500年後からの来訪者After Future8-3(163-39)

Last-modified: 2016-12-23 (金) 20:13:25

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-3163-39氏

作品

最後の告知を終え、ジョンが楽しみにしていた中尾さんとの夢のコラボレーションが実現した。ただ全体を映しただけの駄作を出されるくらいなら、こっちで撮影しておいたものを送った方がまだマシだ。これも今までと同様、送ったところとそうでないところに差をつけた。まぁ、これで当分は無いだるうな。声帯が自由に変えられるところは既に見せているし、日テレで例の映画のアフレコの約束と、テレビ朝日の一大イベントの告知に関する内容について相談をしながら深めていくだけだ。

 

「これであなたも正式に復帰という形になりましたね。今後のご予定はどうなさるおつもりなんです?」
「今日はやけに明るいな。何かあったのか?」
「あなたがやり方を教えたそうじゃないですか。園生に余計な記憶を抹消してもらいました。テロ組織のアジトの情報をサイコメトリーした記憶は残っていますが、どこにあるのかまでは記憶にありません。これくらい僕の影分身でも十分可能なんですが、園生が無理矢理……とはいえ、スッキリとした気分になれたのは事実です。ありがとうございました。あなたもハルヒさんに任せてみてはいかがです?」
「他人にやってもらった方がより良い気分になれるってだけの話だ。俺の場合はジョンがいるからな。それに、ハルヒや有希に任せると不安でしょうがないからな」
「ちょっとあんた!それどういう意味よ!?」
「おまえの場合、面白くない情報はすべて消し去ってしまいかねないし、有希の場合は『毎日夕食はカレーが当たり前』なんてインプットされたらとんでもないことになるぞ」
「くっくっ、言われてみれば確かに有希さんならありえる話だね。でも、キミの作るカレーなら毎日でもいいくらいだよ」
「冗談じゃない。作るのに丸一日かかるカレーを毎日だなんてやってられるか。とにかくだ、今後の昼食はすべて俺が作る。それ以降、特に異世界支部のスイートルームに泊まる客が出るようになったら、青新川さんに朝昼晩作ってもらうことになる。その時点でこれまでと同様、ここにいるメンバーの食事担当は俺がやる。今日やることと言えば、昨日の披露試写会でのパフォーマンスをジョンと再撮影してから動画を有希にUPしてもらうことと、テレビ朝日から例の一大イベントの件で連絡が来るかもしれないから、古泉と二人で人事部に張りつく。異世界の人事部にもアルバイト希望の連絡が来るはずだ。明日は全員でスキーに行くから、ウェアを選んでおいて欲しいのと、みくる達は有希と一緒に鶴屋さん達のウェアやシューズも選んでおいてくれ。それに明日の朝は成人式の着付けとヘアアレンジだ。どの道早く起きる必要があるくらいなら、眠気を取ってタイタニック号の修繕に向かってもらっても構わない。明日の夜はカレーと鶴屋さんの書き初めランキング発表だ。どうする?」
「ジョンと動画の再撮影って一体どういうことだ?」
「カットしたシーンもすべて入れて、バトルアクションをもっと派手にするんだよ。あんな狭いところじゃ闘いにくいし、他のキャラクターも入れたかったんだ」
「くっくっ、昨日のバトルより更に白熱したバトルが見られるのかい?僕にも見せてくれたまえ」
「あんたのウェアはあたしが選んでおくわ!」
「問題ない。二人のウェアと動画の件は任せて」
『私たちもスキーを滑りに行きたいです!!』
「青チームの二人が髪を切っても構わないということであれば、午前と午後で分けることができそうですね」
「どうする?」
「私は別に平気」
「じゃあ、黄キョン先輩、髪を黄私と同じ長さに切ってください!」
「分かった。なら二人ともこの後19階に来い。明日はOGが朝食を先に済ませて午前中スキー、午後は青OGが滑る。これでいいか?」
『問題ない』

 

「それで、タイタニック号の方はどうするつもりだ?俺はジョンと一緒にモニターで映像を見ているだけだが…」
『眠気を取ってやるに決まってるじゃない!』
「では、参加するメンバーは夜の10時にここに集合ということでいかがでしょう?」
『問題ない』
「言っとくが、今日も明日もおススメ料理が出てくるんだ。ホテルの運営の方にも来て欲しいのと、最終回のトリックは解けたのか?もう打ち切りでこのまま放映してしまうよう依頼してしまうぞ」
『ちょっと待ちなさいよ!あたしがまだ解いていないのに勝手に打ち切るんじゃないわよ!!』
「おまえら揃って『年内には解いてやるわ!』とか言ってたクセに未だに解けてないだろうが。最後の20点分さっさと埋めてこい!期限は明日の夕食開始前まで。これだけ時間をくれてやったんだ。おまえらなら簡単だろう?」
『上等じゃない!明日までなんて必要ないわ!今日中に真実を解き明かしてやるわよ!』
「お二人の場合はあと20点分で構わないでしょうが、僕は明日の夕食開始直前までにさせてください。それまでに何としても解いてみせます!」
「僕もそうさせてもらうよ。夕食のときには接客として立つから昼の間は時間をくれたまえ」
「第九話と最終話の時間については決定していますし、TV局と交渉してくることにします。もう年末年始のイベントも終わっているでしょう」
青佐々木は片付けという名目でフロアに残り、青古泉はスカ○ターをはめて大阪一号店に出向いた。ハルヒはホテルで昼食の準備、青ハルヒはビラ配りに行ったが、その間に考えてくるだろう。青佐々木の横で昼食の支度をしながら、カレー作りと青OG二人のシャンプー&カット。今後は、第一人事部にも堂々と俺の影分身が電話応対に加わることができる。かかって来る電話のおよそ9割が俺への取材、あるいは番組出演の電話。それらをすべて駆逐してようやくテレビ朝日の担当者から電話がかかってきた。

 

「テレビ朝日の根岸と申しますが、デュエル大会に関する内容で社長とご相談したいのですが……」
「あっ、社長のキョンです。こちらから送ったDVDは見ていただけましたか?」
「ええ、二人の素晴らしい戦いぶりと演出、それにCMまで作っていただいてありがとうございました。CMの方はこのまま放送させていただいても構いませんか?」
「はい。僕の方も最初は一つのCMに内容をすべて入れるという概念に捉われていてどうしようか迷っていたんですが、数種類のCMをランダムに入れていけば情報もすべて伝わりますし、興味や関心のある人間はサイトで検索するでしょうから、詳細はそちらの方に記載するのはどうかと。都心でしか伝わりませんが、同じ内容を本社の大画面にも放映しようと考えているのと、そちらに送ったCMを我が社の公式な動画としてUPしようと思っています。二人のデュエルは……どうされるおつもりですか?」
「ご配慮いただきありがとうございます。あのデュエルについてはこちらでア○トークの特番を組んで放映するつもりでいます。ゴールデンタイムで遊戯○芸人ばかりを集めて例の条件でデッキを作って来てもらおうかと考えています。その中でVTRとして放映しようかと」
「分かりました。では、その番組内で実際に演出してお見せすることにします。日時が決まり次第ご連絡いただけますか?」
「えっ!?番組出演していただけるんですか!?」
「ただのカードバトルでは見ている側はつまらないだけですので、もしよろしければ」
「分かりました。すぐに芸人達に声をかけることにします。日時が決まり次第追って連絡させていただきますのでよろしくお願いします」
「連絡をお待ちしております。では、失礼します」
俺が作ったCMは三つ。『学校にカードを持ちこんで練習していたら即失格です』テロップと俺のアフレコから始まるCM。『即失格』の文字はTV画面にでかでかと映るように編集した。その後、武○遊戯とブ○ックマジシャン、俺とオ○リスク、『キョン社長と高橋先生のコラボが実現!!』と書かれた静止画をバックにした大会のタイトル表記。『決闘○の称号は誰の手に!?』というフレーズと共に、ジョンと青古泉のLPと、オ○リスとオ○リスクの攻撃力が写ったシーンを挟んだ。『天空スタジアムで遊戯○の世界観を体感できるのは誰だ!?詳しくはWebで検索』と最後に検索用キーワードを入力してクリックするというものが一つ。後の二つはタイトル表記のあとジョンか青古泉のどちらかが実際にデュエルをしている映像を加えて最後に検索用キーワードを入れたもの。詳しいルールはサイトを調べさせれば十分だ。

 

 ドラマの最終回の時間の件も古泉が承諾を得ることができ、青OG二人のシャンプー&カットも終了。ル○ンVSコ○ンThe Movieの再アフレコの件も平日月曜午後から金曜昼までならいつでもOKと連絡しておいた。カレールーも仕上がり、今回は一人につきナンを二つ付けることにした。ナンを焼くのは午後からで十分だ。昼食時に有希にCM三本を大画面に映すことと、動画サイトに載せるよう頼んでおいた。
『解けたわよ!』
Wハルヒが昼食に戻ってくるなり、自分の答案を俺に見せてきた。
「どっちも97点。ハルヒは園部の呼び出し方がまだ強引過ぎる。青ハルヒは二つ目の証拠は隠滅出来てしまうものだ。おしいが犯人を納得させるものにはならない」
「午前中だけでもうそこまで進展したというんですか!?」
『もー…あとちょっとって一体何が違うのよ!!』
「今説明しただろうが!青古泉や青佐々木も現段階で何点になるのか見せに来るか?」
「これで本当に合っているのかどうか自信が無いんだ。でも、時間制限ギリギリで97点と言われるのも嫌だし、僕の答案を見せることにするよ」
「では、僕も。今のところ何点になるのか確認してもらいましょう」
「青佐々木97点、青古泉50点。青佐々木は二つ目の証拠が違う。もっと大きな証拠がまだ残っているんだ。青古泉の方は、トリックは正解だが証拠が全然違う。首を切ったらどうなるかもっとよく考えろ」
「くっくっ、確認して正解だったよ。キミの言うもっと大きな証拠とやらを考えてくることにするよ」
「返り血を浴びない様にシーツで防いでいるのではないのですか?」
「その考えを改めない限り証拠は見つからない。もう解けた奴にとっては今の俺のセリフの意味がすぐに察知できるはずだ。それに、シーツでガードするという案なら第九話で出ているが、染みこんで服についた時点でOUTだ」
「それもそうね。まさか犯行に及ぶシーンまでランジェリーの宣伝に使うとは思わなかったわよ」
『犯行シーンをランジェリーの宣伝に使う!?』

 

「どんな犯行に及んだらランジェリーの宣伝になるんだ!?」
「わたしも分からない。でも、ランジェリーの宣伝をするなら服を脱がないと……」
「………っ!!有希さん、ありがとうございます。それで『その考えを改めない限り』と言ったわけですか。もう一度証拠を洗い直すことにしましょう」
「えっ!?古泉君、わたしの一言がヒントになったの?」
「ええ。これで僕も撮影に参加できそうです!」
「わたしはもう降参よ。どんな手を使ったのか、早く撮影して見せて欲しいわよ!」
「話題に出たついでに皆さんにご報告を。第九話、第十話の時間延長についてTV局のOKが出ました。それぞれ75分、90分でもいいそうです」
「ハルヒ先輩!いつ撮影するんですか!?」
「キョンが明日の夕食開始前までって言っているんだから、火曜日のチェックアウトが終わったら撮影するわよ!絶対にこの謎を解いてみせるんだから!!」
「俺からも一つ追加する。デザイン課募集の垂れ幕を作ったから、このあと垂らしに行く。スケッチブックにデザインをまとめてくるまで時間もかかるだろうが、今後人事部にそういう電話が来ることだけ覚えておいて欲しい。人数が多ければ近日中に面談を始める」
「分かった。明後日から来る社員にも伝えておこう」
「午後から異世界の天空スタジアムでジョンとのバトルを撮影する。佐々木以外に見に行きたいという奴は名乗り出てくれ。途中から入られるとカメラに映ってしまうんだ」
しばらく様子を見たが立候補者はおらず。こうなったら20倍界○拳のかめ○め波を放つところから全部撮影して動画サイトにUPしてやることにしよう。
「なら、午後もそれぞれで宜しく頼む」
『問題ない』

 

 既に準備万端の天空スタジアムで俺とジョンの原作そのままのアクションバトルが始まった。20倍界○拳のかめ○め波を撃った後、元○玉の気を集め、フ○ーザにバレたところでピッ○ロの不意打ち、元○玉をフ○ーザが受け止め、「こんなもの……」と何度も繰り返すシーン。フ○ーザを倒して大団円だったはずが、フ○―ザが姿を現し、ピッ○ロが撃たれ、ク○リンが爆破された。そのあとのシーンは披露試写会で見せた通り。星を破壊するシーンとドラゴンボールに気付いて「不老不死にしろ!」と叫ぶところも当然入っていた。その間メンバー分のナンを焼き、明日の昼食の支度をして現状維持の閉鎖空間で包んでおいた。夕食時、Wハルヒと青佐々木が残りの三点を埋めてようやく合格。青古泉も逆転の発想で証拠を三つ揃えて満点を勝ち取った。
「おい、有希。そんなことしていると、明日の夕食がカレーじゃ無くなるぞ」
どこ○もドアの前でカレーの匂いを嗅いで、顔が弛んで……いや、今にも溶けてしまいそうな表情になっていた。
「ハルヒのように影分身を置いてくるわけでもないのに、ホテルの厨房が一番忙しいときにこっちに戻ってきてそんなことをしているのなら、明日はおまえだけおでんにしよう。大量に用意してやるから好きなだけ食べていいぞ。ところで、明日は楽団の練習はあるのか?」
イチローの盗塁並の速さで自席に戻ってきた。席に着くなり夕食を食べ始めている。
「十五日のコンサートに向けて、楽団員からも全体練習をしておきたいと申し出があった。明日も練習予定」
「じゃあみくるに例のBOXを預けておくから、練習後、楽団員にクジを引かせてくれ。社員たちには明後日の午前中……って、ということはハルヒたちは午前中はスキーができなくなってしまうな」
「午後だけで十分よ。それよりあんた、クジを引かせるのはいいけど、ちゃんと用意してあるんでしょうね?」
「ここにいるメンバーがおかわりなしの一皿ずつなら十分足りる。明日の昼食の支度も終えた。有希、あとで撮影した映像を渡すからUPしてもらえるか?」
「分かった」

 

 颯爽と夕食を平らげた青有希はレストランに戻り、他のメンバーも接客へと向かっていった。県知事に話をしてからツインタワーでアナウンスをと思っていたが、明日やってしまうか。それに明後日の早朝には、ジョンと二人でゴールデングローブ賞の式典に参加しないといかん。ヒロインからも式典が終わった翌日の午後一時から記者会見だとテレパシーで連絡があった。これ以上睡眠時間を割くわけにはいかん。さっさと報道陣を黙らせることにしよう。日本代表のBOXについては妻に預けておいた。練習試合後選手や監督、コーチ達に引いてもらえばいい。シャンプーとマッサージを終えて、俺以外のメンバーが81階に再集合。俺は99階のベッドで眠っていた。ジョンと二人で修理の様子をモニターで見ていると、まずは船体の大掃除から作業がスタート。錆やコケ、100年の間にタイタニック号と一体化していた岩石などを磁場で吸着。外観はタイタニック号が完成した頃とおそらく同じであろう状態にまで蘇った。船内もOG達が磁場で掃除の手伝いをしていたが、案の定、扉の閉まっていた部屋からは海水や人骨が出てきてOG達も仰天。叫び声が閉鎖空間中に広がっていた。これだけの人数であたっても、掃除だけでここまで時間がかかってしまうとはな。ようやく内部の掃除を終えて、各部屋の使えないベッドや椅子などはすべて廃棄。ゴミ処理用として作っていた閉鎖空間にハルヒの技が炸裂する。
「プ○キュア!ピースサンダ―――!!」
ス○イルプリキュアの変身後のコスチュームを基に作った衣装で、自分が黄色を着るからと必殺技までそれにしたらしい。マフィア狩りをしていたときも使っていたと見て間違いなさそうだ。しかし、綺麗にはなったが、廊下の板や部屋の壁紙、カーペットは全部変えないとダメだな。折れた船体部分を朝倉の情報結合で繋ぎ、有希は外観をそのままの状態でディーゼルエンジンに作り替えていた。細かな破損箇所の情報結合はOGや青朝倉、青有希が担当していた。夕食で俺が言った件もあるし、青有希も明日から情報結合の修行だな。船体が元に戻ったところで海に浮かべて今日の作業はおしまい。
「これはこの場に放置しておく。閉鎖空間内に浮かべているので何かにぶつかることもない。わたし達以外はみられない。それに、波で船の位置がずれる心配もいらない。本社に戻る」
『問題ない』

 

 今朝の新聞記事は既にテレビ朝日でCM放映されている例の一大イベントについて。CMの一部を切り取ってそのまま掲載された青古泉やジョンとモンスター達の写真で埋め尽くされていた。見出しにも『学校にカードを持ってきて練習していたら即失格です』と俺のアフレコをそのまま使っているところも多く、これで全国に周知させることができるだろう。TBS以外のTV局はそれに加えて、告知の際に見せたパフォーマンスをVTRで放送。日テレは「近日中に声優陣を呼び集めて、ル○ンVSコ○ンThe Movieの再アフレコを行う予定」と話し、ル○ン三世側の声優は全員俺になると報道していた。今年のコ○ンの映画前にTVスペシャルとして放送予定。フジテレビはVTR後、実際に首をはねられた本人が直接コメント。
「このときは『首をはねる』と言われて本気で殺されるとしか思っていなかったんですが、漫画を読み返してようやく事の詳細が判明しました。キョン社長は『あの二つの技は同じ仕掛けで行っている』と仰っていたんですが、未だにそのタネが全く分からない状態です」
テレビ朝日はVTR自体が一大イベントの告知のようなもんだからな。こちらも日テレ同様「ア○トーーークの特番を近日中に撮影予定。遊戯○芸人を集めて大会の規定ルールに則ったデッキを組んでもらい、キョン社長が自ら番組に出演して演出をしていただけるそうです。さらに、CMで放送されている二人のデュエルもその特番の中でVTRを流すということで、VTRを見た担当者からは『最後の最後まで何があるか分からない。どっちが勝ってもおかしくなかった』とコメントが届いています。また、今放送中のCMもすべてキョン社長自ら作ったということです」
「キョン社長の全面協力が加わるとなると、頼りがいがあり過ぎるくらいですね。私も、実際に対戦しているところを生で見てみたくなりました」
自分で蒔いた種とはいえ、これはちょっとまいったな。番組出演の依頼が殺到しかねない。子供たちの面倒を見るのもそうだが……古泉にも電話対応を手伝ってもらうか。

 

 毎年恒例行事だが、俺や古泉の手伝えるところと言えばヘアアレンジとバスの運転、ついでにマネキンを振袖からスキーウェアに取り換えるくらいか。まぁ、セカンドシーズンが終われば、来年は古泉にヘアアレンジをとやってくるだろう。着付けを手伝うわけにもいかんからな。毎年客が変わるとはいえ、近年はバス三台が当たり前になってきているからな。気になっていた異世界での振袖の期限についても速達の追加料金は受け取ったが、滞りなく全顧客に振袖を送ることができた。来年は異世界でもこれと同じ展開になりそうだ。ハルヒ達に止められていたが、青古泉も影分身の練習をさせた方がいいかもしれん。OGはもう滑り始めているが、船の修理作業で見られなかったニュースの内容も含めて、全員に話をした。
「僕の知らないところでそんなことになっていたとは驚きましたよ。CMや新聞の一面、動画サイトにまで僕が出ているとは思ってもいませんでした。しかし、そうなると人事部が大変になりそうですね。あなたの仰る通り、今後のことも考えて、今から修練を始めることにします」
「ああ、昼食や夕食の支度は終わっているんだが、ハルヒが楽団の練習に出ている以上、子供たちについていないといかん。俺もできるだけ影分身で電話対応するつもりでいるんだが、県知事と会う前に祝日を利用してスキー場の運営に携わってくれる人達の再募集もしないとな」
「そんなの、あんたが一人で背負いこむことじゃないわよ!黄あたしは楽団の練習があるから、レストランが始まる前にあたしがアナウンスしてくるわ!あんたは双子と一緒にスキーに行ってきなさいよ!」
「おススメ料理の仕込みももう終わっていますし、電話対応の大多数は僕の方で引き受けましょう。五ヶ国語以外の国からの電話についてはあなたにお任せすることにします。未だにしつこいのはどこの国も変わりませんからね」
「じゃあ、すまんが二人ともよろしく頼む。ハルヒ、ウェアはもう決まったのか?」
「双子の分までちゃんと決めてあるわよ!でも、あたし達の場合はウェアを着ると暑そうね」
「なら、全員の空調管理の条件を解く。スキーに向かわずとも本社内にいればいつもとそうかわらん。それで、鶴屋さん達はいつ頃来るんだ?」
「もうすぐ連絡が来ることになっています。でも、こっちの鶴屋さんは楽団の練習を見て、午後から滑りに行くそうです」
「なら、みくるは楽団員に例のBOXを頼む。書き初めの結果が気になるメンバーもいるだろうが、今夜のお楽しみってことにしようぜ」
『問題ない』

 

幸の冬休みの宿題も年末までに既に終わっており、楽団の練習等でどうしても抜けられないメンバーを除いて、青鶴屋さんと一緒に安比高原スキー場へと移動。有希が青鶴屋さんに合ったスキーウェアをチョイスしてくれた。
「おぉっ!黄有希っ子、感謝するっさ!自分でもここまで似合うとは思わなかったにょろよ!」
『キョンパパ、わたしも早く滑りたい!』
ご要望に応じることにするか。三人でリフトを乗り継ぎながら前回やったことを復習していると、ちゃんとしたボーゲンの形で一人で滑っている。今日中にパラレルまではさすがに無理があるが、その前段階までは教えてもよさそうだ。
「キョン先輩、ウェアを着てると暑いくらいですよ!」
「ちょうどいいところで会ったな。閉鎖空間の空調完備の条件を今日だけ取り払うから、これで丁度いいはずだ」
「あっ、急に涼しくなってきました」
「今夜、全員揃ったところで条件を付け変える。練習試合中は本社の空調管理システムがあるから汗はかくだろうが寒くなることはないはずだ。それと、練習試合後の例のBOXの件頼むな」
『問題ない!』
圭一さんや父親は人事部で電話対応、母親には愚妹と分譲マンション探しをするように連絡し、青圭一さんもオフィスで電話対応をしていた。園生さんは古泉と一緒に滑り、W新川さん、W裕さん、森さんも上にあがったっきり降りてくる気配がない。この二人のセンスならとも思ったが……流石にまだ厳しいか。昼食を摂りに三人で戻ると、今朝聞いたばかりのセリフがリピートされた。
「おぉっ!有希っ子、感謝するっさ!自分でもここまで似合うとは思わなかったにょろよ!みくるも大分滑れるようになったってキョン君から聞いたし、今日は頂上まで行くっさ!」
「えぇ――――――っ!!つ、つつ鶴屋さん、いっ、いきなり頂上まで行くんですかあぁ?」
「たとえ初心者でもボーゲンで滑っていれば問題なしっさ!少しは子供たちを見習うっさ!」
『キョンパパ、わたしもみくるちゃんと頂上に行く!』
どうやら、断れそうにないな。みくるのことも気がかりだし、皆で行くことにしよう。これで俺もW新川さんの滑りっぷりが見られそうだ。途中何回もみくるの悲鳴を聞いたが、双子も結局頂上付近で滑り続けた。W新川さんのスキーの実力も変わらずか。一体何が違うんだ?この二人は。一日スキーを満喫して本社へと戻った。というより有希に呼び戻されたと言った方が正しい。

 

『OG六人の夜練が控えている。それまでに、書き初めのランキング発表を終わらせる。戻ってきて』
『あんたはカレーが食べたいだけでしょうが!!』
まぁ、ハルヒの言い分が100%正しいだろうが、一位の可能性も十分にありうる。いつもはコーンスープとノンドレッシングサラダのセットだが、今回はけんちん汁と大学芋のセット。社員や日本代表、楽団員にもそれで出すつもりでクジにもそう記載しておいた。W鶴屋さんはランキングの打ち合わせ中……って、それにしては長すぎないか?とりあえず、配膳を進めていると、違和感を持ったメンバーが複数名現れた。
「あのー…黄キョン先輩、カレーのルーだけで配膳していいんですか?」
「ああ、今回はライスじゃないんだ」
「なるほど、それでカレールーだけの配膳というわけですね」
「焼き立てを配りたかったから最後にしただけの話だ」
『焼き立て!?』
「問題ない。黄キョン君のカレーならどっちでもいい」
「有希達が皿を舐め回すような真似をしかねないんでな。今回はこれにした」
『あ~なるほど!』
一人につき二枚、焼きたてのナンが手渡されると、『いただきます』もしないうち有希達が食べ始めた。
「妹と娘に示しがつかないんじゃないのか?おい」
『問題ない。自分で「いただきます」はした』
「問題ありまくりだ。圭一さんのけんちん汁に人参を入れていないのと一緒で、次は青有希だけ見た目はカレーでも味はおでんのおでんライスを作ってやる。ライスもちくわぶを切り刻めば疑似ライスの出来上がりだ。それに、昨日の件も入れて当分カレーを作るのは止めにする。もう情けは無用だ」
『ごめんなさい』
「とりあえず食べましょ。あたしも書き初めの結果が気になっていたのよ!」
『いただきます』

 

「カレールーは変わらんが、付け合わせとして身体が暖まる根菜を多く取り入れた。みくる達と鶴屋さん達には現状維持の閉鎖空間で囲ってある。ランキングの発表を終えても冷めているなんてことはないから心配しないでくれ」
『それが……三位までは同じだったにょろが、一位と二位で意見が割れたっさ!どうしようか考えているところにょろが、前みたいに同率一位にしてもいいっさ?』
『また、同率一位!?』
「えっ!?またってことは前にも同率一位のときがあったんですか?」
「くっくっ、彼女たちの審査基準については書き初めをするときに話したと思うけれど、双子がキョンやハルヒさんにむけて書いた文字が同率一位になったんだよ。でも、子供たちは僕たちのランキングとは無関係になったんだろう?二人を悩ませている人物が誰のことなのか見せてもらおうじゃないか」
「とりあえず、まずはお二人の提案通りでいいかどうか確認することにしましょう。同率一位で一位の権利を二人がもらうことができる……それでよろしいですか?」
『問題ない』
『分かったにょろ!今回は英語が多かったから、今までで一番悩んだにょろよ。みくる~手伝ってくれっさ!』
『はぁい』
「参りましたね。ここまであなたの予想通りだとは思いませんでしたよ。鶴屋さん達の意見が割れ、同率一位になるかもしれない、加えて英語で書かれたものが多いところまで当ててしまうとは。あなたの予想は当たる可能性が極めて高いとみてよさそうですね」
「それに付随する根拠があるんだから、可能性が高くて当然だ。それに、この二人には敵いそうにないと思っていただけだ。二人とも大胆すぎる」
「あんた、その二人って誰のことを言っているのよ!?」
「なんだ、俺と青ハルヒ以外はみんなで書いたんじゃないのか?他のメンバーの書き初めを見ていてもおかしくないだろう?」
「いえ、今年は新メンバーもいるということで、それぞれで書くことになったんです。例を見せると、書く言葉に制限がかかってしまいますからね」
『英語のものもあるっさが、横に広げると途中で誰のものか分かってしまうにょろ。全部垂れ下げてもいいにょろ?』
『問題ない』

 

『それではっ、第五位っ!』
「I ‘m really glad I met you.」 と英語で書かれたものが垂れ下がり、ほぼ全員の首が90°傾いた。これならありえるかもしれないと思っていたとはいえ、青佐々木がランキング入りするとはな。もっと上のものを書いてくる奴がいるかと思ったが俺の勘違いか?意味は『キミに出会えて本当に良かった』やはり今年は、結婚指輪の刻印にしたものが入ってきた。
「佐々木には悪いんだが、俺にはこの文字に良い印象を持てそうにない。佐々木と黄俺が出会ったきっかけが、きっかけだからな」
「あのときのカメラマンももう出所しているはずだ。もう一度、ぶちのめしてやりたくなった」
「確かに僕も痛みを堪えていた記憶は未だにあるけれど、そんなつもりでこの文字を書いたわけじゃない。でも、僕の書いたものがランキング入りするとは思っていなかった。部屋にでも飾っておくことにするよ」
その記憶、取り除いてやりたくなった。ついでに異世界に調査に出向いてくるか。
「ってことは、結婚指輪の刻印を書いた人が一位?選ぶ相手がキョンしかいないじゃない!あんた、今度はちゃんと影分身を置いていくんでしょうね?」
「有希たちのカレーと似たような禁断症状を出されちゃかなわん。だが、まだどうなるか分からんだろう?」
『そういうことにょろ!続いて第四位っ!』
「え――――――――――っ!?あたし四位!?も――――――――――っ!悔しい、悔しい!悔しいぃっ!!あたしも刻印に入れた文字を書けばよかった!!」
「ですが、ハリウッドスター達と文字通り堂々と会話ができたようですね。これまでのものを振り返れば、これが一位を取ってもおかしくありませんよ」
青古泉は自分が一位になるチャンスだと思ってそう告げたのか、文字から伝わってきたものをそのまま口に出したのかは分からん。だが一位になってもおかしくないのは俺も同感だ。青ハルヒの「威風堂々」で第四位。
『去年はそんなに有意義な年だったっさ?確かにこの文字でも一位を取るには充分すぎるくらいのパワーがあったにょろが、残り三つのパワーには敵わなかったっさ!ではっ、第三位っさ!』
「くっくっ、これで第三位なのかい?涼宮さんが敵わなかったというのが良く分かったけれど、この上があるなんて信じられない。映画のタイトルにあやかって書いたものなんだろう?」
「やっぱり勝てなかったか。まぁ、このフロアに飾っておきたいと思っていたものだったから、一位でなくても大して支障はない」

 

 『Nothing Impossible』のタイトル名にあやかって、「俺たちに不可能はない」と書いた俺の文字が第三位。
『そうっさね~映画のタイトルに関連づけてというのも確かにあるにょろが、このメンバーなら必ず成し遂げられるという思いがこもっていたにょろ!不安なんて微塵たりとも感じられなかったっさ!』
「では、聞いてみたいものですね。あなたの予想が合っているかどうか。あなたが越えられそうにないと言った人物とは一体誰のことです?」
「刻印の中で一番大胆だった奴と、閉鎖空間の色が青佐々木のダイヤモンドのように赤く染まっていた奴だよ」
『ってことは!?』
『一位はこの二人にょろ!』
片方は「I can’t stop loving you.」と書かれたもの。意味は『愛さずにはいられない』だ。零式使いのどストレートな一文が堂々の第一位。そして、もう片方は「Yours forever」全員から大胆すぎると言われていたこの意味は『永遠にキョン君のもの』みくるが見事一位を獲得した。
「やれやれ、閉鎖空間どころか顔まで真っ赤になっているぞ。そんな状態で俺の球受け止められるんだろうな?」
『うん、それ、無理』
他の五人が揃って朝倉の真似をしやがった。ついでにカシューナッツのような口元が手で隠しきれていないところも青朝倉そっくりだ。
「なるほど、確かに甲乙つけられません。鶴屋さん達の意見が割れたというのも納得がいきます。因みに、お二人のそれぞれのランキングをお聞きしてもよろしいですか?」
「あたしは今回はみくるもここまでのものを書いてきているから、今年の一位はみくるにと思っていたにょろ!でも、一位と二位でどうしようか悩んでいるって聞いて、それなら同率一位でどうかとみんなに提案したっさ!」
「みくると古泉には、酒はランキング発表の後の方が良いだろうと考えていたんだが、先の方が良かったかもしれんな。酒も飲んでいないのにそんな顔をしていたら、酔っぱらったせいになんてできないだろ?」
「キョン君、わたし……」
「とにかく、二人とも早く夕食を済ませてしまえ。でないとW有希に横取りされるぞ?書き初めのランキング発表に対する関心・意欲・態度がまるで感じられなかったからな。通知表の国語の欄に評定1と書かれそうだ」

 
 

…To be continued