうすぐ二月号が発売されますし、それに伴って店内にスキーウェアが並ぶことになります。新潟なら大きなスキー場も多数ありますし、ウェアを購入する客も多いとふんだまでです」
「くっくっ、こちらの古泉君も随分と副社長らしくなったもんだね。もう決定ということで良いんじゃないかい?」
『問題ない』
「では、来週14日(金)OPENということでディナー中に僕と涼宮さんで店舗を建てに行ってきます。涼宮さんには服の配置を見てもらうだけですから、調理に影響はありません。お願いできますか?」
「あたしに任せなさい!」

 

「……っと、告知の影分身から同期で情報が流れてきた。ホテル前で銃撃戦、最初のTV局も香港同様ジャックされているらしい。他のTV局も同様の可能性があるからサイコメトリーして潰して欲しいとの事だ。昨日は古泉や青俺、青ハルヒも実感しているとは思うが、中国語が分からない以上会話が成立しない。そのことを十分加味して向かってくれ」
「やれやれといいたくなりましたよ。指示を出していたのに案の定ですか。あなたは既に影分身で暴れているようですし、あとは我々で対処します。問答無用で叩き潰すまでですよ。会話が成立すると、こちらのストレスが溜まる一方ですからね」
「なら俺は人事部だな。美姫がサインを出さなきゃいけなくなるようなことだけはしないでくれよ?」
『問題ない』
金と麻薬についてはこれまで通り、一体たりとも死体は残さず塵にするのも共通理解をしているから心配いらん。さっさと電話を片付けることにしよう。人事部には圭一さんと父親、残りは第二人事部の方も含めて俺の影分身で埋め尽くされた。俺は各国からの取材電話を切り捨ててばかりだったが、圭一さんと父親の顔が明るくなっている。朗報でもあったのか?昼食の時点で一度同期してから三人で81階へと戻った。ハルヒと有希は分かるが、朝倉がこの時期にユニフォーム姿?もう冊子は出来上がったのか?子供たちのチームに日本代表を入れなくて済むが……まぁいいか。ここは三人に任せよう。青みくるは異世界の発展に貢献するようだな。
「カバー曲の著作権についてすべてOKが出た。ライブで使用可能。アルバムも出せる」
「じゃあ早速練習を始めないとって……マフィア潰すのも参加したいし……あ―――――っ!もう!どうすればいいのよ!?」
「今すぐ練習を始める必要はない。14日のコンサートでやる曲を絞ってから」
「私たちも曲を決めるところからだね。貴子、ギターアレンジもするんでしょ?」
『ギターアレンジ』と聞いて有希がピクリと反応した。間違いなくアレンジを加えてきそうだな。しかし、この二人のギターアレンジならとんでもないことになりそうだ。その頃には告知も終わっているし、おススメ料理の調理の方は20%もあれば十分だ。

 

「今月のコンサートとライブについては、僕の方でチケット業者に頼んでおきました」
「こちらからも報告だ。セカンドシーズンのドラマの告知で以前と同じドラマ対抗のクイズ番組らしい。明日の夜生放送だそうだが、どうするかね?」
「では、僕と黄朝比奈さん、涼宮さん、ジョン、裕さんで向かいます。おススメ料理については彼の影分身で大丈夫かと。ところで、上海のTV局回りの方は大丈夫なんですか?見たところハルヒさんも黄有希さんも黄朝倉さんも午後は試合に出るようですが……」
「全部片付けてきたわ!今日の夜台湾が白旗を上げたら、即中国に行くわよ!」
「それは構いませんが、昨日は影分身同士で情報を同期しなければ良かったと後悔しましたよ。一方的にこちらから攻撃を仕掛けるだけで、正直飽きてしまいました。あなたも参加しませんか?」
「ダメです!!キョン君には一日でも多く寝てもらわないと!」
「みくる、それなら今後いくらでもできるから心配するな。あまり犠牲者が多くても逆に困るんでな。潰すなら早めに潰した方がいい。ああ、そうだ、『潰す』で思い出した。さっき、イギリスから電話がかかってきてな。『タイタニック号を返せ』だそうだ」
『タイタニック号を返せ!?』
『ふざけんじゃないわよ!いくら作ったのはイギリスでも、ずっとサルベージできなかったじゃない!そんなことを言ってくるんだったら元に戻してきなさいよ!!』
「ああ、俺もそう言った。『返せというのなら、元の位置に戻してくるから、自分たちでサルベージして修理しろ。ただし、ハリウッドスター達との約束が果たせなくなってしまうことだけは忘れるな。ハリウッドスター全員を敵にまわしても構わないのならいくらでも返してやる』と伝えたら、すぐに謝って電話を切ったよ。もうこの件に関して電話は来ないだろうし、来たら来たで似たような返し方をすればいい」
『問題ない!』

 

「それにしても、今日依頼が来て明日の生放送というのはこっちの都合を考えていないんじゃないかい?」
「年末年始で忙しかったのと、世界各国から電話が来て何度かけても繋がらなかったせいでしょう。直接依頼に来たくても閉鎖空間で通れませんからね」
「くっくっ、ようやく理由が分かったよ。でも、僕たちにとっていい知らせならキョンの閉鎖空間を通ることができるはずだ。もっとも、今まで入れなかったからここに来ても無駄だと判断されたようだね。ちなみに、いい知らせを優先することはできないのかい?今朝も相手によって電話を仕分けていたじゃないか」
「分かった。条件を変えておく」
「そういえば、天空スタジアムの一般開放はどうなったの!?」
「スタジアムを透明にしておいたが、一般客はまだ指折り数える程度。夜になったら一気になだれ込んでくるはずだ。日が暮れるのも早くなったしな」
「ってことはSPが必要になりそうだな。直結エレベーターに案内するのはいいが、おでん屋のあれはなんとかならないか?振袖もそこまで飾れなかったし、今後のスキーウェア、スーツ、ウェディングドレスにだって影響してくるだろ?」
「くっくっ、そういうことなら僕たちの後ろにあるもので対応すればいいじゃないか。こっちの朝倉さんの店なんだから、テレポート先が異世界の本社でもいいだろう?」
「では、会議室の上13階すべてをおでん屋のフロアにしてしまいましょう。窓に壁紙を張っておけば13階だとは思われません。ただ、接客が間に合わなくなる恐れがありますので、厨房もスタッフも募集をかけた方が良いでしょう。あの建物も改築して厨房をもっと大きくした方が良さそうです」
「それなら、黄有希さんと一緒に間取りも考えなくちゃ!13階の方にも厨房があった方がよさそうだし」
「問題ない。ここと同じどこ○もドアはあなたが設置して」
「改築作業が済んだら教えてくれればいい。俺は二階にいる」

 

「あのー…」
「どうかしたの?みくるちゃん」
「一般開放のお休みの日って土曜日で合ってますか?」
「そうだ、それがあった!ってことは、楽団が練習する曜日の午前中もってことになるな」
「問題ない。立札と閉鎖空間で対応可能。開放できる時間帯だけスイッチを押せるようにすればいい。SPはいらない。でも、わたしは影分身で店舗の構想と試合の両方に参加する。今日中にあなたを呼ぶ」
「分かった。壁紙ついでにエレベーターも隠しておいてくれ。その代わり、一階にはスキーウェアを着たマネキンを用意して欲しい。在庫も揃えておいてくれ」
「問題ない」
「みくる、鶴屋さん達が来るのは10日の月曜日だったな?」
「そうですけど、それがどうかしたんですか?」
「その日が成人の日になることをすっかり忘れていたんだよ。早朝からヘアメイクと着付けに追われる上に、祝日だから今週は四泊五日になってしまう。おススメ料理も作らなくちゃいけないし、そんな状態で大丈夫なのかってことだ。それに、翌日から子供たちも保育園と小学校だ。出来れば鶴屋さん達も入れてスキーに滑りに行きたい。火曜まで休みにすると、青有希が幸の冬休みの宿題を小学校に届けに行くことになってしまう」
『あ~なるほど!』
「そういえば、こっちの新川さんって大型バスの運転免許は持ってらっしゃるんですか?」
「随分前のことになりますのでペーパードライバーですが、一応取得しております」
「しかし、驚きましたよ。どちらの新川さんも多方面に長けているとは思いませんでした。ですが、我々の成人式のとき以外は我々で対応していましたし、告知も終わってあなたにも余裕はあるはずです。成人式が終わり次第、ウェアを選んで安比高原に行けばいいでしょう。おススメ料理は前日までに仕上げておけば問題ありません」
「じゃあ、発表は10日で決定だな。振袖の注文の方はどうなっているか分かるか?」
「一昨日までは注文があった。それでも2件だけ。昨日は注文が来てない。でも、異世界の方は今年が初めて。まだ来る可能性がある。例年通りで平気」
「すまない、少々長話になるが一件大きなイベントの依頼があった。話してもいいかね?」
『イベント!?』

 
 

…To be continued