25 (74-206)

Last-modified: 2007-12-27 (木) 23:08:05

概要

作品名作者発表日保管日
2574-206氏07/12/2707/12/27

作品

掃除当番を終えて俺が部室に赴き、ノックの返事を待って部室のドアを開けると宇宙人が部屋の隅でポツンと座って本を読み、未来人がお茶を沸かしており超能力者が碁盤の前で参考書片手に詰め碁をやっていて、神様もどきが窓際で雑誌を読んでいるといういつも通りの光景が広がっていた。
 
この異常な肩書きを持つ連中の集まりを「いつもの光景」とすんなり受け入れてしまって良いのか一抹の不安はあるが平日はほぼ毎日の光景であることは間違いないのでまぁいいだろう。
 
しかし俺はそんないつもの光景に微妙な違和感を覚えていた。
その正体は俺が古泉の向かいにパイプ椅子をだして座り、団長机に座るハルヒの手元を見て解明した。
 
「常々おかしな奴だとは思っていたが、まさか年齢を10歳近くも偽って俺の同級生をしていたとはな」
「何馬鹿なこと言ってんの?病院にでも行ったほうが良いんじゃない?」
ハルヒは俺の問いかけに雑誌から目を離すこともなく適当な返事を返す。
 
俺の目がどうかしたのでなければお前が今熱心に読んでいる雑誌はその表紙に書いてある数字位の年齢の女性が婚期を逃さぬまいと読みふける雑誌だと思ったが違ったか?
…って若干俺の偏見も入ってはいるが、少なくとも高校生活をあと半分以上残してる女子が必死に読むものじゃないだろう。
 
「ああ、これね。あたし今日日直だったからホームルーム後に職員室に日誌持って行ったのよ。そしたら岡部の机の下にこれがあったの。『ああ、こんなハンドボール馬鹿でもこういう女性向けの雑誌読んで適齢期の女心でも勉強しようとしてんのね。』なんて思ってそれ眺めてたら岡部が急に慌てだしてね。あたしから没収した雑誌を放課後に返すような臭っさい演技しだして、これをあたしに押し付けたのよ」
 
何だそりゃ。女性向け雑誌を読んでると同僚にばれるのを恐れて取り繕ったって所か?
「多分ね。それでそのまま捨てるのも何だし暇だったから眺めていただけよ」
 
ほう。その割にはずいぶん熱心に読んでいたようだが、お前もそういうネタに興味があるとは驚きだ。
「なによ?あたしだってね、将来のことはちゃんと考えてるわよ」
 
将来って何だ?世界を征服するとか月に別荘を建てるとかそんな事か?
「アホな事言ってんじゃないわよ。ちゃんと結婚して出産してとかそういう事よ」
 
ますます驚きだ。因みにどの程度ちゃんと考えているんだ?
 
「そうね。結婚は25歳までにはしたいわね。出来れば23歳。それで30歳までには子供3人は欲しいわね」
いやに具体的だな。もっと漠然としているかと思ったが。
 
「あんたはどうなのよ?」
俺か?俺はそうだな…大学でてしばらくは独身生活を楽しんでだなぁ。
30過ぎた辺りで何となく結婚を考え出して…まぁ落ち着くのは32~3くらいじゃないかな。
男なら普通そんなもんだろ。
 
「それじゃ遅すぎるわよ!もっと早くしなさいよね!」
んな事言われたって仕方ないだろ。大学出てすぐじゃ給料もたかが知れてる。
家族を養うだけの稼ぎが無いとそういう事は考えられん。
とっとと結婚したは良いが生活に行き詰って一家で路頭に迷うってのは御免願いたいね。
 
「そんなの共働きでもすれば良いじゃないの。あたしだって最初の子供が出来るまでは働くつもりよ」
ほう。それなら何とかなるかも知れんがそんなに上手くいくもんかね。
 
「当たり前じゃない。大学出てから25歳までは共働きであたしの給料は全部貯蓄に回すの。それで25歳で出産、それからは育児ね。30歳までに3人は欲しいけど、一年おきに3人じゃしんどそうだから双子が一組は欲しいわね。女の子の双子と男の子一人が理想ね」
 
お前から双子の娘が生まれたらどれだけ喧しい家庭になるかと思うとぞっとするよ。
「何言ってんの。賑やかで良いじゃないの。でも安心しなさい。こう見えても家事は得意なの。子育てしながらバリバリ家事こなしてあげるからあんたは安心して仕事に専念しなさい」
 
仕事ばかりで家庭を顧みない親にはなりたくないね。それに親戚の子供の面倒よく見てるからな
お前よりは子供の扱いに関しては長けてる自信があるぞ。
「そんなの毎日我が子の面倒見てればすぐに逆転するわよ。平日はあたしがきっちり面倒みるわ。習い事や塾も考えないといけないわね」
 
そんな小さな頃から塾に入れる必要も無いだろ。子供は伸び伸びと育てるのがだなぁ
「小学校から私立に入れるとなるとそれなりに準備が必要なのよ」
 
私立ってどういうことだ?小学校なんて公立でいいだろう。
お前の構想では俺の収入はいくらになってる予定なんだ?俺は普通のサラリーマン志望だぞ。
子供一人育てるのにいくら掛かるか知ってるのか?私立なんて入れたらそれこそ…
 
 
 
「あのぉ…キョン君と涼宮さん。最初はお互いの結婚観について話していたはずなのにいつの間にか二人の将来設計になってません?」
「そうですか?僕は最初からお二人の将来を語っているものだとばかり思っていましたが」
「…議論に白熱するあまり二人は周囲の状況が全く見えていない」
「お二人にはゆっくりと将来について語って頂くとしましょう。僕達はお邪魔なようですから帰りましょうか」
 
 
 
 
「子供が習い事行ってる間はあたしだってパート位するわよ!だからあんたもその分働きなさい」
そんなカツカツな生活じゃなくて、もっと身の丈にあったゆとりのある生活をだなぁ
その方が良いだろ、古泉…あれ?古泉??朝比奈さん?長門???
 
「ちょっと、キョン!聞いてるの!?」