500年後からの来訪者After Future8-1(163-39)

Last-modified: 2016-12-20 (火) 18:35:31

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-1163-39氏

作品

年越しパーティのパフォーマンスの影響から、異世界の野球の大会のような遊戯○デュエルモンスターズの全国大会が行われることになった。告知の方も、台湾、中国のマフィアを黙らせ、明日はいよいよ日本での告知と披露試写会、そして中尾さんを加えた俺とジョンのスペシャルパフォーマンスが待っている。そして、一月スタートのドラマ告知のための生放送が始まった。

 

他のドラマの俳優陣もみくるのイヤリングに触れていたが、他のドラマと俺たちが作ったドラマの最大の違いはセットに費用が一切かからないこと。最後の豪華客船での火災の場面も通常なら2000万は軽く超える費用がかかるはずだ。以前のように青古泉だけが生出演するようなときは不安で仕方がなかったが、TV番組出演慣れしたみくる、青ハルヒ、ジョンがいればどんなクイズが出題されようとものの見事に正解を導き出してしまう。ファーストシーズンのときと同様、優勝で生放送を終えた。ジョンからDVDを預かったみくるが大御所MCに近づいていく。
「あのっ、これがキョン君の考えた最終回の前半です。スーパーライブのときも見てみたいと言ってくださっていたので、今日持ってきたんです。この内容だけで犯人やトリック、証拠も全部分かるようになっているので、もし良かったら見てください!」
「えっ!?この中に最後の事件を撮影したものが入っているってこと?本当に貰っていいの!?」
生放送を終えてすぐにみくるが大御所MCに渡しに行ったこともあり、周りの俳優陣や観客からブーイング。
『え~!?ずる~~い!!』
「是非考えてみてください。それにこの事件が解けたら、今はまだ言えませんけど、とっておきのプレゼント企画があるんです!ちなみに、証拠は全部で三つです。三つ揃えられないと正解にはなりませんよ?」
「そこまで細かく考えられているのか……いや、でもとっておきのプレゼント企画が何かは俺にもよく分からないけど、『証拠は三つ揃えないと駄目』というのは大ヒントになりそうだね。俺もそれに応募してみよう」
「第一話を見ていただければ、朝比奈さんの言う『とっておきのプレゼント企画』が何なのかすぐに分かる筈ですよ?これについては、どちらかと言うと女性の方が嬉しいプレゼントになりそうです!」
青古泉が付け足した情報を聞いて観客が黄色い歓声をあげた。大御所MCも満足しているようだし、六人が帰ってきたら話をすることにしよう。

 

 おススメ料理を出し終え、本社に戻って明日の朝食の支度を続けているとようやく六人が戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「おかえり。放送後もいい宣伝ができたようだな」
「ええ、ドラマの中で僕がトップスタイリストの職に就いているなんて、現段階で話すわけにはいきませんでしたのでああいう形になってしまいました」
「だが、隠すところは隠してあれだけの宣伝をしたんだ。見事と言う他にない。ところで、古泉と青ハルヒにまったく別件の相談があるんだが、少し残ってくれないか?」
「黄僕と涼宮さんということは料理関係での相談ということになりそうですね。もし、そこまで秘密にするようなことが無ければ、ご拝聴させていただきたいのですが、よろしいですか?」
「なぁに、ビバリーヒルズのパーティの料理の件だよ。10日の夜にカレーを出して鶴屋さん達から書初めの発表をされる。その次の日に楽団員、日本代表、社員にクジを引かせて、当たりが出たら社長のオリジナルカレーにありつけることにするつもりだったんだが、ビバリーヒルズのパーティでも何か注文が出たときにカレーを出そうと思ってる。前に古泉や青ハルヒが調理に加わって自分たちもビバリーヒルズのパーティへなんて話もあったが、既に用意されている料理の数々にさらに上乗せするのもどうかと思ってな。要するに、作り過ぎて印象を悪くしかねないってことだ。俺も個人的に食べてみたいのもあるし、今後一切映画に出ることはないからな」
「なるほど、そういうことであれば我々があまり手出ししない方がよさそうです。来年は年越しパーティだけでなくゴールデングローブ賞授賞式後も……なんてことになりかねません。ビバリーヒルズには一度行ってみたかったんですが、そういうことであれば、仕方がありませんね」
「書き初めの景品は温泉旅行じゃなくて海外旅行にすればいいわよ!あたしが絶対一位を取ってやるわ!!」
「おや?彼の予想では一位は英語が入ったものだったはずです。これまでのことを考えると彼の予想は当たる可能性の方が高いですからね。涼宮さんがトップを勝ち取るというのは難しいのではありませんか?」
「あたしがそれを全部塗り替えてやるわ!」

 

 すでに鶴屋さん達の手に渡っているというのに、どこから出てくるんだ?その自信は。拳を握り締めてそう言いきる青ハルヒに対して、口元に指をあてて何やら考え込んでいる古泉。
「すみません、一つお伺いしたいのですが、あなたが一位は英語だと言いきる何かしらの根拠はあるんですか?」
「そう感じているのは俺だけかもしれんが、去年は色々とありすぎたからな。だが、それぞれで去年一番印象に残ったことを文字に表すのなら、青有希を含めた妻たちがマリッジリングの刻印をそっくりそのまま書いてくる可能性が高いと判断したまでだ。どうやら青ハルヒはそうではないらしいがな」
「なるほど、それで横断幕になると予想されたわけですね。僕も園生と刻印入りの指輪について相談してみることにします。それでは、お先に失礼します」
「ですが、そうすると、来年度は黄僕か園生さんがトップになる可能性が高くなってしまいます。何かしら方策を考えておくことにしましょう。では、僕もお先に失礼します。ジョンとデュエルの約束もしていますので」
明日は無理そうだが、せめて明後日には撮影をしたいところだ。ジョン、そろそろ確認できた頃だと思うんだが、CMの放映はあったのか?
『あったにはあったんだが、ほとんどキョンが出した条件を文字で伝えるだけのものだ。学校にカードを持ちこんで練習している奴は即失格のルールが全国に知れ渡るまでは、これしか方法が無かったと言いたげな駄作でしかなかった。明後日にはデュエルの撮影をしないとこれ以上進展しそうにない。大会の予選開始は三月末だそうだ』
あとは、精々アニメの再放送のあとに長めのCMを入れて、本社の大画面にも映すことにしよう。
「……キョン君?ジョンとの話は終わりましたか?」
「ああ、すまない。どうかしたのか?」
「いえ、キョン君はまだ寝ないのかな……と思って」
「日付が変わる頃にヒロインが本社に来ることになっているんだ。そのあとでないと寝られない。まぁ、その分明日の料理の支度もできるし、あとは日曜のおススメ料理の仕込みだな」
「あまり無理しないでくださいね」
「分かった。ありがとう、みくる」

 

 みくるがエレベーターに乗る頃には裕さんも青ハルヒもフロアから姿を消していた。調理場も使って同時に仕込みをしたいところだが、今の時間は意識のほとんどがシャンプー&マッサージに入っていて告知も入れると三体が限度。朝食の支度をして終わりでもいいだろう。俺も自分のデッキを組んでみたくなった。ヒロインが到着するまで漫画部屋で時間を潰すとしよう。
「なんだか複雑な気分ね。空港を出るのがこんなに嫌になったのは初めてじゃないかしら?」
「ちなみに、今まではどんな気分だったんだ?ようやく最後の国に辿り着いたってときは……」
「今と真逆よ!さっさとTV局まわって空港に戻りたくて仕方がなかったわよ!」
「俺もアフリカをまわっていた頃は似たようなもんだったな。さっさと本来の自分の仕事に戻りたかった。だが、最後が日本で良かったよ。明日は試写会が終わったらみんなでパーティするぞ。最後くらい楽しまないか?」
「それもそうね。ハルヒさん達と一緒に食事しながら話すことにするわ!」
ようやく足取りが軽くなったヒロインを連れて、いつものように報道陣を押しのけると兆弾の音が計六回。
「キョン、今の音!」
「ああ、狙撃手が三人いるようだ。ここでも暴れられるとは思わなかった。今回も派手にいこうぜ?」
「ふふっ、楽しみが一つ増えたわね」
この状況を楽しいと思えるようになるとは驚いた。狙撃手をテレポートで空港前に落とすと、死角に隠れていた奴が俺たち目掛けてミサイルを撃ちこんできた。
「キョン!!」
「任せろ。リバースカードオープン!!マ○ックシリンダー!」
カードと一緒に黒い筒を二本情報結合。アメリカの披露試写会で見せたものと同じ、相手の攻撃をそのまま返す技だ。ミサイルがテレポート膜を通過してもう一つの筒から撃った相手へと戻っていく。ホーミング機能があるわけじゃあるまいし、横にそれればいいものを……どうして真後ろに走っていくのかねぇ。案の定、ミサイルの爆発に巻き込まれた。夜だからはっきりとは確認できなかったが、空港に停まっていた車の中には案の定、マフィアが何人も隠れていやがった。

 

「今日は俺も暴れる。あとで物足りないなんていうのは止めてくれよ?」
「また撮影するんでしょ?あなたの暴れっぷりをじっくり見せてもらうわ!」
「ああ、そうしてくれ!」
あとで元に戻すんだから、マフィア以外の車を破壊しても文句は言わないでくれよ?閉鎖空間を展開してマフィアだけでなく報道陣も空間内へ引きずり込んだ。俺たちだけ消えたらまた人事部が荒れてしまうからな。だが、命の保証は一切しない。自分の身は自分で守れ。車から飛び出て拳銃を構えた連中に向かって技を放った。
「ワー○ド―――――――――――――――――!!シェイキング!」
駐車場のコンクリートを破壊しながらマフィア目掛けてエネルギー弾が一直線に向かっていく。数台の車を巻き込んでマフィアもろとも爆発。死なない程度に手加減したから、この程度にしかならんか。なら、次はこれだ。靴のダイヤルを回してベルトからサッカーボールを射出。マフィアの顔面目掛けてボールを蹴ること数回。
「いっっけぇ!!」
ボールの痕が残り、その部分だけ紅く腫れ上がって気絶した。それでも尚、攻撃を仕掛けてきやがる。俺の後ろにいた報道陣はとっくに逃げているかマフィアの銃弾で負傷したかの二択。ロングレンジの攻撃じゃサイコメトリーができん。刀を情報結合してマフィアとの距離を一気に詰め、間合いに入ったところで抜刀。
「でやぁ!はぁっ!たぁっ!………またつまらぬ物を斬ってしまった」
納刀と同時に拳銃が壊れ、車も破損、トランクス一枚を残してマフィア共の衣服が切れる。
「にっ、逃げろ――――――――――――――――――――――――――っ!!」
「おい、勝手に仕掛けてきて、自分だけ助かろうなんて甘いんだよ」
テレポートで行く手を阻むものの、徒手空拳で飛びかかってきた。
「あたぁ!あとぅぁ!ほうぁったぁ!………おまえはもう死んでいる。……なんてな」

 

 やれやれ、流石は中国マフィア。密入国する数も桁が違うらしい。そろそろネタも尽きてきたし、あと二つで終わりにしよう。俺に襲いかかってきた三人をそれぞれ一発で殴り倒したっていうのにまだ襲いかかって来るのかよ。
「“ア○チマナーキックコース!!”からの……筋○バスタ―――――――っ!!」
プロレス技でようやく力の差がはっきりしたのか他に行き場がないか辺りを探っている。なら、これで最後だ。
「“セイスフ○ール”」
残り全員の身体からそれぞれ六本ずつ俺の腕が生える。美人の腕とは違うし、威力もアップしそうだな。
「“クラッチ”」
残り全員の背骨を極めて閉鎖空間を解いた。破壊した駐車場、空港の入口のガラス戸、破損した車、斬った車がすべて元に戻り、ようやく救急車とパトカーが到着。
「本社までリムジンというのも面倒だ。テレポートで移動する。警察に事情聴取される前にな」
「ええ、そうさせて頂戴。なんだか眠くなってきたわよ」
「張り合いが無さ過ぎて退屈だったって意味か?」
「それもあるかもしれないわね。行きましょ」
81階へとテレポートして情報を同期。新聞社は今からでも間に合うかどうかは分からんが、一応有希にはDVDを送るよう頼んでおいた。
「あら?あれ、どこ○もドアよね?どうして置きっぱなしになっているの?」
「今は異世界の本社と繋がっている。この本社にもいくつかホテルフロアはあるんだが、新メンバー加入でここより上の階の個室が無くなってな。そのメンバーが行き来しやすいようにするためと、あとは料理を作るのに一つのフロアを調理場として設けた。影分身で一気に作るときなんかはそっちを使ってる。明日はここで朝食を食べて出かける。スイートルームに案内するよ」
「あなたも一緒じゃないと嫌!」
「分かってるって」

 

 ウ○ヌスの必殺技とサッカーボールで倒したマフィアの情報は足でサイコメトリーできた。アジトにもまだどっさりとマフィアが残ってる。ジョン、そっちにどのくらいメンバーがいるのか教えてくれ。
『キョンがサイコメトリーした情報を受けて、もう既にアジトに向かった』
それなら後は任せることにしよう。明日は以前のように早く起きたい。時間になったら声をかけてくれないか?
『分かった』
ところで、ゴールデングローブ賞に何か変化はあったのか?
『あれは映画以外のことだからな。ヒロインがノミネーションするような記事は無かった。だが、アクション俳優として依頼が殺到することに違いはない。ここ数日の英字新聞はキョンとヒロインの対マフィアのことばかり書かれている。さっき依頼した分もアメリカにも送るんだろ?』
ああ、有希にはそう伝えた。こっちの新聞社が一面を差し替えるのに間に合うかどうかだけ気にしていれば、あとはハルヒ達が襲っているマフィア共で終わりだ。
 翌朝、81階のアイランドキッチンに俺が立っているのも久しぶりだ。ニュースも気になるし、影分身もいるから今日はいいと言ったんだが、結局青ハルヒも参戦し、まずは昼食の支度と弁当作り。朝食後に今日のパーティの準備になるだろう。各新聞社の一面記事はDVDを送った二社を除いて、空港で事件があったことだけ伝えていた。負傷者はいても死者は出ていないようだな。敷地外には報道陣の姿は無い。この状況がずっと続いてくれればいいんだが、そう上手くいくとは到底思えない。それでも報道陣を俺たちの思う通りに操ることが容易くなってきた。新聞社の一面の方は『キョン社長、怒涛の声色七変化!!おまえはもう死んでいる!!』と『夢の連続攻撃!?“ア○チマナーキックコース!”からの筋○バスター!』写真はマフィアを指差してセリフを吐いたところと、筋○バスターが炸裂した瞬間をおさえたもの。残りの新聞社は救急車と警察が空港に到着した全体写真を載せていた。
「次はエヴァ初○機だとばかり思っていましたが、セー○―ウラヌスの必殺技までは思いつきませんでした。しかしこれで、男女問わず、どんな声でも出せるということになりそうです」
「他のアニメキャラクターの技も見てみたいですね!ボール射出ベ○トとキック力増強○ューズは私も使ってみたいです。遊戯○カードの方は原作者の高橋先生とキョン社長の夢のコラボが実現したんでしたよね?」
「はい、『学校にカードを持ちこんで練習していた場合は即失格』というルールはキョン社長から提案された条件のようです。さらに、高校生以下の子どもと同伴する保護者には、天空スタジアムのチケット代がタダになるという教育的配慮もなされており、当日の演出も見逃せません」

 

「僕たちが揃うまで昨日のニュースが続くなんて、ちょっとやりすぎたんじゃないのかい?」
「だが、俺や黄有希の閉鎖空間のサイコメトリーに引っかからなかった理由が良く分かった。念のためガードは固めておくが、もうこれでテロはないんじゃないか?」
「どうやら、そのようだ。しかし、今週は人事部で電話対応することになるだろう。古泉にも手伝ってもらうことにする。CMの依頼もそうだが、テレビ朝日からの例のイベントの件での連絡があるかもしれないからね」
「では、僕も影分身で対応にあたりましょう。彼は料理を作るので精いっぱいのようですし。DVDを送付するのもあとはデュエルをしているものだけになりそうですし、『送りたくてももう送る機会がやって来ないだろう』と伝えておきましょう」
「キョン、一大イベントって何かあるの?」
「昨日空港を出てから、最初にミサイルを跳ね返しただろ?あれの原作漫画のカードゲームを全国規模でやるんだ。この後の告知でも見せることになるはずだ」
「それでしたら、僕とジョンのデュエルを見せてから、ご自宅にお送りするというのはいかがです?」
「パーティをしながら見ることになりそうだな。それでも平気か?」
「あんたが演出したら料理が全部吹き飛んじゃうじゃない!自分で作った料理を台無しにする気!?」
「そんなもの、閉鎖空間でどうにでもなる。カメラに映らない様にステルスも張るつもりだったんだ。それより、ジョンじゃあるまいし『俺が演出する』ってだけで、どうしてそんなに大袈裟になるんだ!?」
「ドラマの最終話を撮影したばかりですからね。あれだけでも判断材料としては十分ですよ。爆風も演出の一部に入っていてもおかしくありません!」
「楽しみがまた一つ増えたわ!キョンのパフォーマンスが楽しみね!」
ヒロインも朝食に加わっているため、ジョンも空席に座って一緒に食事をしていた。腹は減らなくても味覚くらいはあるだろう。俺も影分身で何度も弁当を食べているし、間違いないだろう。

 

「ところで、俺たちとジョンは当然として、他のみんなも披露試写会に来るのか?」
「『他の声優陣がヒロインのアフレコに呆然としてセリフを言いそびれた』と報道されるくらいなんです。アメリカでの披露試写会でも、『何度も見に来たい』というコメントばかりだったではありませんか」
「おいおい、パーティまで何も食べないつもりか?軽食を作るのは止めにしてしまうぞ」
「フフン、安心しなさい!あんた達は無理だけど、あたし達なら周りに見られることはないわ!堂々と飲食しながら見てやるわよ!」
「なら、俺たちは試写会が始まる前に軽食ということになりそうだ。そろそろ出よう。最初がTBSだから例の芝居が必要になる筈だ」
「分かった」
やれやれ……やはり、ハルヒの『安心しなさい!』は安心できる事の方が少ないようだ。ヒロインが本社に来ていることもあり、敷地外には報道陣が待機していたものの、以前と比べればほとんどいなくなったと言っても過言ではあるまい。TBSのTV局前で待機していた雑誌記者たちを押しのけ、TBSの局内へと入る。連日TBSだけDVDが送られてこなかったこともあり、インタビュアーの第一声はやはり事件のことについて。日本語で本気で怒ってスタジオを出て行こうとするヒロインをディレクターが慌てて引き止めていた。
「たかが一カ国の一つのTV局で告知出来なくても何の影響もないわ!!」
などと言われてしまってはDVDの件も含めてどんどん悪化していく一方だからな。パフォーマンスの件も出たが、
「TBSだけでこんなに時間を喰っているのに、パフォーマンスをしていては披露試写会に間に合わない!」
と告げて一つ目のTV局を飛び出した。事件のことを無理やり聞き出そうとしたインタビュアーのせいで、パフォーマンスも見せてもらえなかったとして処理される。もっとも、明日の一面は俺とジョンのパフォーマンスで決まりだ。次に向かったのはテレビ朝日。ヒロインにも、『さっき話していたカードゲームのパフォーマンスを見せることになる』と告げておいた。

 

TBSから連絡が入っている分、淡々と映画についてのやり取りが続き、いよいよ俺のパフォーマンス。
「さて、先日からキョン社長からもOKをいただいた一大イベントで着々と準備を進めているのですが、決勝戦当日はどのようなものになるのか少しだけ見せていただけないでしょうか?」
「では、カメラさん少し下がっていただけますか?他の方もこれから何が起こっても絶対に安全ですので、余計な音が入らない様にお願いします。天空スタジアムで戦う選手にはこのデュエルディスクを装着して決闘をしてもらうことになります」
年越しパーティのときと同じデュエルディスクが情報結合され、腕を肩の高さに上げたところで決闘用のモードに切り替わる。ディスクには4000というライフポイントが表示され、俺の前には『キョンLP4000』と書かれたグレーの枠が表示された。昨日と同じく声帯を変えてカードを引いた。
「待たせたなマ○ード!俺のターン、ドロー!俺は魔法カード黒魔術のカー○ンを発動。ライフを半分払ってブラックマ○シャンを特殊召喚する。出でよ、ブラックマ○シャン!」
枠に書かれていた数値が2000に下がり、儀式をするかの様に暗黒のカーテンが現れ、黒い稲光りと共にブラックマ○シャンが飛び出した。『ATK 2500』と表示された枠が新たに現れる。
「ブラックマ○シャンの攻撃!正面のカメラを破壊しろ!ブラックマ○ック!!」
黒い光球がテレビカメラ目掛けて放たれ、さっきも話題にあがったし、爆発と同時に爆風の演出も加えてみた。スタッフの「うわっ!」という言葉が入ってしまったが、俺が座っていた椅子が倒れ、後ろのセットも揺れている映像が撮れれば十分だ。椅子を立てて情報結合を解除。当然カメラは破壊などされていない。
「いや~驚きました。ここまで本格的なものになるとは我々も想定外です。『カメラを破壊しろ!』と言われたときは一時はどうなることかと……生放送でもない限り、この映像はCGを加えたものだと思われる方も多いかと思いますが、すべてキョン社長のパフォーマンスです。映画の告知の最中に私共のイベントのことまで考えていただいて、誠にありがとうございました」

 

 移動の際のリムジンでは、先ほど見せたパフォーマンスのことで話題になっていた。
「あれを今夜実際に対戦して見せてくれるの?ジョンと……古泉君だったかしら?」
「そうなるな。一人だけじゃあんなパフォーマンスにしかならないんだ。二人で闘って初めてデュエルが成立する。今夜のお楽しみってことにしておいてくれ。それと、次のTV局で俺のパフォーマンスを手伝って欲しい」
「面白そうね!何をすればいいの?」
「俺が………、………」
説明している最中に日テレに着いてしまったが、大体の内容は把握しているようだし大丈夫だろう。これで本当に声優を代わってくれと言われかねないが、本当に惜しい人たちを亡くしてしまった。中国マフィア200万人の命と引き換えに蘇らせて欲しいもんだ。アイツ等の相手をするより生のライブを一曲聞いた方がよっぽど面白い。映画に関する内容でやりとりがあった後、同様にパフォーマンスをせがまれた。ヒロインにざるの上に置かれた大根を情報結合して準備OK。
「では、この後の編集のときに曲も入れておいてください。では、いきます。逮捕だ!ル○ン!!」
「出たな!とっつあ~ん!」
「ル○ン!!早く乗れ!!」
「待~て~!逃がさんぞ~!ル○ン~!」
「ここは拙者に任せられい!」
「そんじゃあ頼むぜ~五○衛門~」
タイミングを見計らったヒロインが大根を宙に投げる。情報結合した斬鉄剣で大根が切り裂かれた。
「でやぁ!はぁっ!たぁっ!………またつまらぬ物を斬ってしまった」
落ちてきた大根をヒロインが受け止め、納刀と同時に大根が六等分。
「おのれ~~~!次こそ捕まえてやるからな~~!」
「はぁい、ル○ン!お宝は手に入ったの?」
「ほら、この通り。ムフフフフフ」
「それじゃあ、これは私が貰って行くわね。あしからず~」
「お、おぉい、ちょっと待て!不○子ぉ!」
「不○子には秘密にしておいたんじゃなかったのか!?」
「僕がお姉さんに話しておいたの!!」
「どぉ、どぉっから入りこんだんだぁ?」
「パパが乗せてくれたんだよ。ね~!?」
「パパって呼ぶな!………とまぁ、こんなものでよろしいですか?」

 

 本家本元の声優五人プラス泥棒を捕まえる名探偵を演じた俺に賞賛の拍手が贈られる。
「いや~実に見事なパフォーマンスでした。演じていただいたシーンが頭の中によぎったくらいです。不幸にもお亡くなりになられた次○大介や銭○警部役の声優さんの代理として是非収録に参加していただきたい、いや、五人全員演じていただきたいくらいです」
「そう言っていただけると光栄です。僕も次○や銭○警部役の声優さんが亡くなったと聞いたときは本当に悲しい思いでいました。年に一度のTVスペシャル程度であれば、僕で良ければ是非参加させてください。新しい作品が出ても、やっぱり声は当時のままがいいとずっと思っていましたので。ちなみに、この大根。ただ斬鉄剣で切り裂いたわけじゃないんです」
「と、言いますと?」
「切った大根が元に戻る……と言ったらどうします?」
「そんなことが可能なんですか!?」
「できないことを提案なんてしませんよ。僕がやると何か仕掛けがあるのかと勘繰られてしまいますので彼女に任せてしまいましょう。パズルみたいなものですからね。年越しパーティで見せた再生包丁を使いました」
半信半疑で六等分された大根を組み合わせていくヒロインの姿がモニターに映っていた。
「嘘!?傷一つ無いわ!どこで切ったのか分からないくらいよ!」
ヒロインから大根を受け取り、インタビュアーに手渡し、切れ目や傷がないかどうか確かめさせていた。成田での戦闘の件と今のパフォーマンスを受けて、ディレクターから俺の時間が空いている日にル○ンVSコ○ンThe Movieの再アフレコということで他の声優陣まで呼び寄せると約束を取り付けられた。個人的にはあのヘボ探偵の声も俺がやりたいところだが、声優が死んでいるわけじゃないし、色々とトラブルになったからな。個人的なものについては元祖のあの人に入れ替えることにしよう。

 

「次でラストだ。長かった告知もようやく終わりだな」
「そうね。これで終わってしまうのは本当に残念だけれど、あなたと一緒に告知ができて本当に良かった。こんなに優雅な告知は初めてよ。そりゃあ、脅えていた頃もあったけど、今はあなたの閉鎖空間があるから何も不安に思うことなんてないわ!早く終わらせて披露試写会の会場に行きましょ!」
フジテレビに到着して映画告知の最後のやり取りを終え、『パフォーマンスを見せてくれ』とこれまで同様、パフォーマンスをせがんできた。
「では、今からあなたの首を刎ねます」
『首を刎ねる!?』
情報結合した帽子をかぶり、小太刀二刀流を連想させる身の丈程の日本刀を用意した。それを見たスタッフが次第にパフォーマンスの内容を理解し、周りの人間に耳打ちしている。ADが持っていたスケッチブックには『そのまま続けてください』と書かれ、首をはねると言われた毎朝お馴染みのアナウンサーを更に慌てさせていた。
「おや?フジテレビならではのパフォーマンスなんですが、ご存じないんですか?安心してください。そのままの姿勢でいれば絶対に死にません。あんまり慌ててると逆に命が危ないですよ?」
「ちょっ、待ってください!おいっ、そのまま続けろってどういうことだ!?」
「仕方がありませんね。すみません、どなたか頭と身体を抑えておいていただけませんか?」
AD達がアナウンサーを押さえつけ両手で頭を固定した。
「“room”」
半球状の立体が俺たちを包み、アナウンサーの首を刎ねた。何をするか分かっていたとはいえ、本当に首と胴体が分かれてしまったことに驚き、生首を放り投げる。剣が首に触れた瞬間に部分テレポートと一緒にコーティングを施しておいたから、首が床に落ちても傷を負うことはない。剣の方はこれでもう用無しだ。情報結合を解除して次のステップへと進む。

 

「えっ、あれ?ど、どうなって……何でこんな状態で俺、生きてるの!?」
「去年はこの能力を持つキャラクターがアニメで大活躍していたんですが……未だに気が付きませんか?」
「えぇっ!?そ、そんなアニメ、ありましたか!?」
生首は俺ではなくADやカメラマンの方を向いている。アナウンサーの疑問にAD達が首を縦に振った。
「では、もう少しヒントを差し上げましょう」
コインを親指に乗せて一度弾いて掌でキャッチ。フレミングの左手ではないが、まぁそれに近い形だと言えそうだ。左手首を捻ってセリフを言い放つ。
「“シャンブルズ”」
コインと生首が入れ替わり、床にはコイン、アナウンサーの生首は俺が右手でボールのように投げ上げていた。
「これでもまだ気が付きませんか?」
「めっ、眼が回る~~!降参です!何のアニメのことなのか教えてください!」
「じゃあ、首を元に戻してから、正解をお見せしましょう」
首と胴体を繋げて部分テレポートを解除。アナウンサーが自分の手で顔や頭を触っている。被っていた帽子を脱ぐと麦わら帽子に変化した。
「ギア2!」
右手を肩と水平に構えた俺に、ようやくアナウンサーが気が付いた。
「あ――――――っ!!ワ○ピース!!」
「ご名答!ゴム○ムの~~~~~!JETピストル!!」
カメラのレンズにヒビが入る程度に威力を抑えた。まったく、力加減を微調整するほうがよっぽど難しい。
「えぇっ!?ホントに腕が伸びた!?」
「タネを明かすことはできませんが、今の二つの技はどちらとも同じ仕掛けを施してあります。それでは、カメラのレンズを直してパフォーマンスを終了させていただきます」
指を鳴らしてレンズが元通りになると、アナウンサーがカメラに近寄っていく。
「凄い!!さっきまでレンズに入っていた傷痕が確かに消えています。いやぁ、お見事でした。ありがとうございました!このあと披露試写会ということで、そちらの方でも何か見せていただけるんでしょうか?」
「ええ、ジョンがその瞬間を待ちわびているくらいですよ」
「ちなみにどういった内容のパフォーマンスをされるんですか!?」
「今度のパフォーマンスは先に言ってしまうと、あまり驚かないので現地でお見せすることになると思います」
「本日はお二人ともありがとうございました」
『ありがとうございました』

 

 ようやく最後の告知を終え、リムジンで披露試写会の会場へと向かっていた。
「『日本だから』って言うのもあるのかもしれないけど、あなたも随分長い時間パフォーマンスしていたんじゃない?」
「何をやるかは予め決めておいたというのもあるし、どのTV局で何をしようか決めやすかったんでな。他の国じゃ、どのTV局で何のアニメをやっているかも知らなければ声優も知らん。どの程度認知度があるかってことも含めて、やっぱり日本がやりやすかったってところだ。明日以降の記者会見はアメリカ版フ○ーザの声で話すシーンもあるだろう。丁度いいセリフがあるんでな。マネージャーには、日本時間で月曜から木曜なら時間はいつでもいいと伝えておいてくれ。週末はスキー場のディナーがあるんだ。その仕込みもな」
「記者会見でフ○ーザの声って一体何を話すのか楽しみになってきたわね。そうね、ゴールデングローブ賞の表彰の翌日ってことになりそうだわ!でないと今まで散々電話対応していたマネージャーから文句を言われそうよ!」
「だったら今のうちに連絡しておいてくれないか?会場もTV局に用意させればいい。俺たちは記者会見を開けとうるさいから仕方なく開いてやっただけだ。ところで、軽食を食べるのなら今のうちだぞ?どうする?」
「そうね、少しだけ食べようかしら。そういえばジョンはどうするつもりなの?」
「会場についた時点でリムジン内にテレポートさせるつもりだ」
小分けしておいたクラブハウスサンドを二人で食べながら、俺は本体と同期してジョンや仲間に連絡を取り、ヒロインの方もマネージャーと記者会見の件について国際電話で話していた。

 
 

…To be continued