500年後からの来訪者After Future7-20(163-39)

Last-modified: 2016-12-19 (月) 17:23:15

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future7-20163-39氏

作品

空港で俺たちを待ち受けていた台湾マフィアをヒロインと俺の二人で圧倒し、アジトにも足を運んでいた。その間、本物のテロ組織からの攻撃を受けて、ついに報道陣に死傷者が出た。各報道陣は自分の会社の存続を優先し、死者に対する批判で記事を飾っていた。告知もいよいよ終盤、今後の予定やイベント事に関する会議をしている最中、圭一さんから一大イベントの依頼が来たと伝えられた。会議が長引いても大した影響はない。

 

「練習試合の方は会議が長引いたってことで良いわよ。世界各国から電話が来ているのは本当のことなんだから」
「年末の君のパフォーマンスを受けて、テレビ朝日がデュエルなんとかの全国大会を開きたいそうだ。準決勝と決勝を五月五日に天空スタジアムでやらせて欲しい。君のパフォーマンスでモンスターを実体化してほしいそうだ。原作者のOKは貰っているらしい」
「くっくっ、僕たちの世界での野球大会と似たようなものをするってことかい?参加者の平均年齢が低くなりそうだから決勝を子どもの日に設定するなんて面白いじゃないか」
「裏を返せば、いいカードを手に入れようと暴動が起きるってことだ。すんなりOKしていいものか迷うな……」
「いいじゃないか。その辺の運営は全部TV局に押し付ければいい。奪ったカードで決闘していると分かった時点で、失格で構わないんじゃないかい?」
「そうだな……それなら、原作者が漫画を描いていた頃のカードしか使えないことにする。細かいルールは俺から直接伝える。天空スタジアムの使用もパフォーマンスもOK。その代わり、チケット販売は人事部でやる」
『チケット販売を人事部でやる!?』
「業者に任せればいいのでは?何か理由があるんですか?」
「決勝を行うのが子どもの日に設定されたのに、子供からチケット代を取るわけにはいかん。電車で言うところの女性専用車両と同じだと思ってくれればいい。高校生以下の子供とその保護者にはチケット代をタダで受け渡すが、それ以外はコンサートと同様3000円とする。業者だと社会人にもタダで売ってしまうことになる。当然チケット屋に一枚もくれてやるつもりはない。電話対応は俺一人で十分。時間はかかるがサイコメトリーで駆逐する」
「なるほど、それで人事部でというわけか。分かった、折り返しの連絡は君に任せる。チケット販売のときは私にも入らせてくれ」
「宜しくお願いします。ところで、青俺と青古泉。遊戯○のカードゲームで対戦したことはあるか?」
「やりたかったのは確かですが、二人分のデッキを構築するほどのお金もありませんでしたので一度も……」
「俺も買ってみたことはあったはずだが、どこにしまったか忘れたな」
「一度リハーサルをしてみたいのと、CMで実際にはこんな感じになると映像をTV局に送りたいと思ってる。青古泉はそのままだが、青俺にはジョンの催眠をかけて出てもらうつもりだ。それともおまえが直接でるか?ジョン」
『面白そうだ。漫画を読みなおしてデッキを構築してみよう』
「というわけだ。青古泉もカードは情報結合で構わん。原作に準拠したカードとルールでやることを伝える」
「分かりました。僕もデッキを考えておきましょう」

 

「はい、テレビ朝日です」
「SOS Creative社社長のキョンと申しますが、先ほど遊戯○カードの一大イベントの件でお電話をいただいたのですが、担当者の方はお手隙でしょうか?」
「すっ、すぐに確認してまいります!少々お待ちくださいっ!」
告知中の俺が直接電話をかけてきたとなれば、いくら忙しくても担当者につながざるを得ない。向こうからかけて来た電話だからな。
「すいません、お待たせ致しました。私は今回のイベント担当の根岸と申します」
「先ほど依頼があった件、すべて伺いました。天空スタジアムの使用もパフォーマンスもOKです」
「ほっ本当ですか!?あぁ、ありがとうございます!!」
「ただ、こちらから条件をつけさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「条件といいますと?」
「原作者の高橋先生を尊重して、高橋先生自ら漫画を描いた原作やアニメのカードのみの構成、及びルールで大会を開いていただきたいんです。アンティルールは排除しますが、それ以外はバトルシティ編のルールで開催して欲しいというのが条件です。今ではカードの種類が多すぎたり強すぎたりすることもありますし、カードを巡ったトラブル、学校にカードを持ちこんで練習をするなどの事が容易に想像できます。そのような者には即刻失格になるよう厳正に大会を開いて欲しいと願っています。こちらの方でも天空スタジアムで古泉とジョンのデュエルを映像で記録したものをそちらにお送りしようかとも考えています。加えて、当日は高校生以下の子どもとその保護者には無料でチケットを渡す予定でいます。いかがでしょうか?」
「天空スタジアムの使用やパフォーマンスだけでなく、そこまで考えてくださっていたとは……分かりました。その条件で全国大会を開き、注意喚起を徹底して行いたいと思います。何卒よろしくお願い致します」
「では、近日中に映像をそちらに送りますのでよろしくお願いします。本人たちもどんなデッキにするか考えている途中のようですので、しばらく日数をいただければ届くかと」
「心待ちにしております。ありがとうございました」
「では、失礼します」

 

 とりあえずこれでこの件はおしまいだ。優勝者にはアテ○との直接対決何て言うのも悪くない。不正をすることになるだろうが、ラストをこれで飾ればもう一回なんてことになるだろう。しばらく電話対応を続けていたところで、有希からの連絡が入った。異世界の13階も社員食堂を同様、中央に厨房を設けたようだ。だが、酒を飲むということもあり、長方形のテーブルとイスのみ。座敷や個室も用意してあるが、床はただのタイル。テーブルクロスも置いていない。確実に汚れることを見越してということになりそうだ。早めの夕食を食べようと戻る頃には、すっかり日も暮れて、大勢の一般客が天空スタジアム直結エレベーターで上にあがっていく。テロ対策と案内で青俺のSPが敷地外に警備と案内が付いていた。ついでにほかの客と混じって中に入ろうとして閉鎖空間に防がれている報道陣。青俺もSPで止める必要はないと判断したらしいな。
「報道陣は通れないんだから諦めてさっさと退けよ!」
「ホンット、報道陣って馬鹿な連中だよな~。ちょっとは学習しろよ!」
「あんた達がいたら私たちまでテロに巻き込まれるじゃない!邪魔よ!邪魔!」
くっくっ、面白いじゃないか、なんてな。夕食を食べながらスカウターで映像を見ていたが、ここまで面白いものが見られるとは思わなかった。だが、プラスマイナスゼロにする情報が伝わってきた。中国最後のTV局での告知を終え、空港に向かっている最中、リムジンの後ろから超大型のトラックが他の車を潰してでも追ってきているか。何かどっかで見たことのあるようなシーンのような気がするが……なんだっけ?
『赤上げて、黒白下げて、青上げて!いっただきま~~~す!!』
それだ。声優が変わる前の数少ないTVスペシャルや映画作品の中の一つだ。ジョンに斬鉄剣のことを教えるのに見せていたのをすっかり忘れていた。しかしまぁ、リムジンの後ろに付いたところで急ブレーキをかければいいだろう。ディナーは影分身に任せることにしよう。空港でも面白いことになりそうだ。

 

「どうするつもり?」
「くくく、これと似たシーンがあったのをジョンが教えてくれてな。機内にいる間にアニメを一本見ないか?」
「じゃあ、対処法もあるってことね!」
「いや、これから急ブレーキをかけてリムジンにかけておいた閉鎖空間にぶつけさせる。むち打ちにならないように注意してろよ!?」
ヒロインの表情を確認してトラックがもう少しでリムジンにあたろうかとしたところで急ブレーキ。かなりスピードを出していた分、追突事故で余計な怪我人を出さずに済んだが、トラックが宙に浮き、勢いよく反転して上から落ちてきた。リムジンの上にトラックが浮いているなどという状況にするわけにもいかん。トラックの運転席近辺が再度閉鎖空間に激突したが、急発進したおかげでトラックは再び動き出すことなく、後から来たパトカーによって処理された。空港の駐車場に入ってすぐ、リムジンにミサイルが撃ち込まれ、ガトリングガンまで用意されていた。報道陣も空港内から外の様子を撮影しようとしているが、入口の扉が防弾ガラスになっているとは思えない。
「随分派手にやってくれるわね、どうしてやろうかしら?」
「SOS団の名の由来を覚えているか?」
「確か、『世界を大いに盛り上げるためのハルヒさんの団』だったかしら?」
「ご名答。そして俺はその団員その1だ。派手に盛り上げてやるさ」
「わたしも所属してみたくなったわね。逃げられる前に行きましょ!」
リムジンを降りてすぐ、ヒロインがリムジンに施した閉鎖空間に乗ってマフィア目掛けて一直線。報道陣もリムジンを防壁にしようとしていたが、残念だったな。キューブに収めると空港の入口のガラスに穴が開いていく。報道陣がどうなろうと俺たちの知ったことではない!

 

 マフィアの中心部にいるんじゃエネルギー弾が撃てそうにないな。なら、薔薇一本で勝負を仕掛けることにするか。声優も確か同じだったはず。近~中距離で攻撃を仕掛けるにはこれがいい。
「薔○棘鞭刃(ロー○ウィップ)!!」
やれやれ、本来なら一薙ぎで斬殺死体が出来上がるんだが、ここでも手加減をしなくてはならんとは。それでも棘がナイフのように突き刺さり、鞭を打ちおろした痕が残っていた。アジトの情報もジョンが集約しているし、ここを壊滅させたら、あとは警察に任せるのみ。中国黒社会VS SOS団というのも悪くない。全員に深手を負わせた後、空港に向かって歩いていた。後でまた使うことにして鞭の情報結合を解除した。
「あなたが使っていたあの鞭、あれも漫画のキャラクターの武器なの?」
「ああ、一昔前のものだからあまり知られていないはずだ。だが、個人的にそのキャラクターと声優が好きでな。どちらかというと、好きというよりはカッコイイと感じていた。まぁ、俺の憧れのようなものだ」
「なら、さっきのトラックの件も合わせて見せて欲しいわね」
「今回はスカ○ターで見よう。そこまで機内での時間もないしな」
その間、古泉、青ハルヒ、俺で日本代表のディナー。青古泉と青ハルヒが店舗の建設とウェアの配置の確認。青朝倉と有希は夕食を早々に切り上げおでん屋に向かっていた。青俺はSPを配置したまま警備を続けていた。
『ちょっと!そっちの様子がどうなっているのか教えなさいよ!』
『なら、最後のTV局で告知が終わったところからモニターで見せてやるよ』
本社81階に巨大トラックの襲撃の様子から空港制圧までの様子をモニターで見せていた。ディナーが終わった時点で古泉や青ハルヒにも情報を受け渡し、まずは台湾マフィア狩りで意見が一致。俺はシャンプー&マッサージを終えてから出向く羽目になってしまったが、その頃には台湾マフィアも白旗を上げていた。ヒロインの方は自宅に戻ってからもアニメに夢中になっていた。

 

 サイコメトリーした情報を元にアジトへとテレポート。『トラックを運転していた奴らだけは俺にやらせてくれ』と言っていたのがどうやら通ったらしい。
「よう。さっきは随分と派手に暴れてくれたな?」
「貴様、どこから入ってきた!?」
「馬鹿に説明しても理解できるわけがない。さて、今度はこっちが派手に暴れる番だ。俺の武器はこれ一本、おまえらはどうするつもりか見せてもらえないか?張り合いが無さ過ぎると、こっちがつまらんからな」
「ハッ、笑わせるな!薔薇一本で何ができるのか見せてもらいたいのはこっちの方だ!!」
「薔○棘鞭刃(ロー○ウィップ)!!これでおまえら全員の首を刎ねる」
「やれるものならやってみやがレッ……っ!?」
馬鹿な奴ほどすぐ吠える。いつものことだが、見本を見せるためにセリフを最後までと思ったが、どうやら言いきれなかったらしい。周囲にいた連中が首から噴き出た血で染まる。最終話の首を刎ねるシーンの演出を少し変えてみようかと悩んでしまうな。
「さて、見本はみせてやった。あとはおまえら全員だ」
「殺せ!殺られる前に殺してしまえ!!」
見事に全員揃って拳銃を構えて発砲……しようとしたところで首が飛んだ。
「『あとはおまえら全員だ』と言ったはずだ。結局この程度の奴等だということだ」
はねた首が何か言いたそうにしていたが声に出すことはできず仕舞い。飛び散った血もろとも牢屋にぶち込んでおいた。ジョン、次のアジトを教えてくれ。問答をするのも疲れたんでな。テレポートしてすぐに攻撃を仕掛ける。
『なら、ここだ。だが、疲れたのなら一気に吹き飛ばせばいいだろ?』
思いついたら試してみたくなった。それだけだ。

 

 ハルヒ達に見せた映像は有希に渡して編集。指定した報道陣に送ってもらった。あとはチャイニーズマフィアを一つ残らず潰そうと思っていたら、古泉達が大暴れしたらしい。すでに白旗を振っていた。ジョンの世界に足を運ぶ頃にはいつものメンバーが揃っていた。今日は雑談会か何かか?誰一人としてバレーをする者はいなかった。
「俺が最後らしいな。どうだった?」
「問答ができませんでしたから、行って潰すを数回繰り返したところでジョンからもう無いと言われましたよ。しかし、驚きました。あそこまで派手に仕掛けてくるとは想定外です。それに動じていないヒロインも含めてね」
「SOS団に入るなんてあたしは認めないからね!」
「本人の軽い冗談だ。気にすることはない。それで、バレーもせずにどうしたんだ?」
「ジョンと古泉君は例のデッキを作っている最中だし、色々と報告会をしていたら、ようやくあんたが来たってだけよ。それより、中国マフィア200万人が聞いて呆れるわ!一晩もしないで白旗をあげるなんて!!」
「韓国や香港と違って一つの組織の人数が多かっただけです。流石にこれでは涼宮さん達に申し訳ないと思って途中で影分身の数を減らしたんですが、それでもこの有り様ですからね」
「あとはテロ対策だな。毎日のように天空スタジアム目当てで一般客が来そうだし、俺も黄有希と同様の閉鎖空間を張ったよ。問題はこの大量の金と麻薬をどうするかだな」
「金の方は青有希と青俺で日本円に換金してきてくれ。異世界なら大金には驚いてもそれがどこからきたものかまでは分からない。ただ、長門優希と鈴木四郎の催眠では違う意味で目立ってしまう。リムジンに積むとしても一般人にしか見えない様にして欲しい。CMのこともあるし、青俺が無理そうなら俺が行くが……どうする?」
「試しにやってみる。少ない意識でヘリを動かすのも大分慣れたしな」
「問題ない。わたしとキョンで行ってくる」

 

『例の大イベントの件でもう動きが出た。来週から初代遊戯○のアニメを平日毎日放送するそうだ』
「あんた一体、どういう折り返しをしてきたのよ!?」
「俺も最近のカードやシステムが良く分かってないし、強いカードを手に入れたと思っても、すぐまた新しいカードが発売されていたからな。パフォーマンスで見せた頃の初代遊戯○のカードだけでデッキを構築して対戦。学校にカードを持ってきて決闘していたら失格にしてくれと念を押しておいた。来週の番組に変更が出たのなら、明日あたりCMが放送されることになるだろう。ジョンと青古泉が決闘する映像を心待ちにしてるとさ」
「そういえば二人ともデッキはできたのか?」
『俺のコンセプトに合ったカードが見つからない』
「僕もコンセプトで迷っているんですよ」
「別にそのデッキで二人も大会に出ろというわけじゃないんだから、例で良いんだぞ?」
『ドラマと同様全国放映される以上、手を抜くのは俺の主義に反する』
「おまえはドラゴンモンスターばっかり集めていればいいだろうが!」
「黄僕の書初めではありませんが、僕も盤上遊戯で負けたくはないんですよ」
「そういえば今日はどうしたんだ?朝倉は試合に出ていたんだろう?」
「わたしなら午前中だけで十分。あの子にサインを出させるなんて面倒じゃない!」
俺の娘を気遣ってくれたのは嬉しいが、何だか気味が悪いな。まぁ、朝倉が嫌悪しているのは俺だけってことか。
「修練の成果もあって割り切って行動できるようになったのもあるんですが、僕は指導を受けている身ですからね。チケット業者に委託したあとはご指南いただきながらおススメ料理の仕込みをしていただけですよ」
「明日は俺も参戦する。どこまで終わっているのか教えてくれ!古泉にはおススメ料理を調理しながらリムジンの運転をしてもらわんといかん」
『リムジンの運転!?』

 

「ああ、なるほど。消去法でいくと確かに黄古泉先輩しか残りませんね」
『何がなるほどなのよ!?』
「古泉先輩に運転をさせるわけにはいかず、こっちのキョン先輩はCM撮影二本に換金、夜はテロ対策の警備、それに夜練。黄キョン先輩は夜練と涼宮先輩が担当する分も負担しないといけない。裕さんは免許を持ってそうですけど、他のメンバーからはぐれるとTV局の入口を通してもらえないかもしれません。運転手を誰かに任せて五人でTV局内に入るには誰が運転手を務められるかを考えた結果、黄古泉先輩になったわけですよ」
「あんたの作った閉鎖空間の色が青だったのがようやく納得できたわよ」
変態セッターの分析に全員が納得の表情を見せていた。
「僕も説明を受けて素直に納得できました。リムジンの運転は僕が引き受けましょう。待機している間は人形でもいいわけですし、仕込みなら金曜の分は涼宮さんと二人ですべて終えて、土曜の分がまだ途中といったところです。そうですね……日曜の分の仕込みをあなたにお任せしてもよろしいですか?月曜の分はこちらで準備します」
「分かった。ところで、一つ頼みたい事があるんだが………いいか?」
「何よ、急に改まって」
「コンサートライブの時間に色々とあり過ぎてライブが全っ然見られなかったんだ!カバー曲がどんな感じになっていたのか見せてくれないか!?モニターじゃ中西さんの痺れるギターテクニックが良く分からんし、衣装をどうしたかも全部含めて頼む!ライブ見せてください!!」
「練習ついでに一曲やるくらいはいいんじゃない?」
「ドレスチェンジの練習にもなるし私はいいよ!」
「まったく、あんた一人の我儘でライブやるんだから、ちゃんと聞いてなさいよ!?」
「どうか宜しくお願いします!」

 

 ジョンの世界に用意しておいた楽器にそれぞれ配置につき、遮音膜を解除。ハルヒはキーボードについた。
「じゃあ、いきます!Ready!?」
『プ○キュア!ス○イルチャージ!!』
変身シーンは無いが、セリフと同時に五人がドレスチェンジ。全員にマイク付きヘッドホン。榎本さんがピンク、中西さんが薄紫、ハルヒが黄色、財前さんが黄緑、岡島さんが水色の衣装を身に纏い、ハルヒのキーボードから演奏がスタート!中西さんがギターを弾き始めた直後、全身に鳥肌が立った。たった一曲だけでここまで痺れるものなのか?マフィア相手にしているよりよっぽど良いぞ。
「何、ボケっとしてんのよあんた!あんたが言い出したんだからちゃんと感想くらい言いなさいよ!」
「ギターが鳴ってからずっと鳥肌が立ちっぱなしだ。心底カッコイイと感じたのも……いつ以来かな。分かってはいたが、ここまで痺れるカバー曲になっていたとは驚いたぞ」
「そこまで言われると照れちゃうな。ついでにもう一曲やってみる?」
『問題ない』
イントロが始まった瞬間、ジョンが俺の横に走り込んできた。この曲は……ああ、ヒロインにも見せたあの映画の主題歌か。映画を何度も見たなんて言ってたが、エンディング曲までしっかり見ていたとは思わんかった。演奏を終えた五人にジョンが一番に賞賛の拍手を送った。やっぱりコイツのデッキはドラゴン系で決まりだな。

 

 そして、どんな反応を示すのかずっと気になっていたんだ。ようやくニュースの時間帯になり、DVDを送ったところはVTRを流し、新聞社二社の見出しは『まさに変幻自在!!キョン社長に声優交代か!?』、『キョン社長、反撃の狼煙!華麗なる薔○棘鞭刃(ロー○ウィップ)』と書かれ俺が鞭を構えた瞬間を捉えたもの。その他の新聞社は上海の空港の全体像を移したものばかり。死傷者の数と俺とヒロインの二人でマフィアを畳んだことが見出しとして載せられていた。TBS以外のTV局はVTRを見た男性アナウンサーがコメントしていた。
「今度はエヴァ初○機に乗り込んでもおかしくありません。本当に何でもありになってきましたね」
「くっくっ、今度は『逃げちゃ駄目だ!』と連呼してみるかい?」
「それをやるくらいならセー○ーウラヌスの必殺技を放つぞ?」
「そろそろTBSや他のメディアから連絡がくるんじゃありませんか?ここまではっきり区別をつけているんですからね。今頃ニュースを見て苛立ちを感じている頃でしょう。どうするつもりなんです?」
「自業自得だといい放つだけだ」
それより、テレビ朝日の方は、VTRの内容も含めて何か告知をしてくるのか?
「台湾に引き続き、ヒロインのアクションシーンもさながら、上海マフィアからの大胆すぎるくらいの攻撃に、キョン社長の方もそれに合わせたように思えてなりません。さて、そのキョン社長ですが、年越しパーティで見せたパフォーマンスを受けて、テレビ朝日系列主催の遊戯○デュエルモンスターズの全国大会が開かれることになりました。『原作の高橋先生を尊重して原作の漫画やアニメで出てきたカードのみで構成されたデッキで』という条件で高橋先生とキョン社長の夢のコラボが誕生しました。デュエルキングを決める準決勝と決勝は五月五日子どもの日に天空スタジアムでということなんですが、なんと、キョン社長から『高校生以下及び、同伴する保護者のチケット代はタダでいい』という提案があり、まさに子どもの日にちなんだ一大イベントになりそうです。さらに、天空スタジアムで戦うことになる四人にはキョン社長からデュエルディスクが手渡され、パーティのときと同様にモンスターを実写化して見せるパフォーマンスをするということです。モンスターだけでなく、それ以外の魔法カードや罠カードをどう演出するのか絶対に見逃せません」

 

「これで一大イベントの開催が決定づけられたことになりそうです。試しに我々もデッキを構築して練習してみませんか?将棋やオセロ、チェスとは違って運も絡んでくるのなら、僕でも少しはまともに戦えそうです」
『フフン!面白いじゃない!!あたしが構築したデッキなら相手が誰だろうと勝つに決まっているわ!』
「じゃあ、デッキを組むのはいいが、自分で組んだデッキのモンスターやカードの効果は自分で演出すること。デュエルディスクすら情報結合できないようじゃ話にならん」
『問題ない』
告知の方はモンゴルに行った分二時間遅れで動き出すことになりそうだが、もうマフィアに襲われることもない。日本でも告知以外の質問が出ればヒロインが怒りだすだけ。最後に披露試写会後のジョンとの例のバトルで終わる。それが終わったらすぐに垂れ幕と県知事に連絡だ。
「今日からホテルの方は四日連続のおススメ料理だが、おでん屋の方も週末で客も増えてくるだろう。人数が足りそうにないときは青ハルヒ、青俺を除く青チームで補助に向かってくれ。連休を終えて厨房と調理スタッフを募集するかどうかを決める」
「今日明日で募集をかける必要も出てきそうね」
「問題ない。わたしが影分身で出る」
「ところでみくるちゃん、そのイヤリングとペンダントどうしたの?」
「これ、キョン君が作ってくれたんです。ドラマでもっと大人に見え……え?今誰が……?」
「確認しておいてよかった。みくる、今みたいに聞かれたら何て答えるんだった?」
某大御所MCの声帯と口調で聞いてみたが、どうやら正解だったようだ。
「今のキョン君だったんですか?えっと……『ドラマでもっと大人びた刑事に見えるようにって、買ってきた原石をキョン君が加工してくれました』です!」
「へぇ~、ちなみにこれ、いくらしたの?」
「原石を買ったときは2000万円だったそうです」
「みんな、今聞いた通りだ。何か文句のある奴は?」
『問題ない』

 

ジョンの世界にため込んでおいた分と社長室の金庫に微量ながら混じっていた世界各国の通貨を持って異世界の銀行に向かい、青みくるは時間になるまで異世界で告知、昨夜建てておいた五店舗は既にシートがはがされ一週間放置しながらアルバイト募集中。青古泉とジョンはデッキ作りに集中し、古泉、青ハルヒ、俺はおススメ料理の準備。古泉と俺は人事部で電話対応も同時進行で行っている。社員も今日から復帰し『日本人からの電話しか来ない様にした。他国からの電話は我々で引き受ける』という圭一さんの一言で一安心できたらしい。しかし、今日の夜練は今泉和樹で出る必要がありそうだ。選手の方もストレートに慣れてからの方が良いだろう。アスリートは一日休むとそれを取り戻すのに三日はかかるという話らしいが、自主練をしていたとはいえ、夜練まではやっていない。無難にストレートだけにしておこう。古泉の気にしていた通り、各メディアから『うちの会社にもDVDを送ってほしい』という悲痛に近い電話があったものの『自業自得』の一言で切った。というより、DVDを送る必要はもう無くなった。精々、ジョンと青古泉のデュエルの様子をテレビ朝日に送る程度。あとはレストラン前の報道陣の態度次第。
 昼食で換金やCMの様子を青俺に聞いてみた。
「まず無理だろうと思っていたが、午前中に行った銀行だけじゃ香港と台湾のマフィアが持っていた分しか換金できなかった。中国マフィアの分は銀行二つか三つまわる必要がありそうだ。換金に時間をかかった分、朝比奈さんのCM撮影をずっと見ていられたけどな。黄俺が作ったネックレスをズームで撮影することは無かった。今までずっと朝比奈さんをモデルにと依頼してきた会社なんだ。午後のCM撮影もそこまで心配することもないんじゃないか?」
「CM撮影と偽ってネックレスを撮影しようとするのは今日撮影されたCMが放送され始めてからということになりそうですね。ところで、今朝発表があった一大イベントのCMは放送されているんですか?」
「そんなの確認しているほど暇なメンバーなんていないわよ!」
『悪かったな、暇なメンバーで。大会に参加する人間のほとんどが子どもになるということもあって、まだ大会に関するCMは放映されていない。放映されるとすれば今夜からだな』

 

 ジョンのことをすっかり忘れていたとばかりに、ハルヒが申し訳なさそうにしていた。ハルヒが申し訳なさそうにするなんて、俺たちが高校生の頃は考えられられなかった。双子の成長も嬉しく感じているが、こういうところで見え隠れしているハルヒの成長した姿を見られることで、俺も嬉しいと思えるようになったようだ。
「それで、おまえデッキはできたんだろうな?」
『一応な。だが、試してみないことには何とも言えない。撮影前に何度かデュエルさせてくれ』
「どうやら、ジョンも僕と同じ意見だったようですね。生放送の番組収録に向かうまでジョンと対戦させていただけませんか?デュエルディスク無しの通常のカードバトルですから、あなたにモンスターを情報結合してもらう必要はありません。ここでジョンをデュエルしてみることにします」
『そういうことなら、俺が外に出る』
「ちょっと待ちたまえ。僕たちはまだ食事中だ。いくら一大イベントのための事前告知の撮影でも、それくらいは待ってくれないかい?食べ慣れているとはいえ、極上の料理には変わりないんだ。堪能する時間くらいは持たせてくれたまえ」
「では、僕は食べ終わりましたし、異世界の本社でというのはいかがです?ドアを潜るだけですからね」
食器を下げた青古泉がジョンを連れてどこ○もドアを通っていった。
「青俺、午後のCMも問題なければ圭一さんにテレパシーで連絡してくれないか?大画面やドラマでもCMを入れる。勿論タダだ。あの二人のデュエルも一部を大画面に放映したい。有希、頼めるか?」
「問題ない」
「私の方もすぐに連絡しよう。快諾で帰って来るだろうが、念のため確認は必要だからね。それと、今後のCMの依頼についてはネックレス無しでもいいのならと伝えることにする」
「こっちも了解だ。CM撮影が終わった段階ですぐに黄圭一さんに連絡を入れる」

 

 午後も電話対応とおススメ料理の準備を進めていた。俺が担当する日曜のおススメ料理さえ作ってしまえば、カレーの方に集中できるんだが、どうせ作るのなら……いや、あの二人に確認してからにするか。告知の方は滞りなく進み、こっちの時間で日付が変わる直前に日本に来ることになる。一応確認しておくか。
「TV局を回ったら空港へ行って日本の本社に向かうが……夕食は弁当を作っている最中だが、明日の食事はどうする?それに自宅で寝るのか、本社のスイートルームを使うのか、どっちがいい?」
「そうね、たまにはスイートルームに泊まってみようかしら。明日はみんなと一緒に食べたいわね」
「なら披露試写会が終わった後はパーティにしよう。これでようやく告知が終わる。最後の晩餐ってわけじゃないが楽しんでいってくれ。帰りの飛行機もキャンセルしておいた。明後日の朝食を食べたら自宅まで送るよ」
「あ~あ、とうとう終わっちゃうのね……記者会見を開けなんて電話が殺到してそうだし、考えるだけで憂鬱になりそうだわ」
「心配するな。記者会見に俺も出て何も言えないような状態に持ちこむ。それにもう手は打ってあるんだ」
「どういうこと?」
「香港、台湾、中国での空港での様子を超小型カメラで撮影して編集した映像をアメリカのTV局に送り付けた。日本じゃゴールデングローブ賞のノミネーションに変更があるかもしれないと報道されたくらいだ。他のハリウッドスター達も気分爽快になっているはずだ。もし、マフィアに狙われても、自分で片付けられると証明してくれたようなもんだからな」
「いつの間にそんなものを!?」
「試しにVTRを見せてやるよ。スカ○ターをつけてみろ。リムジンに隠れているようなチキン野郎じゃ到底撮影できないシーンをまとめたものだ」
「面白そうね。見せてもらうことにするわ」

 

 リムジンにいる間、ヒロインは映像に夢中になり、自分の暴れっぷりに半信半疑のようだったが、それが事実なんだから仕方がない。本体は生放送に向かうメンバーと一緒に早めに食事を摂っていた。
「ジョン……頼むからその格好でTVに出るのだけはやめてくれ!撮影しているときの格好でいいだろうが!」
『これが俺の正装だ。これ以外に考えられない』
「困りましたね……ファーストシーズンもそうでしたが、セカンドシーズンのラストもOG達に『ジョンがカッコ良かった!』と言わせるくらいなんです。少しは主演を引き立ててはいただけませんか?」
「わたしは、バイクに乗っているときの服装が一番カッコイイと思いました!」
「とにかく!おまえのその格好、正装だとか抜かしているが、フ○ージョンしたときの戦闘服の色違いなだけだろうが!首まわりがあんなに分厚いものがなかったからパーカーにした。それにジョンって偽名もアメリカ版山田太郎や鈴木四郎のような明らかな偽名を名乗ったんじゃなくて、『フ○ージョン』から命名したに決まってる!映画の披露試写会のあとは、おまえが中尾さんにお願いした例のパフォーマンスがあるからその格好で構わないが、今日くらい別の服にしろ!!」
『どっ、どうしてそれを……』
「佐々木たちにまた例の動画を頼んでおいてもいいんだぞ?超サ○ヤ人10をもう一回見るか?」
『やれやれ……あんなもの思い出しただけでも吐き気がする。仕方がない、朝比奈みくるの言うバイクに乗るときの格好で行く』
「それにしても良く気が付きましたね。この服がフ○ージョンしたときの格好と色違いのものだと、あなたに言われるまでは『これがジョンのファッション』なんだと疑いもしませんでしたよ。偽名の由来も十分納得できます」
「女子高潜入捜査事件のときの俺の偽名じゃないが、俺に名前を聞かれて咄嗟に『ジョンだ、ジョン・スミス』と名乗って俺の頭の中に転がり込んだ。その前にいくつか時間平面を回ってから来ていたそうだし、偽名を考えるだけの時間は十分にあったはずだ。『おまえがキョンだから……ジョンでいいや』なんて言っていたのも単なる演技だったとしか思えない」
「あんたとジョンの初めての会話がそんな感じだったなんて、あたしも初めて知ったわよ。あたし達の世界にいた頃はジョンから色々と話を聞いていたけれど、その話は聞いたことがなかったわ」

 

 古泉、青ハルヒ、青新川さんが揃っていたし、告知の影分身からの連絡を伝え、明日は古泉が人事部に降りることとなった。早めの夕食を終えてそれぞれの分担に散った。本体はスカ○ターを装着して生放送の様子を確認し、青ハルヒが調理担当になっているホテルも俺の影分身が調理にあたっていた。って、アイツも影分身使えるんだからTVの生出演なんて影分身に任せればいいものを……最終回前の告知のときは青ハルヒに委ねることにしよう。青古泉やみくる達を見て裕さんだけ局内に入れないなどということもなく、夜練と同時に生放送がスタートした。司会は大御所MCと国民的アイドル……って、どちらか一方だけで十分じゃないのか?放送前から気になっていたようだが、二人が最初に触れたのはやはりみくるのイヤリング。今朝、俺が言ったものと一語一句違うことなくみくるに向かってセリフを放った。
「ところでみくるちゃん、そのイヤリングとペンダントどうしたの?」
「今度のドラマでもっと大人びた刑事に見えるようにって、買ってきた原石をキョン君が加工してくれました」
「えっ!?社長は明日ようやく告知が終わって、映画の披露試写会なんじゃ……」
「いや、でもタモさん。野球の試合をしていたときにも戻ってきていたじゃないですか。それ以外にも戻ってきたとしてもおかしくないですよ。それより、そのイヤリング重くないの?見ているだけで耳たぶが痛くなりそう……」
「わたしも初めて付けたときは耳が痛かったんですけど、キョン君のちょっとしたパフォーマンスで簡単に解決してくれたんです。今は全然痛くありません」
「ちょっと持たせてもらってもいい?」
大御所MCがイヤリングを掌に乗せて質量を確認している。ガーネットとダイヤモンド……どっちが軽かったかな。
「こんなに重いのに、どうやったら負担を軽くすることができるんだ?それに、こんなに大きい宝石、原石でもかなりの額になったんじゃないの?」
「全部で2000万円だそうです」
『2000万!?』
「え~~~~~~~っ!大人びた刑事に見えるようにするだけのために2000万円も使ったってこと!?」
「サードシーズン以降でも使うことを考えたら……まぁ、相応の額ってことになるか。いや、それでも高いよ!ちなみに、撮影は最後まで撮れたの?年末の時点では最終回の解決編だけだって言ってたけど」
「わたしもようやくトリックの答えに辿りつけました。でも古泉君はまだ解けていませんし、涼宮さんもまだ八割の状態で完璧じゃないんです」
「あたしも古泉君も謎を解いてからの撮影じゃないとスッキリしないので。キョンの鼻っ柱を圧し折ってから撮影する予定です」
「へぇ――――!どんな事件なのか俺も放送日まで待ちきれそうにない。解決編が放送されるまでには事件を解き明かしてやりたいもんだね」
 みくるのイヤリングの件もあり、青古泉たちだけで随分時間を使ってしまったようだ。ようやく次のドラマの俳優陣のところへ二人が移動した。
『みんなどうする?スーパーライブのときも「どんな事件か見てみたい」なんて言っていたし、大御所MCだけ番組終了後に第九話だけ渡すか?』
『鶴屋さん達に引き続き大御所MCもですか。絶対に負けられません!』
『異論が無ければジョンに第九話のDVDを情報結合してもらうが、それでいいか?』
『問題ない』
じゃあ、ジョン。視聴者プレゼントのところはカットしておいてくれ。まだ青古泉が美容院のトップスタイリストになったという設定は知らないからな。
『了解。朝比奈みくるにDVDを託しておく』

 
 

…To be continued