涼宮ハルヒは窮地を妄想で凌ぐ (88-60)

Last-modified: 2008-04-30 (水) 23:48:42

概要

作品名作者発表日保管日
涼宮ハルヒは窮地を妄想で凌ぐ88-60氏08/04/3008/04/30

作品

「けほっ! けほっ!」
 うぅ~、SOS団団長たるこのあたしが風邪を引くなんて……只者じゃないわね、このウィルスは。ひょっとして、宇宙から来た未知のウィルスか、太古の王墓から蘇った細菌兵器とかじゃないのかしら?
 あうぅ、頭痛いよぉ……。
「ママぁ?」
 と呼んではみたものの、留守だってのは承知してる。今この家にはあたし一人。
 せきをしてもひとり、なんて俳句があったわねぇ。あれ誰の歌だったかしら?
 はぁ~……もし、今、この瞬間、突然ひどい発作を起こしたりしても、それに気付いてくれる人は誰も居ないのね。そうしたらあたし、死んじゃうのかなあ……?
 帰ってきたママが、冷たくなったあたしを見たら、悲しむかなあ。
 あたしが死んじゃったら、何人の人がお葬式に来てくれるんだろう。誰が、あたしのために泣いてくれるんだろう……。
 やだ……。なんだか、急に心細くなってきちゃった……。
「うっ……けほっ! けほけほっ! はうぅ……」
 苦しいよ……寂しいよ……助けて、キョン……。
 ん、キョン?
 何でいきなりキョンなのよ、バカじゃないの?
 ……。
 キョンがここに居たら、なんて言うかしら?
 そうね、あいつ口悪いから……。
〈ほう、あのハルヒをKOするなんざ余程の殺人ウィルスだな。俺なんかがうつされたらひとたまりもなさそうだ。そういう訳で、安全のため俺は帰る。養生しろよ〉
 バカ! 帰るんじゃないわよ! 何しに来たのよあんた?
 ――違うわね、もっと、こう……。
〈お前が居ないと部室がシーンとしちまってな、まあ、俺としちゃあ望むところなんだが、いつもの賑やかさが無いと、多少だが寂しくもあるんだ。しっかりしろよ、頼むぜ団長どの〉
 バーカ、あんたなんかに言われなくたってあたしはいつもしっかりしてるわよ。こんなチョロイ風邪、すぐに治してやるわ!
 ――うんうん、だいぶキョンらしくなってきたわね。
 でもあいつ、時々ふっと優しくなる時あるのよねぇ。いつも憎たらしいくせに。
〈おい、大丈夫かハルヒ! お前が倒れたって聞いたから、俺……〉
 何よ血相変えて。こんな風邪全然平気よ。
〈バカ! 平気なわけないだろう、こんなに熱があって……顔も真っ赤じゃないか〉
 ちょっと、本当に大丈夫だってば。
〈全く……心配かけやがって、お前って奴は……〉
 ……ごめん。
〈よし、お前が治るまで、俺が付きっきりで看病してやるからな〉
 なっ! いいわよ! 帰んなさいよ!
〈こんな状態のお前を一人きりにして放っとけるわけないだろう! お前にもしものことがあったら……俺……〉
 キョン……うっ、けほっ!
〈大丈夫かハルヒ!〉
 ちょっと咳しただけだってば。心配性なんだからキョンは……。
〈なんかして欲しいことがあったら何でも言ってくれよ。何でもしてやるから〉
 うん、ありがとう。
〈早く元気になってくれよ、俺、お前の元気な姿を見てないと落ち着かないんだ〉
 当たり前よ、見てなさい、あっという間に治してやるから!
〈……でも、こうしてずっと付きっきりでお前のそばにいられるなら、それも悪くないかもな〉
 バカキョン……。
 ――はぁ~、なんか体がカッカしてきたわ。熱上がったんじゃないかしら? キョンのせいよ! 全く、治って学校行ったら真っ先に……。
 
 ありがとうって、言おう。