妹ちゃん視点 (33-561)

Last-modified: 2007-01-14 (日) 03:14:23

概要

作品名作者発表日保管日
妹ちゃん視点33-561氏06/12/1907/01/13

作品

学校が終わって家に帰ったらお母さんが血そうを抱えて電話していた。
なんだか難しい顔してる。
どうしたんだろう? あんなあせった顔、はじめて見る。
そのときはバクゼンと、(後でキョンくんに聞けばいいよね)って思ってた。
……でもそんな思いもお母さんの次の言葉で打ち砕かれた。
「大変よ! お兄ちゃんが頭を打って病院だって!」
一瞬お母さんがなにを言ってるのか分からなかった。

 

タクシーを読んだお母さんに連れられて、気がついたときにはキョンくんの病室の前。
あたしは立ち尽くしたまま動けない。お母さんが中に入ろうと促す。
──いや! 入りたくない! コワい……コワいよ。キョンくん助けてよ……。
「妹ちゃん?」
病室の中から聞きなれた声がする。
ハルにゃんだ!
「やっぱり、妹ちゃん。」優しく微笑んだかと思うと、お母さんに向かって、
「お母さんすいません。あたし……あたし達が付いていながら、その」
お母さんは首を振りながら、ハルにゃんの頭をそっとなでた。
ハルにゃん……泣きそうな顔してる。いつも元気一杯のハルにゃんが。

 

キョンくんはじっとして動かない。なんかお母さんはお医者と難しいお話をしてる。
起きてよ……キョンくん。

 

うぅ。涙がこぼれそうで、ぐっとこらえる。
泣いちゃだめ。泣いたらきっとキョンくんは……。
そこにハルにゃんが帰ってきた。
席を外してくれていたみたい。
「妹ちゃん」
ハルにゃんがあたしを正面からそっと抱きしめた。
ハルにゃんの両腕があたしの背中に優しく回される。
「ハル、にゃん……うぅ、キョンくん、起きない、よぅ~」
ガマン出来ずにあたしはハルにゃんの胸で泣きじゃくった。

 

いつまで泣いていたんだろう?
ただハルにゃんのやさしいぬくもりはいつまでも感じられた。
「キョンくん大丈夫だよね?」あたしは顔を上げてハルにゃんに問いかける。
「妹ちゃん。大丈夫よ。キョンは絶対目覚める!」
ハルにゃんは真っ直ぐな目であたしを見る。
「ほんと?」あたしはハルにゃんの言葉にすがる。
「ほんとよ」ハルにゃんはキッパリと答えた。
「だってあたしが信じてるんだから」
そのときのハルにゃんの目をあたしはきっといつまでも忘れないだろう。
「だから妹ちゃんも信じて」
「……うん!」

 

ハルにゃんの言葉を胸に抱いて、あたしはお母さんと一緒に家に帰った。
ハルにゃん……キョンくんをお願いね。