500年後からの来訪者After Future9-16(163-39)

Last-modified: 2017-02-25 (土) 22:25:54

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future9-16163-39氏

作品

OG六人の人気が急上昇し始めてからしばらく、客席で観戦、撮影していた観客と報道陣の怒りがぶつかり合い、ついに沸点を越えて体育館中の注目を集めたが、そんなバカ共にいつまでも怒鳴り続けられていてはこっちが迷惑だ。本社のすべての階に行き渡ったらしい俺の殺気で騒動の原因となった奴等を真冬の川へとテレポート。これでしばらくは報道陣も観客も暴れることはあるまい。しかし、平日にも関わらず社員食堂で朝食を摂りに来る一般客やOG目当ての観客は減る兆しを見せず、ようやく太陽が昇ったタイタニック号の上で夕食となった。

 

「どういう手順を踏んだら教育委員会から連絡が入るんです?しかも我々にとってはどうやら朗報のようですが……」
自席に移動しながら話す内容を頭の中でまとめているようだ。こっちの圭一さんで間違いないらしい。
「都の教育委員会から連絡が入った。中学校二年生で音楽鑑賞教室というオーケストラを聞く行事が三月にあるらしい。これまでは違うところに依頼して各区の会場に中学生が集まっていたそうなんだが、それをSOS交響楽団の演奏に変更したいそうだ。可能なら天空スタジアムでという話だった。どうするかね?」
そういえば、そんなイベントとも呼べないような代物が当時あったな……くだらないとしか思えなかった行事を、今度は俺たちでやれって言うのか?青チームは俺たちの記憶を受け継いでいるようなものだから反応は同じだとして、ハルヒはそんなものは綺麗さっぱり忘れているし、有希、みくる、朝倉にそんな記憶があるわけがない。古泉も当時はそれどころでは無かったはず。OG達も俺と似たような顔をしているし、ENOZも楽器の演奏とはいえオーケストラの方はあまり興味がなかったらしい。唯一興味を示していたのが佐々木。やれやれ、どうしたものか……
「あの動画の影響とみて間違いないようだけど、これまではどこに依頼していたのかしら?」
「私もそれが気になって聞いてみたんだが、東京交響楽団だそうだ」
「ぶふっ!」
楽団名を聞いた瞬間に青有希が噴き出した。口から飛び出たものを慌てて手で拾い上げている。
「ちょっと有希!説明しなさいよ!そんなに有名な楽団なわけ?」
「ドラ○エのテーマ曲を演奏している楽団。その演奏がゲームでもそのまま流れてる」
『ドラ○エのテーマ曲!?』
「そんな有名な楽団の演奏を蹴ってまで僕たちの演奏を聞きに来るっていうのかい?」
「でも、逆を言えばそれ以外は通常のオーケストラと変わらないです。こっちの楽団の方がオリジナル曲が多いですし、ダンスもオーケストラでアレンジしてました。中学生が食いつきやすいはずです」
「かといって、そればかりというわけにもいかないでしょう。曲目に関しては我々よりも楽団員の方が詳しいはずですし、まずは依頼を受けるか否かを決めませんか?中学生の行事の中の一つなら平日に行うことになるはずです」
「突然の要望であることは向こうも承知している。こちらが決めた日にそれぞれの区の中学校が合わせるそうだ。秋頃に終えている区もあるそうだから一日だけでいいらしい。それでもアリーナ席を埋めるほどの生徒がくることになるだろう」
「違う中学校の生徒同士で争うようなことが無ければいいんだけど……大丈夫かしら?」
「くっくっ、それなら心配いらないよ。古泉君や朝比奈さんに視線が集中するはずさ。何かあったときはSPが動けばいいんだからね」
「えっ!?でも、古泉君は最後に歌うだけで他の曲では出ないですよ?」
「古泉が司会を担当すればいいだろう。確か、各楽器の紹介みたいなこともやっていた覚えがある。コンサート当日まで色々と準備もあるだろうし、あまり遅いとその後の行事に影響する。三月十日(金)の午前中でどうだ?俺がちょっとした演出として、夜の天空スタジアムから見える夜景を投影するから、翌日のコンサートのリハーサルにもなるはずだ。卒業式関連にも影響しないだろうし、次の日が休みとなれば授業がなくなって喜びそうだ」
「どうやら、今回は『ちょっとした演出』の枠の中に収まりそうだね。日程もそれでいいんじゃないかい?」
「分かった。楽団員に相談して曲目を決める。楽器紹介としてハレ晴レユカイ、最後に旅立ちの日にを入れる予定。でも、アンコール曲として生徒が歌える合唱曲を入れたい。いい曲があったら教えて」
「私が中学二年の合唱コンクールで弾いた曲は時の旅人とCOSMOSでした」
「そこまで黄私と同じなんて吃驚……でも、中学二年生ならその辺の曲が妥当だよね。あとは遙かな季節とか…」
「どの区の中学校が来るのか聞いて調査に行ったらどうだ?体育館をサイコメトリーすれば合唱コンクールで何の曲を歌ったかくらい分かるだろ。ついでに生徒数もはっきりするし、アリーナ席だけで埋まるかどうかも判断できる。俺も影分身を持て余し気味になってきたんだ。どこの区がやって来るのかさえ分かれば、俺が調査に行って黄古泉に人数を伝える。それで会場のどの席まで必要か決めてくれればいい」
「では、明日にでもその旨で折り返すことにしよう。他に伝えておくことはあるかね?」
「んー…それだけじゃ、どうも面白味に欠けるのよね……コンサートの最中に寝る生徒も多そうだし」
「そういうおまえはどうなんだ!?」
「勿論爆睡してたわよ!コンサートに興味のない生徒を引き付けるようなものが、もうちょっとあればいいんだけど……」
「ったく、堂々と爆睡してたなんてよく言えたもんだな。まぁ、俺もプログラムを見せられてもさっぱり分からなかったから似たようなものか」
『だったら、プログラムが書かれた用紙に触れた瞬間に、曲の詳細が分かるようにしたらどうだ。青チームのキョンが生徒数を把握してくるんだろう?俺が披露試写会後のパフォーマンスを頼んだときと似たようなもんだ』
「なるほど、その手がありましたか!それなら我々以外に絶対にできません。その曲のイメージや光景、作曲者の歴史等を含めてサイコメトリーで伝達してしまうとは。ジョンの名案炸裂ですよ!」
「ハルヒ、楽曲が決まったらパンフレットの原案を作ってくれるか?それと学校に掲示する用のポスターもだ」
「フフン、あたしに任せなさい!」
「どうやら、決まりのようね」
「そのようだ。しかし、区によっては昼までに学校に戻れない可能性も十分にある。午後にしてくれと要望が来た場合はそれでOKしてもいいかね?」
『問題ない』

 

「ところで、昼食時に彼が話していたメールの件はどうなったんです?」
「駄目ね。あたし達の世界と同じで各球団の主砲をかき集めようとしているみたいなんだけど……日程が合わせられなくて困っているみたい。オフシーズンなんだから少しくらい融通を利かせたっていいじゃない!あたしたちと張り合うのがそんなに怖いわけ!?」
「そこまで興奮するほどのことでもありませんよ。我々の世界の方は、各メディアがバックアップをしてようやく決まったようなものです。天空スタジアム一般解放後も一切取材できないと知らずにね」
『キョン(伊織)パパ!泳ぐ練習したい!!』
「それなら、水着に着替えてプールサイドに集合。カラーヘルパーもつけておくこと」
『問題ない!』
「そろそろ夜練が始まる頃だ。OG達は本体が向かえばいいとして、古泉たちは影分身を置いていくことは可能か?」
「ゾーンには入れませんが、ストレートだけなら可能です」
「僕の方はようやく90%程度でゾーンに入れるようになりました。しかし、その発言から察すると他にも議題があるようですね。一体どのような話なんです?」
「夕食を食べている間に、例のイベントの担当者と相談をしてきた。カードの件については向こうも気にしていたそうだが、特に対策は立てずにこのまま三月下旬から大会を始めるらしい。ただ、前回の放送を受けて『次があるのなら自分にも参加させてくれ』と名乗り出た芸人が何人も居たらしくてな。前回のメンバーにMCを加えて、それでも俺を除いて16人でのトーナメント方式。三月九日(木)の午後六時から三時間枠で遊戯○芸人をやるらしい。当然、そのあとの通常の番組の方でも続きをやるそうだ。収録は三月一日(水)の午前中から。その旨を芸人達に伝えたら『決闘ができるなら午前中からでも構わない』と返ってきたそうだ。さすがにその日は男子の練習に出るのは正直キツイ。前回同様、古泉と有希にも手伝って欲しい。決勝戦とエキシビジョンマッチは天空スタジアムでやると伝えてある。頼めるか?」
「問題ない。あなたは必要最低限の意識で試合をして。わたしがあなたの分を負担する」
「三時間枠とは大きく出ましたね。僕もトーナメントに出たいくらいですよ」
「カードを出すタイミングや順番を間違えてばかりいた青俺にすら負けたおまえに、勝てる芸人がいるとは到底思えん。青古泉が大逆転したあのVTRは一体何だったんだ?ってことになるだろうが!それに、毎日練習や練習試合に参加できるわけじゃないってことも監督に伝えなければと思っていたところだし、有希がそう言ってくれるのは嬉しいが、今回は影分身を番組の方に集中させるつもりだ」
「くっくっ、確かにキミの言う通りだ。こっちの古泉君ならともかく、彼の場合は収録日まで猛特訓したとしても一回戦敗退になってしまいそうだよ」
「だが、異世界支部の運営上、青古泉に出てもらうわけにもいかん。青ハルヒ、異世界支部のホテルはどうするのか決まっている範囲でいいから教えてくれないか?ちなみに、こっちは一泊で3000円、食事は社員食堂で食券を買ってもらっていた。日本代表は専用カードでディナーもタダだ。そっちは90階以上がすべてスイートルームだし、青新川さんの料理が毎食出てくることになる。あまり安価でスイートルームを提供すると、こっちの新川さんのディナーと同様、三ヶ月待ちが当たり前になってしまうぞ」
「その前に、いつ、どんなイベントがあるのか確認してからの方がいいのではありませんか?人事の方も、今後どうなるかも分かりませんし、ただでさえ平日の夕食後は夜練かディナーが入っているんです。それを考えて決める必要がありそうです」
「じゃあ、私たちは夜練に行ってきます。この後の話は同期することにします」
『いってらっしゃい』

 

 しかし、OG達まで『同期』という言葉を使い始めるようになる日が来ようとは……まぁいい。青古泉の言う通り、いつ何があるのか確認することも必要だ。でないと直前になって慌てることになってしまう。ここは有希に任せた方がいい。議事録を確認するまでもなく覚えているだろうからな。
「二十二日社員、及び楽団員旅行、二十五日ライブ、二十六日コンサート、三月一日番組収録、二日女子日本代表がここでディナーを食べて一泊。翌日の朝食も食べる。七日は男子日本代表も同様のディナーになるはず。加えてアカデミー賞の表彰がこの日に行われる予定。九日三時間番組の放送日、十日音楽鑑賞教室とライブ、十一日コンサート、中旬に古泉一樹が建てた家のシートがはがれる。別館の建築開始。それに熊本のツインタワー引っ越し作業。二十四日Nothing Impossible公開とライブ、二十五日決闘大会とコンサート、三十日双子の卒園式とカレー、三十一日青OG最後の一人が退職とその祝賀会、四月二日異世界で野球の試合、四日映画の披露試写会、七日双子の入学式。わたし達と直接関わりのないものもある。でも、今のところここまで」
「ちょっと待ちなさいよ!ってことは明後日楽団員に楽曲の相談ができないじゃない!」
「問題ない。用件を伝えて金曜に決定すればいい。練習日にその相談をしていたら全体練習ができない」
「ですが、三月中旬に熊本の引っ越しとは厳しいですね。涼宮さん、どうしますか?」
「引っ越しくらい、今のあたし達なら影分身で十分よ!決めた。三月十日からホテルをオープンするわ!ホワイトデー前にはオープンしたかったのよ!一般客室はこっちと同じ3000円、スイートルームは食事込みで一泊15000円、100階は一泊20000円でどう?」
「黄俺も男子日本代表の練習でそこまで影分身が割けそうにないが、これでツインタワーへの引っ越しも七度目だからな。異世界支部も安定する頃だろうし、ハルヒの案でいいんじゃないか?」
『私たちもお手伝いします!』
「では、今下げている垂れ幕が外れたところで大画面にCMを入れることにします」
「キョン、そろそろわたし達も子供たちの練習を見に行きたい」
「そうだな。黄俺に任せっきりだし、手伝いもしないとな」
「今、ビート板無しでバタ足の練習中だ。手を重ねてなんとか泳いではいるが、ビート板代わりに手で支えてやってくれ。最後はその状態でどこまで泳げるかで勝負をする。それから、部屋を昨日と変える場合は各階のリネン室にシーツと枕カバーがあるから取り替えてから別の部屋に行くようにしてくれ」
『問題ない』
圭一さんの電話の報告から始まって、随分長い会議だったな。しかしまぁ、今後の方針もはっきりしたし、後は船旅を満喫してもらうことにしよう。客室で情報結合の修行に励もうとしていたみくる達や青圭一さんに「ジョンの世界でいくらでも練習できるから」と引き止めて、少しでも休んでもらうことにした。

 

 ビート板無しの状態でのバタ足に慣れた子供たちに今日の勝負の提案をした。
「今練習したバタ足でどこまで泳げるか勝負だ。一番長く泳げた人の勝ち。準備はいいか?」
『問題ない!』
ピッ!と鳴らした笛の合図で三人が一斉にスタートした。途中でギブアップすることになったとしても、閉鎖空間で足場は作ってあるから溺れることはない。息継ぎで顔を上げたついでに互いの様子を見つめあっている。15mを越えたあたりで犬かきに似た状態でバタ足の姿勢が保てなくなったが、見事に三人とも25mを泳ぎきった。周りで見ていたメンバーから拍手が送られている。
「この勝負引き分け!それでも三人ともよく25m泳げたな!明日みんなに自慢できるぞ!」
ハルヒのセリフ辺りを真似するかと思ったが、三人とも必死に泳いだこともあってか言葉は発しなかったが、満足気な表情をしていた。紐の結び方も、あとはきつく縛るようにするだけでやり方は覚えたようだし、この数日で随分成長したもんだ。その日は風呂にも入らずにパジャマに着替えたまま眠っていた。
「昨日は俺とこっちのみくるのやりとりを聞いて真似したようだが、本当にみくるもこれでよかったのか?」
「わたしもどうしようかなぁって迷っていたんです。女同士でも、特別扱いされるって言うか、驚かれるって言うか……わたしも他の人がこんな状態だったら『どうして?』って思っているはずです。でも、涼宮さん達は当たり前ですけど、黄わたしも堂々としてましたし、キョン君やいつも100階に来ている人達になら見られてもいいかなぁって。キョン君、わたしはそのままの方が良かったですか?」
「みくるの身体のことをみくるが自分で決めたんだから、俺が文句を言う資格なんてあるわけないだろ。そんなに不安だったのか?」
「わたしも黄わたしと同じです。キョン君のものにして欲しいです。わたしが勝手に決めたせいでキョン君がわたしから離れていくなんて嫌です!」
「だったらずっと俺の傍にいろ。みくるから離れない限り、俺は離すつもりはない」
「よかったぁ。キョン君、今日はずっと抱きついていてもいいですか?」
「勿論だ」
この程度で涙をこぼすこともないだろうに……しかし、多少小振りでもダイナマイトボディに変わりはない。胸が潰れてもいいのかと疑いたくなるほど乳房を俺の胸に押し当て、バレーで培った……いや、それでも細い両腕が俺の背中で雁字搦めになっていた。今夜は抱き合うことはなかったが、青みくるの言葉と刺激に耐えきれなかった俺の分身が青みくるの体内に身を潜めていた。俺も自分に催眠をかけてしまおう。髭も含めて邪魔にしか思えない。

 

 みくる達と青圭一さんの段ボール作りは相変わらずだが、今日は朝倉やジョンからバトルにも誘われることはなかったし、OG四人もハルヒ達と同程度の反応をするようになった。当初予定していた妻+レギュラーメンバーVSハルヒ、岡島さん、OG四人の対戦を見せずとも、今後の練習でその反応の速さを見せつければいい。今日はもう一段階レベルを上げた練習をしてみるか。妻を除くOG五人とENOZを呼び集め、「夜練より一段階上げた球を投げる」と説明してミットを構えさせた。超サ○ヤ人の一歩手前、180km/hの投球を受ける訓練が始まった。サーブ練習の方は妻の方は零式改(アラタメ)を安定させるだけ。もう片方は未完成の零式が安定し、完成版の零式を放とうと試みていた。しかし、これで零式使いが三人……もとい、伊織も入れたら四人か。他の連中も集中力を高めただけあって零式を撃ってしまいそうだ。OG達を相手に180km/h投球をすることしばらく、自分にも受けさせろとばかりに列に並んだのがハルヒ。青ハルヒはピッチング練習に明け暮れている。
「こっちも一段階上げるぞ」
青俺の一言で青古泉を筆頭に青チームSOS団と青OGが列につき、有希や朝倉がその横でバットを構えた。朝倉からすれば、『単なる気晴らし』のつもりなんだろうが、いくら待ってもボールがミットに収まらないんじゃ意味がない。まぁ、朝倉ならその辺の配慮はしてくれるだろうし、しばらくすれば飽きるだろう。
「困りましたね……お二人にバッターボックスに入ってしまわれては僕が入る余地はなさそうです」
とでも言いたげな顔をしていたところに、なんとジョンから指導将棋ならぬ指導決闘の提案があり、まずはデッキを組むところから始めることになった。その様子を横から面白そうに見ていたのが佐々木。デッキが出来上がったらジョンVS古泉&佐々木の対決が見られるかもしれん。投球の方は流石に人数が多すぎるという話になり、バッターも交代制。青佐々木は青俺の影分身とキャッチボールをしていた。

 

 翌朝、ニュースの焦点は当然ドラマの視聴者プレゼント。『喉から手が出るほど手に入れたい!古泉一樹のシャンプー&カット!』、『前人未到の視聴者プレゼント!21世紀版木○拓哉に不可能無し!?』等々。第九話と最終話は大画面に映さないでおこう。視聴率がどれだけ跳ね上がるのか気になって仕方がない。チェックしているのは無論ドラマを放送しているフジテレビ。一面記事の紹介の後、アナウンサーからの追加情報。
「確か、タ○リさんにだけはもう第九話を見ているんでしたよね?」
「ドラマが始まる前の特番で朝比奈みくるさんから第九話が収録されたDVDを直接受け取っていますので、謎が解けたのかどうか、本人にリサーチしてみたいと思います。木○拓哉さんが美容師役を演じたドラマも過去に放送されましたが、木○拓哉さん自らシャンプー&カットをするようなことはありませんでした。最終回は、『半沢直樹』に続く40%越えの視聴率を叩きだしたこともあり、今回の『サイコメトラーItsuki』の視聴率が果たしてどうなるのか、そちらの方にも注目が集まりそうです」
異世界の方は採用された社員達を報道しているところもあったがほとんどの新聞社が別の記事で一面を飾っていた。ここまで確認できればスカ○ターの必要はないと思っていたのだが、朝食を乗せたトレイを持って席を探して徘徊している人が何人も出てきた。にも関わらず、食券を持って厨房の前に並んでいる列の最後尾が見えやしない。
『黄キョン君、どこも満員で座れずにいる人たちでいっぱいになってる』
『そのようだな。とりあえず、本社内にいる人たちは仕方がない。敷地外にプラカードを持たせたSPを立たせる。仕事に行くまでに時間がないとなれば諦めるだろう。今トレイを持っている人には空席ができるまで待ってもらってくれ。厨房に並んでいる客もそれで頼む』
『分かった』
『ただいま社員食堂が大変混雑しております。こちらに並んでお待ちください』と書かれた看板を情報結合したSPが敷地外へ出向けば、看板に書かれた内容を見て諦める客も多いかと思っていたのだが、それも極僅か。ライブやコンサートのときのような長蛇の列ができていた。ようやくやってきた男子日本代表チームもその看板を見るや否や朝食にありつけるのかと不安げな表情を見せていたが、SPが「昨日と同様、予約席を用意しております」と説明し、本社へと入っていった。その様子を敷地外からしっかりとカメラでおさえ、並んでいる人々にインタビューを始めていた。この後こいつらがどういう行動に出るかなど、考えるまでもない。行列の取材を一通り終えた後、敷地内に入ろうとして閉鎖空間の壁にぶつかった。
「あの~バレーの取材に来たんですが、中に入れてもらえませんか?」
人事部に電話をかけるのならまだしも、SPにそれを直接聞くなど愚の骨頂。古泉の今度のダンスのときの衣装ではないが、無視を貫き通すと言うのも悪くないが、最初ということもあり、敢えて応えてやることにした。
「バレー『のみ』の取材であれば、簡単に通ることができると社長から伺っております。それ以外の目的で入ろうとする報道陣は一切入れません。ご了承ください」
分かりきっていることを言葉にされただけで、どうしてこんなに苛立った表情をしているのか、こっちが聞きたいくらいだ。こんなアホに付き合ってられん。さっさと本体で朝食をすませることにしよう。

 

 昨日仕上げたカレーパンや焼きたてのパン各種を詰めたバスケットの時間跳躍を頼み、未来のジョン達のところへと届けてもらった。自分でも試食してみたし、明日から社員食堂でも出してみることにしよう。
「今日は楽団の練習もないし、ダンスの練習を徹底的にやるわよ!会議が終わったら19階集合!」
「そうだね、すまないが、今週はダンスの練習に集中させてくれたまえ。デザイン課に影分身は置いておくつもりだけれど、ほとんど動かせそうにない」
「だったら、代わりに僕の影分身が異世界のデザイン課へ向かうことにするよ。ダンスの方も今後踊ることになりそうだからね。踊らないにしてもどんな振り付けになったのか見学だけでもさせてくれたまえ」
「わたしもライブまでに覚えきれるかどうか……」
「ディナーはあたし達に任せておけばいいわよ。黄みくるちゃんの催眠をかけた影分身ならあたしがやるわ!」
「おまえ、頼むから朝比奈さん達のイメージを壊さないでくれよ?」
「あんたに言われなくても、そのくらい分かっているわよ!」
「しかし、ホールスタッフも我々三人の影分身でまかなえますし、今後は来て頂くこともないかと。朝比奈さんや朝倉さんのように『たまには接客に入りたい』ときくらいです。今はダンスの方に集中してください。その分僕たちが試合に出られそうですからね」
「わたしも試合に出させてください!キョン君の指示が無くても少しでも速く動けるようになりたいです!」
「ところで有希、ダンスの動画のUPはどうするのか決めているのか?それと、視聴率がどうなるか気になるし、いくら宣伝のためとはいえ、女子高生の生着替えのシーンを大画面に映すわけにもいかん。第七話からは大画面に投影しないでくれ」
「分かった。ライブ後に動画サイトにUP、それに大画面にも映す予定。四月上旬にCDを発売するには三月下旬までには生放送番組に出演する必要がある。バックバンドのあなた達の映像も入る。そのつもりでいて」
「それなら、夜練と被っていてもOGに催眠をかけない方がいいんじゃないか?その方が宣伝になるだろ?黄俺や古泉が影分身を見せているんだ。タネさえ知っていれば出来ると報道陣の前で説明しているし、OG達もできたって日本代表の監督たちも不思議には思わない」
「これまでもダンスを踊る度にキーボードを弾いてもらっていましたが、これでデビュー二人目ということになりそうですね。しかし、夜練に参加しながらキーボードを弾くことは可能ですか?」
「昨日も夜練をしながらここでの会議を聞いていましたし、多分大丈夫だと思います。明日の夜練のときに確認してみます!」
「ところで、OG六人にはレギュラー陣に更に差をつけさせようと思って、昨日は夜練を一段階UPしたものをやってみたが、今後はどうする?」
「キョン、零式改(アラタメ)が安定してきたら、私も受けてみたい。毎日じゃなくてもいいから投げて欲しい」
「わたしも影分身が使えるようになったら参加したいです!受けさせてください!」
「青チームの防御力UPのためにも是非お願いしたいですね。人数が多い場合は僕も投げます」
「なら、不定期で休むが、今後も継続でいいな?それに昨日会議が長引いた分、そこまで議題もないようだ。電話対応にも早めにつきたいだろうし、他に何も無ければこれで終わりにする。みくるはこの後文芸部室に行くから付き合ってくれ。アイツ等に催眠は通用しない。青みくるでもみくるでないとバレてしまうからな」
「分かりました。でも、ダンスの練習もありますし、今日は出来るだけ早く帰ってきたいです!」
「それならすぐに動こう。何か大きなことがあれば昼食時に報告してくれ」
『問題ない』

 

 朝食の営業時間ギリギリまで敷地外で並んでいた客もランチタイム開始と同時に今日は諦めて帰っていった。青有希に「朝食の件は話さなくてもよかったの?」と聞かれたが、どの道バレるし人事部には朝食の取材をさせてくれなどという電話が舞い込んでくるだろう。古泉ならそれだけですべて察することができる。お茶を煎れたみくるを連れて北高の文芸部室へ。扉を開けると予想外の反応が返ってきた。
『二人ともいらっしゃい』『今日は早かったね!』『でも、一週間も待ちきれなくなっちゃったよ』『ドラマの続きが気になるし!』『キョン君も出てたよね!』『みくるの敵になるのはいいが、みくるに妙な真似はしてないだろうね?』
コイツ等……今まで俺のことを犬のフンと同等の扱いをしてやがったクセしやがって……。ドラマに俺が出たことでようやく受け入れてもらえたらしい。しかし、この状態のコイツ等に予告まで見せても大丈夫か?
「ドラマの続きも気になっているようだし、すぐに放映するが、おまえらに一つ報告だ。今週の金曜日のライブで新しいダンスを踊る。みくるがセンターでな。来週はその映像も持ってくるから楽しみにしていろ」
『新しいダンス!?』『今度はみくるちゃんがセンターになるの!?』『もし、みくるの衣装が決まっているのなら、それだけでも見せてくれないか?』『みくるちゃんの衣装!?』『見たい!見たい!』『来週まで待てないよ!!』
「だそうだが、どうする?どの道この後ダンスの練習だ。衣装を着ていても不都合はないだろ?」
「ドレスチェンジするくらいなら大丈夫です!こんなにドラマの続きを楽しみにしてくれていたなんて、わたしも嬉しいです!」
指を鳴らしてRPG風の踊り子の衣装にドレスチェンジ。衣装よりもみくるの胸にどうしても眼が行ってしまうのは仕方がない。おそらく観客たちもそうだろう。入れ替わった瞬間に部室の連中の声が揃う。
『おぉ――――――――――――っ!!』
『みくるちゃん、可愛い!』『凄く似合ってるよ!!』『この格好でダンスを踊るの!?』『ダンスも見てみたい!』
『君、この衣装は流石に犯罪ではないのか?』
「ダンスはまだ教えてもらったばっかりで、この後も練習するんです。ライブでちゃんと踊れるか分かりませんけど、それまで待っていてくださいね!」
『問題ない』
第六話を投影して文芸部室から直接ダンスフロアへとテレポート。先に練習を始めていた四人+佐々木が衣装を見に纏っているみくるに驚いていたが、アイツ等からの要望だったんだから仕方がない。異世界のデザイン課に降りた青OGを除く五人に青有希の調理の手伝いを任せて、カレーパン用のカレー作りをしながら男子の練習の様子を伺っていた。まだ退職できない青OGも本体をこちらに残して影分身で仕事の方に向かっている。そっちの方がストレスが溜まらないし、こっちでも手伝いをしてもらえるのなら願ったり叶ったりだ。昨日の練習試合を受けて、ピンポイントでセッターにダイレクトドライブゾーン用のレシーブを上げる練習が練習メニューとして新しく追加され、俺たちを入れたフォーメーション練習では、練習試合と同様コートの中に12人が入り、エンドラインの後ろから他のWSがサーブを撃つ練習に切り替わっていた。

 

 昼食時、一番に口火を切ったのはやはり古泉。
「今朝の社員食堂での様子を聞かせてもらえませんか?すべて断りましたが、人事部にその様子を撮影させてくれという電話が殺到していたんですよ」
「トレイを持っても座る席が見つからずにうろついていた一般客が出始めてな。厨房に並んでいた客にも空きがでるまで待ってもらって、敷地外にもSPに看板を持たせて張りつかせていた。その行列を報道陣が取材して、『あの~バレーの取材に来たんですが、中に入れてもらえませんか?』とSPに聞いてきた奴までいたくらいだ。俺たちに交渉するのならまだしも、SPにそんな話をして、断られたら断られたでイラついている始末。そんなバカな連中に付き合ってられんし、負担になるようなら俺も電話対応に参加する」
「凄いです。口コミだけでそこまで広がったんですか?」
「明日の新聞記事の一面を飾ってもおかしくありませんよ。しかし、そのような状態で今後は大丈夫ですか?」
「前に話した通りだ。オンシーズン中に出せなかった分を出しているだけであって、予約制にするつもりも一切ない。気分次第で不定期に休むし、その日のパンは情報結合で十分。バレーの練習試合後のインタビューで聞かれてもそう答えるつもりでいる。好きでやっているだけだから負担にはならんし、週末のおススメの仕込みも終わってる。明日からはカレーパンが社員食堂に並ぶはずだ。未来のジョン達が大絶賛していたとジョンから報告があった」
「それはそれでまずいな。有希がカレーパンに手を出しかねん。って、そのときはカレーを食べられるのが有希だけ一ヶ月伸びるか。しかし、カレーライスもそうだが、双子の卒園式の日にカレーパンの方も食べてみたいもんだ。他の連中もカレーライスだけで満足できるとは到底思えん」
『うん、それ、無理!』
「分かった。カレーライスと一緒にパンの方も準備をする。それから、今朝北高の文芸部室に行ってきたんだが、ドラマの第五話で俺が出演していたせいか、みくるのただの付き人から、ようやくSOS団団員その1に昇格してもらえたらしい。アイツ等の話を聞いてると、例の椅子が至って真面目な奴に見えたぞ。『みくるの敵になるのはいいが、みくるに妙な真似はしてないだろうね?』とか、『もし、みくるの衣装が決まっているのなら、それだけでも見せてくれないか?』、ついでに『君、この衣装は流石に犯罪ではないのか?』だそうだ」
「それでみくるちゃんがダンスの衣装を着てたのね」
「あの椅子がそんなセリフを吐くなんて信じられないわよ!」
「わたしも一緒。思考回路が狂ったとしか思えない」
「くっくっ、良い方向に狂ったのならそれでいいじゃないか。でも、今度のライブで踊るのが怖くなってきたよ。彼が犯罪とまで言うほどの衣装なんだろう?」
「子供たちはカッコいいと言っていたし、言い方は人……まぁいい、人それぞれだ。ファンが熱狂するような衣装で間違いないと証明してくれたようなもんだ。今さら変更はありえない。……それで、昨日の音楽鑑賞教室の件はどうなったんです?それに、異世界支部の進捗状況も報告しておいたほうがいい。場合によっては異世界支部に俺たちも向かう必要がある」
「日にちについては三月十日で各学校に知らせるそうだ。だが、午前中だけでは給食に間に合わないところも出てきそうだという話になった。午後二時に開演して欲しいという要望があったんだが、それでいいかね?対象になる中学校は台東区、文京区、新宿区、板橋区、練馬区の五つだそうだ。来年は残りの区も君たちの演奏で頼みたいらしい。どうするかね?」
「問題ない、ライブの準備に支障がなければそれで十分」
「あたしは学校に掲示する用のポスターを考えることにするわ!楽曲が決まって無くてもポスターなら作れるわよ!」
「じゃあ俺の方は各中学校に出向いてサイコメトリーだな」
「パンフレットは我々が用意することになるでしょう。触れたと同時にサイコメトリーが発動させるには情報結合の難易度が高くなってしまいますからね」
「なら、パンフレットが完成次第俺が直接中学校に届けに行こう。都や区の教育委員会を経由していると時間がかかり過ぎる」
「ああ、それについてだが、パンフレットを教育委員会の方にも20部ほど送って欲しいそうだ。区の教育委員会の方もそうなるだろう。それについても頼んでもいいかね?」
「分かりました。アポイントを取って向かうことにします。あとは曲が決まれば解決だな」
「こちらの方は、ようやくデザイン課希望の電話が二件届きました。電話でのサイコメトリーでは何も問題ありませんでしたので、明日の面接時に黄有希さんか、黄朝倉さんにスケッチブックに描かれたデザインをみていただきたいのですが、入っていただけませんか?お二人がOKならば、採用されたと電話で伝えて、明後日から来てもらうことになります」
「じゃあ、わたしに入らせてもらえないかしら?次に希望者が出たら有希さんに出てもらえばいいわよ。ちなみに、楽団の練習と被っているなんてことはないわよね?」
「ええ、午後の……三時頃になるかと。テレパシーで連絡しますので、すみませんが宜しくお願いします」

 

 昼食後、第二人事部には普段顔を出さない青俺が入り、各区の中学校を地図で確認して画面をサイコメトリー。明日も使うであろう大量の影分身で各校へと向かっていった。練習試合の方はフォーメーション練習時とほぼ変わらず、実戦で正確なレシーブをするという方針に切り替わっていた。客席の方は相変わらず……というより、動画サイトがさらに広まったせいか昨日よりも増えているように思えるが、特に目立った争いは無く、選手たちも自らの課題を理解して試合に臨んでいた。
「キョン社長、朝食で自家製パンを振る舞っていると話題になり、今朝も行列ができていましたが、どういった理由で作ることにしたのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「簡単です。オンシーズンで振る舞おうと考えていたところに別の仕事で追われたせいで、女子日本代表には二週間中ずっと振る舞うことができなかったので、男子日本代表もこちらに来たことですし、両方に振舞おうかと思っただけです。別の仕事で忙しくなってしまったときは通常のパンになりそうですが、できる限りやっていきたいと考えています」
「社員食堂での様子を是非とも取材させてもらえないでしょうか?」
「無理ですね。あれだけ混雑した状態で取材に入られると、トレイを持った一般客とカメラマンがぶつかって、折角の料理が床にこぼれてしまったなんてことが容易に予想されます。残念ですが許可できません」
「そこを何とかお願いできませんか?」
「では、失礼します」
久々にこのセリフを言った気がするが、たまに休むことと、取材拒否の旨を伝えられたからこれでよしとするか。おでん屋のときのように一般客が持ち帰ってきたパンをカメラに映すだろうが、そういう客は入れないことになっている。諦めろ。圭一さんや古泉が来るまでの間は俺が人事部で電話対応ということになりそうだ。

 

「あっ、来た!キョン先輩!!」
「どこ○もドアを潜って早々、いきなりどうした?何かいいことでもあったのか?」
「えっと女子の監督の方から話が出たんですけど、ハルヒ先輩を入れた私たち六人と、あの子を入れた日本代表レギュラーチームの試合が見たいらしくて、先輩たちがOKなら、男子の監督にはこっちの監督の方から伝えておくって……」
「それなら、アイツが来てから話をしよう。あとで報告だけするのも面倒だし、アイツも『そんな試合には出られない』と言うだろう」
『試合に出られない!?』
「社員旅行に一緒に行くとでも言うんですか!?」
「ゾーンでセッターの采配が読めるのは男子だけだ。青古泉のトスより読みづらいっていうのに、そんな試合をやったら司令塔として機能しないだろうが。男子の方でも一度そんな話になったが、そのときは俺がセッターについたからゾーン状態でも読める程度にまでわざと動作を大きくした。今夜それができるか確認をする。それでも駄目なら俺がOGの催眠をかけてトスを上げて、OGの方はハルヒの催眠をかけて練習試合に出ればいい。男子の方も二人揃っていないと練習試合にならんからな。司令塔抜きでやるとどうなるか試させることにする」
「悔しいですが、あなたのおっしゃる通りです。黄僕にも彼にも見比べてもらいましたが、双方とも僕の方がまだ分かると言われてしまいましたよ。彼女が『試合に出られない』と言い出す理由も納得がいきました」
インタビューを終えた妻が戻ってきたところで、他の五人から明日の試合の詳細が伝えられた。
「えぇ~~~~~っ!私そんな試合出られないよ!今シーズンに入るまではキョンですら読めなかったのに、私が采配を読むなんてできるわけないじゃない!」
「男子の練習でキョン先輩がセッターになったときの話は聞いた。私も動きを大きくするから、それで読めるかどうかジョンの世界で判断して。読めなかったら、キョン先輩が私に見える催眠をかけて出るって言ってくれた」
「それなら、安心かも。でもキョンまで男子の練習を抜けてもいいの?」
「仕事で練習に出ている余裕がないと見せるには絶好のチャンスだし、両方の司令塔がいなくなってどれだけダイレクトドライブゾーンに近づけたかを図るいい機会だ。女子の方もそれで練習しているし、男子もいずれそうなる日がくるとは思っていた。明日がその日ってことだ。とりあえず、監督にOKだと伝えてきてくれるか?この時間なら80階の食堂にいるはずだ」
『分かりました!』
何も五人揃っていくこともないだろうに……しかし、下剋上にはうってつけの試合になりそうだ。当初OG達にこの条件がクリアできなければと言っていたことがこういう形で実現するとはな。しかし、今は男子日本代表のディナー。カメラマンは誰一人として来ていないが、久しぶりの新川流料理に一口食べる毎に舌鼓。これは当分終わりそうにないな。
「そういえば、こっちの新川さんのスペシャルランチはどうなったんだ?外せる垂れ幕を早く外して一般客でも社員食堂を利用できることを告知しないと、ハルヒの言う周辺のチェーン店を潰すってのも時期がどんどん遅くなってしまうぞ?」
「本日ご用意させていただいた分はすべて売り切れました。すでに明日の食券を購入されている方もいらっしゃるようです」
「社員食堂二日目でもう予約待ち!?……でも、この料理なら、そうなってもおかしくないかも」
「『かも』ではなく当然の結果ですよ。社員が口コミで広めるには数が少なすぎますし、別のビラを用意して本社周辺でビラ配りでもしますか?」
「面白いじゃない!あたしがビラを作って本社周辺でビラ配りにまわるわ!影分身に催眠をかければそれで十分よ!」
「このあとはそれに集中することになりそうだな。子供たちの水泳の練習もあるし、他に議題が無ければ休めるときはしっかり休もう」
『問題ない』

 
 

…To be continued