500年後からの来訪者After Future8-18(163-39)

Last-modified: 2017-01-24 (火) 10:18:38

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-18163-39氏

作品

ついにOG達の修行の成果を見せるときがやってきた。まぁ、これも修行の一環ではあるが、古泉たちが業者に受け渡すまでにどれだけ仕上げられるかが鍵になってきそうだ。そんなOG達のお土産として、キツくてもこれまで付けていた下着を同じデザインで情報結合すればキツイのを我慢しなくて済むこと、女の子の日であってもテレポート膜で子宮から老廃物が流れ出るのを防ぎ、期間中であっても抱き合えることが伝えられる。もっとも、コイツには内緒で青俺発案の財宝発掘ツアーが実行に移されようとしていた。

 

 しかし、あのTVスペシャルに張り合うとなると、全世界の金をかき集めないと500トンの金塊なんてとてもじゃないが用意できそうにない。盗掘したとしてもたかが知れているしな。
『そうでもない。プラチナやダイヤモンドのように現地調達するのなら500トンとまではいかずともそれに近い値にはなるはずだ。話題に上がったから調べてみたが、金の産出量の多い国は中国で45トン、オーストラリアで27トン、ロシアが25トンと表記されている。日本でも150トンは眠っているらしい。異世界の分も合わせれば500トン近い量になるんじゃないか?特に中国はマフィアを壊滅させただけでは気が済まないだろう?』
青俺の方に移動していても、俺の思考はジョンには筒抜けか。……ん?本体ならまだ分かるが、影分身の思考がジョンに伝わるってどういうことだ!?
『単純に対象を変えただけだ。どちらもキョンならそのくらいはできるらしい。他のメンバーでは駄目だった』
だが、朗報だ。野菜スイーツ作りが終わったら向かうことにしよう。しかし、野菜スイーツも種類が多いせいもありカレー以上に時間がかかってしまうな。いくら美味しいからとはいえ、大食い選手権さながらの食いっぷりを目の当たりにしては、更にやる気を失うことになる。今さらながら、こんなもの考案するんじゃなかったとつくづく感じているよ。
 みくる達に手伝ってもらっているとはいえ、まだまだ時間がかかりそうだ。気付いた頃には青俺が指定した時間になっていた。俺はどのみち不参加だし、野菜スイーツ作りを進めることにしよう。俺が野菜スイーツを作っている間、青有希、青朝倉は異世界の冊子の情報結合。OG達はそれぞれの世界の冊子作りに精を出していたんだが、変態セッターは影分身二体で三人がかり、「店舗開店前に入れて欲しい」と揃って言ってきた二人も影分身を使って情報結合するようになっていた。
「黄俺が言っていた通りだ。ここにいる全員で宝探しをするつもりは毛頭ない。二トンの金塊も磁場で集めるからそのつもりでいてくれ。テレポートは俺がやる。何も無ければ出発だ」
『問題ない』

 

『ハッ、ハッ……キ、キョン……私、もう動けそうにない』
『おまえが言い出したんだろうが。とにかく、汗もかいただろうし、またシャンプーとマッサージをしてやる。終わった頃に朝食に出向くくらいが丁度いい』
『嬉しい……』
言葉ではそう告げてはいるが、腕にも力が入らんらしい。昨日は俺の首に巻きついていたっていうのに、こりゃ重傷だな。明日の夕食までに治ればいいんだが……
『それで、みんなはどうしているの?』
『そうだな、いくつかあるんだが、まずは三月号の情報結合が始まったことからだな。社員たちが中身を確認して変更が無ければそれで600万部作るつもりだ。変更があったらあったで、古泉や青俺が修正すればいい。アイツは影分身二体を駆使して三人で情報結合しているし、OPEN前に店舗を開けてくれと言っていたあの二人も、影分身で一冊ずつ情報結合するところから再スタートしている。一冊作るごとにサイコメトリーで確認しているし、乱丁があるより、間に合わない方がよっぽどマシだ。急ぐ必要はない』
『もうそこまで上達したんだ……でも、それ以外にも何かあるの?』
『青俺が一人で出かけるつもりだったらしいんだが、この前話題になったル○ンのTVスペシャルに出てきた500トンの金塊に対抗してみたくなったんだと。財宝発掘ツアーを今度は異世界でやるそうだ。今度は圭一さん達も連れてほぼ全員参加だ。もっとも、ほとんど見学で以前のように宝探しをするつもりは無いみたいだけどな。在りかも分かっているし、みくるがトランクに足をひっかけて転ぶなんてこともないだろう。ついでに異世界のタイタニック号もサルベージしてくるそうだ。今度は当時のものをそのまま再現するらしいぞ?』
『え―――――っ!!見学でいいから私も行きたかったな……』
『じゃあ、その代わりに別の財宝発掘ツアーに出かけてみるか?明日までに今の状態が回復すればだけどな』
『まだ宝が眠っているところがあるの?』
『いや、プラチナやダイヤモンドと同じ発掘になる。ジョンから聞いた話だと、金の生産量は中国で45トン、オーストラリアで27トン、ロシアで25トン、日本で150トンだそうだ。影分身にサイトで調べてもらったが、一年でそれだけの量を採掘しても、日本はあと20年は持つらしい。中国には色々と迷惑をかけられたんでな、一欠片も残すことなく分獲ってくるつもりだ』
『私も一緒に連れて行って!!』
『言っただろ?まずはその状態が回復してからだ。自分で言い出したんだろうが』
『でも、嬉しい。もう二度とこんな体験できないかもしれないけど、また同じように抱いて欲しいって思っちゃう。キョンが優しく抱いてくれたからかな?今日は一日中傍に居させて!』
『分かってるって』

 

 俺たちSOS団の関係性が微妙に変わっただけの異世界でトランクの中身が変わる筈もなく、入っていた資料を有希が読むまでもない。
「事前にキョンから聞いていたとはいえ、こんな簡単に宝を掘りあてられてしまっては面白味に欠けてしまうよ。なんとかならないのかい?」
「だから、俺一人で行くつもりだったんだ。宝探しと言っても正確な場所を覚えていたんじゃすぐに見つかってしまうだろうが!やることと言えば、サルベージしたタイタニック号の修理くらいだ。船を浮かべる程度にまでは修復しないとな」
「青キョン先輩、それは三月号を仕上げてからでも遅くないですよ!でも、圭一さん達や青私たちは初めてのツアーですし、もう少し宝探しの醍醐味があってもいいんじゃないですか?」
「問題ない。こことロシアの湖はすぐに宝の場所が分かってしまう。でも、以前ツアーに出かけたときは、伊52号に残っていた金の延べ棒は一トンにも満たなかった。後はすべて海水に流されてしまっている。泥の中から金塊を探せばいい。磁場で集めるのはその後で十分。あなたが持っている美姫の力を全開にして閉鎖空間を張って。ただし、遠くに行きすぎないように注意が必要」
「面白いじゃない!誰が一番本数を集められたか勝負するわよ!!」
『……しょうぶ!?ハルヒママ、勝負!勝負!!』
「黄有希さんの発案で、ようやく面白味が出てきたようですね」
「だったら、早く湖をまわってしまいましょ!そういう勝負ならわたしにも勝ち目がありそうね」
『フフン!一位は誰にも譲らないにょろよ!あたしの第六感で延べ棒を余すことなく見つけてやるっさ!』
この分だと当分終わりそうにないな。オーストリアとロシアの湖を回って、ようやく深海5000mに到達。超サ○ヤ人化した青俺が色をつけたまま閉鎖空間を展開した。その明かりに驚いて深海魚達が逃げていく。

 

「じゃあ、これから金の延べ棒探しゲームをスタートする。制限時間は20分、それまでにより多くの延べ棒を見つけてきたメンバーが勝ちだ。いくら本数を探し当てたとはいえ、時間内にここに戻って来なかった場合は減点対象とする。当然、透視能力で見つけてきた場合は即失格。テレポートを使えないメンバーもいるから、徒歩か走って戻ってくること。ルールは以上だ。追加、あるいは訂正があったら教えてくれ」
『問題ない!』
「じゃあ、行くぞ?Ready……Go!!」
青俺は審判役に徹するようだな。他のメンバーが探している間に船内の金の延べ棒を回収してもよかったんじゃないかとも思ったが、どうせあとから磁場で吸着させるなら同じか。
 20分後、青俺の周りには両手では抱えきれないほどの延べ棒を持ったメンバーが集まった。
「黄あたし、それ一体何本あるの?」
「14本よ。さすがに持ち歩きながら探すのは疲れたわよ」
「ハルヒ先輩、キューブに収めればよかったんじゃ……?」
OGの指摘を受けて、徒労にようやく気が付いたハルヒが延べ棒を落としてひれ伏している。子供たちは四、五本見つけただけで十分満足できたようだ。そして、栄えある第一位は何と佐々木。拡大したキューブには19本の延べ棒が入っていた。
「凄い。たった20分で19本なんて……佐々木先輩、一体どうやって探していたんですか?」
「くっくっ、こうも上手くいくとは僕も思ってなかったよ。伊52号の破損具合と海流から、どの方向に流れていったのか予測しただけさ。あとは不自然な出っ張りを見つけて泥を取り去ったら、延べ棒を見つけることができた。それだけだよ」
「凄いです。船の破損具合と海流の流れを読み取って探していたなんて……ただ歩きまわっていたわたし達じゃ勝ち目がありません」
文句のつけようがない戦略で見事勝利を手にした佐々木に周りから拍手が送られた。残りの延べ棒はOG達の作った磁場ですべて回収し、異世界のタイタニック号をサルベージして本社に戻ってきた。仕込み作業もひとまず中断だな。

 

『さて、全身洗い終わったし、朝食に行こう。着替えさせてやるからいつもみたいにイメージを送ってくれ』
『でも、キョン。お腹は空いたけど、こんな状態じゃスプーンも持てそうにない。できれば、キョンに食べさせてもらいたいけど、周りの目が気になるし……』
『心配するな。サイコキネシス一つで簡単に解決できる。まずは着替えてからにしよう。ブラもショーツも今のサイズに合ったものを情報結合してやる。これ以上キツイ下着をつけるのは止めた方がいい』
『……じゃあ、これ』
受け取った情報を基に着替えを終え靴を履かせると、サイコキネシス……というより舞空術のようなもんだな。ゆっくりと身体を起こして立ち上がらせた。
『これでレストランに向かえばいい。歩く振りすらできそうに無ければ俺が動かすまで。レストランにいる間は俺流の二人羽織で食べさせてやるよ』
『キョン流の……二人羽織?』
『レストランに行ってみればわかるさ』
立ち上がったまでは良かったが、案の定足もロクに動かせない状態になっていた。両腕を俺の左腕に絡ませて、さも歩いているかのように足を動かしていた。
『ふふっ、催眠をかけてるわけじゃないのに誰も違和感を持ってないみたい』
『力が抜けている間の食事はこれで対応するとして、それ以外の時間は何をしたいか決まっているのか?折角ビバリーヒルズに来たんだ。ホテルから出て観光というのも悪くはないが、そんな状態じゃあな』
『多分、今までの旅行でもそうだったんだろうけど、私は旅行が終わるまではキョンから離れたくない』
『分かった。抱き合ったまま話すことにしよう。話のネタを考えておけよ?』
『あたしに任せなさい!』
レストランについて椅子に腰かけるのも、メニューを開くのも、ナイフやフォーク、スプーンを持って食べるのも全て俺のサイコキネシス。どこぞの伝説達成番組ではないが、本当に全メニューを食べ尽くすつもりのようだ。他の客たちがいなくなった後も、胃を圧迫していたものをキューブに収めて食べ続けていた。
「お客様、申し訳ありませんが、朝食の時間はこれで終わりになります。これ以上の注文は承ることができなくなってしまうのですが……よろしいでしょうか?」
「分かりました。今出ている品を食べ終えたら部屋に戻ることにします」

 

「ぶー…ラストオーダーの制度はないの!?事前に聞きに来るくらいしてくれたっていいじゃない!」
段々とセリフがハルヒに似てきたような気がするのは俺だけか?戦闘力5000000のふざけた力が無くなっても、未だに周囲に影響を及ぼすとは……まったく、感服するよ。
「飲み会じゃあるまいし、朝からこれだけの量を食べているなんて俺たち以外にいるわけがない。もしいたとしても、そんな対策を講じるほど数が多いわけでもない。昼食はランチタイム開始の時間に来よう。それならゆっくりと食事を堪能できる。時間になったら知らせるよう影分身に同期しておく。本体が起きている以上、影分身も寝られないからな」
とはいえ、これから忙しくなるのは影分身の方。財宝発掘ツアーから帰ってきた妻やOG達のシャンプーとマッサージを終えて中央のベッドに横になった。
「みくる、今日の再撮影で鶴屋さんに何か言われたか?俺は鶴屋さんが出したNGシーンしか見てなかったからな。今朝、再撮影の話を提案した後に後悔したよ。昨日の段階で母乳を搾っておけば良かったってな。こんな状態じゃ『弾力も最上級のようっさ!』なんてセリフが出てくるはずがない」
「母乳が出るようになったことは鶴屋さんには話していません。わたしから事情を話さなくても、ここにいる皆さんにはもうバレていそうですけど、できればキョン君と二人だけの秘密にしておきたいんです。鶴屋さんもどうしてこんなに張っているのか不思議に思っていたみたいですけど、分からない振りをしていました。でも、あれだけ触られたのに母乳が全然漏れなかったのはわたしも吃驚です!キョン君、何かしたんですか?」
「ああ、卵管に張ってある膜と似たようなものを取り付けておいた。母乳が溢れ出ない様にするためにな。これでしばらくの間、あんなことは起こらないだろうし、苦しくなければ今度抱き合ったときに吸いつくせばいい。急ぐ必要が無ければ、今日は少しでも長く寝た方がいいんじゃないか?」
「そうですね。それじゃあ、明日お願いしてもいいですか?」
「みくるの頼みなら勿論引き受けるさ」

 

「佐々木、そろそろ産婦人科に行ってこないか?サイコメトリーの方が数段優秀だが、定期的に行っておかないと色々と文句を言われそうでな。どうする?」
「そういえばそうだったね。明日の楽団の練習については青僕に任せているし、いくら影分身でも間違えずに弾けるとは到底思えない。午前中はホテルのフロントでチェックアウトに参加するだろうし、キミが空いているのなら午後からというのはどうだい?」
「それに関してなんだが、明日の朝食が一段落した時点で、皿洗いをしている若手政治家にフロントの手伝いに行くようハルヒと青有希の影分身に言伝を頼むつもりでいる。いい加減、俺たち抜きで運営してもらわないとな。昼食の支度と木曜のディナーの準備をしているくらいだから大したことは無い。キリの良いところで声をかけるってことでいいか?」
「そうしてくれると僕も嬉しいよ。本体はラボにいるからテレパシーを送ってくれたまえ」
「じゃ、明日の午前中で決まりだな」
青佐々木の方は排卵日を過ぎたばかりか……もう少し早めにサイコメトリーしておくんだった。今からおよそ28日後だと……三月の頭には俺の遺伝子をアイツに注ぎ込むことになりそうだ。そういえば、男と女どちらがいいのか聞いて無かったな。佐々木と同じ理由で男の子と言い出しそうだと勝手に予測を立てていたからかもしれん。
 翌日、野菜スイーツを作っている影分身はそのまま作業を続け、100階で妻達と一緒に寝た振りをしていた影分身が一緒に降りてきた。眠気を取ってツアーに向かったとはいえ、自分で眠気の取れないメンバーは寝不足の状態のまま81階に現れた。有希が一人ずつ眠気を取って回ってくれている。ありがたい。
「今日からしばらくの間、練習試合にはあたしが出るわ!有希、双子と比べて早いか遅いか判断してちょうだい!」
「分かった。わたしも練習試合に出る」
「水臭いことを言わないで欲しいわね。社員に三月号のチェックをさせたらわたしも出るわよ」
「僕も暴れたいところですが、遅くとも明日までには全店舗まわってしまいたいので、その後出させてください」
「私にも先輩たちと同じコートに立たせてください!キョン先輩の指示が無くても動けるようにしないと、中途半端なダイレクトドライブゾーンしか使えません!」
『私も入れてください!』

 

 OG六人中三人がベンチというのもどうかと思ったが、ハルヒ達と一緒にダイレクトドライブゾーンの練習をするためだと分かれば注意を受けることもあるまい。三月号が作り終わったら徹底的に鍛え直さないとな。
「古泉、やっぱり今日のヘリの運転変わってもらえないか?黄俺の域には達していないだろうが、今の段階でどの程度読めるのか確認したい」
「それはさすがに影分身で……というわけにはいかないでしょうね。分かりました。そういうことであれば、午後は僕が運転を引き受けましょう。影分身の修行もあることですし、一石二鳥……いえ、あなたが生放送までに相手の采配を読めるようになれば、一石三鳥ということになりそうです」
「言っとくけど青キョン、あたしは絶対に交代しないわよ!?」
「昨日の様子を見ていればそのくらい俺にだって分かる。相手の動きが分かるのならコートの外側で十分だ」
「それで、あんたはどうするつもりよ!?」
「俺は午前中は昼食の支度。それに佐々木と一緒に産婦人科に行ってくる。今も作業中だが、今日中に野菜スイーツは仕上げる。種類が豊富な分、カレーよりも時間がかかるというのがこの料理の欠点だ。カレーも含めて考案するんじゃなかったと後悔している。あとはディナーと夜練だな」
『カレー!?』
たった三文字にとびついてきた有希たちに鉄拳制裁。この調子じゃ、次はいつ食べられるのやら……まったく。
「とりあえず、野菜スイーツが出るのが木曜日。余った分は俺たちで食べることになるだろうから、夕食を軽めにしておいてください。それから、社員旅行の件をFAX、各部署で聞いてもらいたいのと、楽団員にも今日の練習で確認してくれ」
『問題ない』

 

『いくら下着が濡れるからって何も全部脱ぐ必要はなかったんじゃないか?』
『これでいいの。キョンと繋がっていたかったし、私の胸をもっと触って欲しい』
『そんなことをやってると、明日になっても起きられないままだぞ?』
『さっきみたいに、キョンが私の身体を動かしてくれれば平気だよ』
『あれは俺たちのことを知らない一般客だったからだ。帰ったら間違いなく不自然さに気付かれる』
『まだ少し恥ずかしいけど、何だか、みんなに見られても別にいいかなって思えるようになった。どうせ帰ったら色々と聞かれるし。ねぇ、キョン。見てるだけでいいから発掘作業に連れて行ってくれない?できれば……このままがいいな。ステルスを張れば周りに人が居ても私たちは見えないんでしょ?』
『それはそうだが……見られている感は拭えそうにないな。だが、鉱山ならそこまで人もいないだろう。おっと、どうやらランチタイムに入ったらしい。腹が減ってはなんとやらだ。お楽しみは後にとっておこうぜ』
『え~~~っ、折角キョンと繋がっていられたのに……離れるなんて嫌!』
『まぁ、そういうな。やろうと思えば、日本に帰ってからでも毎晩こうしていられるだろ?また着替えさせてやるから、早く行くぞ』
『ぶー…分かったわよ』
レストランに二人で顔を出すと、店員が「また来た」と言わんばかりの表情。俺たちは客だし、同じものをいくつも頼んでいるわけじゃない。一品ずつ味わっているだけで売り上げにだって貢献しているんだ。そんな顔をされる筋合いはないし、ここの料理をアレンジするなり、同じものをサイコメトリーで切った食材で作ろうとしているんだ。光英に思ってもらいたいもんだ。催眠を解いてしまおうか悩んでしまうな。だが、夕食と朝食を何品も注文していたせいか、昼食として出されているメニューの半数近くは既に食べたものばかり。「今日中に残り半分を制覇したい」という意見に同意して、俺たちの座った席の前には何品もの料理が隙間なく並べられた。

 

 互いにキューブで胃の中のものを縮小しながら食べ続けることしばらく。ランチタイムのメニューを制覇したところでレストランを後にした。夕食時にはどんな顔が拝めるのやら……今から楽しみで仕方がない。妻の服を脱がせて昼食前と似たような体勢を作ると、ステルスを張って向かった先は中国の山東省にある鉱山。
『キョン、ここは一体どこ?』
『中国の山東省だ。中国の中ではトップの鉱山らしい。ベスト5で中国のおよそ60%を占める程らしい。中国じゃ、金の需要がかなり高いらしくてな。おかねよりも金で取引されることもあるそうだ。国全体がこんな状態だったら、中国マフィアも麻薬なんかより金を保管しておいて欲しかった。まぁいい、早速作業に取り掛かろう』
閉鎖空間を一枚張って鉱山のあちこちに金を吸着する磁場を放った。鉱山全体に地震が起こったかのように揺れ、鉱山に埋まっていた金が姿を現した。大量の金が磁場に吸着した後も磁場が鉱山全体を動き回り、出ようにも出られなかった金の欠片が土の中からやっとの思いで飛び出てきた。やや大きめの閉鎖空間に金塊を収めていく。これだけで一体何トンあるのやら……とにかくさっさとまわってしまうとしよう。
『閉鎖空間を解除しなくてもいいの!?』
『あれは現状維持の閉鎖空間だ。要するに俺たちが金を採掘しても落盤が起きないようにするためのもの。今、俺たちがやっていることは、いくらマフィアへの仕返しとはいえ盗掘に変わりはないからな。これで死者を出すなんてことはしたくないだけだ。どうする?これ以上犯罪に加担したくないのなら、今持っている金塊も元の場所に戻してくるぞ?』
『これを使って何かしようってわけじゃないんだし、キョンなら大丈夫じゃない?古泉先輩が前に言ってたけど、これで世界経済が不安定になるようなら戻せばいいと思う。タイタニック号だってあんな有意義な使い方するんだし、イギリスがタイタニック号を返せなんて言ってきたのと一緒だよ。発掘した金塊を返せって言われたら、元の場所に置いてくるから自分たちで探せって言えばいい』
『なら、さっさと残り四か所もまわって異世界にも行ってしまおう。早くしないと場所を忘れてしまいそうなんだ』

 

 そのあと、河南省、江西省、福建省、雲南省と回り、異世界の方も巡ってホテルへと戻った。
『このスイートルームですら原寸大にできないくらいの量が中国にあったなんて、未だに信じられない』
『国内ランキング五位までを回っただけだから、中国にもまだまだ残っているはずだ。あのやり方じゃ、大型の金塊しか吸着できないからな。それでもこれだけの量になるとは俺も予想だにしなかった。本社に戻ってから不純物を取り除くことにして、今は金庫に保管しておこう』
『不純物を取り除いたらどうするの?』
『金の延べ棒に形を変えて刻印を刻むだけだ。一本12.5kgの延べ棒にするとして、500トンなら40000本の延べ棒が必要になるのか。我が社のマーク入りの金の延べ棒を作ってやるよ』
『一本だけで良いから、延べ棒にするところを見せてくれない?』
『だったら、純度99.99%のものを使おう。以前みんなで行ったときの分が大量に残っているはずだ』
俺の分身を体内から抜き、180°振り返ると再び分身が体内へと隠れた。流石、鍛え上げられた身体は違うな。お尻が他の妻たちより引き締まって見える。っと、あんまり見惚れていると、俺の分身が如実に反応してしまいそうだ。金庫からテレポートしてきた金塊を元のサイズに拡大。12.5kgの金の延べ棒に金塊番号、商標、重量表示、素材表示、精錬分析者マーク、品質表示を刻み、商標としてSOS団のマークが入っている。金塊を使ったと言えば、シャミセンの黄金像二体に妻たちのアクセサリーくらい。そこまで使っていないとは思っていたが、端数を取り除いても100本に至るにはまだまだ遠い。500トンもの金塊と本当に張り合えるのか……?
『たった一本でこんなに重いなんて……』
『今の相場じゃ1gにつき、約3400円だから、それ一本で4500万円ってことになりそうだな』
『4500万円!?』
『テレパシーで叫ぶなよ。その計算でいくと、500トンの金塊の総額は一兆八千億円ってことになる。ル○ンが狙うわけだ』
『一兆………八千億円…………?』
『世界経済が不安定になる理由が分かっただろ?』
『きっ、キョン、本当に500トンの金塊を集めるの!?』
『今さら引き返せるわけがないだろ?俺の代わりにハルヒ達を説得してくれるか?』
『……うん、それ、絶対無理』
延べ棒に形状を変えた金塊をキューブに戻して本社の金庫へとテレポート。夕食まで違う話題で二人っきりの時間を過ごしていた。

 

 昼食の支度を終えて、佐々木と二人で産婦人科に向かっていた。
「今、どんな気分か聞いてもいいか?」
「キミのサイコメトリーで細かなことは度々聞いていたからね。定期的に通う必要があるというだけで、病院で診察を受けても大したメリットは得られない。キミも僕と同じ考えなんじゃないかい?」
「まぁな。アドバイスは素直に受け入れた方がいいとは思うが、それ以外に真新しい情報はないだろう。ハルヒのときのように双子の赤ん坊だと診断されるまでサイコメトリーをしていなかったわけでもないしな」
「早く終わらせてしまいたいよ。あとは五月の末と……その次は陣痛が始まった日くらいでいいんじゃないかい?」
「『もっと頻繁に通うようにしてください』なんて言われなければな」
結局、何の問題も無く順調に進んでいること、今後の過ごし方のアドバイスを聞いて本社へとテレポートで戻ってきた。ようやく野菜スイーツが出揃ったか。明日は午前も午後も出かける用事があることだし、午後からは日曜日のおススメ料理に取り掛かればいい。向こうもそろそろ夕食時だ。一旦同期しておこう。
『すまないが、ちょっといいかね?』
圭一さんからテレパシーがくるとは珍しいな。例の番組の詳細でも決まったのか?
『大丈夫です。何か俺に関わる連絡でも来たんですか?』
『ああ、今年のパーティの件で撮影はこちらにすべて委ねるからDVDを送って欲しいそうだ。到着次第放映するらしい。その確認だそうだから、君さえOKなら私の方で返事をしてしまうが、どうするかね?』
『分かりました。ハリウッドスターが寝静まり次第、すぐに送付すると伝えてください。編集さえ間に合えば翌日でも放送可能だと付け加えていただければ「すぐに」着くことを強調できるはずです』
『分かった。そのように伝えておこう』
『よろしくお願いします』

 

 楽団の練習時は例のイヤリングで出るとか言っていたはずだが、ユニフォームに変わったと同時にこれまでのピアスに付け変えたらしい。やってみたことはないが、イヤリングやピアスもドレスチェンジできるのか?
「社員と楽団員の希望調査を行った。社員旅行には全員参加。FAXでの返答も今のところ全員出席」
「僕が出向いた店舗でも、出席の旨を伝えてきた社員もいましたので、後ほど有希さんに情報をお渡しします。しかし、昨日彼に進めてもらっていたとはいえ、説明もしているとどうしても時間がかかってします。今日中には終えることができるでしょうが、明日はディナーの仕込みに専念する必要がありそうです」
「そういえば……古泉君や黄わたし達の将棋はどうするのかしら?黄古泉君はディナーの仕込みがあるし、黄わたしは練習試合、古泉君はわたし達の世界の本社のことを考えないといけないでしょう?」
「オンシーズン中は難しいと未来の黄僕に伝えていますからね。可能なときにはこちらから連絡を取ることにしています。タイムマシンが無くてもテレパシーなら可能ですから」
「わたしも、昨日の一件さえ無ければ、ジョンと彼の三人で将棋を指していたんだけど……しばらくは無理そうね。それに、社員に確認させたけど、訂正するようなところはどこも無かったわ。このまま情報結合を続けてOKよ」
「こちらからも二件だ。彼には既に伝わっているが、今年の年越しパーティの撮影はすべてこちらで任せたいそうだ。それをDVDにしてTV局に送ることになった。もう一件は以前アフレコした映画の件で日本テレビから連絡が入った。揉めていた声優もあれだけの違いを見せられて渋々承諾したらしい。他の声優陣も、これならそのまま放映しても構わないと納得しているようなんだが、こちらもそのように折り返してもいいかね?」
「問題ない。撮影は私に任せて」
「くっくっ、ようやくキョンには敵わないと理解したようだね。他の声優陣がそれで納得しているのならいいんじゃないかい?わざわざアフレコに赴く必要性はないよ」
「明日も午後からアフレコが入っているし、やることが山積みだ。そのまま放映する件に関してはこちらもOKだと伝えてください。佐々木を連れて産婦人科にも行ったし、野菜スイーツも作り終えた。午後からは日曜のおススメ料理の仕込みに入る」
「キョン君、あまり無理しないでくださいね」
「ああ、みんなも折角の休みの日なんだからしっかり休んでくれ」

 

 旅行の方は昨日食べ損った残りのメニューを堪能し、互いのシャンプーとマッサージを終えて二人で話していた。
『忘れないうちに情報を共有しておこう。帰ってすぐに出すと怪しまれるから、一品ずつ様子を見て作ることになりそうだ。今のところ、表向きはバレていない。そんなことよりも、昨日話したバレーの件で、ハルヒが納得できるまで練習試合に出続けるそうだ。双子とどちらが遅いか判断するのに有希が参加して、朝倉も双子に負けたことに納得がいかんらしい。残り三枠は他のOGで埋めることになった。ダイレクトドライブゾーンの良い練習になる』
『納得いくまでって……オンシーズンが終わってもコートに居座ってそう。ジョン達に話していた三枚ブロックはいつやるつもりなの?』
『青ハルヒが何を考えて「オンシーズン中は出ない」と言っているのかは分からんが、面白そうだから出るとは言っていた。オンシーズン中でもこっちから誘えば一日くらいは出るだろう。どの道、子供たちが帰ってきた時点で交代だからな。そこまでセット数はこなせないだろうが、俺も集中力が切れないうちに零式改(アラタメ)を撃っておきたいし、できればディナーの仕込みが終わった木曜日にと思っている』
夕食の情報を共有すると、いくつものメニューにチェックがつけられていた。まぁ、どれも簡単にできる代物だし、作るのに大した負担にはならないだろう。これで今日の朝食べられなかった分を平らげて、ビバリーヒルトンホテルの全メニューをコンプリートできる。
『お腹がいっぱいになったからかな?何だか眠くなってきちゃった。キョン、腕枕して欲しい。繋がったままで』
『なんだ、てっきり今日も抱いて欲しいと言い出すと思っていたぞ。本当にいいのか?それで』
『自分の力で立てないのを見られるのが、やっぱり恥ずかしくなっちゃって……明日はチェックアウトしたら残りの鉱山をまわって、不純物を取り除く手伝いをさせて欲しい』
『だったら、俺たち二人分の昼食も本社で用意する必要がありそうだな。夕食前には帰ると伝えてあるし、その頃に戻ればいいだろう。純金の延べ棒が何本になるか楽しみになってきた。全部できたところでみんなにみせることにしようぜ』
『あたしに任せなさい!』

 

 午後も滞りなく作業が進み、異世界を含めた全店舗のマネキンにピアス穴が空けられた。異世界支部にはまだ社員と呼べる人間はほとんどいないが、こちらの世界ではあとは社員やアルバイト達のファッションセンス次第。コーディネートは任せることにしよう。古泉も「ようやくすべての店舗をまわりきることができましたよ」と一言。ディナー、夜練を終えてスカ○ターでドラマの第四話を見ながらシャンプーとマッサージ。ベッドに寝かせたみくるの母乳を吸っている間に、秘部は密で溢れていた。
「これで弾力も最上級と言えそうだ。もう一回鶴屋さんに確かめてもらうか?」
「……キョン君、それは恥ずかしいですよぅ」
「くくく……冗談だからそこまで気にするな。昨日、財宝発掘ツアーで行けなかった分、今日はたっぷりと抱いてやる。母乳を吸っている間に、みくるの方は準備が整ったみたいだからな」
「やっぱり、温泉旅行に行っている間も、キョン君が傍に居てくれないと、わたし禁断症状がでちゃいそうなんです!シャンプーもマッサージもキョン君に抱きしめてもらうのも、たった一日空いただけでも我慢できなくなっちゃうんです!キョン君、お願いします!ずっと傍に居させてください!」
「みくるが俺の傍から離れないのなら、俺も離すつもりはない。みくるは永遠に俺のものなんだろう?だったら、俺が呼んだらすぐ来られるようにしろ。それならみくるの願いも叶うはずだ」
ベッドに横になっているせいで涙がこめかみの下を通って流れ落ちていた。頭を撫でて顔を近づけると、自然とみくるが眼を閉じる。それを合図にみくると口づけを交わし、最上級の弾力を直に触れて確かめていた。

 

「さて、ようやくおまえの出番が回ってきたようだ。俺にとっては随分長い半年間だったが、おまえはどうだ?」
「僕も待ち遠しくて仕方がなかったよ。これからしばらくの間は毎日キミに抱いてもらえるのかい?」
「俺もそろそろだと思って昨日サイコメトリーしたんだが……排卵日を過ぎた後だった。もう少し早く気付いていれば、俺の遺伝子を注ぎこむことができたんだが……次は三月の頭ってことになる。佐々木も排卵日の目安なら自分で特定できるだろうから俺が忘れていたら教えてくれ。毎日抱いて欲しいというならいつでも要望に応える。因みに、男の子と女の子どっちにするつもりなんだ?」
「キミがそこまで気にする必要はないよ。僕もアレがあってから数えるのをすっかり忘れていたからね。そうだね、名前はまだ決めていないんだけど、黄僕と同じ男の子がいいと思ってる。受精するときは卵子の周りを男の遺伝子だけで囲むようにテレポートしてくれたまえ」
「分かった。それで、今日はどうする?」
「キミと一緒に子供の名前を考えてみたいんだけどね。どうだい?」
「個人的にはおまえがどんな名前をつけるのか気になっていたんだが……まぁいい。俺たちの子供に相応しい名前にしようぜ」

 
 

…To be continued