500年後からの来訪者After Future8-8(163-39)

Last-modified: 2016-12-30 (金) 12:51:59

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-8163-39氏

作品

日本代表チームに配ったリクエストディナーにより、次のディナーがカレー食べ放題となってしまった。有希たちは勿論他のメンバーもカレーが食べたくて仕方がないらしいが、有希たちが考えを改めない限りメンバーに出すことはない。まさか、朝倉まで妥協案を出してくるとは思わなかったが、どんなアプローチをしてきても俺の答えは変わることはない。そして一大イベントに向けた番組収録がいよいよ始まった。青古泉VSジョンのVTRはすべて放送するとして、俺を含めた八人のトーナメント戦は編集して白熱したバトルが繰り広げているシーンのみ放送。時間内に収めきれなかった分は、その後の通常の番組内で収められることとなった。

 

 フィールド決めにあれだけ時間がかかっていたにも関わらず、スタジオに一番に戻ってきたのは俺&中川ペア。二ターン目、DEF2000の○―リーエルフと聖な○バリアミラーフォースを伏せていたが、ハー○ィの羽箒でリバースカードを排除。残り500ポイントを削り、俺の勝利が決定した。
「早っ!!もう勝負が決まったん!?」
「何であんなに手札を増やしているんだろうと思っていたら、1ターン目から○グネット・ヴァルキリオンが出てくるなんて……」
「えっ!?1ターン目からそんなん出てきたら勝てるわけないやん!」
「そんなに強いん?なんとかヴァルキリオン」
「確か、攻撃力3500とかじゃなかった?」
「手札にαとγがいたので、もしかしたらβも揃えられるかも知れないと思って、やれることをやってみただけです。デッキの並び順に救われました」
そのまま四人で残りの三試合の対戦を観戦しながらコメントを加えていく。
「やぐっちゃん、直接攻撃されて悲鳴あげとるで」
「いや、私もダイレクトアタックされたときはむっちゃ怖かったです!リアリティあり過ぎですよ!」
『え――――――――っ!!これでもうデュエルできないの――――――――っ!?』
品○VS矢○真理は品○に軍配が上がり、二人も戻ってきた。

 

「悔しい―――――――――――――っ!!宮○さん、収録関係なしでいいので、あたしとデュエルしてもらえないですか!?こんな貴重な体験をたった一試合だけだなんて、あたし満足できないです!!」
「俺は別に構わんけど、キョン社長お時間大丈夫なんですか?」
「構いませんよ。より白熱した試合が見られるかもしれませんから、演出だけでなく撮影も一緒に」
「いや、もうホント、僕も全員と闘ってみたいくらいですよ!」
残る二試合はケン○バ、佐野○なこが準決勝進出を果たした。
「先ほどと同様、準決勝の対戦相手もカードで決めます。ただし、さっきと違って選んだカードは準決勝では使えません。複数枚あれば、残りもすべて使えなくなりますので、選ぶ際は慎重にお願いします」
「ヤバい、あのシーンでカード選ぶのってこんな気持ちだったんだ……」
「どれを選ぼうか迷てまうな」
悩みに悩んだ末、準決勝はケン○バVS佐野○なこ、品○VS俺の対決となった。一回戦同様ケン○バが山を選択し、品○が草原を選択。四つ星以下の特殊能力持ちモンスターが勝敗を分けることになりそうだ。先ほどのような手札に恵まれることもなく、互いに戦士、獣戦士属の総力戦。磁石の戦士たちが盾としてしか機能せず、品○が召喚した人造人間サ○コショッカーに罠カードを封じられ、装備カードで更に攻撃力を上げたサ○コショッカーに軒並み駆逐される一方だったが、天使の○しによって墓地に眠らせていた神のカードがようやく目覚め、サ○コショッカーを撃破。辛勝を得ることができた。こっちが激闘を繰り広げていた分、いや俺が単純に時間稼ぎをしていただけに過ぎんか。もう一方の試合は既に終わっていた。
「いや、捨てたカードが分からないって怖いですね。僕の知らない間に墓地にオ○リスが眠っていたなんて思いませんでしたよ。天使の○しなんて、カードを無駄にするものだとばかり思ってました」
「でも、素人目で見てても、品○の方が優勢だってのは良く分かったよ?」
「あのVTRでもそうでしたけど、いくら優勢でもたった一枚のカードで勝敗が分かれるっていうのが怖いですよね。でもそれがあるから面白いんですよ。今度の大会、どこの誰が優勝するか全く想像がつかないです」

 

「じゃあ、いよいよ決勝戦が目の前で見られるということで……お二人ともどうですか?」
「いや、まさかこんな体験ができるなんて思ってなかったので、三回勝負できるってだけでも十分です!」
「決勝戦ということもありますので、今回はちょっとした演出をしたいと思います」
『ちょっとした演出!?』
一度指を鳴らして俺自身に催眠をかけ、二度目の音でスタジオ内が原作の最後の場面に早変わりした。
「えっ!?社長どこ行ったん!?」
「俺ならここに……おっと、声帯を弄るのを忘れていました。俺ならここにいるぜ!!」
「すげぇ、冥界の扉の前で武○遊戯と闘えるなんて……ケン○バさん羨ましい~」
「僕がア○ムを冥界に送り返します!!」
「デュエリストとして、目の前に立ちはだかるものは全力で倒す!それが俺のプライド!!」
『デュエル!』
「俺の先攻、ドロー!俺はク○ーンズナイトを攻撃表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド!」
「出た――――――――っ!!俺も勝負してみてぇ!」
「僕のターン、ドロー!ブラッド・ヴォ○ス攻撃表示!ク○ーンズナイトを粉砕しろ!」
「リバースカードオープン!光の護○剣!今から三ターン、おまえの攻撃を封じるぜ!」
「リバースカードを一枚セットしてターンエンド」
「俺のターン、ドロー!俺は、手札からマジックカード発動!同胞○絆!!ライフを1000払い、場に出ているモンスターと同じ種族のレベル4以下のモンスターを二体まで特殊召喚する。出でよ、キン○スナイト、サ○レントソードマンLv0!!さらに、キン○スナイトの特殊効果でジャック○ナイトを特殊召喚!そして、俺はまだこのターン、モンスターを召喚することができる」
『まさか!?』

 

「ク○ーンズナイト、キン○スナイト、ジャック○イトを生贄に捧げ……」
 一枚のカードを指にはさんで呪文を唱えると、遊戯○芸人達が説明やコメントを加えていく。
「ヒエ○ティック……テキスト………」
「光臨せよ!ラーの○神竜!!」
「漫画やアニメの演出そのままなんて、むっちゃ興奮します!」
「攻撃力5000!?」
「ラーの○神竜の攻撃!ブラッド・ヴォ○スを焼き尽くせ!!」
「うおっ!!」
爆炎はただの演出だが、MCや芸人達まで爆風が及んでいた。襲ってくる風を腕でガードしながらデュエルを見ている。
「そんな……たった一撃でケン○バさんのライフが900に………」
「サ○レントソードマンLv0でプレイヤーにダイレクトアタック!!」
場に伏せられたカードが何だったのかは分からず仕舞いだが、ダイレクトアタックが通り決着がついた。ただのハッタリでド○ゴンを呼ぶ笛をリバースしていたのかもしれん。ライフポイントが0になり、周りの映像が消え、遊戯○芸人用のセットが姿を現した。武○遊戯の催眠を解いた俺とファイナリストに周りの芸人達やMC、カメラマン、AD達から拍手が贈られた。
『古泉、有希、ここまでくれば後は俺一人で十分だ。先に戻って休んでいてくれ』
『了解しました。あなたも、あまり周りの要望に応えすぎないようにしてくださいよ?』
『ああ、撮れ高は十分なはずだからな。有希、録画した映像をDVDにして担当者に渡しておいてくれ』
『問題ない』
それ以降、MCが短時間で作り上げた付け焼き刃のデッキで勝負をしてみたり、一回戦で負けた芸人達がフィールドを選んで対戦してみたりと何試合か行ったところで終了。デュエルディスクの情報結合を解除しようと、デッキを抜くように指示をすると、九人とも『記念として持ち帰りたい』と強く要望してきた。カードをセットしても何も起こらないが、それでもいいのかと確認したんだが、記念品として持ち帰りたいらしい。カメラに収めた映像を担当者に渡してその場にいた全員と別れを告げた。

 

「ただいま」
『おかえり~!』
午前中からスタジオ入りしてたってのに、影分身が戻って来る頃には、すでに夕食の時間になっていた。
「有希と古泉君から聞いたわよ!?あんたが構築したデッキで勝ち上がっていくなんて信じられないわ!今度はあたしと勝負しなさい!!」
「ん?ああ、俺は一回戦負けでも別に良かったんだが、何とか勝ちあがることができただけだ。決勝戦のパフォーマンスを今日やるか、天空スタジアムで優勝者が決定したときにやるかずっと迷っていたんだが……結局、今日見せてきた。初戦と準決勝は自分のデッキと戦術で勝つことができたが、決勝戦のアレはデッキを細工して決闘王らしさを演出してみた。まぁ、どう編集されるかは明後日のお楽しみってところだな」
「くっくっ、いくら一大イベントのための番組収録とはいえ、古泉君達が戻ってきてからはほとんどお遊び状態だったんだろう?『決勝戦のアレ』と言われても、どんなデュエルだったのか僕たちにはちっともわからないじゃないか。『明後日のお楽しみ』なんて言わないで、今見せてくれたまえ。放映される時間帯はディナーの接客をしないといけないからね。ただでさえ、有希さん達を行かせるわけにはいかないんだ」
「それもそうだな。だが、ホールスタッフなんて二人いれば十分だ。カレーのおかわりに応じるだけで、今回はみくるのお茶より氷水の方が良いだろう。今、モニターに映すよ」
情報を同期して影分身を解除。俺の上には決勝戦の準備段階からの様子をモニターに投影されている。
『俺も気になる。一緒に見させてくれ』

 

「どうやら、今回も『ちょっとした演出』の枠を超えてしまっているようですね」
「俺は自分に催眠をかけて立体映写機で周りの風景を変えただけだ。あとはデッキが変わったくらいで、充分枠の中に収まる範囲だろうが!」
「くっくっ、一大イベントの告知としては十分過ぎるくらいだよ。優勝者とエキシビジョンマッチでもするつもりかい?神一体だけしか召喚できずに終わったんだ。三幻神を揃えるくらいでないと、キミにとっては不満だろう?」
「まぁな。三幻神を束ねるくらいはしたかった。天空スタジアムでやるときは相手の出方を見るつもりだ」
「今の映像もふまえて、TV局側がどのような編集をしてくるのか楽しみになってきましたよ。それぞれの決闘を見ながら僕も参加したくてうずうずしていたくらいです」
「やるなら今夜だな。これもれっきとしたサイコメトリーと情報結合の修行だ。俺もデッキを見直して少し変える」
『面白いじゃない!あたしも参加するわ!』
シャンプーやマッサージを終えてジョンの世界に集合すると、デュエルの参加を希望したのがWハルヒ、W俺、W古泉、ジョンの七名。シード枠に俺が入り、三試合同時にデュエルがスタート。まさかとは思っていたが、魔法・罠カードがほとんどないWハルヒのデッキに青古泉やジョンが負けるはずもなく、いくら運の要素が強いからとはいえ、古泉は古泉だった。将棋は修行中だからいいとして、どんなボードゲームなら勝てるんだ?こいつは。武○遊戯のデッキを渡しても負けてしまいそうだ。二度目の青古泉VSジョンの闘いは執念でジョンが勝ち取り、遊戯○芸人とデュエルをしていた分の経験値からか、デッキは良かったが、カードをリバースせずにターンを終了したり、出すタイミングを間違えてばかりいた青俺から決勝戦への切符を勝ち取った。そんな青俺にすら負けた古泉って一体……決勝のジョン対俺の対決は、俺の思考が直接伝わってしまうジョンに勝てるわけがないとして、対戦前に棄権した。まぁ、考えていることが伝わったとしてもそれに対抗できるカードがなければ意味はないけどな。だが、ジョンのリードに変わりはない。対等なデュエルができないとして棄権が認められた。

 

 翌日、お茶を煎れたみくるを連れて北高の文芸部室へとテレポート。今回からドラマを見せることもあって、閉鎖空間を展開した状態で出向くと、文芸部室の連中全員からのブーイング。理由は勿論、昨日来られなかったこと。青古泉とみくるのドラマの件で現文芸部員達が話していたらしい。
「すまん、昨日は別件で用事があったんだ。来週以降は火曜日に来られるはずだから、今回だけは許してくれ。それと、おまえのデザインがほとんど採用されたぞ?一話につき最低一回は出てくるから楽しみにしていろ」
『もう撮影が終わっているのなら、全部見せてもらえないか?』
「阿呆、おまえは自分のデザインしたランジェリーをつけたみくるが見たいだけだろうが、中には事件の謎を自分で解明したい奴だっているはずだ。特に最終回はその謎を解いた奴には抽選でプレゼント企画も用意している。それとな、おまえにライバルが二人現れた。みくる達二人が現在進行形で座っている椅子がそれにあたる。アイツ等にもデザインを考えてもらっているが、おまえのデザインの方が良ければちょっとしたプレゼント企画を用意してやろう。どうだ?受けてみるつもりはあるか?」
『いいだろう。現在進行形でみくるが座っている椅子と聞かされては黙っているわけにはいかない。来週までに考えをまとめておく』
コイツにはそう告げたが、幼稚園児の集団の中で謎を解いてみようとする奴がいるかどうか……全員に見えるようにありったけのモニターを出して部室をあとにした。
「わたしも吃驚しました。一日遅れただけであんなにブーイングを受けるなんて」
「正確には一人だが、あの部屋を使っていたことのある二人が主演を務めるとなれば、現文芸部員が話題にしていてもおかしくない。それを聞いて火曜日にはやってくるとずっと待っていたんだろう。もっとも、催眠をかけたハルヒや有希、俺も入れると全員ってことになりそうだけどな」
「それだけ楽しみにしてくれていたってことですね!キョン君、来週は午前中に連れて行ってください!」
「ああ、アイツ等には今回遅れた分の償いをしなくちゃな」

 

 明日のディナーはすべて俺が作ったこともあり、今週末のおススメ料理は金曜が古泉、土曜が青ハルヒ、日曜が俺ということになった。しかし、来週の野菜スイーツ食べ放題のことを考えると早めに動きだした方がよさそうだ。古泉たちが使っていない残りの調理場や食堂を使って仕込みを開始した。
「どうしたんです?仕込みをするにはまだ早いのではありませんか?」
「来週の野菜スイーツ食べ放題のことを考えると、早めに動きだした方がよさそうなんでな。古泉の方も、今日明日中に仕込みを終わらせないと、金曜日は電話対応に追われるぞ?」
「おや?人事部がてんやわんやになりかねないような事件でもありましたか?」
「昨日収録した番組が明日放送される。内容にもよるだろうが、金曜日は俺への番組出演の依頼が殺到するはずだ」
「僕自ら演出に尽力していたにも関わらず、そのことをすっかり忘れていましたよ。少しばかり急ぐ必要がありそうですね」
「まぁ、間に合いそうに無ければ俺が人事部に張りつくだけだから心配するな。それより、明日は俺一人でディナーの対応をする。カレーはもう出来上がっているし、あとはそれぞれの希望に応じてナンかライスのどちらかを選択するだけだからな。ホールスタッフも俺の影分身で十分だ。逆遮臭膜を張ってもいいが、カレーを食べている様子を見て自分も……なんて事になりかねないからな。ついでにW有希を81階に抑えつけておく役ってところか」
「あなたも驚いていたようですが、朝倉さんまで妥協案を出してくるくらいなんです。新川さん達ですら、あなたのカレーをもっと食べてみたいとその場に残っていたくらいですからね。なんとかなりませんか?」
「策を用意していないわけではないが、有希たちが考えを改めるまでは出すつもりは毛頭ない」
「どのような策を考えていらっしゃるのか、ご拝聴させてもらってもよろしいですか?」
「なぁに、朝倉から提示されたのとほとんど変わらん。用意したカレーと同じ分量のおでんを有希たちで平らげてからでないとカレーには手を出せない。さらに、有希が食べ終わっても、青有希が食べ終わって無ければ、有希はカレーに手を出すこともできなければ、青有希を手伝うことも不可能。その間に他のメンバーで平らげてしまえば有希たちはカレーにありつけないという案が一つ目。もう一つは、有希たちにも他のメンバーと同量のカレーを配るが、おかわりできるのは周りのメンバーが全員ギブアップした後。こちらも残り全員で平らげてしまえば、一皿分だけで終わることになる」

 

「佐々木さんの真似とジョンの嗜好品のセリフを使いたくなりましたよ。くっくっ、『何だ、あるんじゃねぇか。そんな簡単な方法が』とね。僕自身の気持ちも含めてですが、既に対応策を用意しているのならどうして使わないんです?」
「前回は『妥協案として』全員に一人分ずつ作っただけであって、当分作る気はなかったってことと、今話した二つを実際に行動に移した場合、有希たちは更に物足りないという感情を持つだろう。有希にはアイツ一人仕事をしなくとも十分対応できると突き付けてやったし、ほとんど諦めている状態でこちらから提案するわけにはいかん。あの二人が考えを改めるまではまず無理だろうな」
「困りましたね……あの二人には誰がどう説得しても効果がなさそうです。三月まで待つしか方法はなさそうですね。僕も日本代表選手のどなたかと入れ替わりたいくらいですよ。OG六人が羨ましくてなりません」
「圭一さんの言う通り気長に待つしか手はない。それでも、青新川さんと俺で料理を作っているんだ。他の連中から比べれば、十分羨ましいと思えるだけの料理が毎回出ている」
文芸部室に顔を出していたこともあり仕込みにあまり時間をかけられなかったが、古泉と話していた分時間の経過を感じることなく作業を進めることができた。明日も似たような状態になるだろう。OG達六人は明日が待ちきれないと言いたげな明るい表情をしていたが、それ以外のメンバーは六人のその表情を見て羨ましそうな顔つきをしていた。全体的に見ると空気が重くなっていることに変わりはない。

 

「今日の午後になって、CMの依頼が二件入った。どちらも例のネックレスは無しでもいいそうなんだが……今度は例のドラマで使用しているガーネットとダイヤモンドのイヤリングとネックレスで出て欲しいらしい。両方とも来月のバレンタインに向けたチョコレートのCMだそうだ。ドラマとその視聴率の高さで朝比奈さんに決めたらしい。サイコメトリーで全部伝わってきたよ」
「キョン君、わたしどうすれば……」
「別にいいんじゃないか?ついでにドラマのスポンサーになるなんて言ってきそうだしな」
「ああ、君の言う通りだ。ドラマの間のCMとして入れさせて欲しいそうだ」
「こちらから声をかけた会社とは別にスポンサー分の料金はいただくとして、本社の大画面に映してもいいのではありませんか?ついでに、ドラマの次回予告や第二話の内容を編集したものも追加してはいかがでしょう?」
「分かった。古泉一樹の言う通り、ドラマの次回予告と第二話を編集したものを加える。本社の大画面にも映すからCMが出来上がり次第映像が欲しいと伝えて」
「朝比奈さんもCMの依頼を受けるということでいいかね?」
「はい、日時が分かり次第教えてください!」
「いいなぁ……黄私たちは黄キョン先輩のあのカレーが食べられて……」
「あんなカレー、規格外もいいとこだよ……卑怯すぎる」
「カレーの話はやめておいた方が良い。私たちのせいで更に延長したら先輩たちに申し訳が立たない。先に69階で情報結合の練習をします。ご馳走様でした」

 

『キョンパパ!わたしもカレー食べたい!』
「今度また作ってやるから、そのときまで待ってろ。あんまり我儘を言うと二人だけ食べさせてもらえないぞ?俺も夜練までの間に仕込みを続ける。ご馳走様。それと、青朝倉。異世界での他の会社の動きを週刊誌で調べておいてくれるか?サイコメトリーするだけで十分なはずだ。そろそろ赤字が続いているところも出て来る頃だ」
「分かった」
「あ―――――――――――――っ!!また、キョンに先を越された!!も~~~~~!他の会社の動きまでは頭が回らなかったわよ!」
「でも、おでん屋をOPENしてからは週刊誌を読まなくなっていたから……サイコメトリーで済むならすぐ確認できるわよ。倒産したら古泉君たちが土地の買い取りに向かえばいいでしょ?」
「しかし困ったね。責任は一切ないのにこっちのOG六人に羨望の眼差しがどうしても向いてしまう。なんとか打開策はないのかい?」
「他の選手やコーチ達のリクエストで決まったことであって、そっちのOG六人をそんな目で見るのは間違ってる。俺たちもカレーを食べるという策は絶対にありえない。黄俺が『有希に嵌められた』とまで言うくらいなんだ。いくら有希たちが考えを改めたと言っても、『それなら三月まで待てるだろう?』としか返ってこない。それと、すまないが六人に頼みがある。俺も影分身の修行がしたくてな。出来るだけ少ない意識でゾーン状態になれるようにしたい。多少ブレるかもしれないから、出来れば事情の知っている六人が俺の前に来て欲しい。頼めるか?」
『問題ない』
「私も少しでも修行しないと……二月号作ってきます。ご馳走様でした!」
「こればっかりはどうしようもないようですね。新川さんの代わりに僕と涼宮さんの影分身が出ることくらいしか思いつきませんよ。もし食べられることになったとしても翌週の月曜日まで待っていないといけないことになります。OG達も夜練のせいで、途中で抜けないといけなくなりそうですし、僕も仕込みをしてくることにします」

 

 スカ○ターで俺がいなくなった後の様子を見ていたがOG六人を責め立てるようなことにならずに済んで良かった。有希たちはこの会話を聞いてどう思っているんだか。夜練後、佐々木を個室へと連れ込んで個別に内緒話を始めた。佐々木の方は服を着れば妊娠していることを隠せるだろうが、裸になると隠し通せなくなってきたな。両脚をM字に開いて露わになった秘部に俺の触手が突き刺さり、太さを増していく。もう一本は触手が入り込むための入口としてしか機能しなくなった穴に入り込み、俺の張ったテレポート膜のすぐそばまで侵入していた。
「大分広げられるようになってきたようだな。これなら、俺の腕まで入ってしまいそうだ」
「キミが僕の身体を弄んだんだろう?れっきとした理由があるとはいえ、責任をとってくれるんだろうね?」
「勿論だ。出産時にできるだけ苦しくならないように、今のうちから通り道を広げておいて、その後は、今ハルヒやみくる達がやっている訓練に切り替える。女性ホルモンがより分泌されて、より妖艶な身体になるってことだ」
「彼女たちが短期間にこれだけの変貌を遂げたのがキミのせいだとは思わなかったよ。となると、OG達も同じ訓練をやっていることになりそうだね。それより、こんな話をするだけならわざわざ個室じゃなくてもよかっただろう?キミの本当の目的は一体何なのか教えてくれたまえ」
「まぁ、別に今でなくても良かったんだが……何体まで影分身できるかやってみてくれないか?」
「やれやれ、それを確かめるためにわざわざ個室に来たっていうのかい?でも、そうだね。やってみたことはなかったけれど、研究しながらビラ配りすることができれば、僕のもう一つの存在意義も満たせそうだ」
「ついでにサードシーズンの脚本を書くとかな」
「それはキミに委ねただろう?4thシーズンまでキミが書けばいいじゃないか。20体以上の影分身が出せるんだからいくらでも考えられるはずだよ」
「おまえに匙を投げられると、俺一人で残り全部はいくらなんでも不可能だ。クオリティを下げたくはないし手伝ってくれ。折角サイコメトリーで得た知識が無駄になるだろ?」
「キミにそこまで言われたら、僕が断れないじゃないか。何度も研究で助けてもらっているからね。でも、キミも一緒に考えてくれよ?」
「勿論だ。いいアイディアが閃いたら必ず知らせる。同じ話を青佐々木にも話している。やってみせてくれないか?」

 

 眼を閉じて、自分の身体をイメージすると、お腹が膨らんでいない佐々木の影分身が二体現れた。
「どうやら、これが限界のようだ。意識が朦朧とするのは影分身のせいってことかい?」
「ああ、俺も最初は簡単なことしか出来なかった。おまえがビラ配りに参加するのはもう少し後になるだろう。ちゃんとサインが書けるように練習する必要もある。本体がベースかコントラバスの練習、一体はサインを書く練習、最後の一体はデザインを考えるってところだな。異世界の81階に佐々木たち専用のデザインスペースを確保するつもりだ。まず何より妊娠を隠す必要があるし、二人いることは社員たちにも伏せなくちゃならん。中卒でもOKにしたし、社内機密を守れない奴も出てくるはずだ。ハルヒ達はデザインや指揮とビラ配りだから二人が揃うことはほとんどない。朝倉たちも、異世界支部が立ち上がった時点で青朝倉は異世界の経理部に行くことになる。みくる達もビラ配りとCM、モデル撮影で分かれているからな。俺と有希は別人として区別されているし、あとは佐々木たちだけだ。デザイン課に降りてもいいが、二人以上で降りることのないようにすればいいし、異世界支部ができた時点で青佐々木は向こうのデザイン課に行くことになるだろう」
「くっくっ、そこまでプランが練られていては、キミの敷いたレールに乗るしかなくなるじゃないか。カバー曲もあることだし、青僕に楽譜を借りることにするよ。明日から寝るとき以外は常時三体でいることにする。慣れてきたらたまには電話対応の方も混ぜてくれたまえ」
「これで他の時間平面上のおまえを一気に追い抜けそうだな」
「僕もそうであって欲しいし、そうありたいと願っているよ」
そういえば、過去佐々木の奴、妊娠したのか?つわり対策程度なら、コイツと同等のものができるし連絡を取ってみることにしよう。

 

ところでジョン、以前俺が見た映像を元に、青古泉が時期を割り出した二月の中旬まで、後一ヶ月を切った。例の時間平面上の動きはまだ無いのか?
『それならこの時間平面上で二月十六日の午後三時だそうだ。その時間平面上の俺も仲間もフ○―ザの戦闘力を超える程度にまで鍛え上げたらしい。キョン、俺の修行に付き合ってくれないか?』
おまえ、なんでそんな重要な話を今頃になって報告するんだ!?フ○ーザと同じってことはジョンの今の戦闘力の倍近くってことになるだろうが!とにかく全員に連絡してすぐ修行を開始しよう。
 ジョンの世界に全員が揃ったところで話を切り出した。予想はしていたが、ハルヒ達による咆哮から始まった。
『ちょっとジョン!!なんでそんな大事なことを先に言わないのよ!?』
「それはもう俺が言ったから、これ以上ジョンを責めないでくれ」
「それにしても、例の映像がプレコグの能力によるもので、青僕が割り出した時期に間違いはなかったようですね。日時を正確に割り出せるほどのプレコグなら、そのときの様子をもう少し詳しく話していただけませんか?」
『あの時間平面上の俺たちとここにいるメンバーの一部が共闘している映像が見えたそうだ。涼宮体でも破壊できないようなシェルターを開発しているらしいが、まず無理だろうな。完成したと連絡が入る度に、その時間平面上の俺が破壊できないかどうか試しに向かっているようだが、何度試しても駄目だったらしい』
「要は、シェルターを破壊される前に戦争を終わらせてしまえばいいんだろ?」
『いや、俺も映像を受け取って確認してみたが、青チームのキョンの姿はなかった。この時間平面上に涼宮体が来襲したときの護衛役にまわったと考えるのが妥当だ』
「だったら、これ以上話す必要はなさそうね。早く修行を始めさせてくれないかしら?ジョンが開発した本物のスカ○ターの値にわたしも納得できないのよ」
『面白いじゃない!あたしも混ぜなさい!』
「涼宮体がこっちに現れても、瞬時に対応できるようにしておかないとな」
「あの……わたし達は一体何をすれば……」
みくるをはじめ、非戦闘員にあたる佐々木たち、ENOZやOG達が脅えている。
「問題ない。あなた達は情報結合の修行を続けていればいい。彼は護衛をすることはできても回復まで手をまわすことはできなくなるはず。たとえ心臓を貫かれたとしても、サイコメトリーした情報を基に瞬時に情報結合してしまえば回復役として活躍できる。影分身で攻撃を免れることも可能」
『くっくっ、だったら僕は影分身二体と一緒にバレーの試合にうちこむことにするよ。子供たちの相手も必要だろう?当分の間は足を引っ張ることになりそうだけどね。練習から参加させてくれたまえ』
「決まりだな。これ以上は時間の無駄だ。朝倉の言う通り、さっさと始めるぞ!」
『問題ない』

 

 ENOZは情報結合よりもバレーやライブに向けた練習の方を優先するよう伝え、OG六人は、昼にバレーの練習をしている分、ここでは情報結合に専念。青OGの方は二月のオンシーズン中は練習のみ参加する形になるだろう。試合に出場するのは、戦争が終わってからということになりそうだ。超サ○ヤ人になった俺たちが二つのフィールドに分かれて残ったメンバーの相手をしていた。俺の方はジョン、朝倉、古泉。青俺の方にはWハルヒと有希、それに青古泉が攻撃を仕掛けてきた。
 翌朝の会議は圭一さんがCMの件で折り返す程度。楽団の練習もないし、佐々木たちは俺の提案通り、ベースやサインの練習。模様替えした異世界支部の81階で、残りの一体がデザインを考えていた。昼食の支度を終えて、古泉と二人でおススメ料理の仕込みに取り掛かっていると、
『キョン、すまないが付き合って欲しいところがある。頼めるか?』
相棒の頼みを断る理由はない。キリの良いところで仕込みを終えて、ジョンにOKだと伝えると、目の前の光景が一変。この時間平面上のジョンとその仲間たちが現れた……じゃないな、俺の方が現れたと言うべきだろう。
「ここはようこそと言うべきだろうな。未来の俺から話は聞いている。超サ○ヤ人状態で付き合ってくれ。できれば、実際に闘ってみたい」
ちょっと待て、突っ込みどころが多すぎるぞ。この時間平面上のジョンからすれば、ジョンは未来の自分にあたるから『未来の俺』と言った。闘ってみたいというのも納得できる。だが、『超サ○ヤ人状態で付き合え』というのはどういうことだ?
『昨日話していたシェルターに超サ○ヤ人状態で閉鎖空間を取り付けて欲しい。それでこの時間平面上の俺が破壊できるかどうか確認したい』
なるほど、それならこちらとしてもどうなるか見てみたいところだったんだ。すぐにそこに連れていってくれ。

 

 ジョン二人に連れてこられたのはとある研究施設。最新のシェルターを開発中のようだ。俺が案内されたのは、この時間平面上のジョンによって破壊されてしまった、言わばプロトタイプ。コイツに超サ○ヤ人状態で閉鎖空間を取り付けて実験をするらしい。だが、シェルターをいくら強固にしたからとはいえ、閉鎖空間にすら遮られるようじゃ強固にする意味がない。試しに閉鎖空間を五重に張ってみた。外側三枚は『外敵からの攻撃を防ぎ、いかなる移動手段を用いても内部には入れない』という条件をつけ、内側二枚は『この閉鎖空間を含め、これより外側の閉鎖空間はどんな手段を用いても破壊できない』というもの、一番内側には『これより外側の閉鎖空間が何らかの理由で破壊されたとき、その閉鎖空間を再構築する』……って遊戯○カードのようになったな。とりあえず、五重に張った閉鎖空間にこの時間平面上のジョンの一撃が炸裂する。結果、閉鎖空間一枚たりとも壊すことができず、一番外側の一枚に遮られた。涼宮体の戦闘力が100万とか言ってたな。その半分の戦闘力をもってしても破壊できなかったことに俺も少々安心した。
「流石、超サ○ヤ人で閉鎖空間を発動しただけのことはある。閉鎖空間さえ壊すことができないとは思わなかった。ここの研究者たちにはより強固なシェルターを開発してもらうつもりだが、プレコグが予知した日時より前に閉鎖空間を取り付けに来てもらえないか?」
「最新式のシェルターが出来上がった時点で呼んでくれればいい。それより、こっちも一度手合わせをしてみたかったんだ。さっきのところにすぐに戻ろう」
ジョン、おまえはどうするんだ?
『今回はこの時間平面上の俺たちの戦いぶりを見る。キョンも本物のスカ○ターで実際に戦闘力を計ってみるか?』
そいつは楽しみだ。修行の成果ってヤツを見せてもらうことにしよう。

 
 

…To be continued