耳掃除 (101-88)

Last-modified: 2008-11-05 (水) 11:30:36

概要

作品名作者発表日保管日
耳掃除101-88氏08/11/0208/11/05

作品

午後の授業を受けているあたりだろうか、なんか耳の中が痒い、というかガサガサする
感じがしたんで、放課後、部室に一番乗りした俺は、部室備え付けの耳掻きで耳を掃除していた。
なんか奥の方にでっかい塊があるみたいなのだが、これがなかなか取れずに呻吟していると、そこにやってきたのは我らが団長さまだ。
「…キョン、アンタなにしてんの?」
なにしてんのって、みりゃ分かるだろ耳掃除だよ。脳味噌のメンテナンスをしてるようにでも見えたか?
「アンタの脳味噌なんてどうメンテナンスしても、元がアレだから大して変わらないわよ!」
冗談を愛想なくばっさり斬って捨てた団長さまは、なにを思ったか、おもむろにパイプ椅子を3つ並べると、右端の椅子に腰掛けて、太腿の辺りをポンポン叩いてこう仰った。
「自分でやったって奥の方は綺麗にならないわ。私がやったげるからこっちに来なさい」
 
で、多少の押し問答の末、結局ハルヒにねじ伏せられた俺は、ハルヒの太腿に頭を乗せることと相成った。
こりゃいい枕だ、と感触を楽しんでいると、頭上からハルヒが一言。
「そっち向かれるとやりにくいのよね。椅子から落ちそうだし。私の方に顔を向けなさい」
異議を申し立てる暇もあたえられず、ハルヒの方に顔を向かされてしまった・・・って、こりゃヤバイだろハルヒさんよ。
何のために俺が気を利かせたと思ってるんだ。こういうパフォーマンスをするには、制服のスカートは短すぎる。やる側にもやられる側にも、いろいろと見えたり見られたりと不都合な点が・・・
とは思ったが、それをハルヒに指摘するのも躊躇われた。どうせ親切にその旨指摘したところで、感謝されるどころか、「このエロキョン!」の怒声と一緒にぶっ叩かれるのがオチだろう。なにせこいつが、俺の親身の忠告を素直に聞き入れたためしなど、俺の記憶の限りにおいて皆無なのだ。
やれやれ。
 
乱暴極まりない普段の言動に反して、ハルヒの耳掃除は上手だった。まさに痒いところに手が届く、とはこのようなことか。
だが、頬に伝わる生足の感触と、その・・・何だ・・これは・・・いわゆる肌の匂いとでもいうのか。
これは想像以上にヤバイ。うかつに顔を動かすと、鼻先がスカートの中に入っちまいそうで、俺は息を潜めながら硬直していた。息なんぞ吹きかけようもんなら、ハルヒのことだ、耳掻きで鼓膜を破られかねん。悪いことに、硬くなったのは身体だけじゃない・・・その、あのな、下の方もさっきからちょっと大変なことになってるんだが。
俺が色々苦闘しているのを知ってか知らずか、ハルヒの奴はなんか楽しそうだ。ときおり鼻歌なんか歌いながら、
「おお、こんな大物が取れたわ。アンタ、もっとちゃんと耳掃除しなさいよ」
なんて暢気に言ってやがる。まったく、なんで俺がこんなことで、こんなに緊張せにゃならんのか。
・・・で、ようやく左耳の掃除が終わったわけだが、ハルヒは俺を一旦起こすと、左端のパイプ椅子に座りなおしやがった。
はい、さいですか。貴女は是が非でも、顔をご自分の側に向けろと仰られるわけですか、そうですか。
 
「終わったわよ」
・・・そうか。だが俺はまだ立ち上がることは出来ない。股間のトーテムポールを沈めるまでは。
「キョン・・・いつまで私の膝枕で横になる気。平団員の分際で・・・ってなに寝てるのよ!」
狸寝入りだ。事情を察してくれとは言わん。むしろ察するな。俺を起こさずに、お前は膝をどけてくれて構わんぞ。
 
なのになぜだか、ハルヒは膝をどけようとせず、俺が起きるまでそのままだった。
その後、顔を若干赤くしたハルヒに、団長に耳掃除させて、膝枕までさせて昼寝なんていい身分ね、アンタ、SOS団における自分の立場を分かってないんじゃない、と説教されたりしたが。
こいつは俺に説教するために、わざと膝をどけなかったわけか。まあ、こいつに心遣いなど期待する気もないが。
おまけに今日はなぜか、部室に長門や朝比奈さん、古泉の奴が来ることもなかった。
 
なんていうか、その、良い日なんだか厄日なんだか。
やれやれ。