500年後からの来訪者After Future8-9(163-39)

Last-modified: 2016-12-30 (金) 21:59:59

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future8-9163-39氏

作品

一大イベントに向けた番組収録も滞りなく終えることができ、遊戯○芸人だけでなくMC二人も記念品としてデュエルディスクを持ち帰りたいと言い出した。その撮影もあり、文芸部室の連中に会いに行くのが一日遅れてしまい、それが理由でブーイングが浴びせられ、次回からは午前の授業中に行こうとみくると約束をしていた。カレーに対するほぼ全員の欲望が交錯する中、未来の時間平面上で戦争が起こると詳しい日時を聞かされ、もはやカレーどころではなくなってしまった。子供たちを相手に闘う佐々木たちやENOZ、それ以外の非戦闘員は情報結合の修行。俺と青俺の二人はハルヒや朝倉達戦闘員を相手に闘いを始めていた。

 

 しかし、ジョンのトレードマークというか、戦闘服がフ○ージョンしたときの服装の色違いだと、ついこの間発覚したばかりだが、『超サ○ヤ人』という言葉を使ってもこの時間平面上のジョンに普通に通じるとは……他の連中には『過去の遺物』だと言われたとか言っていたが、残りのメンバーはどう思っているんだか。ジョンから受け取った本物のスカ○ターで四人の戦闘力を計ると、四人とも500000を超えている。あと一ヶ月もあれば、フ○ーザの一回目の変身の戦闘力まで上げられるんじゃないのか?プレコグで正確な日時が分かったおかげで、パワーを温存しなくても良くなったからな。昨夜、ジョン、朝倉、古泉の三人を相手にしていたときとはパワー、スピード、連携攻撃のレベルが違いすぎる。ハルヒから受け取ったパワーを全開放したのが今の状態だが、更なるレベルアップを試みるのも悪くない。人造人間に敗北したべ○ータの気持ちが分かった気がする。この四人ならエネルギー波が直撃しても死ぬことはないだろうが、気を溜めている暇を与えてもらえそうにない。こちらからの攻撃も最小限に抑えてはいるが、四人が地面に手をつけるまでそこまでの時間はかからなかった。
「ぐっ…がっ……ぎっ、ぷはぁ、まいった。降参だ」
ピッ○ロと初めて対峙したク○リンのようなセリフを吐くと、他の三人も同様らしい。プレコグが予知した日時は二月十六日。一月の終わりと決戦の前日くらいなら、また闘えそうだな。再戦の約束をして元の時間平面上へと戻ってきた。さて、闘い方次第で意表をつくことはできても、俺自身もパワーアップを考えないとな。しかし、ハルヒの力を全開放したのが超サ○ヤ人なのにこれ以上なんてあり得るのか……?
『このバカキョン!いつまでジョンと話し込んでいるのよあんた!さっさと昼食の配膳を手伝いなさい!』
「すまん、もうそんな時間だったのか。だが、色々と思案していただけでジョンと話し込んでいたわけじゃ……何ぃ!?戦闘力450000!?」
スカウターが捉えたのは朝倉の戦闘力。ジョンからは200000にも届かないと聞いていたが……おおよその察しはついた。有希も同じと考えて良さそうだ。
「あら、何の映像を見ているのかと思っていたけど、それ、本物のスカ○ターだったのね。でも、どれだけバージョンアップできたのかわたしも気になっていたから丁度良かったわ」
おいおい、ということは何か?通常の俺では朝倉にいつ殺されても分からんじゃないか。
『そんなつまらないことを朝倉涼子がするはずがない。倒すなら超サ○ヤ人状態のキョンを倒してからパワーを涼宮ハルヒに移すはず。もっとも、情報爆発ならもう起こっているんだ。今の朝倉涼子にそんなつもりはさらさら無い』

 

「わたしは?」
「420000だ」
有希も気になっていたらしい。いくら修行しても同位体じゃそこまでのLvUPは見込めないからな。500年後の同位体との戦闘で得たデータを基にダウンロード&インストールしたとみて間違いはないだろう。
「一体どういうことか説明してもらえないかね?」
「青チームのOG達も揃っているときに説明します。最初から説明する必要があるでしょうから、明日の朝子供たちが出かけていった後、話すことになるでしょう」
試しにエージェント達の戦闘力を計ってみたが、全員古泉を上回っている。北高時代、古泉が高校に通っている間閉鎖空間に対応していた分と見て間違いなさそうだ。ジョン、とりあえず、スカ○ターは返すよ。
『分かった』
とはいえ、気になっているメンバーがほとんどか。仕方がない。
「青俺、確か先週新しくOPENしたばかりの店舗には青OGだけでなく影分身も向かわせているって話だったな?青OGを戻してくれないか。みんな気になって仕方がないようだからな」
「分かった。ハルヒも同期してOGに伝えてくれ」
「あたしに任せなさい!」
「彼女たちが揃う前に先に連絡をしておこう。昨日話した例のCMの件だが、明日収録現場に来てもらいたいそうだ。午前十時と午後三時と伝えておいたが大丈夫かね?第二話からCMを入れたいそうだから大至急と言っていた。詳細は後で伝えるがそれでいいかね?」
「分かりました」
「それで、どういうことか説明しなさいよ!」
「青OGが揃ってからだ。新川さんと母親にはもう一度、戦場に足を踏み入れると伝えれば何のことかすぐに分かる。おまえはもうほとんどのことは知っているんだから、俺がさっき驚いた件が分かればそれでいいだろ?」
ハルヒは不満気にしていたが、今の一言で圭一さん達元機関メンバーの目つきが変わった。

 

 ようやく青OGも揃い、場の雰囲気に気付いた変態セッターが口火を切った。
「何か事件でもあったんですか?」
「事件は事件なんだが、約一ヶ月後に起こる事件についてみんなに話しておかなければならないことがあってな。それで戻って来てもらった。まぁ、座ってくれ」
『有希と朝倉が宇宙人であることはバラしても、戦争の相手が宇宙人であることは隠して話す。全員、発言には充分注意をしてくれ』
『問題ない』
「みくるとジョンが未来からタイムマシンでこの時間平面上に来た人間であることは前にも話したはずだ。みくるの方は数百年とまではいかないだろうが、数十年……多く見積もっても百数十年ってところだろう。そして、ジョンの方は、ざっと500年後の未来から来た人間になる」
『500年後!?』
驚くのは青チームの圭一さん達と青OGのみ。それ以外は嫌という程知りつくしている。
「それで、どうして未来から来たはずの人間が俺の頭の中に住むなんて状態でいるのか疑問に持つ奴も多いと思うんだが、ジョンのいた未来では一つの例外を除いて、残りすべての時間平面で地球上の人類が絶滅している。まぁ、そんな未来で人類が絶滅していると聞いたところで、ここにいるほぼ全員が死んだあとの話だ。俺たちにはほとんど関係がない。ジョンもその当時は人類絶滅を阻止するために闘い、生き抜いてきたが、身体の損傷も激しく、ほとんど死ぬ直前だったそうだ。これまでの人生が走馬灯のように流れていく中で突如思い立ち、意識と自分の超能力、タイムマシンを持って過去へとやってきた。当然、肉体が無い状態で長時間いることもできずに何とか入りこんだのが俺の頭の中ってことだ。おかげで俺を始め、ここにいるほとんどの人間が超能力を使えるようになり、異世界のハルヒ達にも会うことができた。去年は本当に飛躍の年だったと思うよ。異世界支部を建てたきっかけで青チームの圭一さん達やOG達にも会うことができたんだからな」
「そこまでは納得できました。続きを聞かせてください」

 

森さんは大丈夫だろうが、それ以外は……まぁ、なんとかなるか。
「今、俺の頭の中にいるジョンはそれで生きながらえることができたんだが、他の時間平面上では、ジョンどころか人類そのものが絶滅した。その事実を受けて、一つだけでもいいから、人類が滅びることのない時間平面を作ろうと俺がみんなに提案し、俺たちが戦火に足を踏み入れたんだ。それが唯一の例外だ。その時間平面にもう一度戦争を仕掛けようと力を蓄えている最中の奴が居てな。どうしてそんなことが分かるかっていうと、超能力の中にプレコグと呼ばれる近未来を予知する能力がある。俺も一度っきりだが、その映像を見たことがあるんだ。ジョンが生きていた時代じゃ予知能力に特化した人間ばかりを集めて、悪い出来事を未然に防ごうとする組織まであるそうだ。その組織が出した結論は、この時間平面上で二月十六日の午後三時に戦争の火蓋が切って落とされる。俺たちが加勢に行ってやっとの思いで救った時間平面上で、もう一度戦争が起こるってことだ。それを阻止すべく、その時間平面上のジョンやその仲間たちは修行を積み、研究員達は絶対に破壊されないシェルターの開発をし続けていたんだが、修行を積んだジョン達にあっけなく破壊されてしまうばかり。フ○―ザには匹敵しないが、あのメンバーの戦闘力がスカウターの数値では500000以上を指し示していた。再び戦争を起こそうとしてくる奴等は、そのジョン達の戦闘力の軽く倍の力を持ってやってくる。そこでジョンから声をかけられて超サ○ヤ人状態で閉鎖空間をシェルターにつけたらどうなるか、その時間平面のジョンを連れて確認に行ったんだ。結果は……戦闘力500000以上のジョンでも閉鎖空間を一枚も破ることはできなかった。だが、来襲してくる奴等に通じるかどうかは俺にも分からん。研究員はそれまで出来るだけ強固なシェルターを作ると言って、戦争が始まる前に閉鎖空間をつけに来て欲しいそうだ。それに合意して、ここに戻ったあと、スカ○ターを外すのを忘れたまま色々と考えていたら、スカウターが朝倉の戦闘力に自動で反応したんだよ。その数値に驚いて、つい叫び声が出てしまった。どちらのハルヒも有希、朝倉、古泉たちも戦闘力200000を切っていたはずなのに今日になっていきなり倍以上に膨れ上がっていたんだからな」
「いきなりあなたが叫び出すので、驚きましたがそういうことでしたか。確かに彼女たちではいくら修行を積んでも戦闘力をあげることはできませんからね」
「えっ!?納得ができません。二人の戦闘力が『今日になっていきなり倍以上に膨れ上がった』というのはどういう意味ですか?そんなことが可能なら他の先輩たちも同じことをすれば簡単に戦争を終わらせることができます」
「今まで黙っていてすまない。だが、ただでさえ超能力者、未来人、異世界人のことを受け入れるだけでも時間がかかる。本来なら話す時期をもっと遅らせる予定だった。まぁ、俺が墓穴を掘ったようなもんだけどな。青チームの有希と朝倉は至って普通の人間だが、こっちの有希と朝倉は宇宙人に該当する」
『宇宙人!?』

 

「宇宙人と言っても、人類とコミュニケーションするために人間とほぼ同じように生み出された。ヒューマノイド・インターフェースって正式名称がついている。要はほとんど人間と変わらないが、ちょっと特別な力を持っているってことだ」
「それで、バックスクリーン直撃弾なんて打てるんですね……」
「あれは力を最小限に抑えた状態。やろうと思えば、オゾン層を突き破るくらいの球を打つことが可能だ。有希や朝倉だけでなく、俺たちもな。分かりやすい例をあげると、スマホやオンラインゲームのようにバージョンをアップデートすることができて、それをダウンロードしてインストールした結果、戦闘力が倍以上に膨れ上がった。だが、さっきも古泉が言っていたが、アップデートはできてもいくら修行しても戦闘スキルは身についても戦闘力が上がることはないというのが欠点だ。最新版にアップデートしても、修行を重ねたジョン達の戦闘力には及ばなかった。叫んでからそれに気が付いたよ。二人の戦闘力が跳ね上がっていた理由がな」
「そういうことですか。ようやく納得できました」
「あんた、どうしてそんな簡単に受け入れられるのよ!?宇宙人ってカミングアウトされただけでも吃驚しているのに!」
「未来人、超能力者、異世界人が出揃っているのに、今さら宇宙人が出て来たところでおかしくもなんともない」
「はぁ~ようやく青私がまともに思えてきました」
「それにしても、納得するのが速すぎない?わたし達だって黄有希さんから聞いた時は納得するまでかなり時間がかかったんだけど……」
「自分の異世界人が宇宙人だったからですよ。僕の場合は、黄僕が超能力者だと言われても自分も超能力が使えたらなんて思っていましたけど、朝倉さんや有希さんの場合は別です。自分も本当は人間じゃないんだろうかと疑いたくなります。時間がかかって当然ですよ」

 

「それで、君たちは戦場に赴くとして、我々の方はどういう対策を取ればいいのかね?」
「青俺が残った全員を守る役割でここに留まります。情報結合で影分身が作れるようになれば、本体に攻撃される可能性も極めて薄くなるはずです」
青圭一さんと俺の会話を受けて、突如、圭一さんの影分身が現れた。
『えぇ―――――――――――――――――――――――――――っ!?』
「ようやく私にもできたようだ。第二人事部に配置して電話対応してみることにするよ」
「凄い。わたしも、朝倉さんも人形にすらならないのに……」
「そういや、最終回の黄俺のセリフにもあったな。『サイコメトラーとしての実力の差』だと。毎日のようにサイコメトリーで電話対応していれば当然だ」
「キョン、私たちにもあんなことできるようになるの!?」
「だから何度も話しているだろう。何事も修錬だってな。影分身でバレーの試合に出ながら、本体は俺と二人で温泉旅行にでも行くか?」
『うん、それ、無理!バレーの方の意識が極端に薄くなっちゃいますよ!』
「それよりジョン!あんたも出てきて説明しなさいよ!事前に分かっているのならどうして今まで話さなかったのよ!?いくらでも話す機会があったでしょうが!!」
「ハルヒ、その理由なら、おそらく俺が告知に行っていたせいだ。青古泉の予想通りバレーのオンシーズン終了後、二度目の来襲が確定して全員にそれを話せば、俺にも簡単に伝わって告知どころじゃなくなる。ジョンだって自分でスカ○ターを開発してフ○ーザの戦闘力に及ばなかったことを悔いているんだ。しかも、あの時間平面上のジョン達はその戦闘力に匹敵するほどまで修行を重ねていた。ジョンだって修行をしたかったはず。この前の披露試写会でだってあんなパフォーマンスをするくらいなんだ。加えて、OG達の超能力の修行、ハルヒ達はバレーの練習をしていれば、やりたくても言い出すことができなかった。昨日ようやく俺からその件が上がってみんなに話すことになった。でなければバレーのオンシーズン直前のこの時期に、昨夜のようなことをしているなんてありえない。ジョンの気持ちも察してやってくれ」

 

「しょうがないわね、とにかく!今夜から徹底的に修行してあの時間平面上のジョン達を抜いてやるんだから!!」
「ちなみに、我々の戦闘力とやらは一体いくつになるのか教えてもらえないかね?」
「空調完備の閉鎖空間が付いている段階で戦闘員でなくとも全員100になります。さっきエージェントがいくつになるのか測ってみましたが、八人とも古泉を上回って200000を超えています。ナイフや拳銃を持ったただの人間でようやく戦闘力たったの5、ゴミですよ。マフィアに対するヒロインの活躍ぶりがその証拠です」
「それは聞き捨てなりませんね。スカ○ターの故障ではないのですか?」
「おまえが北高に通っていた頃、残り八人が何をしていたか考えれば当然の結果だ」
「あっ、なるほど。……あ``」
俺の説明を受けて、園生さんの思ったことがそのまま口に出てしまったらしい。
「やれやれ、分かりました。納得せざるを得ないようですね。スカ○ターの故障などと言ってしまい申し訳ありませんでした。ご無礼をお許しください。ですが、圭一さんも影分身ができるようになりましたし、明日の電話対応も何とかなりそうですね」
「明日の電話対応がどうかしたのかね?」
「今夜放送される番組を受けて、彼への番組出演依頼が殺到するそうですよ?彼の予想は外れたことの方が少ないですからね」
「なるほど、確かにあり得る話だ。私も心の準備をしておくことにするよ」

 

 古泉と二人で調理場へと戻り仕込みを再開した。あんな感じの説明で良かったか?
『ああ、充分すぎるくらいだ。俺がみんなに修行の件を打ち明けなかったことも含めてすまない。だが、あとは俺たちの戦況をこの時間平面上に残るメンバーに見せなければいいだろう』
そいつは大いに賛成したいね。有希も俺も撮影なんてしている暇はないし、敵が有希や朝倉、ハルヒじゃ青OG達も事実を受け入れられない。加えて、戦況によっては青俺もあの時間平面に行きたがるに違いない。
『ああ、それについでだが、相手は……』
涼宮体しか送って来ない……か?大体の予想はついていたが、今度の戦争で急進派の残りが動くのか、他の時間平面上の連中も絡んでくるのか、それが一番の悩みの種だ。
『同期はしていないが、周りからはどうしてこの時間平面上だけ人類が生き残っているのかと思われているのは確かだ。いくら俺のいた時間平面でも情報統合思念体のキャパシティをすべて涼宮体につぎ込んでも数は限られる。俺としては複数の時間平面上から来てくれた方がありがたい』
前回の戦闘データを基に改良しているくらいであればありがたいが……そこまで数を捌くことができるか不安だな。
『これで公に修行ができるようになった。キョン一人に任せるわけにはいかない。俺もやられた分はやりかえさないと気が済まない』
残り一ヶ月でフ○ーザの戦闘力を超えるつもりかよ。まぁ、その方が俺にとっても心強い。一昨日の番組収録のときに放った武○遊戯のセリフじゃないが、安っぽいプライドだけで攻撃を仕掛けてくる連中ごときに負けるわけにはいかない。

 

 ランチタイムを終えた社員食堂に降り立ち、三階の調理場付近の情報結合を弄って椅子で囲むように並べた。換気機能を切ると、カレールーの匂いと焼き立てのナンの香ばしい匂いが漂っていた。古泉や青ハルヒ、調理スタッフに化けた影分身と佐々木や朝倉に化けたホールスタッフ二人で準備OK。日本代表よりもカメラマンの方が先に到着し、匂いと光景に疑問を抱いている。ちゃんとリクエストに応えたディナーだと説明してから配ることにしよう。再度エレベーターが開き、匂いに気付いた選手たちが歓声を上げている。ほどなくして全員が調理場を囲むように揃い、ディナーが始まった。
「それでは、先週皆様に書いていただいたリクエストディナー第一位、俺の特製カレー食べ放題ディナーを始めさせていただきます。今回は、カレールーを大量に用意しておりますので、急いで食べる必要は一切ありません。全員が満足するまで食べたとしても、作った量の半分にも届かないでしょう。更に今回はライスだけでなく、ナンもご用意させていただきました。そちらの方も食べてみたいという方はいつでもお申し付けください。尚、用意したナンは全部で300枚。ここにいる全員がナンを選択しても一人六枚は食べられる計算になります」
『300枚!?』
「ちなみに、最初はナンの方が良いという方はどのくらいいらっしゃいますか?」
OGは六人全員、他の選手たちも半数以上が手を挙げていた。まずは二枚、ナンの乗った皿を手渡し、カレールーを別の皿に入れて運んで行く。その間にライスを選んだ選手たちにも次々にカレーライスが手渡されていく。その間、ホールスタッフは付け合わせの大学芋とけんちん汁、氷水を運んでいた。
「それでは、存分にお召し上がりください!」
『いただきます!』
焼き立てのナンに触れて「熱っ!」と反応している選手や、息を吹きかけて冷ましてから食べている選手が多く見受けられたが、事前に説明した通り今回は三日連続でカレーにしても十分な量を用意したんだ。事前に説明しても耳を貸さないのは精々WハルヒとW有希くらい。ナンを千切りながら所々で笑顔が見えていた。気になることと言えば、戦闘力420000にまで上がった有希を81階で抑えることができているかどうかだが……抑えきれない程の好意に及ぼうとすればするほど食べられる時期が伸びるだけの話だ。

 

 81階では夕食を摂りながら、どんな編集がされていたのか番組をチェックしていると、二時間で収めきれなかったので通常の番組の方で特番の続きをやると別枠で撮影をしたらしきMC二人が話していた。あの決勝戦は二時間の枠の中に入っているんだろうな?序盤の挨拶やVTRに切り替わるところまでは一切カットするような場面は見られず、青古泉VSジョンのVTRにワイプで芸人達がコメントを加えている。自分が出ているシーンということもあり、ジョンも自分の身体を情報結合して現れ、TVの前に座り込んでいた。
「有希、もうVTRを動画サイトにUPしてくれ。この映像をUPしようとしている奴はこれが終わるまでUPできないはずだからな」
「分かった」
「『えぇ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っっ!!!』」
『嘘やん!そんな再々逆転なんてあるん!?』
『私も、天よりの宝札が出たときはこれでジョンの勝ちだと疑いもしませんでした!』
『いや~~~!最後のアレは僕も予想外ですよ!でも、お二人もこのVTRで大分白熱していたんじゃないっすか?』
『むっちゃ興奮した!えっ!?今から七人でこれをやるってこと?』
「切り札として撮影するまで隠しておいた甲斐がありましたよ。僕とジョンのデュエルでここまで白熱していただけるとは思いませんでした。影分身に慣れたら、ジョンとまたデュエルを繰り広げてみたいのですが、最近どうも超能力の修行が上手くいかずに困っているですよ。異世界移動も佐々木さんから装置を借りようかと思っているくらいです」
「くっくっ、そんなことをしなくても、そこのドアをくぐっただけで僕たちの世界に行けるじゃないか。あとはテレポートで済むんじゃないかい?」
「そのテレポートや舞空術ですら不安定で困り果てているんです。今夜も戦闘より佐々木さん達と同様、影分身を作った状態でバレーの練習にしようかと」
「昨夜はハルヒ達についてきたものだとばかり思っていたが、そこまで困ったなんて言う古泉も珍しいな」
「青佐々木、念のため、あの装置を渡してやってくれ。異次元空間に閉じ込められてしまっては助け出せない」
「キミ達が二人揃ってそんなことを言うのも珍しいもんだね。明日の朝渡すことにする。今日はもう店舗へは戻らないだろう?」
「そうしていただけると助かります」

 

 青古泉が影分身にそれぞれ何をやらせているのかは知らんが、テレポートや舞空術までというのは気になるな。ハルヒ達から離れてまで影分身の修行をと言い出している以上、変な妄想に使うようなことはありえない。ただの不調やスランプだといいが、このままじゃ来月の一大戦争に連れていくことができない。しかし、ゆっくり食べ進めているとはいえ、大食漢の食欲は変わらずか。一回で効果が出るとは到底思えないが、クミンシードじゃなくて良かったよ。番組の方はVTR後、俺の登場、抽選、品○の涙、阿蘇山にテレポートしてそのまま一回戦第一試合を放送中。やはり決勝戦のあのリバースカードは相手を怖気づかせるためのブラフ。ようやくOPENされたと思ったら、案の定ドラゴンを呼ぶ○だった。魔法・罠カードを除去するようなものならいくらでもあるはず。よく序盤で伏せることができたもんだ。ここから一体どうなる?……と思わせておいてCMに入ると、CM後は俺の初戦か。やるだけやってみて駄目だったらブラッド・ヴォ○スを出すだけだったんだが、揃ったんだからしょうがない。
『早っ!!もう勝負が決まったん!?』
『何であんなに手札を増やしているんだろうと思っていたら、1ターン目から○グネット・ヴァルキリオンが出てくるなんて……』
『えっ!?1ターン目からそんなん出てきたら勝てるわけないやん!』
『そんなに強いん?なんとかヴァルキリオン』
『確か、攻撃力3500とかじゃなかった?』
『手札にαとγがいたので、もしかしたらβも揃えられるかも知れないと思って、やれることをやってみただけです。デッキの並び順に救われました』
そのまま四人で残りの三試合の対戦を観戦しながらコメントを加えていく。
『やぐっちゃん、直接攻撃されて悲鳴あげとるで』
『いや、私もダイレクトアタックされたときはむっちゃ怖かったです!リアリティあり過ぎですよ!』
『え――――――――っ!!これでもうデュエルできないの――――――――っ!?』

 

『悔しい―――――――――――――っ!!宮○さん、収録関係なしでいいので、あたしとデュエルしてもらえないですか!?こんな貴重な体験をたった一試合だけだなんて、あたし満足できないです!!』
『俺は別に構わんけど、キョン社長お時間大丈夫なんですか?』
『構いませんよ。より白熱した試合が見られるかもしれませんから、演出だけでなく撮影も一緒に』
『いや、もうホント、僕も全員と闘ってみたいくらいですよ!』
ようやく第一試合の場面に戻り続きが始まった。確かに収録のときも、最初にデュエルを開始したのに一番時間がかかっていたからな。まぁ、俺も人のことは言えんか。準決勝の抽選、片方はすべて放映されたが、俺の方は途中でカットされ、ようやく反撃の狼煙を上げたところから。しかし、所々で当時アニメでかかっていた音楽が原曲のままかかるというのも、視聴者をより興奮させる要因の一つになっている気がする。特に原作を知る世代はそうだろうな。天使○施しによって墓地に眠らせていた神のカードがようやく目覚め、サ○コショッカーを撃破。辛勝を得ることができた。
『いや、捨てたカードが分からないって怖いですね。僕の知らない間に墓地にオ○リスが眠っていたなんて思いませんでしたよ。天使○施しなんて、カードを無駄にするものだとばかり思ってました』
『でも、素人目で見てても、品○の方が優勢だってのは良く分かったよ?』
『あのVTRでもそうでしたけど、いくら優勢でもたった一枚のカードで勝敗が分かれるっていうのが怖いですよね。でもそれがあるから面白いんですよ。今度の大会、どこの誰が優勝するか全く想像がつかないです』
時間的にも決勝戦を見せて終わりになるだろう。それにしてもOG達は遅いな。こっちは全員夕食を食べ終えているってのに……69階に直接行ったわけでもない。どんな状況なんだ?

 

 300枚用意したナンも既に120枚を食べられてしまい、もう食べきれないという選手から順に部屋へと戻っていく中、大食漢ですら限界ギリギリの顔をしているのにこの六人だけどうしてこんなに余裕そうな表情で……って、そういうことか。こいつら、今まで修行したことを応用しやがった。胃の中のカレーをキューブに収めて縮小してやがる。これが周りに知れたらどうなるか分かったもんじゃない。
『おまえら、そろそろ時間も気にしながら行動しないと、他の連中にも気付かれるぞ!?』
『あ、やっぱりバレちゃいました?』
『大食漢選手とおまえらの表情を見れば容易に想像できるぞ!W有希並に食べるつもりか!?』
『こんなのずっと食べ続けていたいくらいですよ!』
『今はまだ番組に集中しているからいいが、帰りが遅かったら疑われる。今日のところはそれくらいにして直接69階に行け。今日はもう81階に顔を出さない方が良い。有希たちにカレーのことを思い出させないためにもな。今なら69階で情報結合していたとごまかせる』
『ぶー…分かったわよ』
やれやれ、雑用係として有希たちを呼び寄せるわけにもいかなくなった。みくると朝倉に化けた影分身で片付け作業をするか。本体と同期しておくとしよう。
『じゃあ、いよいよ決勝戦が目の前で見られるということで……お二人ともどうですか?』
『いや、まさかこんな体験ができるなんて思ってなかったので、三回勝負できるってだけでも十分です!』
『決勝戦ということもありますので、今回はちょっとした演出をしたいと思います』
「『ちょっとした演出!?』」
一度指を鳴らして俺自身に催眠をかけ、二度目の音でスタジオ内が原作の最後の場面に早変わりした。
『えっ!?社長どこ行ったん!?』
『俺ならここに……おっと、声帯を弄るのを忘れていました。俺ならここにいるぜ!!』
『すげぇ、冥界の扉の前で武○遊戯と闘えるなんて……ケン○バさん羨ましい~』
『僕がア○ムを冥界に送り返します!!』
『デュエリストとして、目の前に立ちはだかるものは全力で倒す!それが俺のプライド!!』
「『デュエル!』」

 

 二人の声と共に曲がまた流れだした。ヴジャトの眼が光り、木琴を連想させるような音が鳴る。
『俺の先攻、ドロー!俺はク○ーンズナイトを攻撃表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド!』
『出た――――――――っ!!俺も勝負してみてぇ!』
『僕のターン、ドロー!ブラッド・ヴォ○ス攻撃表示!ク○ーンズナイトを粉砕しろ!』
『リバースカードオープン!光の護○剣!今から三ターン、おまえの攻撃を封じるぜ!』
『リバースカードを一枚セットしてターンエンド』
『俺のターン、ドロー!俺は、手札からマジックカード発動!同胞○絆!!ライフを1000払い、場に出ているモンスターと同じ種族のレベル4以下のモンスターを二体まで特殊召喚する。出でよ、キン○スナイト、サ○レントソードマンLv0!!さらに、キン○スナイトの特殊効果でジャック○ナイトを特殊召喚!そして、俺はまだこのターン、モンスターを召喚することができる』
「『まさか!?』」
『ク○ーンズナイト、キン○スナイト、ジャック○イトを生贄に捧げ……』
 音楽が突如変化した。眼を閉じて呪文を唱えている武○遊戯(俺)の姿がUPで映っている。遊戯○芸人達がコメントを加えていく……というより思ったことをそのまま口に出していると言った方が早そうだ。
『ヒエ○ティック……テキスト………』
『光臨せよ!ラーの○神竜!!』
『漫画やアニメの演出そのままなんて、むっちゃ興奮します!』
『攻撃力5000!?』
『ラーの○神竜の攻撃!ブラッド・ヴォ○スを焼き尽くせ!!』
『うおっ!!』
爆炎はただの演出だが、MCや芸人達まで爆風が及ぶ。襲ってくる風を腕でガードしながらデュエルを見ていた。
『そんな……たった一撃でケン○バさんのライフが900に………』
『サ○レントソードマンLv0でプレイヤーにダイレクトアタック!!』
場に伏せられたカードが何だったのかは分からず仕舞いだが、ダイレクトアタックが通り決着がついた。ただのハッタリでド○ゴンを呼ぶ笛をリバースしていたのかもしれん。ライフポイントが0になり、周りの映像が消え、遊戯○芸人用のセットが姿を現した。武○遊戯の催眠を解いた俺とファイナリストに周りの芸人達やMCから拍手が贈られたところで別の画面に切り替わった。

 

「いや、凄かったですよ!爆風がこっちにまで飛んでくるとは思てなかったもん。セットが壊れるかと思たわ!」
「とりあえず、あの八人のトーナメント戦を見ていただいて、こっからがまた長かったんですよ。俺もあの時間でデッキを組み上げたからね!でも、デッキ組んで良かったわ~!あんな体験二度とできそうにないです!」
「まぁ、宮○と矢ぐっちゃんの対戦も見てて面白かったですよ!」
「あの、『対戦』言うの止めてもらえます?『デュエル』言わな、遊戯○芸人達にボッコボコにされますよ?」
「じゃあ、その『デュエル』を是非この後も見ていただいて、『家電芸人より興奮したんとちゃうか!?』いうくらいでしたからね。もしかしたら、この回見た後自分も入れてくれ~なんて芸人がいるかも分からんしね」
「もし次これと同じことができるいうときは、早めに連絡ください。絶対デッキ作ってくるわ!」
「というわけで、この後のア○トークの方もご覧いただければと……」
『キョンパパ、カッコイイ!』
「我々はこの時点で退散していますからね。このあとの通常の番組も見たいところですが、どうやらそうも言ってはいられないようですね」
「録画したものを仕込みでもしながら見ていればいいだろう。それとも、もう終わらせたのか?」
「あなたがディナーの準備に向かってから数を増やして終わらせたんですが……今になって後悔していますよ」
「なるほど、この番組の内容なら、番組出演の依頼が殺到しておかしくない。社員にも伝えておくことにしよう」
「そういえば、あの子たちどうしたのよ!?」
「とっくにギブアップして69階で二月号作ってるよ。『もう少し落ち着くまでマッサージはちょっと』だそうだ」
胃の中のものをキューブに縮小して、食べ続けてましたなんて言えるわけがない。名前や会社名は忘れたが、アホの谷口からテレポート先を変えた…ダメだ。顔も出てこない。テレポートした瞬間に元の大きさに戻るよう細工を施しておくか。あの六人には厳重注意をしておかないと、有希たちどころか他の奴にまで真似されかねん。一番被害をこうむるのは当然、俺だ。

 

 しかし、ジョンの世界で修業をするとなると、どうあっても俺が最後に来ることになってしまうな。『遅い!!』と周りから言われても、それは有希や青ハルヒ、変態セッターのせいであって決して俺のせいではない。まぁ、それを承知の上で何も文句を言ってこないメンバーもいるわけなんだが、当事者が文句を言ってくる場合もある。無論、ハルヒ達だ。
「遅いわよ!あんたもさっさとフィールドに入りなさいよ!!」
「青俺もそうだが、戦闘力が倍になった有希や朝倉と勝負しても十分修行になるだろうが」
「うん、それ、無理!あなたが相手じゃないと殺しがいが無いもの」
しれっととんでもないことを言ってくれるよ、まったく。
『キョンも自分の修行をしたいところだろうが、それに匹敵する相手が一人しかいないんだ。俺もキョン待ちだった。時間が惜しい。始めようか』
用意されたフィールドに向かいながら周りの様子を確認していた。青古泉は結局影分身のトレーニング兼バレーの練習か。一体どうしたっていうんだ?あいつ……

 
 

…To be continued