500年後からの来訪者After Future8-2(163-39)

Last-modified: 2016-12-22 (木) 21:07:04

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-2163-39氏

作品

四か月以上の期間を労して世界を回った告知もようやく終わりを告げ、軽食を食べながら披露試写会の会場へと急いでいた。ヒロインと二人でTV局を回っている間、本体は日曜のおススメ料理の仕込みとパーティの準備、デュエル用の闘技場を情報結合。担当者にはバトルシティ編のルールと伝えておいたし、闘技場もあれと似たものを再現すればいいだろう。これで明日はカレーの準備に入ることができそうだ。

 

 影分身をホテルの調理担当として一体を送り、本体はジョンと一緒にリムジンの中へと移動。ジョンが先にドアを開けて、ヒロイン、俺の順で披露試写会の会場の前に出る。眩しすぎて眼が開けていられない程のフラッシュが焚かれていたが、俺たちが進むごとにその数が減っていく。まぁ、いつも通りだ。すでに中尾さんも到着しており、観客も既に入っている。どうやら俺たち待ちだったようだ。時間通りには来たんだから文句は言うなよ?女性アナウンサーが試写会開始の合図をして、俺たち四人がスクリーンの前に立った。試写会の前に一言とマイクを手渡された。
「今日という日を楽しみに、こうして笑顔で来て下さった皆様に御礼申し上げます。アメリカでの披露試写会前から話題にあげられ、皆様にとっては待ちきれない日々を過ごされた方も多いのではないでしょうか?そういう方々がたくさんいらっしゃると、とても嬉しく思います。早く映画を見せてくれという方もいると思いますので僕の方はこれで挨拶にかえさせていただきます」
「これまでは通訳を交えながら英語で話していただけだったんですが、キョンに日本語を習って、こうして直に皆さんにメッセージを伝えることができたことを嬉しく思っています。私のアフレコが上手くいったかどうかはご覧になった後、皆さんで判断していただければと思います。よろしくお願いします」
『僕は映画のラストシーンでちょっと話す程度でアフレコは別の方でもいいんじゃないかと考えていたんですが、今横にいらっしゃる中尾さんの大ファンでして、ほとんどそれを理由にアフレコに参加したようなものです。ガスマスクをかぶった状態での声なので、本当にアフレコに参加したのかと疑われてしまいそうですが、僕のセリフよりもキョンとのラストバトルの方をメインで見ていただけると助かります。よろしくお願いします』
「ニュースでもとりあげられていましたが、日本語を覚えたばかりの彼女があれほどの演技を見せたという証拠を是非ご覧になってください。私や他の声優陣が驚いていたと報道されていたのが良く分かるはずです」
マイクが女性アナウンサーのところへと戻り、俺たち四人はアメリカでの披露試写会同様、観客に囲まれた席へと案内された。

 

ここまで来れば、本体の意識は10%もあれば十分。映画を見るより観客がどんな反応を示すかを見ていればそれでいい。カレー作りを今の段階から始めてしまおう。いくつ玉ねぎをみじん切りにすればいいのやら……俺にも見当がつかん。俺たちの分、楽団員20人分、日本代表20人分、社員20人分に加えて表彰式後のパーティで振る舞う分。前回の三倍は必要になりそうだ。調理場を使ってすぐに支度を始めることにしよう。
映画の試写会を終え、興奮が収まりきらない観客の前に再び俺たちが立った。報道陣が会場内に入り込んできた。
「上映を始めてから、所々で驚き、笑い、興奮して、今も尚、それが収まりきらないという皆さんの表情を見てとても嬉しく思っています。アメリカで試写会を行ったときは『速すぎてあと二、三回は見ないと分からない』というコメントを多くいただきましたが、皆さんにとってはいかがだったでしょうか?本日は披露試写会にお越しいただき、誠にありがとうございました」
「自分のアフレコを自分でするなんて、この映画が初めてです。私のアフレコはどうでしたか?」
歓声や拍手、メッセージがヒロインに返ってきた。『吃驚した』『凄かった』などと賛辞を受けて思わずヒロインが涙を零す。提案して正解だったな。
「あっ、ありがとうございます。空いた時間にキョンと二人で練習をしておいて本当に良かったです!」
上映後は俺とヒロインのコメントだけのようだ。マイクが女性アナウンサーに手渡され、アナウンスシートを見ながら次に進めていく。
「どのシーンも物凄いアクションバトルでしたが、特に最後のキョン社長とジョンのラストバトルは目が離せない素晴らしいものでした。アメリカの披露試写会後はCGを使わないアクションバトルを見せていただきましたし、今回も何か見せていただけないでしょうか?」
女性アナウンサーの提案に会場がさらに湧きあがり、盛大な拍手や指笛が鳴る。
「分かりました。では、今回は中尾さんもいらっしゃいますので、『中尾さんと言えばコレ』とすぐに連想できるあのキャラクターのバトルシーンを実写版でお届けしようと思います」
観客の反応は疎らだったが、これから始めるパフォーマンスを期待してくれているのは同じようだ。

 

会場には、観客を巻き込まないようにややいびつな閉鎖空間を張り、その内側に衝撃波とエネルギー弾を吸収する膜を三重に張った。これで会場が壊れることも、観客がエネルギー波で消し飛ぶこともない。俺だけピンマイクをつけてジョンと二人でそれぞれ位置に付き、指を鳴らしてジョンがフ○―ザに見えるよう催眠をかけた。CGでフ○ーザと酷似したキャラクターを作ったものを見ているような気分だ。客がざわつき始め、もう一度指を鳴らすとナ○ック星の光景が目の前に広がる。難易度の高いゴルフコースに立っているような気分だ。イメージだけで作ったが、フ○ーザの催眠もナ○ック星の様子も不自然さは見られない。観客が静まり返ったところで、中尾さんのセリフからスタート。ジョンも声帯を変えることくらい簡単にできるんだが、今回は口パクだ。
「くっくっく…お次はガキのほうかな?」
「ゆ、許さんぞ……よくも……よくも………ぐっ………ふっく……」
身体を震わせ、髪が金色に染まったり、元に戻ったりを数回繰り返すと、力を全て解放した。
「うぁ、うおああああああああああああああ!!」
超サ○ヤ人に変身してジョン、いやフ○―ザを睨みつける。
「なんだ!?あいつの変化は……!!サ○ヤ人は大猿にしか変わらんはず………どういうことだ!?」
「はやくしろ!○飯!!俺のことは構うな!!後で俺も地球に戻る!!」
スクリーンには○ッコロを担いだ○飯の姿が映り、この場から去っていく。当然この映像も実際に催眠をかけて○ッコロ達の姿を撮影したもの。こちらも不自然さの欠片もない。これが本当の実写版だと思い知らせてやる。
「は――――っはっはっは!このまま逃がすわけがなかろう!!」
○飯に照準を合わせようとしたフ○―ザの目の前に高速移動すると、右腕を掴んで絞めつける。
「いい加減にしろ……このクズ野郎………罪もない者を次から次へと殺しやがって………クリ○ンまで」
ようやく掴んでいた手から逃れたフ○―ザが距離を取り、右腕を摩っている。
「な……なぜ貴様にそんな力が……ま……まさか……貴様……」
「俺は怒ったぞ!!フ○―ザ―――――――――!!」

 

一瞬にして間をつめると頭部を殴り、両手を合わせてハンマーのように叩き落とした。ようやくフ○―ザが立ち上がり、俺と同じ高さまでゆっくりと浮きいてくると、腕を大きく後ろに回してエネルギー波を放つ。左右両方からエネルギー波を撃つこと十数回、ノーダメージの俺を見てもフ○―ザは「ふ…ふふ…」と嘲笑う。今度はこちらから仕掛けた。頬に肘をぶつけ、頭部を殴り背中を見せたところで頭突き。その間も中尾さんが「くっ!」、「ぐあっ!!」、「ぎっ!」と俺たちのアクションに対してタイミング良くフ○ーザの声を入れていく。先月のアフレコで、ジョンが今日のパフォーマンスの台本を渡したときにサイコメトリーで情報がすべて伝わっている。いきなり本番でもしっかり合わせてくれた。互いに攻防を繰り返すことしばらく、距離を取ったフリーザが息を整えていた。
「ふ―――っ!ふ――――っ!」
「ピッ!」という音とともに超高速の光線が放たれた。だが、その超高速の光線すら避けた俺に、フ○―ザの顔に驚きと焦りの表情が現れる。
「よ、避けた……!!そっ、そんなはずはない!!」
「ピッ!」、「ピピピッ!」、「ピピッ!」と再度フ○―ザが光線を放つ。音で何発撃ったのかはっきりと分かるくらいだ。それすらも回避した俺に、次第に焦りを膨らませ、苛立ちを感じていた。
「お、おのれ、当たりさえすれば、貴様なんか……」
「あててみろよ」
嘲笑われ、自慢気に『やってみせろ』と言われてフ○ーザの怒りも頂点に達した。
「ふ………ふざけやがって……後悔しやがれ――――――――――――――――――っ!!」
フ○―ザの超高速の光線が俺の顎に命中した。その衝撃で若干身体が動いたが、頭部が後ろに反る以外は大して変わらず。口から血を流し、顎には痣が残ったがゆっくりと頭部を戻し、視線がフ○―ザへと向いた。
「星は壊せても、たった一人の人間は壊せないようだな……」
全身を震わせ、恐怖を感じ始めたフ○ーザからようやく言葉を紡ぐ。
「な………な、何者だ……」
「とっくにご存じなんだろ!?俺は地球から貴様を倒すためにやってきたサ○ヤ人。穏やかな心を持ながら、激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士。超サ○ヤ人孫○空だ!!!」

 

「ふ、ふっふっふ……穏やかな心を持ながら、激しい怒りによって目覚めた……か。なるほど、いくら頑張ってもベ○ータにはなれなかったわけだ」
驚愕の事実を知り、これまでずっと否定してきたことを認めざるを得ないと知り、その感情が表に出る。
「ちくしょ―――――――!!ちくしょおおお~~~~~~~~~~っ!!こっ、この俺が何と言う屈辱だ……!!このフ○―ザ様が……!!あ…あんな…あんなヤツに……あんなサ○ヤ人なんかに……!!しっ、信じられん!こんなことが……!あるはずがないと思っていた悪夢が……!!俺は……俺はフ○―ザだぞ~~~!!」
身体を震わせるだけで微動だにしないフ○―ザに終幕のセリフが飛ぶ。
「終わりだ、フ○ーザ」
ナ○ック星を破壊しようとするシーンはカットしたが、全ての面に映していた映像が次第に変わっていく。
「こうなったら見せてやるぞ100%の力を!!俺を倒せるわけがないんだ!覚悟しろ!!」
「なぜ、今になってフルパワーを?分かっているぞ。全力を使うとおまえの身体そのものが耐えられないからだ。時間を稼がせるわけにはいかん!決着をつけてやるぞ!!」
「ばっ!!」
突如として攻撃に転じたフ○ーザの気合がぶつかり、会場の壁まで吹き飛ばされた。それを見たフ○―ザの口角が上がり、先ほどとは逆に笑い始めた。
「ふ、ふははははは……!!みくびったな!言っておくが、今のはまだ全力じゃないぞ!70%程度だ!!そしてこれが……お待ちかね100%!!」
フ○―ザに向かってこちらも攻撃に向かおうとすると、フ○―ザが気を溜め始める。
「85%……90%……」
「フ○ーザ、貴様がフルパワーになるのを待っているのは、最高の貴様を叩きのめしたいからだ。戦士として悔いの無いように……」
フ○ーザの全身の筋肉が膨れ上がっていき、張りつめた状態で安定した。
「待たせたな。こいつがお望みのフルパワーだ」

 

刹那、瞬時に距離をつめたフ○ーザの右拳が俺の腹部を直撃!頭部を掴まれ膝で蹴り上げられると、フ○―ザの連続攻撃にガードが間に合わない。
「ぐ……ぐふっ……」
「くっくっく、どうだ?今のはこれから見せる最終攻撃のための準備体操だぞ!」
「だろうな。そんな程度じゃガッカリするところだ……」
「でかい口をきくのもそこまでだ!!今すぐ黙らせてやるぞ!!ばぁ――――――――――!!」
フ○―ザの突撃に合わせて拳を繰り出すも、空へと飛び上がり、二度目の気合砲が放たれる。何とかこらえたと思った次の瞬間、背後を取られたが、なんとか追撃を交わして100%のフ○ーザとの攻防戦。しばらくして、フ○―ザが再び上空へと飛び上がってこちらの様子を伺っている。フ○―ザからは見えないように身体で隠しながら、かめ○め波を放つ準備をしていた。
「うおおおおお……!!」
フ○ーザが気を身体の外へと押し出すとバリアのような球体を作って突っ込んでくる。
「くたばれフ○―ザ―――――――――ッ!!」
かめ○め波を放ち、球体を纏ったフ○―ザと激突。その頃には周囲が雲に覆われ、何本もの雷が落ちていた。
「ぐおあああああ……!!」
「うおおおおおお……!!」
フ○ーザの口角が上がると、かめ○め波の軌道から外れ、真横から俺目掛けて突っ込んでくる。球体による衝撃をまともに喰らって会場の端まで吹き飛ばされた。しばしの間をおいて、決着はついたとばかりにフ○―ザが球体を解いた。ようやく俺が動き出し、ゆっくりと浮き上がりながら呼吸を整える。
「この、しつこいくたばりぞこないめ……いいだろう!今度は木端微塵にしてやる!!あの地球人のように」
「あの地球人のように…?ク○リンのことか……ク○リンのことか――――――――――――――――――っ!!」

 

ハルヒの力全てを外側に放出し、怒りをあらわにした状態でフ○―ザに突撃、こちらの連続攻撃に対してフ○―ザも拳を繰り出してきた。互いにダメージを受けながらバトルを続けて次第にスクリーンに近づき、肉弾戦へと変わっていった。周りの岩は崩れ、あちこちで竜巻が起こり稲光りは激しくなる一方。それでもバトルは続き、距離を取る度にフ○―ザ特有の構えを見せる。両手を開いて肩と同じ高さまで腕を上げ、右足を大きく前に出す。どうしてこの構えがベストだと思ったのかこっちが知りたいくらいだ。一切防御をしない闘いも、次第にフ○ーザの方がダメージを負う機会が増えていく。
「ハアッ、ハアハアッ……」
「やめだ」
「なっ、なんだと!?や、やめとはどういうことだ!!」
「貴様は100%のパワーを使った反動でピークが過ぎ、気がどんどん減っている。これ以上闘っても無駄だと俺は思い始めた。もう俺の気は済んだ。貴様のプライドは既にズタズタだ……この世で誰も越えるはずのない自分を越える者が現れてしまった。しかも、そいつは『たかが』サ○ヤ人だった。今の脅え始めた貴様を倒しても意味はない。ショックを受けたまま生き続けるがいい。ひっそりとな」
「な……な……」
スクリーンからゆっくりと報道陣のいる方向へと飛び立っていく。その間に中尾さんのセリフが入る。
「お…俺は宇宙一なんだ!だから貴様はこの俺の手によって死ななければならない!!俺に……俺に殺されるべきなんだ―――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!!」
「バカヤロ―――――――――――――――ッ!!!」
フ○ーザの放ったエネルギー弾を俺のエネルギー弾で押し返した。フ○―ザに二発分のエネルギー弾が直撃し爆発した。爆発後に姿を見せたのは催眠を解いたジョン。俺も超サ○ヤ人を解き、二人でスクリーン前へと戻る。辺りの映像もパフォーマンス終了と同時に自然と消えるようにしておいたし、周りを見渡しても特に破壊されてしまったところがあるわけでもない。ようやく司会者がマイクを持ちパフォーマンス終了の宣言をした。
「キョン社長、ジョン、そして中尾さんによる、超サ○ヤ人孫○空VSフ○―ザの実写版バトルアクションでした。どうもありがとうございました」

 

 会場中からの盛大な拍手に俺が方向を変えて何度もお礼をしているというのに、ジョンが中尾さんと握手を交わしていた。観劇するのは分かるが、優先順位ってものがあるだろう?
『どうもありがとうございました』
「ほっほっほ、私も楽しむことができましたよ」
俺もようやく中尾さんと握手を交わして、全世界での告知及び、日本での披露試写会は終わりを告げた。
「それじゃ、長かった映画の告知もこれで最後!二人ともお疲れ様でした!乾杯!」
『かんぱ~い!』
「彼のサポートもありますが、今度は僕とジョンがパフォーマンスをする番ですね。時間も限られていますし、撮影を始めましょう。先ほどのパフォーマンスのDVDも送るようですしね」
『ようやく俺の正装に戻れた。この格好でないとどうも落ち着かないんだ』
披露試写会の会場から天空スタジアムにテレポートして、すぐにパーティが始まった。労をねぎらうという意味でハルヒが俺とヒロインの代わりに乾杯の音頭を取った。成田についたときのDVDでもう送ることはないだろうと思っていたが、カメラが追いきれずに駄作をVTRとして流されるよりは、こっちで編集したものを送った方がクオリティが高いってもんだ。TBS以外のTV局と新聞社二社には俺と有希で撮影したものを編集してDVDを送り、報道された後、青みくるのパフォーマンスと同様、正式に俺たちが撮影した映像として動画サイトにUPして欲しいと有希に頼んだ。ついでにニュースのVTRをそのまま動画サイトにUPした奴のものは削除してくれと依頼した。決闘の演出は影分身に任せて、本体は食事と会話を楽しもうかと思っていたが、ヒロインもデュエルの方が気になるらしい。俺が情報結合したデュエルディスクに、それぞれ自分のデッキをセットした。『主軸になるモンスターがいない』と話していた青古泉が、ドラゴンとお遊びカードばかりを集めたジョンにどう対抗するのか見物だな。『古泉一樹LP4000』『ジョンLP4000』と表示された枠が表示され、デュエル開始。

 

『俺の先行、ドロー!俺は黒き森のウ○ッチを攻撃表示で召喚。リバースカードを一枚セットしてターンエンド』
デュエルディスクからサイコメトリーでカードの詳細が伝わってくる。攻撃力の低いモンスターを敢えて攻撃表示で召喚し、リバースしたカードで罠へと誘い込む。カードが墓地に行っても攻撃力1500以下のモンスターを手札に加えることができるか。なかなか良いカードがバランス良く手札に揃っているようだ。手札が充実していなければ守備表示になっていただろうな。
「僕のターン、ドロー!僕はリバースカードを一枚セットしてブラッド・ヴォ○スを召喚。ブラッド・ヴォ○スで黒き森のウ○ッチを攻撃!」
『リバースカードオープン!悪魔のサ○コロ。攻撃力を出た目の数で割る』
「おっと、そうはさせません。リバースカードオープン、罠は○し!これでジョンのトラップカードを無効にしてしまいましょう。攻撃力はそのまま黒き森のウ○ッチを撃破。ターンを終了します」
『だが、黒き森のウ○ッチの効果で攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える。俺のターン、ドロー!ベビード○ゴンを攻撃表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンドだ』
ライフポイントの計算、攻撃力や防御力の表示、攻撃時や破壊された後の演出も原作やアニメ通り。何の支障もないと言いたいところだが、デュエルはまだ序盤。二人ともデッキの中に神のカードを一枚ずつ入れているようだし、演出をどうするか迷うな。
「僕のターン、ドロー!僕はロ○ットの戦士を召喚。ブラッド・ヴォ○スでベビード○ゴンを攻撃!」
『リバースカードオープン!ス○―プゴート!悪いが、後三匹の羊を倒すまでは、ベビード○ゴンにば攻撃が届かない』
「では、もう一匹の羊を攻撃してターンエンドです」

 

『くっくっ、なかなかいい勝負をしているじゃないか。カードやルールのことはあまり知らないけれど、見ていて面白いと感じるよ。僕が素人目で見ているからそう見えているだけなのか、二人のデュエルタクティクスがなせる業なのか教えてくれたまえ』
「まだ序盤だから何とも言い難いが、これまでのやり取りに関しては文句のつけようがない。俺もデッキを組んでみようか悩んでしまうな。有希の部屋に置きっぱなしの俺の実家の荷物をサイコメトリーすれば、どこに隠れているのかすぐにでも見つけられるだろ」
「うん、それ、無理。あの二人のデュエルはあくまでCMとして撮影しているんだから、今は影分身の修行の方に集中した方が良いわよ!わたしも影分身の修行をして、おでん屋の営業中でもこうやって夕食を食べていたいくらいなんだけど、古泉君のスイッチ要因としてはまだまだ実力不足。昼はビラを配ったり、食材を注文したり、おでん屋の仕込みをしたりで忙しくてそんな暇は無いわよ」
「問題ない。一体だけでも影分身を作ることができれば、ビラを配りながらおでんの仕込みができる。スイッチ要因の方は少し休んで、情報結合の練習をしても平気。朝倉さんにはそれだけの実力がついてる」
「黄俺が古泉のCクイックは囮でハルヒのブロードのCで来ると見破ったときも、朝倉が完全に半身になってなかったのが原因だったし、バレーに集中しないといけない時期だったとしても、日本代表と渡り合うには充分すぎるくらいだ。情報結合の練習をして影分身が可能になれば、朝倉の負担が激減するぞ。朝倉にとってはバレーよりもおでん屋の方に集中しないといけないんじゃないか?スキーと一緒で今がオンシーズンだろ?」
「わたしにそこまでの仕事ができているとは到底思えないんだけど、少し時間をもらえるのならやってみようかしら?黄有希さんにずっと負担を押し付けるわけにはいかないもの!」
そのあと、時の魔○師の特殊能力でベビード○ゴンをサウザンドド○ゴンに進化させようとしたがルーレットが当たらず撃沈。進化と共に青古泉のモンスターの老化あるいはスクラップにしようという企みでもあったが、どうやら失敗に終わったらしい。生贄にする分のモンスターがいるのに、上級モンスターがどうやら手札には来ていないらしい。ほぼ丸裸状態のジョンにダイレクトアタックを試みたが、マ○ック・アームシールドで青古泉のモンスターを盾にされてしまった。

 

 二人の勝敗を分けたのは神のカードと魔法カード。ジョンがオ○リスの天空竜を召喚した後、天よりの宝札で手札を六枚とし、攻撃力6000で青古泉のオ○リスクの巨神兵の攻撃力4000に勝負を仕掛けたが、既にリバースしてあった手札抹殺の効果でジョンの手札が無くなった。それによってオ○リスの攻撃力が0に落ち、オ○リスクの反撃でジョンの敗北が決定した。勝敗はどうあれ、宣伝としての撮れ高は十分。最後の再々逆転には俺も驚いたが、これで編集したものを担当者に送ればいい。しかし、どうCMを作っていいものか悩んでしまうな。本社前のCMならちょっと長くてもいいが、番組の間に挟むたったの15秒じゃルールの詳細までは収めきれないはず。DVDを見せてから担当者と相談することにしよう。披露試写会でのパフォーマンスと同様、公式なものとして動画サイトにUPしたっていいくらいだ。明日直に会いに行くのも悪くない。
「これが本当の切り札ってヤツだな。対オ○リス対策か?」
「ええ、何度か決闘をしていて、ジョンがオ○リスをデッキに加えてくるのは分かっていましたので……ですが、こんな駆け引きを繰り広げていては、誰がここでデュエルをすることになるのか皆目見当もつきませんよ」
『あ――――っ!悔しい!!あの一枚さえなければ、俺の勝ちだったんだ』
「告知としてこれ以上の決闘はない。このデュエルだけで、見ている俺たちも十分興奮することができたぞ」
「そうね。こうやって対戦するとここまで興奮できるなんて、私も吃驚したわよ!よく分からないところもあったし、良かったら詳しく聞かせてもらえないかしら?」
「我々のデュエルなどで良ければいくらでも構いませんよ」
丁度いい。それなら三人でカードを見せながら話しててくれ。俺はあの人に話をしないといかん。
『分かった』

 

 途中までは二人のデュエルを見ていたようだが、気付いた頃にはみくるはダウン、古泉の席は空席になっていた。みくるは100階のベッドで影分身に腕枕をさせておけばいい。こればっかりは有希とみくる、ジョン以外は誰も知らない事実だ。透明な遮音膜を張って目的の人物に話しかけた。
「園生さん、古泉に関する件で他言無用の話があります。お時間をいただけますか?」
『閉鎖空間が発生した』と告げたときのような、一見すると冷酷にも見える程の目つきに早変わりした。
「分かりました。どういったお話ですか?」
「やってもらいたい事から先に言うと、俺がやり方を伝えますから、古泉に蓄積された余分な情報を排除して欲しいんです。要は余計なものは綺麗サッパリ忘れされるってことです。例えば中国マフィアのアジトの情報なんて、もう役に立ちません。『古泉が影分身を使って自分自身の記憶を整理する』のではなく、『園生さんが記憶を整理して、欠けた記憶があることを古泉に気付かせない』ようにしたいんです」
「一樹の記憶を整理するのは構いませんが、『欠けた記憶』というのは一体……?」
「当初は有希が情報を操作しているので、この事実を知る人間は俺と有希、みくる、ジョンだけなんです。高三の頃、未来人とのトラブルが起きた際に、橘、自称藤原、その他未来人多数が朝倉の手によって抹殺されました。その事実を受けて、未来のみくる達が自称藤原たちの所属する組織に襲われるという事件がおきました。その組織のボスが未来の古泉だったんです」
流石の園生さんも衝撃の事実に眼が見開いた。
「あの者たちが所属していた組織のボスが一樹だというところまでは飲みこめました。ですが、一体なぜ?」
「この時間平面上はジョンが未来からやってきた時点で未来が変わっていますから他とは違っていますが、他の時間平面上では、ハルヒの力が無くなり、古泉やエージェントの超能力も消えた。その代わり、古泉だけにTPDDが宿ったそうです。何故そんなことが起こったのか、俺も未だに分かりません。ですが、アイツはTPDDと機関の武器や乗り物を使って未来を変えようとしたんです。『どういうルートを辿っても、涼宮ハルヒが20代前半で死ぬ』という未来に捻じ曲げました。結果、ここよりも数年後の未来の時間平面上のハルヒはとっくの昔に死んだことになっています。それも、1つの時間平面だけでなく、数多の時間平面で古泉がハルヒを殺した。超能力者として目覚めてから、溜まりに溜まった憤怒や苛立ち、ストレスがアイツをハルヒ抹殺計画へと駆り立てたんです。ハルヒが死んでも尚、『浴びるほどの酒を飲んでもあの女のことが忘れられない』と自棄になっている古泉にも会いました。未来の古泉が酒に強くなったのに、アイツが未だに酒に弱いのもそのせいです。今、佐々木のラボに将棋を指しに来ている未来の古泉もその一人です。というより、アイツが発端で『全時間平面上の古泉一樹の記憶を操作し、涼宮ハルヒに対する憎悪の感情のすべてを抹消する』と有希が同期して、古泉が寝ている間に記憶を弄っているんです。俺たちが高三の頃、古泉が急に明るくなって、感情がそのまま顔に出るようになったんですが、それに覚えはありませんか?」

 

 今度は眼を閉じて過去の記憶を探っている。園生さんならこの事実を知っても、これまでと変わらない関係を続けていけるはずだ。この時間平面上のハルヒは現在進行形でピンピンしているし、ハルヒを殺害しようなどという考えすら起きないはず。マフィアなら何百人と消し飛ばしてきているが、それはカウントには入らない。どんなにサイコメトリーを駆使しても、この件に関して誰も情報を得ることはできないと、園生さんの閉鎖空間の条件に加えておこう。
「その頃のことはよく覚えています。一樹にどうしてそんなに変わってしまったのかと聞いても、『自分でもよく分からない』としか返ってきませんでした。有希さんが一樹の記憶を操作して、それまでの負の感情をすべて消去してくれたからだったんですね。分かりました。今後も人事部での電話対応も続くでしょうし、明日の朝、一樹に提案してみます。記憶操作の方法を教えていただけませんか?」
やり方と一緒に、消し去りたい情報であったとしても敢えて残しておく必要がある情報もあることを伝えておいた。園生さんも事情が把握できたところでスッキリできたようだ。「先に戻る」と言って97階へと降りていった。
『くっくっ、水くさいじゃないか。遮音膜まで張って一体何の相談だい?園生さんのあんな表情を見るのも久しぶりだよ。どういうアプローチを仕掛けたらそうなるのか僕にも教えてくれたまえ』
「なぁに、タイタニック号まで手に入ったんだ。二人の結婚式を大いに盛り上げるためにどういう形式がいいのか本人に直接聞いていたんだよ。選択肢が多すぎて気難しい顔になっていたにすぎん」
日付が変わってもジョン達とヒロインの会話が終わることもなく、俺はW佐々木を話が膨らむ一方だった。すでに自室に戻っているメンバーも何人もいたが、ようやくヒロインと別れの挨拶をするときがやってきた。向こうは今は真昼間だからな。SPの前に堂々とテレポートしても大丈夫だろう。
「こんなに贅沢な告知はこれが最初で最後になりそうね。また世界各国を回るようになったら、みんなと一緒にこうして料理とパーティを楽しみたいくらいよ!名残惜しいけど、またこうしてみんなと会える日を信じているわ!」
俺が連れ添うことなくヒロインだけ自宅へと帰っていった。どの道、また記者会見で会うことになるだろうがな。

 

テーブルや椅子ごと81階でテレポートした直後、『少しでも修練を積みたいから』と青俺が片付け当番に名乗りを上げた。何度目かは忘れたが、OG達もヒロインと一緒に食事をしたという事実に未だに興奮がおさまらないらしい。そんなんじゃ寝られないだろう?見ているだけで一言も会話をすることが無かったというのに、どうしてここまでテンションが上がりっぱなしなんだか……
『ヒロインと一緒にパーティに参加できただけでも十分です!』
「明日、寝不足なんて事にならない様にしろよ?」
『問題ない』
おっと、いくら興奮状態でも、ジョンの世界にテレポートすれば、の○太より早く眠れることをすっかり忘れていた。朝倉から二月号は既に手渡されているが、今日は情報結合の修行は無くてもいいだろう。俺もさっきのデュエルの映像を編集してテレ朝の担当者のところに送ってしまおう。デュエルを最初から最後まで映したものと、それを使った数種類のCMを収めたDVDと『本社の大画面にもCMを放映する件』と『古泉とジョンのデュエルを動画サイトにUPする件』、ついでに『二人のデュエルとCMを確認した時点で何かあれば本社に電話をして欲しい』とメッセージを添えて、テレ朝に送りつけておいた。明日にでも電話が来るだろう。
『ブッ!くくくくく……あっははははははははは……!!』
ジョンの世界でバレーの練習をしていると、何かを見つけたらしきジョンの大笑いしている声が聞こえてくる。時間的にもそろそろ朝のニュースが始まる頃か。ジョンが大爆笑する見出しって一体何だ?
「ちょっとジョン!一体何があったのか説明しなさいよ!!」
『くくく……ニュースを見ればすぐに分かる。まさか、こんな見出しになるとは俺も予想していなかった』
ジョンが出したモニターを全員でチェック。情報結合の練習として異世界の冊子を作っていた青朝倉も遅れて入ってくる。

 

 俺が撮影して編集したDVDを送ったTV局はそのままVTRを流し、TBSはカメラマンが撮影したバトルの全体像の放映のみ。新聞社二社もVTRから静止画を切り取りどちらも俺のアップを載せていた。ジョンが笑った見出しは……これで間違いない。『激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士!超サ○ヤ人キョン悟空だ!!』と書かれている。キョキョロット、キョラえもん、江戸川キョナンに続く第四弾ってことになりそうだ。ったく、全員で大爆笑しやがって。というより、俺も大体想像はついていたし、ジョンにも伝わっていると思っていたが、実際に眼にするとやはり笑いを堪えることができないってところか。
「あははははははは……おっかし~!ネーミングセンスが良過ぎるわよ!!こんな使い方は予想してなかったわ!」
「くくく……クレイジーゴッドも含めて、これでいくつ異名がついたのか、もう分かりませんよ!」
もう一方は『夢のコラボに名言炸裂!ク○リンのことか―――――――!!』とハルヒのオーラを最大限にまで放出したときの俺の写真が掲載されていた。他の見出しも『声優交代か!?』などと、見出しだけならなんとか対抗できるが、やはりDVDを渡したところとそうでないところの違いがはっきりしている。まぁ、そのためにDVDを送ったわけだし、中途半端なものを放映されるよりはよっぽど良い。しかし、俺たちのコメントも含めてパフォーマンス全部VTRで放送するとはな。他のニュースが霞んでしまう。映画の上映まであと二ヶ月ほどあることだし、告知のVTRが放映されなかっただけまだマシか。告知後の観客のコメントもカットされていた。
「声優の中尾さんとキョン社長、そしてジョンのこの披露試写会でしか見せられない夢のコラボだったと言えそうです。フ○―ザやナ○ック星を実写化するとあんな風になるとは意外です。超難関のゴルフコースのようなものになるとは思いませんでした」
お馴染みの男性アナウンサーも考えることは一緒のようだ。あとは有希に動画サイトにUPしてもらうつもりだが、ジョンも披露試写会のあの狭さでは十分戦えなかっただろうし、元○玉を喰らったところから再撮影でもするか?他のキャラクターも入れて。
『面白そうだ。異世界の天空スタジアムにフィールドを用意しておく。こっちの世界じゃいつ誰が来るか分からないからな』
分かった。じゃあ時間を見つけて再撮影だな。

 
 

…To be continued