hot potatoのconte (134-676)

Last-modified: 2010-10-24 (日) 08:01:29

概要

作品名作者発表日保管日
hot potatoのconte134-676氏10/10/2110/10/23

作品

&flash(http://www.youtube.com/v/qHJa3mKeoKg,380x310);
鬼束ちひろ 「Infection」
 
 
──例えば公園で。
 
子供がさ、転がってる石ころをふと拾い上げるんだ。
しばらく手の上で転がしてみたりした後、まじまじと眺めたりする。
やがて、自分は何でこんなことをしてるんだ? てな顔をして、石ころを放り投げ、また別の玩具や遊びを探しに歩きはじめる。
まあよくある光景ってやつだよな。
ガキの頃の俺もやってたかもしれない。
 
え? いや違うんだ。俺の話じゃあない。
 
──ハルヒの話さ。
 
【キョンの部屋】
 
ハルヒ「キョン?」
キョン「……ん?」
 
ハルヒ「どうしたの? ボーっとしちゃって。問題解けた?」
キョン「あ、ああ」
ハルヒ「あら、ちゃんとできてるじゃない。感心感心」
キョン「教える奴の腕がいいのかもな」
ハルヒ「何にもでないわよー」
キョン「はは」
 
 ハルヒとは一週間ちょい前に恋人同士となった。
こうして時々俺の部屋にあがりこんで、家庭教師の真似事をしてくれたりもする。
 
ハルヒ「やっぱキョンはやれば出来る子なのよ」
キョン「そうかい」
ハルヒ「頭の出来はまあまあなのに……アンタは授業の受け方とノートのとり方の要領が悪いのよねー」
 
 告白したのは俺。その時に両思いだと判明した。
 ハルヒ本人は片思いだと思っていたらしく……それは俺に非があるんだろう。
 
 いや、それについてはお互い様だ。
 
 と思う。
 
 
ハルヒ「じゃあ今日はここまでね。片付けましょ」パタパタ
キョン「……ハルヒ」スッ
ササッ
ハルヒ「キョン、あたしもう帰るね」
キョン(あれ?)
 
キョン「…ああ」
カチャ
ハルヒ「じゃまた明日ね」
キョン「お、おい、送ってくよ」
ハルヒ「明るいから大丈夫よ」トントントン
キョン「いや、そうじゃなくてだな」トトトトト
 
キョン母「あら、涼宮さん、もうお帰り?」
ハルヒ「はい。長々とお邪魔しました」ゴソゴソ
キョン母「せっかくだから御飯でも食べていかない?」
ハルヒ「いえ、家族が待ってますので」ペコリ
キョン母「あら、そう。残念ね」
ハルヒ「また機会がありましたら是非。では失礼します」ガチャパタン
キョン「……」
キョン母「……」
 
キョン母「キョン、あんたケンカでもしたの?」
キョン「いや別に」
キョン母「ふーん」ジー
キョン「んだよ」
キョン母「……あんなカワイイ子捕まえたのはやっぱりマグレだったのかしらね」
 
ピョコッ
「キョンくん、ハルにゃんに振られたのー?」
キョン母「危なそうね」
キョン「うっせえよ」
 
…………。
 
うーん。
 
 
◇ ◇ ◆
 
 
【部室】
 
キョン「ちぃーす」
古泉「どうも」
 
みくる「あれ?キョンくんだけですか?」
キョン「ハルヒなら日直ですよ。べっさんの所に学級日誌届けてからこっちに来ます」
古泉「べっさん? 岡部先生ですか?」
キョン「あーそうそう。最近大野木とかがそう呼んでるんだよな。うつっちまった」
 
みくる「はいどうぞ、キョンくん。熱いですよ」コトッ
キョン「いつもすいません」ズズー アチッ
 
キョン「……」
 
キョン「……なあ古泉。ちょっと聞きたいんだが」
古泉「何でしょうか」
キョン「その、つまり、なんだ」
古泉「は?」
 
キョン「お前、その、例の……バイト。最近どうだ?」
古泉「閉鎖空間ですか?」
キョン「ああ」
古泉「……いえ最近はまったくのご無沙汰でして」
キョン「……そう……なのか?」
古泉「ええ。特に貴方と涼宮さんがお付き合いを始めての2週間は、まったくの皆無です」
キョン「そう、か」
 
みくる「あのぅ、何かあったんですか? キョン君」
キョン「いえ、たいした事ではないんですが」
古泉「正直、僕が能力者であることを忘れそうになるくらいですよ」
キョン「そうか。いやならいいんだ」
 
長門(ジー)
キョン「何だ長門」
長門「筋肉の緊張、心拍数増大、発汗、セロトニン排出。……貴方は不安を感じている」
キョン「……」
古泉「……何か、ご相談がお有りでしたら、いつでも構いませんよ」
 
キョン「その、ただ、何となくなんだが」
 
タッタッタッタ
 
♪メイドメイドメイドノミヤゲソリャモウシャングリラーノ
ハルヒ「おンまったせー♪」バターン
キョン「」
古み長「「「……」」」
 
ハルヒ「ん? ん? どしたの皆、何かあった?」
キョン「いや、何でもない。只の雑談だ」
 
ハルヒ「ふーん?」
古み長「「「……」」」
 
【通学路】
 
キョン「けっこう涼しくなってきたよな」テクテク
ハルヒ「そうね」スタスタ
キョン「朝、この坂登るのもかなり楽になるよな」テクテク
ハルヒ「そうね」スタスタ
 
キョン「…………」スッ ギュ
ハルヒ「」
キョン「けっこうお前の手冷た…」
ハルヒ(パッ)
 
キョン(え)
 
ハルヒ「あ、キョン。コンビニ寄っていい?」
キョン「あ、ああ」
 
キョン(……ほどきやがった)
 
ウィーン イラッシャイマセー
ティーカードオモチデショーカー? pipi
アリガトウゴザイマシター
 
キョン「…………」
ハルヒ「おまたせ」
 
うん。
 
キョン「何買ったんだ?」
ハルヒ「フライドポテト。キョンも食べる?」パクパク
キョン「……いらん(んなもん買うためにコンビニ寄ったのか?)」
ハルヒ「(パクパク)美味しいよ」
キョン「そっか」
ハルヒ「うん」
 
……うん。
 
 
 ◆ ◆ ◇
 
 
【渡り廊下】
 
スタスタ
古泉「や、どうも」
キョン「おう」
古泉「元気がありませんね。ははあ(キョロキョロ)彼女が一緒ではないからですか?」
キョン「あいつは遅れて来るってさ。なんか佐伯とか成崎としゃべってた」
古泉「おやおや」
キョン「ま、すぐに追いつくだろ」
古泉「涼宮さんのことをよく分かってるわけですね。羨ましい話です」
 
キョン「……羨ましい、か」テクテク
古泉「ええ」スタスタ
 
キョン「……俺はどっちかというとお前が羨ましかった」
古泉「は? 何のお話ですか」
 
キョン「超能力とか。世界を救うヒーローとか」
古泉「ふふっまさか」
キョン「結構本気さ」
キョン「そういうのがあれば……もっと俺は……」
古泉「?」
キョン「いやいいんだ」
古泉「? 実際羨ましいのはこっちのほうですけどね。貴方は誰もが羨む美少女の彼氏さんですよ。一介の男子高校生としては、ねえ?」
キョン「お前みたいなツラのやつにそれを言われてもなあ。部室じゃかなり劣等感に悩まされてんだぜ、俺は」
古泉「貴方の自己評価が低いのは今にはじまった事ではないですが、謙譲の美徳も行き過ぎれば厭味ですよ」
キョン「ったく、お前だんだん歯に衣着せなくなってきたな」
古泉「誰かさんのおかげでバイトの出動回数も激減です。仮面も外れかけてるのでしょう」
キョン「やれやれ」
 
コンコン
みくる「どーぞー」
ガチャ
古泉「どうも皆さん」
キョン「ちわ」
長門「……」チラ
みくる「あ、座っててくださいねぇ。今お茶いれまーす」カチャカチャ
 
 ──ハルヒが来たのはわずか5分後だった。
 
 待ってればよかったのだろうか。
 
 いや、もしあいつの望みが──ならば。
 
 答えはでなかった。
 
 
 ◆ ◇ ◆
 
 
 ──どちらかといえば。
 
 俺はまわりの連中に、いやあいつに知られたくなかった。
 
 俺がこんなにもあいつのことが好きだってことが。
 
 俺がこんなにもあいつに夢中だってことが。
 
【教室 昼休み】
 
キョン「なあ谷口」
谷口「んだよキョン。惚気なら モグ 間に合ってるぞ モグ」
 
キョン「……いや……まあちょっと聞きたいことが」
国木田「どしたのさキョン」モグモグ
キョン「ハルヒの事なんだが、ちょっと、な」
谷口「涼宮か? 何だ?」パクパク
キョン「その……以前話してたろ。あいつの昔の男……遍歴」
 
谷口「……」
国木田「……」ムグムグ
 
谷口「おめぇ……何がいいてえんだ」パク モグ
 
キョン「あいつがさ、男振る前に何か断りの文句入れてたんだよな」
谷口「『普通の人間の相手をしているヒマはないの!』ってか?」
キョン「ああ、それだ」
谷口「で、何がいいてえんだ」パクパク
キョン「……」
 
国木田「言われたわけ?涼宮さんに」モグモグ
谷口「マジか?」
キョン「い、いや、言われてないぞ。本当だ」
谷口「じゃあもうすぐ言われそうなのか?」
キョン「……」
国木田「それホント? キョン」
 
キョン「……わからん。だが……最近あいつが俺から距離をとってる様な気がする」
 
国木田「そう?」
谷口「思い過ごしっちゅうか、考えすぎじゃねえの?」
国木田「だよね。最近の涼宮さん、ずっと上機嫌だし」
 
キョン「…………」
 
【部室】
 
古泉「僕は彼らの言うとおりだと思いますが」
みくる「そうですよ。だって最近の涼宮さんの上機嫌ぶりって……ねえ古泉君」
長門「……」ペラ
キョン「……そんなもんかな」
古泉「正直、部室での彼女のパワフルっぷりは今までの比ではないですし」
みくる「絶対キョンくんの思い過ごしですよ」
長門「……」ペラ
キョン「……そう……か」
 
バッターン
ハルヒ「皆揃ってるわねー♪ みくるちゃんお茶チョーダイっ」
みくる「は、はぁい」
 
キョン「……」
長門「……」ペラ
 
【通学路】
 
キョン「……」テクテク
ハルヒ「……」スタスタ
 
キョン「……」テクテク
ハルヒ「……」スタスタ
 
キョン「ハルヒ」
ハルヒ「なあに」
キョン「週末はどうする?」
ハルヒ「週末?」
キョン「ああ、日曜日だ。たまには、その、二人で不思議探索とか」
ハルヒ「だめ。今週末は忙しいの。予定が入っちゃってる」
キョン「お、おうそうか」
 
キョン「……」テクテク
ハルヒ「……」スタスタ
 
キョン「じゃあメシだけでも一緒に行けないか? 古泉に教えてもらった店があるんだ。阪中の家の近くの住宅街の中にあるパスタ屋でな、隠れ家みたいな…」
ハルヒ「無理」
 
キョン「……」
 
キョン「あ の な ハルヒ」
 
ハルヒ「あによ」クルッ
キョン「俺たち付き合ってるんだよな」
ハルヒ「……うん」
キョン「何かぎこちなくね?」
ハルヒ「……」
キョン「何か淡白っていうか。最近あんまお前ベタベタしなくなったよ」
ハルヒ「……」
キョン「これじゃ部室で友達付合いしてた方がまだしもスキンシップしてたよな」
 
ハルヒ「だってそれはキョンが……」
 
キョン(え、俺?)
 
ハルヒ「何ていうのか……思ってたより……」
 
キョン(思ってたより?! ってなんだよ? 思ってたよりって!)
 
ハルヒ「いや……いいんだけど」
 
キョン(いいのかよ! って何なんだ?)
 
ハルヒ「あたし帰るね」
キョン「え」
ハルヒ「また夜電話するから」スタスタ
キョン「おいハルヒ」
 
キョン「……」
 
キョン「はは……何だこれ」
 
【キョンの部屋】
 
Prrrrr
ハルヒ『はーい』
キョン「ハルヒか。俺だ」
ハルヒ『うん』
キョン「結局俺から電話しちまったな。今どこにいるんだ?」
ハルヒ『有希ん家』
キョン「え」
 
キョン(俺と別れた後、長門のマンションに寄ってそのまんま…ってことか…)
 
キョン「なあハルヒ」
ハルヒ『何?』
 
キョン「俺避けられてるのか?」
 
ハルヒ『……』
キョン(何でそこで沈黙するんだよ!)
ハルヒ『……キョンのこと嫌いになったとかそういうんじゃないから』
キョン「……」
 
ハルヒ『……また明日ね』プツン
 
ツーツーツー
 
キョン「…………」
 
キョン「また……明日」
 
キョン「寝よ」ゴソゴソ
 
 
 ◆ ◆ ◆
 
 
 ハルヒとはこのままでいいのだと思ったこともあった。
 
 席が近くのクラスメート。部活仲間。
 偶に休日を一緒に過ごしたりもするもする、気の置けない友人。
 
 ただ。ハルヒが。
 成長か、変化か、回帰か。
 級友と談笑したり、明るく社交的に振舞う姿を見て、得体の知れない焦燥感にかられたのは……
 
 嫉妬?
 
 独占欲?
 
 あいつにとって最も近くの存在でいたいという身勝手な望み。
 
 
 ──鼻持ちならない話か?
 
 
 俺もそう思う。
 
【日曜 喫茶店】
 
キョン「……ということがあって」
古泉「はあ」
みくる「……」ズズッ
長門「……」
 
キョン「長門。昨日はハルヒと何を話してたんだ?」
長門「SOS団。級友の動向。進路。私の所有する書籍。TV番組。季節と気温。おおよそ雑談と呼ばれるカテゴリに含まれる話を」
キョン「そうか」
 
キョン「…………そうか」
古泉「……」
みくる「……」
長門「……」
 
キョン「……やっぱ駄目かもしれん」
 
古泉「いやそんなことは」
みくる「なら仕方ないですね」
古泉「!」
キョン「」
みくる「キョンくんならいけると思ってたんですが」
古泉「あの朝比奈さん」
キョン「……」
みくる「相手がキョンくんでも無理でしたか」
長門「……」
みくる「もうこうなったら」
キョン「朝比奈さん」
みくる「涼宮さんにあの科白を言われたらきっぱり諦めちゃいましょう」
古泉「」
みくる「慰めの会は開いてあげます。場所は長門さんの部屋でいいですよね」
長門「(コク)提供する」
 
キョン「…………」
古泉「…………」
 
みくる「どうしたんですか?」
キョン「……所詮他人事ですよね。朝比奈さんの言うことも当z」
 
みくる「キョンくん」ジツ
キョン「なんですか」
 
みくる「本気で言ってます?」
キョン「あの朝比奈さん? いったいどうしt」
 
みくる(ポロポロ)
 
キョン「!!」
古泉「!」
 
みくる「ホントに他人事だと思ってグスッ、たらヒグッ私、適当に聞き流しちゃいますよグスッ」
キョン「……あ」
みくる「キョ、キョンくんが、エグッ仲間だから、友達だからこんな……こんな愚痴聞いてるんですっ」ポロポロ
キョン「朝比奈さ…ん」
長門「……」
 
キョン「……返す言葉もありません……」
みくる「らしくないですキョンくん」グシグシ
 
みくる「涼宮さんに告白するとき、キョンくん、一人で考えて、悩んで、迷って、でも一人で決心して、行動したじゃないですか。あの時の行動力は何処に行っちゃったんですか?」
 
キョン「……はい」
みくる「『はい』じゃないです。大方涼宮さんにちゃんと問いただしたりしてないんでしょ」
キョン「はい」
みくる「ちゃんと涼宮さんに向き合ってそれからグシッ、結論を出すんです」
 
キョン「分かりました。ありがとうございます」ペコリ
みくる「……」
古泉「……」
長門「……」
 
みくる「(ゴシゴシ)さ!ご飯食べましょ。冷えちゃいますよぉ」ニコッ
 
キョン「はい」
 
 敵わない。
 
 よな。
 
 ああホントに敵わないや。
 
 明日、あいつと話そう。あいつの目を見て、あいつの話を聞いて。
 
 あいつと。
 
 あいつと。
 
 明日。
 
 
 ◆ ◇ ◆
 
 
【月曜 校門前】
 
ハルヒ「おはよキョン」
キョン「はよっす。……なあハルh」
ハルヒ「キョン」
 
キョン「ん、なんだ」
ハルヒ「今日、授業が終わったら話があるの。いい?」
キョン「ああ」
ハルヒ「部室でね」
キョン「わかった」
ハルヒ「じゃあ放課後ね」スタスタ
 
キョン(先越されちまったな。何の用だ?)
 
 
谷口『普通の人間の相手をしているヒマはないの!』っつってな」)
 
 
キョン(!)
 
 来たのか。
 ついにその時が。
 
キョン(もしそうなら……もしそうなら俺は……)
 
 いや、俺は決心したはずだ。
 必死であがこう。
 
 あいつのそばにいる。
 しがみつく。あいつを手放さない。向き合って、情けなくともいいんだ。訴えよう。
 
 
 俺がどんなにあいつのことを好きかってことを。
 
 
 ──授業はちっとも耳に届かなかった。
 
【放課後 部室】
 
カチャッ
キョン「誰もいねーな」
ハルヒ「今日、団活は休みにしたの」
キョン「へ?」
ハルヒ「キョン」
キョン「ん」
 
ハルヒ「あたし、あんたに言わなきゃいけないことがあるの」
キョン「そうか」
 
キョン(くそ、落ち着け落ち着け落ち着け、俺)
 
ハルヒ「キョン、ごめん」
キョン「何で謝るんだ?」
 
キョン(きたついにきたやるだけやったか? いやまだだよな後悔はしない『普通の人間には』まさかなここで『ジョンスミス』いや違うだろ俺こんなところでいう話じゃねえしゃんとしろ俺……)
 
キョン(そう平凡なら平凡なりにできることがあがけることがあるはずだ俺には何もない宇宙人じゃねえ未来からも来てない超能力も持ってないでも俺はこいつの傍にいたいもっとこいつの笑顔がみたい一緒に笑いたい一緒に歩きたい一緒にいたい)
 
ハルヒ「キョンをね」
キョン「……」
ハルヒ「誤解させて傷つけちゃったから」
 
キョン(? 過去形?)
 
ハルヒ「キョン」
キョン「ああ」
ハルヒ「これがあたしの気持ちだから」ススッ
 
ギュッ
 
キョン(え?)
ハルヒ「キョン」
 
チュ
 
キョン「」
ハルヒ「……」
 
キョン(キス……してるのか? してるよなコレ)
 
キョン(え?)
 
 
 何コレ。
 
 
………
……

 
キョン「ハルヒ」
ハルヒ「ん?」
 
キョン「その、そろそろ話してくれねえか」
ハルヒ「離すの?」
キョン「いや、わけを話してほしいんだ」
 
キョン「何で俺は部室に呼ばれて、いきなり謝られて、抱きつかれて、キスされてんだ?」
ハルヒ「……」
キョン「その、わけが分からんのだが……」
ハルヒ「えっとねえ」
 
ハルヒ「その……つまり……」
 
………
……

 
キョン「恥ずかしかった?」
ハルヒ「うん」
 
ハルヒ「キョンってば、付き合い始めたら……さ、き、急にベタベタしだしちゃって、すっごい嬉しくて恥ずかしくて……。一緒にいるのも無理なくらいで////」テレテレ
キョン(はああああああ?)
ハルヒ「何かもう幸せすぎちゃって////」トローン
キョン「」
 
ハルヒ「って思ってたらさあ、今朝ね、登校中にね、みくるちゃんに叱られちゃった」
 
キョン「朝比奈さん?」
ハルヒ「うん」
 
ハルヒ「坂の下でみくるちゃんに呼び止められてね……」



みくる『涼宮さん』
ハルヒ『あ、みくるちゃん、おはよー。どしたの? そんな怖い顔して』
みくる『お話があります』
ハルヒ『う、うん』



ハルヒ「それでね、朝から思いっきりお説教されちゃった」
キョン「あの人が?」
ハルヒ「うん。あたしがキョンの気持ちにぜんぜん気付かずに行動してる事とか……」
 
『恥ずかしがってばっかりで、何にもキョンくんに説明してないじゃないですか』
『キョンくん、涼宮さんが離れていってるって勘違いして、すっごく傷ついてるんですよ』
『付き合うっていうのはですね、キョンくんがずっと涼宮さんの傍にいてくれるとか、支えてくれるとか、そんな都合のいい話じゃないんです』
『涼宮さんはOKしたんだから、ちゃんとキョンくんの気持ちに向き合って、その上で涼宮さんの気持ちをちゃんとキョンくんにお話しないと駄目なんですっ』
 
ハルヒ「……そんな感じ」
キョン「……(そうか朝比奈さんが…)」
ハルヒ「それで今のあたしの気持ちをキョンに伝えようと思って、呼び出したわけ」
 
キョン「……なるほど」
ハルヒ「分かってくれた?」ニッコリ
 
キョン「ああ」ウンウン
ハルヒ「うふふ」
 
キョン「うんうん」ニッコリ
ハルヒ「えへへ////」
 
キョン「ははははは」ウンウン
ハルヒ「あははは////」
 
キョン「……」ニコニコ
ハルヒ「……?」
 
キョン「ってこのアホハルヒ!!!」
ハルヒ「?!」ビクッ
 
キョン「わかるか、んなもん! テメッ……俺がどんだけ気をもんだと……分かりにくすぎだ! お前っ!!」
ハルヒ「んな!!」
キョン「だ、だいたいお前そんな 『あたし恥ずかしいのモジモジ』 なんてキャラじゃねぇだろうが!!」
ハルヒ「キ、キキキャラじゃないってそれはキョンのほうでしょうが!!」
キョン「何っ!」
ハルヒ「告白するまで 『俺はお前には一切興味ございません』 なんてすました顔してた癖にぃ! 付き合い始めた途端、手を繋ぎたがったり、隙あらばキ、キスしようとしたり! 急にベタベタしたがっちゃってええーーっっ!!」
 
キョン「そ、そりゃお前、そういう事がしたくて告ったんだし……」
ハルヒ「」
キョン「彼氏彼女って普通そういうもんだろう」
ハルヒ「そうか……も、しれないけど////」
 
キョン「だろ?」
ハルヒ「う、ん……」
 
キョン「だからさハルヒ」ギュウ
ハルヒ「!!」////
 
キョン「色々スマンかった」
ハルヒ「……どしてキョンが謝るの?」
 
キョン「正直俺、自惚れてた。俺はハルヒに一番近い存在だって。俺がハルヒのことを一番よく解ってるって」
ハルヒ「うんそうよ」
 
キョン「でも俺はまだまだハルヒの事解ってなかったし、知らなかったんだな。結局今でもオロオロして、焦って追いかけてる。朝比奈さんに心配されたりもしてる」ギュウ
ハルヒ「////」
 
キョン「俺、鈍感でホントごめんな」
ハルヒ「違うの。あたしがかわいくない女だから悪いのよ」
キョン「おいおい」
ハルヒ「感情をちゃんと出せてないから。あたし素直になることもできない可愛くないおn」
キョン「ばーか」ギュウウウ
ハルヒ「////」
 
ハルヒ「ふふ」
 
キョン「ゆっくり慣れていこうぜ」
ハルヒ「そうね」
キョン「うん。だからハルヒもくだらねえ事で俺をあせらせんなよ」クイッ
ハルヒ「ん」
キョン「ハルヒ」チュ
ハルヒ「…………////」
 
キョン「ハルヒ、俺のほうがお前よりもな、絶対お前の事好きなんだぜ」
ハルヒ「言ってなさいよ」ギュウ
 
キョン「おい力強すぎだ」
ハルヒ「キョン、今絶対あたしの顔見ちゃだめよ。たぶん顔真っ赤だわ。こんな恥ずかしい顔が世界に知れたら……あたしきっと死んじゃう」
 
キョン「……じゃあ俺の顔も見んなよ」
ハルヒ「?」
キョン「俺もたぶん今顔真っ赤だわ」クックッ
ハルヒ「!! うそ、見たい! 見る!」ジタバタ
 
キョン「駄目だ」ギュウ
ハルヒ「見るっ! 見るっ!」ジタバタ
 
キョン「だ め だ」ギュウウウウ
ハルヒ「見……る……」
 
ギュウウウ
 
ハルヒ「…………」
 
ハルヒ「キョン」
キョン「ん」
ハルヒ「好き」
 
 ──どちらかといえば。
 
 俺はまわりの連中に、いやハルヒに知られたくなかった。
 
 俺がこんなにもハルヒのことが好きだってことが。
 
 俺がこんなにもハルヒに夢中だってことが。
 
 
 これはハルヒもきっと全部は知らない。
 
 はずだ。
 
 
 知られたら俺は死ぬ。もういろんな意味でな。
 
 
 ────ま、それも悪くはないさ。
 
 
キョン「おれもさ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
&flash(http://www.youtube.com/v/t3EfMb7Z5Pc,380x310);
鬼束ちひろ 「私とワルツを」
 
 
おしまい
 

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