耳掃除verA (68-194)

Last-modified: 2007-11-10 (土) 23:44:27

概要

作品名作者発表日保管日
耳掃除verA68-194氏07/11/1007/11/10

作品

ことの始まりは古泉の薀蓄からだった。
耳垢は外部のゴミよりも内部の新陳代謝の結果のほうが多いとかベトベト型とかカサカサ型とか何とか言っていた。
俺としてはそんなものを気にするくらいなら朝比奈さんを見て心の洗浄を行ったほうがいいと考え専らスルーしていた。
だがどうしたことかハルヒは興味をもってしまったらしく「耳見せなさい」ときた。
他人に耳を見せる趣味なんてないわけでにべもなく断ってやった。
「じゃあいいわ。みくるちゃんちょっと来て」
「はいなんですかぁ」とほわほわした癒しボイスでノコノコと狼の牙の前に来る朝比奈さん。
そんな人質まがいをとられたら俺には屈服する以外の道など残っていなかった。
 
「ふーん、へー」
自分で見れない部分を人に見られるのはなんとも不安感を煽られるね。
というか古泉はこっちを見るな。膝枕なんてものが珍しいのはわかるが身動きできなくて辛いんだぞ。
「結構きれいじゃない。誰かにやってもらってるの?おば様?妹ちゃん?」
「自分でやってる。この年で母親ってのは情けないし妹は怖くて任せられない」
時々当たるハルヒの吐息がこそばゆい。
「じゃああたしがやってあげよっか」
「断る」
なんで世界で一番危険な奴に自分の耳を差し出さなけりゃいけないんだ。
「えー!?」
あからさまに不満げなハルヒ。ブーたれるというのはこういうことを言うのだろう。
「じゃあお前も受けてみろ」
「え?」
その間の抜けた顔を見れただけでも今日はわりと勝ちな気がした。
 
「ううう」
「ふむ、なんだきれいなもんじゃないか」
「…なんかやらしい」
「やらしく聞こえるのはお前の心が汚れてるせいだ」
「なんですって!」
「お前膝枕されて頭撫でられて、その体勢からなにかするつもりか?」
言葉に詰まるハルヒ。どうだこの体勢のやりにくさがわかったか。
朝比奈さんも長門もこっちをチラチラ見てる。ハルヒめ、少しは懲りるがいい。
あとは綿棒か耳かきでもあれば耳掃除をしてやるのにな。いやはや残念だ。
「本当ですね?実はこんなこともあろうかと」
スッと綿棒を差し出す古泉。どんなことだよ。とはいえこのままじゃ引っ込みがつかないしな。
「…いくぞ、ハルヒ」
「え、ちょ、ちょっと待って…あ…」
実を言えば他人の耳掃除など初めてである。普通男は他人にやらないよな。
「つ…ン…」
痛いのか気持ちいいのか俺の膝で悶えるハルヒ。ではここはどうだ?
「っ!!、…はぁ。は…ん…」
我慢している姿が滑稽だった。なんというか楽器を演奏している気分になるね。
「は…キョン…お願い」
見えないだろうにうまいこと俺の手を掴むハルヒ。
「なんだ?ちゃんと言ってもらわないとわからないんだが」
ハルヒより優位に立てる数少ないチャンスだ。せめてこんな時くらいいい気分になりたいのさ。
「キョン…」
一度耳から抜いてやるとハルヒは体勢を変え俺の太ももを枕に仰向けになった。
潤んだ瞳は珍しいと言うか見た事のない懇願の色が浮かんでいた。
こうしてみると随分と普通の女の子らしいじゃないか。UN.俺はSなのか?
 
「覚えてなさいよ」
二流の怪人が残す捨て台詞のようなことを言う。
「忘れるわけないだろ」
顔を赤くして怒るハルヒ。まったく、ここまでいじれるハルヒも本当に珍しい。
「今度からたまったら俺がやってやろうか?いつでも歓迎するぞ」
ハルヒの顔が赤すぎてヤバイ。ここら辺にしておかないと俺は夜道を歩けなくなりそうだ。
…まあ既に手遅れな気がしないでもない。
ところで…他3名の様子がおかしいのはなぜだろう。いやまあ真っ赤になっている朝比奈さんは可愛らしいが。
たまには耳掃除もいいもんだな。

派生作品