500年後からの来訪者After Future8-7(163-39)

Last-modified: 2016-12-29 (木) 14:50:39

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-7163-39氏

作品

佐々木から戦慄の記者会見と言われた告知中の事件に関する内容も、話せる部分についてはすべて話し、どう思っているかに関しては全力の殺気をもって応えた。この方が分かりやすいし手っ取り早いからな。それ以降、県知事たちがスキー場の運営に参加すると引っ越し、日本代表チームへリクエストディナーのお知らせ、一大イベントの告知、異世界新店舗オープンと順調に進んでいた矢先、リクエストを集計した結果、ようやく有希に嵌められたと知った。

 

 土曜日の朝、今日と明日はバレーの練習に専念できるといわんばかりに子供たちはユニフォーム姿。朝食を取り始めてから、まずは青ハルヒが口火を切った。
「昨日OPENした店舗についてなんだけど、店員慣れした人間が一人じゃ心細いのよね。キョン達や黄古泉君の影分身が居てもらえると助かるんだけど……お願いできない?おススメ料理の仕込みはもう終わっているし大丈夫でしょ?」
「だったら俺が三体、ハルヒが二体だ。ハルヒも少しでも修練を積まないとな」
「しかし、我々の方は暇を持て余してしまいそうですね。電話もそこまで鳴らないでしょうから影分身を人事部に割いても意味がありません。県知事がスキー場の運営に乗り出したのを受けて少しずつ立候補者が増えてきてはいますが、その方々の引っ越し程度ならそこまでの負担はかかりません。あなたはどうするおつもりなんですか?」
「そうだな……昼食の支度を終えたらレストランが始まる前まで寝るつもりだ」
『寝る!?』
「あんた、催眠を解いてクマがどうなっているか見せなさいよ!」
ハルヒの命令に近い心配を受けて催眠を解除した。他のメンバーも気にしてくれているらしい。少しでも近寄って俺の顔を見ようとしていた。
「前よりはマシになったようだけど、催眠を解除するにはまだまだかかりそうね。いいわ!あんたは寝てなさい!」
「くっくっ、以前古泉君が言っていた言葉を思い出したよ。確か『夜も寝ないで昼寝して』だったかい?キミがそんなことを言い出すということは、夜中に何かすると考えてもおかしくなさそうだ。何をするつもりなのか教えてくれたまえ」

 

 『俺の行動には必ず何かしらの理由が存在する』と言いたげな佐々木の口ぶりに、視線はまだ俺に定まったまま離れてくれそうにない。
「なぁに、一晩だけで滞っていたタイタニック号の修理と新調をしに行くんだよ。ついでにジョンの世界でデッキを作るつもりだ。どの客室もスイートルーム並の豪華さに変えてくる。修復の必要な場所がないかサイコメトリーしてまわるつもりだ」
『わたしも連れて行ってください!!』
「今回の修理改善にOG達は不参加だ。ジョンの世界で異世界の二月号を情報結合してもらいたい」
「ちょっと待ってください!既に30万部ずつ渡してあるんです。これ以上二月号を作ってどうするんです?」
「キョン先輩、もしかして追加発注が来るかもしれないってことですか!?」
「面白いじゃない!それなら情報結合の練習も兼ねて二月号を作ることになるわね!」
「カシミヤ、振袖、福袋、スキーウェア、そして今回の新境地開拓。青古泉も新境地開拓に新潟を選んだくらいなんだ。そろそろ来てもおかしくない頃だ。二月号は無理だったとしても、四月号の表紙と裏表紙だけで間違いなく追加発注が来るはずだ。情報結合した二月号を各店舗の店内においてもいいだろうし、マネキンの横に該当ページを開いて店頭で見せるのも悪くない。まぁ、どこを改築したかは次回のお楽しみってことにしておいてくれ。少なくともこっちのOGが影分身できない限り、俺たち全員でタイタニック号のクルージングを満喫するなんてできないんだよ!五月に入ったら俺も大会に出る必要があるんでな」
「なるほど、そこまで見越してという判断でしたか。お見逸れしました。しかし、何もあなた一人でなくてもいいのではありませんか?OG同様、朝倉さんと有希さんも情報結合の修行ということになりそうですが、他のメンバーは眠気さえ取ってしまえば参加できるのでは?」
「ああ、別に俺一人ってわけじゃないから、向こうに行って色々と意見を出してもらって構わない。今のところ、客室を豪華にしてサイコメトリーしてまわるくらいしか案がないからな」

 

 眠気を取って参加すると名乗りを上げたのがハルヒ、有希、みくる、古泉、鶴屋さん、W佐々木。青新川さんは眠気を取って見学したらそのまま朝食作りかと思ったが、森さんや青圭一さん同様、完成した時点で連れて行ってくれればいいとのこと。こっちも似たようなものか。しかし、青チームで行くのが青佐々木だけとは意外だな。
「あれ?涼宮さん達はいかないんですか?青わたしも……」
「先ほどのやり取りを聞いては今後の異世界支部の発展に関しても彼の指示を仰ぐような形になってしまいそうですからね。今後どうしていくかじっくり検討することにします」
「異世界支部はあたしが社長なんだから!キョンに説明されないと気が付かないようじゃ社長としてやっていけないわよ!」
「なんだ、二人も俺と似たようなことを考えていたのか。社長としての実績で言えば、間違いなくハルヒより黄俺に軍配が上がるが、これまでの経験については同等だ。四月までどうするかと、それまでに何をしておくか色々と考えておかないとな」
「わたしも影分身の修行を始めることにします。最低でも二人になることができれば私たちの世界でドラマの撮影に向かいながら、こっちでバレーの試合に出ることも可能です!わたしも二月号を作ります!!」
「あたしもそこに入れて欲しいっさ!家のことよりそっちの方がよっぽど面白そうにょろよ!」
「奇遇ですね。一人で悩んでいるより我々全員で対策を立てませんか?」
『問題ない』
「これでこっちの古泉先輩の印象さえ悪くなければ、『サイコメトラーItsuki』のドラマをそのまま私たちの世界で放映すれば宣伝になるんですけど……野球でもベンチから出ていないのでは無理がありそうですね」
「やれやれ、考えることは同じか。俺もそれさえなかったら、すぐにでも枠を確保して放映できると思っていたんだが……動画サイトに毎週UPするのも朝比奈さんを安く見せるようなものだからな。こっちの世界なられっきとした復興支援のための宣伝と言えるんだが……」
「異世界支部を青チームで運営していくのは構いませんが、ちゃんとした場を設けたわけですから、そのときに議論されてはいかがです?それより、来週のリクエストディナーは何になったんです?」

 

「やれやれだ。どうやら選手の中にも大食い揃っているらしい。第三位、鉄板料理食べ放題。第二位、野菜スイーツ食べ放題。そして栄えある第一位……俺も結果を知って有希に嵌められたと思ったよ。カレー食べ放題だそうだ」
『カレー食べ放題!?』
「ちょっと待ちたまえ。ディナーでカレーなんて今まであったかい?この前のようにランチタイムにしか出してなかった気がするけれど……」
「一度だけあるんだよ。ビュッフェ形式の食べ放題にしたときにOG六人が一番にカレーに手をつけて『美味い!』と叫んでいた。この前のスペシャルランチのこともあって、もう一度カレーが食べたいそうだ。大食い選手権の試合会場じゃあるまいし、ベスト3が全部食べ放題メニューってのもどうかと思うぞ?……ったく、やってられるか!」
「問題ない。楽団員や社員たちも喜ぶ」
「よし、それなら楽団員や社員達の分を作ってそれでおしまいだ。おまえが食べないのなら、より多くの社員や楽団員達にカレーを提供できておかわりも可能になる。さぞ喜ぶだろうな~」
『キョン、僕たちの分も作ってもらえないかい?』
「だから、やってられるかと言っているだろうが!丸一日かけて作り上げた料理を大食いで競い合うような連中になんて出す気にならん!」
『それだけキミの作るカレーが美味いってことじゃないのかい?』
「とにかく、有希の一言のせいで二ヶ月に延長。青俺の提案でW有希は当分の間は雑用係ってことになったんだ。リクエストを取った以上、作らなければならないとしても精々日本代表の分と楽団員や社員達の分。OG六人を除いてカレーは三月以降までお預けだ。料理人にとって一番嬉しくない行為をされると分かっていて、作る気なんか起きるか!食べたきゃ自分たちで作って食え!!その代わり、俺は包丁を置いて、ジョンと人格交代するからな!」
「確かに、サイコメトリーを駆使すれば、僕や涼宮さんでも同程度のものを作ることはできます。しかし、その代償があまりにも大きすぎて、ディナーどころか会社の経営にまで影響が出てしまいます。現状維持の閉鎖空間もあることですし、どうせ作るのであれば大量のカレーを一気に作った方がいいのではありませんか?」
「そんなことは百も承知だ!作るのならまとめて作った方が良いことくらい、これまでやってきて重々分かってる。とりあえず、早くても来週の火曜日の番組収録を終えてからだ。社員や楽団員たちの分を作ったとしてももうしばらくは待った方が良い。そこまで頻繁に出せるものじゃないことを分かってもらわないとな」
「じゃあ、黄キョン君、カレーを作ってもらえるの!?」
「やかましい!誰のせいでこんな気分になったと思ってるんだ!日本代表には来週出すとしても、ここにいるメンバーが食べられる時期や条件はすべて俺が決める。おまえら二人がそんな状態のままじゃ、いつまで経ってもありつけないってことだ」

 

 満場一致で片付けは青有希。その隣で昼食の準備をしても良かったが、横から何を言ってくるのか分かったもんじゃない。昼食の支度を終え、俺の分はジョンの世界に持ちこんで不貞寝。大会のエキシビジョンマッチとはまた別に作らないといけないが、漫画をサイコメトリーしてデッキを組むと、必要なカードがどうしても固定されてきてしまうな。コンセプトはそれぞれあるだろうが、魔法カードや罠カードは似かよったものになってくるだろう。影分身におススメ料理の方は任せて本体は夕食を食べていた。ハルヒの影分身もホテルの厨房についてはいるが、今シーズンの最初から厨房にいる人たちは手慣れたもの。ハルヒの味つけもできるかもしれん。おススメ料理を出している間にコンサートが始まった。ストレス解消に聞きに行ったところ、フレ降レミライで青チーム五人がダンスを踊った後、まさかこっちにもカバー曲を入れてくるとは思わなかった。ドラ○ンクエスト9の主題歌が流れ、これから冒険に行こうという気分にさせてくれる。今日は冒険ではなく船の修理だけどな。本体がオーケストラの曲に癒されながら、厨房ではおススメ料理も出尽くし、ホテルのレストランも後は片付けるだけの状態になり、若手政治家に後を任せて指南役の影分身が首相の様子を見にフロントに向かっていた。手の空いている時間は日本政府の人事をどうするか、人事部がまとめたリストを見ながら頭を悩ませていた。無論、持っているのはブラックリスト入りしていない方の書類。結局それだけでは決めることが出来ず、一人ずつ首相自ら一対一で若手政治家と話をする旨を若手政治家に話していた。
「それで、あたし達は何をすればいいのよ?」
「サイコメトリーで修復作業にあたってくれ。それからでないとベッドを置くどころか、カーペットも敷くことができないからな。有希はディーゼルエンジンの方を頼む。エンジンを変えることで船の構造上空きができるはずだ」
「分かった」
妻とOG達のシャンプー&マッサージを終え、有希に連れられてタイタニック号の修繕へ。当時のものと大分変わってしまうからな。もう一隻情報結合しようかとも考えたが、サイコメトリーで得た情報を元に資料室のようなものを作っておけばいいだろう。ディーゼルエンジンに切り替えて必要のなくなった箇所は情報結合を解除。客室はすべてスイートルーム。パーティは船首にビュッフェを用意すればいい。バー、スパ、美容院、プール4つの周りにデッキチェアと水着等の販売店、ジャグジー、大浴場、カジノ、遊戯施設と、タイタニック号に設置する予定の施設は大体決まったものの、たった一晩しか楽しめないハリウッドスター達は施設見学とビュッフェ料理だけ楽しむことになってしまいそうだ。有希以外のメンバーでサイコメトリーしていったが、結局その夜は壁紙や床板の修繕だけで朝を迎えてしまった。だが、これでカーペットや各施設のものを情報結合していけばいい段階にまで発展した。気分が少しでも良いうちに面倒臭い作業を終わらせてしまうことにしよう。

 

 朝食後、調理場四つ、81階、80階と3階の計七か所で同時にカレー作りを始めた。俺がカレーを作っている分、人事部には古泉が付き、ビラ配りチームはヘリ二台を同時に運転している青俺を筆頭にハルヒ達も加わって一日で少しでも配る個所を増やせるような対策が取られた。青ハルヒはビラ配り二か所と新店舗の店員を同時にこなし、青俺も残った意識でどれだけのことができるか各店舗に配置して試してみるらしい。青古泉も店舗とビラ配りの二役をこなして修練を積んでいた。
「おまえがそんなことをしているから、いつまで経ってもカレーにありつけないんだろうが!!」
どこ○もドア越しにカレーの匂いを察知した青有希が、案の定どこ○もドアに張りついていた。青俺から頭を叩かれ、首を掴まれてずるずると自席に戻ってくる。
「くっくっ、早くても火曜の番組収録が終わってからと言ってなかったかい?」
「どうせやらなきゃいけなくなるのなら、気分の良いうちにさっさと作ってしまおうってだけだ。そうでもしないと、番組収録が終わったら作らなきゃならんのかと頭に留めておかなくちゃならん。今も嫌々作っている状態だが、料理をするのなら最大限のパフォーマンスをしないと納得ができん。客に申し訳が立たないからな」
「キョン君、何か妥協案のようなものはないんですか?」
「その妥協案を立てた結果が今の状態だろうが!W有希の行動次第ではさらに延期することだってあり得る」
「だったら、今週は無理だけど、来週のディナーの接客に有希さん達を向かわせて、その間にわたし達だけ食べるなんていうのはどうかしら?勿論、有希さん達には別の料理でお腹を満たしてもらうことになるわね」
まさか朝倉までそんな提案をしてくるとは思わなかった。だが、策としては悪くない。朝倉の提案に二人ともどす黒いオーラを放ち、今にもフロアの片隅でいじけていそうな顔つきをしていた。だが、それ以外のメンバーは朝倉の意見に賛成だと面構えで見てとれる。OG六人はディナー以外でもカレーを食べるつもりか?
「あんなの、一度食べたらやみつきになっちゃうわよ!黄私、ディナーのときだけ交代して!!」
「うん、それ、無理!私だってディナーが待ちきれないんだから!」
そのやりとりを聞いたW有希がハッとしたところで、ハルヒと青俺の鉄拳が炸裂した。
「おまえら、OGの催眠をかけてディナーに紛れ込もうとしただろう?他の選手に化ける可能性も十分あり得る。そんなことをすれば、さらに延長されてしまうだけだ。自重しろと何度言わせれば改めるんだ?」
「ああ、黄涼子先輩の言っていた来週のディナーまで待たなくても、有希先輩たちが店舗の店員として夕食時に交代すれば、日本代表より早く食べられそうですね。あとは、完成を待つだけですから」
『問題ない!』

 

「それなら、わたしは番組収録には参加しない」
「別にいいぞ。ジョンが代わりにカメラの操作をしてくれるからな。というより、俺抜きで勝手に決めるなよ。有希のせいで二ヶ月に延長だと言ったはずだ」
「作曲もしないし、ギターも弾かない」
「作曲家に頼んで、俺がおまえに化けてギターを弾く。何より、バンドはあくまで宣伝の一環だと青みくるも話していた。もう十分すぎるくらいだ」
「デザインも考えないし、経理課の助っ人に行くこともない」
「これから異世界でデザイナーが大勢入社してくるんだ。おまえがデザインする分を補うくらいわけはない。経理課なら青俺が影分身で対応すれば十分だ」
「うっ……」
「他の時間平面上の有希がおまえを羨ましいと思っているくらいなんだ。カレーを食べるのが三月以降になると言っても『問題ない』と返ってくるだろうな?今のおまえには考えを改める以外、手段は残されていないんだよ」
「うぅっ……」
二人揃って泣き出したがなだめるのは精々子供たちくらい。食べ物の恨みは恐ろしいというのが良く分かる。
「とりあえず、今後そういう行動に出るのなら、おまえらだけ食べられない状態を作ることくらいわけはないってことだ。自分たちのやってきたことも反省しないまま、次を要求してくるなんて自分勝手にも程がある。周りにまで被害が出ていることも考えて行動しろ」
言うだけ言って異世界支部に移動。89階でデッキの構成を考えていた。
「あの様子では、どうあっても三月まで食べられそうにありませんね。諦める以外、選択肢はなさそうです」
「私も気長に待つことにするよ」
「待つのはいいが、そのときの食べ方次第では今と同じような状態に陥る可能性が高い。特にハルヒ達は要注意だろうな」
『どういう意味よ!?』
「そのままの意味で解釈してもらって構わん。有希たちだけでなくハルヒ達も黄俺の気分を害した要因になっていることだって十分考えられる。何せ、エージェントが『もう食べられない』とギブアップしても尚、四人で食べ続けているくらいだからな。俺も100階で有希が来るまで異世界支部の今後の運営について考えてみる。ご馳走様」

 

 結局、その日は青俺が席を立ったのを皮切りに解散。81階には泣き続けている有希たちだけが残っていた。翌朝のニュースは新聞社五社がレストラン内の様子を一面として飾っていた。二社はレストラン内に入り込めるから勿論だが、残りの三社は会社存続も危ないと勘繰ったのかもしれん。大金を支払っても記事を載せなければならないと判断したんだろう。これでどちらの世界も二月号が発売されたが、スキーウェア販売店の方は先週のうちに新作と入れ替えておいてよかったと言えそうだ。『早くしないと滑る時間がなくなってしまうぞ』と言いたくなるくらい悩んでいた客もいたらしい。今月と来月でランジェリーの特集も組んでいるし、追加発注も来るだろう。
「昨日の我々と同様、どうやら許可が出るまで待ちきれなかったようですね。今週末のこの調子で来るのであれば、もう一ヶ月延長でもいいのではありませんか?人事部でも『許可が無くてもレストランの様子で一面を飾っているんだから、必要はないだろう?』と受け流してしまうというのはいかがです?」
「異論が無ければ社員にそう対応するように伝えるが大丈夫かね?」
「黄古泉、今日の記事を受けて、今週末はすべての新聞社の一面がレストランでの様子を撮影したものに切り替わったらどうするつもりだ?」
「そうさせる前に、こちらから記事を作って送ってしまえばいいでしょう。例の三社のみ二月末までに延長するとね。他の会社には一月が終われば許可が下りると伝わりますからね」
「分かった。わたしがそれで記事を作って送付する。午前中は楽団の練習がある。記事を作るのは午後」
「明日、明後日発売の週刊誌もあるはずだよ。それについても一ヶ月延長だと記載しないと勘違いされそうだ」
「問題ない。そのことも含めて記事を作る」
自分が仕事をしないといつまで経ってもカレーにありつけないという結論に至ったらしい。だが、それでも三月までカレーにありつけないことに変わりはない。

 

 怒涛のチェックアウトもスプリングバレー以外は影分身一体で乗り切ることができ、県知事達もチェックアウトを三、四件済ませたところでもう慣れたらしく、それ以降はスムーズにチェックアウトを進めていた。それ以降の昼食、夕食はハルヒや青有希は厨房から姿を消したが、若手政治家の指南役からの情報によると現地住民で十分まわせていたとのこと。カレーもできたし、現状維持の閉鎖空間で囲ってキューブにおさめ、ジョンのリクライニングルームへ隠すことにした。ドラマでのアンチサイコメトラーになったつもりで調理場の情報を弄り、隠し場所をバレないように配慮。そういや、『アイツ等』のことをサイコメトリーしたことは無かったな。どういう思考回路をしているのか試しにサイコメトリーしてみよう。
「ちょ、ちょっとあんた!みくるちゃん達の椅子に何してるのよ!?」
「なぁに、制裁を加えているだけだ。まさかと思ってサイコメトリーしてみたら青古泉と同じ思考回路でいたのを隠してやがったんでな」
『ひぃぃぃ……もう止めてください~~~~~!!』
「なら、みくる達に似合いそうな服やランジェリーのデザインを考えておけ!でなければおまえらの情報結合を解除する!いいな!?」
『わっ、わかりましたぁぁぁぁ……』
「というわけだ。デザイン課の社員が二人増えた。しかも、例のパイプ椅子より更に長期間、みくるのお尻を乗せていた奴だからな。妄想力は青古泉と同じようだし、即戦力で間違いない」
「こんな社員の増え方はアイツで終わりにして欲しかったが、また古泉と同じ妄想癖の奴が増えてしまったとは……やれやれだ」

 

夕食に全員が出揃ったところで事の詳細を説明すると、青みくるはすぐさま立ち上がり、椅子を取り変えていた。無論、鶴屋さん達から蹴撃を受けたことは言わずもがなってヤツだ。
『みくるにちょっかいを出す奴はあたしが許さないっさ!』
「でも、椅子を変えたとしても、しばらくもしないうちに、あの椅子と同じになりそうね」
「こんな戦力の増え方はもう終わりにして欲しいわね」
「思考回路が青古泉だからな。一応ハルヒ達の椅子も含めて全部サイコメトリーしたが、その二つだけだった。青ハルヒの言う通り、椅子を変えたとしても似たような奴が増えるだけだろうな」
「それはそれでちょっとイラッとするわね。そんなにみくるちゃん達のお尻がいいわけ?」
椅子が勝手に動くわけがないが、みくるの座っている椅子が『ギクッ!』と言いたそうに見えるのはどうしてかな。
「何にせよ、夜練後はセカンドシーズン第一話だ。明日の一面で視聴率何%と出るか楽しみにしようぜ」
『問題ない』
夜練後、69階へと向かうと青OG達がドラマも見ずに二月号の情報結合を続けていた。変態セッターと他より先に情報結合の修行をしていた奴はもう十部単位で情報結合ができるようになったらしい。
「あれっ!?ドラマ見てたんじゃないの!?」
「披露試写会でも見たし、少しでも上達したいから……それに黄私たちを待ってたのもあるかな。どうせなら、みんなで一緒に見たいしね」
シャンプーとマッサージを受けながらドラマを全員で見た後、ベビードールに着替えた12人で異世界の二月号を作り始めた。ジョンの世界でもやれることを忘れてないか?こいつら。

 

 翌朝の見出しには青古泉やみくるの写真が載せられ、『古泉一樹、サイコメトリー能力でトップスタイリストへ!!』、『第一話平均視聴率33.9%!下着の宣伝は変わらず!!』等々。しかし、第一話からいきなり33.9%か。伸び悩むなんてことが無ければいいんだが……女子高潜入捜査辺りからまた伸びてくるか。最終回は例のプレゼント企画があるからな。
「今日は番組収録もあるし、終わりが何時になるか俺にも分からん。みくる、明日の午後文芸部室の連中に第一話を見せに行くからそのつもりでいてくれ。アイツ等との約束を果たしに行かないとな」
「あ、はいっ、分かりました」
「約束って何よ!?」
「ドラマが放送される度に見せに行くという約束を取り付けてきたんだ。例の椅子がデザインしたランジェリーも収録されているし、さらにデザインを考え出してくれるかもしれん」
「くっくっ、ここにある二脚も入れてどんなデザインを考えてくるのか楽しみになってきたよ」
「というわけだから、おまえらもそれ相応の仕事をしないと……分かっているな?」
『はっ、はいぃぃぃ……勿論、存じ上げておりますです、はい』
「なんだ、例の椅子に比べて、随分と礼儀正しいな」
「猫被っているだけだ。ただでさえ青みくるの方は椅子を変えられたんだ。コイツ等にとっては、俺に消されるくらいなら、今のままの方がベストだと判断しただけに過ぎん」
まぁ、青みくるに内緒で元に戻しておこう。内緒で取り換えた分の働きはしてもらわないとな。
「ところで、今日はどこも天候が悪いようですが、収録の方は大丈夫なんですか?」
「おまえ、分かっていて聞いてないか?飛行機が飛んでいないかどうか確認したら、かめ○め波で吹き飛ばすまで。霧ケ峰高原の霧については霧ケ峰らしさが出るからそのままだ」
「くっくっ、あまりやり過ぎると農作物の採れ高に影響すると言ったのはキミだと思っていたけど、違ったかい?」
「やるとしても今日と、ベスト8が揃ったときと、後は俺たちや社員達がクルージングに行く日くらいだ。そのくらいなら大して影響はない。ジョンが全力のかめ○め波が撃てると張りきっているくらいなんだ。仕事を与えてやってくれ」

 

 番組収録には参加しないとぼやいていた有希も、普通に収録に参加。昼食の支度はスタジオに来る前に済ませてきたし、影分身を置いて本体だけ戻ってくればいい。今日収録して明後日のゴールデンタイムには放送するというんだから驚きだ。木曜のゴールデンタイムで放送し、時間が足りなければその後の通常のア○トークで続きを放送する手筈らしい。まずは芸人が出てくるところから。
「僕たちは『遊戯○芸人です!』」
「ケン○バや品○はどんなくくりにしてもいっつも出て来ている気がするけど、今回は女性が三人も入ってるっちゅうのは驚きやね。矢ぐっちゃん、これ、そんなに面白いん?」
「今の遊戯○には流石に追い付けないですけど、でも、もう何でもアリの状態になっているよりは、原作を重視した今回の方がやっぱり面白いです!それに加えて今回は、漫画の世界観をそのまま現実化してもらえるそうで、早くデュエルディスクを装着したいですね!!でないとただカードゲームしているだけで終わってしまうので」
「俺も原作なら当時読んでいたから大体のカードは分かるけど、あれをホントに現実のものにできるん?」
「それを可能にしたVTRがあるそうなのでそれを見ていただいて、それから私たちのデュエルを見ていただこうかなと。私たちもまだVTRを見ていないので、どんなデュエルをしてどっちが勝ったのかまだ知らないんです!」
「ほんなら、そのVTR流してもろて、解説してもらえます?何のこっちゃか、わけ分からなくなりそうなんで」
「僕もVTRが楽しみで仕方がないんです!じゃ、VTRお願いします!」
セットの前面に立っていたMCと芸人達が椅子に座り、ジョンVS青古泉のVTRが流れだした。芸人枠の椅子が一つ空いているのは俺が座る席。芸人達七人がモニターを食い入るように見ていた。
「えっ!?これ、本当にCGじゃないん?」
「だからこそ、この後のデュエルが楽しみで仕方がないんですよ。あ―――――――――っ!!時の魔術師がハズレた!!あっ、でも上手い!ここでマ○ックアームシールドでるんや」

 

 MC二人も次第に興奮し始め、ジョンがオ○リスの天空竜を召喚した後、天よりの宝札で手札を六枚とし、攻撃力6000で青古泉のオ○リスクの巨神兵の攻撃力4000に勝負を仕掛けたが、既にリバースしてあった手札抹殺の効果でジョンの手札が無くなった。それによってオ○リスの攻撃力が0に落ち、オ○リスクの反撃でジョンの敗北が決定した。
『えぇ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っっ!!!』
「嘘やん!そんな再々逆転なんてあるん!?」
「私も、天よりの宝札が出たときはこれでジョンの勝ちだと疑いもしませんでした!」
「いや~~~!最後のアレは僕も予想外ですよ!でも、お二人もこのVTRで大分白熱していたんじゃないっすか?」
「むっちゃ興奮した!えっ!?今から七人でこれをやるってこと?」
「それが、七人じゃないんですよ~~この人無くしてこの演出は絶対にできません!本日のスペシャルゲスト、お入りください。どうぞ~~!!」
ようやく俺たちの出番が来た。俺の影分身が舞台裏からデュエルディスクを装着して中央から登場。拍手で迎え入れられる。
「本日のスペシャルゲスト兼、我々の夢を叶えてくれる、キョン社長です!!どうぞ宜しくお願いします!」
「宜しくお願いします」
「もう既にね、デュエルディスクを装着されているようですけども……」
「先ほどからも『楽しみで仕方がない』という声を何度も聞いていますので、すぐにこれと同じものをお渡しして四試合同時にデュエルをしてもらおうかと。お二人には気になる対戦をモニターで見ながらコメントを加えていただいてこの八人でトーナメント戦を行います!」
遊戯○芸人達から、歓声と盛大な拍手が贈られてくる。
「えっ!?でも今のVTRで出てきたような巨大モンスターをこのスタジオで出せるんですか!?しかも四試合同時になんて、いくらなんでもスタジオが狭すぎですやん」
「ええ、このスタジオでやるのは決勝戦のみ、残りの試合は別の決闘会場で行います。まずは、その場所と特別ルールの説明からですね。モニターをご覧ください。まずはこちら、霧ケ峰高原に会場を設置しました。なぜ霧ケ峰高原かというと、この会場では何もしなくても草原のフィールド魔法がかかります。戦士や獣戦士モンスターの攻撃力・防御力が200アップします。他の会場も同様に、富士山樹海なら森、阿蘇山なら山、八丈島なら海のフィールド魔法の効果が得られるということになります」

 

 俺の説明に合わせて富士山樹海、阿蘇山、八丈島とモニターが切り替わる。当然出てくるのはこの質問。
「えぇ―――――っ!!今から阿蘇山なんて行ったら、戻ってくる頃には夜になりますよ!?」
「その疑問については後ほどお答えするとして、まずは皆さんにデュエルディスクを装着していただきましょう」
MC二人はデッキを持ってきていないだろうが、片方は当時の漫画を読んでいたらしいし九人分のデュエルディスクを情報結合した。遊戯○芸人のほとんどが、自分の前に出てきてすぐ左腕にはめている。
「ちなみに、これはどうやったらデュエルモードに切り替わるんですか?」
「簡単です。腕を肩の高さまで上げていただくだけです」
「うわっ、僕もう超感動ですよ!!この音を聞いただけで鳥肌が立ちました」
「こんなことになるんやったら、俺もカード持ってくれば良かったわ!!」
「では、お二人にも自分のモンスターが実際に出るところを見ていただきたいので、カードをお渡しします。そのままデッキを組んでもらっても構いません。我々八人は対戦相手と場所を決めるための抽選を行います」
『抽選!?』
「自分のデッキから一枚モンスターカードを選んでください。そのモンスターの攻撃力を強い順に並べ替えて対戦相手を決定します。カードが決まったらそのカードをデッキの一番上に置いてセットしてください」
「うわ~~どうしよ」
芸人達もそうだが、MC二人も情報結合したカードを見ながら迷っていた。デッキを作ってもいいが、ワイプでちゃんとコメントしてくれるんだろうな?芸人達の方は大体決まったらしい。

 

「では、例を見せますのでお一人ずつ順番にカードを見せてください。俺のターン、ドロー!俺はク○ボーを守備表示で召喚する!」
クリボーとその防御力の書かれたプレートが現れた。
「ホンマにモンスターが現れよった!!って品○、何泣いとんねん!」
「いえっ……こんな光景が目の前で拝められるなんて、俺もう夢みたいで………」
遊戯○芸人達が俺の真似をしながら一人ずつモンスターを出していく。ク○ボーを出した俺は当然最後。
「順位が奇数の方はフィールドを選ぶか、先攻・後攻を選ぶかどちらか一方を選択してください。偶数の方は選ばれなかった方ということになります。一位から順番にお願いします」
「あ~この抽選の仕方、俺も見たことあるわ!」
予想通りブルー○イズ究極竜を召喚して一位になったケン○バが、ドラゴン属を有利にさせる山のフィールドを選び、二位の○ッキーが後攻を選択した。
「それでは、今から阿蘇山にお二人を送りますのでモニターをよくご覧になってください。会場についた時点でデュエルを始めて構いません。心の準備はよろしいですか?」
「えっ!?これで向こうに行ったら、すぐデュエルするん?」
「その通りです。一瞬で向こうに着きますので、準備はよろしいですか?」
『一瞬!?』
送ってしまった方が早そうだ。指を鳴らして二人をテレポート。阿蘇山が映ったモニターに二人が現れ、芸人達がモニターに近寄って確認している。
「ホンマに一瞬で阿蘇山に行きよった。○ッキーが深呼吸しとる」
デッキをシャッフルしてデュエルが始まった。
「あ~俺何処のフィールドにしよう……」

 

 芸人がどうしようかと迷っている間に、MCはカードを選んでデッキを構築しようと試みていた。ワイプで色々とコメントをしてもらいたいんだが……まぁ、他の芸人達がモニターの映像と音声で色々と発言しているからいいか。その間に俺たち三人は本体が本社81階へと戻り昼食を摂っていた。ようやく場所も決まり、各地へと分かれた。俺の相手はアニメオタクアイドル中川○子。だが、その歌唱力は他のアニメオタク連中が絶賛するほどだ。歌っている本人より上手いと言われるような場合もある。さて、どんなデッキで来るのやら。水属性モンスター主体の芸人がいなかったらしく、残されたフィールドは八丈島。古泉がステルス状態で俺たちのバトルを演出してくれる。
「私の先攻、ドロー!私はヂェ○ナイ・エルフを攻撃表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド!」
いきなり攻撃力1900のモンスターを召喚してくるとは驚いた。気を引き締めてかからないとあっさりと負けてしまいそうだ。しかし、こちらの手札が悪いというわけでもない。
「俺のターン、ドロー!俺は手札より、マジックカード○イクロンを発動!場に伏せられたカードを墓地へと送る。更に、強欲な○を発動。デッキから手札を二枚ドローする。そして、マジックカード天使の○しを発動。このカードの効果でデッキから三枚ドローする代わりに、手札から二枚捨てる。俺はブラッド・ヴォ○スを攻撃表示で召喚。加えて、手札の○グネット・ウォーリアーα、β、γを墓地に送ることで、磁石の戦士○グネット・ヴァルキリオンを特殊召喚。○グネット・ヴァルキリオンでヂェ○ナイ・エルフを攻撃!」
攻撃力3500と表示されたプレートが出現し、相手モンスターを破壊した。
「ブラッド・ヴォ○スでプレイヤーにダイレクトアタック!!」
「きゃあ―――――――――っ!!」
実体化したモンスターがプレイヤーへ直接攻撃と叫ばれれば、襲いかかってくるモンスターに脅えて当然か。この一ターンだけで、アニメオタクアイドルのLPが500まで下がった。
「カードを一枚セットして、ターンエンド」

 
 

…To be continued