スマブラ個人小説/Shaillの小説/スマブラキャラの毎日 19

Last-modified: 2014-07-14 (月) 01:51:19

最終話 座色わらし

色が消滅する
その原因が何なのか皆目見当すらつかない
マスター「色。お前知ってるんだろ。なんで自分が消えかかっているのか」
マスターが問い詰めると、ベッドで上体だけ起こしている色は首を横に振った
色「それは・・・私からは言えません」
マリオ「なんでだッ!訳を話してくれないと俺たちはッ!」
色「・・・マリオさん達に、嫌な思いさせたくないから・・・自分のせいだ、って思ってほしくないから・・・」
マリオ「俺が何かしたのか・・・!?」
色「・・・」
それからは口も目も閉じた。これ以上言わないぞ、という意志がひしひしと伝わってくる
マリオ「なんだよ・・・俺だって、早くお前の正体不明の病気を治してやりたいんだよ・・・!」
・・・なぁ、マリオ
マリオ「?」
色が言わないんなら、俺が教えてやるよ
いいな?色
色「・・・貴方を止める機能は、私にはありません」
よし、場所を変えるぞ。それの秘密を全部バラしてやる
アイク「・・・」




まずだな。色の正体を知ってるのは誰だっけ
クレイジー「俺とマリオ、アイクとリンクと・・・今はいないけどネスの5人だな」
マルス「え?正体って?」
アイク「・・・じゃあ逆に訊くぞ。色って誰だ」
マルス「は?」
ゼルダ「そういえば・・・・色って、誰なんでしょう?」
ピット「あれ?なんか変な感じだな。気付いたときには仲間だった、みたいな」
トゥーン「言われてみれば・・・なんで飛行機の中で一緒に歌ってたんだろ」
クレイジー「みんなそうだな。色の特性にハマッていたんだ」
オリマー「どういうこと?」
・・・色は妖怪・・・座敷わらしなんだよ
サムス「・・・なんだそれ」
ルイージ「・・・妖怪?」
マリオ「あぁ。でも知ってのとおり悪い奴じゃない。座敷わらしっつーのは・・・まぁ、俺もよく分からんが、気配のない妖怪だ」
リンク「それで貴様らは気付かずに、今を過ごしてきたというわけだ」
ルイージ「そうだったの・・・」
クッパ「いつ頃から来たんだ?」
アイク「修学旅行で出会って、そんで彼奴は・・・えぇと、あとの細かい説明は作者、任せた」
そうだな・・・
まず、色がこの世界の人間じゃないのは知ってるな?
アイク「ああ」
でもそれはニュアンスが少し違う。まるっきり本物ではない、向こうの世界の人間の写しなんだ
外殻だけはな
マスター「?」
色の記憶は失っていた。それはまだこの世界に立って間もないからだ
向こうの世界の記憶を継いでも話が噛み合わないから、俺が記憶を抜いたんだ。そこにこの世界の情報がなだれ込む
だから外身は異常で中身は普通。このアンバランスが何らかの異常をきたしていたんだと俺は予測する
まぁ、恐らく病気なんかじゃない。命を得た人形・・・NPCにボロが出たんだよ
マリオ「・・・」
思えば兆候はあった
目眩、風邪、高熱、そして謎の病気
やけにマリオに対して大胆になっていたのは、自分がいなくなる前に早くマリオに・・・
マリオ「くそっ・・・なんで気付いてやれなかったんだよ・・・!なんで、言わなかったんだよ・・・!」
そんな理由は分かっている。色は、自分たちに余計な心配をかけまいと・・・
アイク「ずっと、自分の中で闘ってたんだよな」
マリオ「---!」
・・・ここまではこっちの世界の色の話だったな
クレイジー「そうだ。元々の色は何者だったんだ?これは作者にしか分からないぞ」
元の色は、色なんて名前じゃないし座敷わらしでもない。妖怪ってのは俺が勝手に付加した性能だ
そこは何でもいい
アイク「それに・・・こっちに色がいるんなら、向こうの世界に色はいるのか?」
あっちをモデルにするなら、こっちはその精神体だ
アイク「?」
つまりだな・・・この世界の色は、俺が元にして創った彼女の意識を具現化したようななものなんだ
マリオ「どういう意味だ」
難しいが・・・あっちの世界を仮に『外』、こっちの世界を『中』と置き換えると
外の色は今、意識不明の状態にあるんだよ
マリオ「意識不明・・・?外の色が中に来たからか?」
ああ。俺は外の色の意識を具現体にして旅館に住まわしていた。だから外の色には意識がないんだ
ピット「なんでそんなことするの?」
・・・・・・彼奴はな、

 

生まれたときから障がい者だったんだよ

 

-22:47




マリオ「・・・」
-視覚障害
人間の眼の三原色は、赤と青と緑。しかし亀の三原色は他の生物とは違う
それと同じように、色には世界が違う色で見えるのだ
それを踏まえると、よく「色」などという名前がつけられたものだ
マスター「そういや・・・紫とオレンジの区別も出来ていなかったな」
マリオ「でも、それでもだ。ただ眼が変だからって死ぬわけじゃないだろ」
死ぬんだよ
マリオ「・・・っ」
色は眼の障がいだけじゃない。感染症にもかかっていたんだ
フォックス「感染症?」
ああ。今の医学じゃどうにもならないほど重いウイルスのな
だから外の色はいま死の直前で停止している。俺が色を中に連れ込んだからな
マスター「じゃあ・・・もし色が消えたら・・・」
外と中が一つになって意識が回復する。それと同時に色は死期を迎えるだろう
マリオ「・・・。回避する方法は?」
身体と精神が合致して死に至るまでに、感染症の治療を済ませることは出来ないだろうからな
俺たちが何とかして色の消却ジラすしかないだろう
アイク「・・・それしかねーんなら、やるぞ。絶対に」
マリオ「でも・・・どうしたらいいんだ?」

 

保健室
マスター「色。入るぞ」
色「ふふぁっ?」
がちゃり、と扉を開けると、寝台の上で熱々の鮎の切り身入り粥を食べている色と
リンク「・・・」
アイク「お前、いつの間に・・・」
リンク「驚くほどのものか。お前らを素通りして此処に到るまでの時間はいくらでもあった」
マリオ「色・・・脚は?」
マリオは色の小さくて細い脚を見やった
さっきまでは足の指が侵されていたが、ノイズは今や足首までを上書きしている
色「・・・話」
マリオ「え?」
色「お話・・・聴いたんですか?」
マリオ「あぁ・・・色が知らないことを主にな」
色「?」
お前がその体を手にする前の、過去の話だよ。記憶、抜けてるんだろ
色「はい・・・それで、昔の私は、どんな人だったんですか・・・?」
マリオ「・・・っ」
とっさの対応に詰まる
真実を突きつけるべきか、嘘をついてでも隠し通すか・・・
アイク「別に隠す必要なんかねーよ。自分のことだろ。なくなった記憶が手を伸ばせば届くのに、それが出来ねぇなんてのは気分の良いもんじゃないしな」
リンク「さすが。メリカを堕とした男だ」
「ぶっ!はあ!?なんの話だよ!?」と言うアイクの意見ももっともだったので
やっぱり包み隠さずに話した
原型から抜けた精神体だということ、色の識別が出来ない障害者でもあり感染症患者でもあるということ、ここで消えると向こうの世界で死んでしまうことなど
一通り話を聴き終えた色は、
色「そう・・・なん、ですか・・・」
動揺を隠せないでいる
まあ当然の反応だな・・・と、このリアクションを予め予想していたマリオは、
マリオ「色は中身と外身が本来別々の物で、それが一つになったことで綻びが出たんじゃないか、って予測なんだが・・・どうなんだ?」
色「え・・・っ?」
予測を確証づけるために一応訊ねてみたが、色はその予測に反して困惑した
あ、違ったか?
色「あ、いや・・・・そう、多分そうです。この体はこのと・・・あっ、この世界にはどうも合わなくて・・・」
震える手をパタパタさせて、アハハッと笑って取り繕うも、
マリオ(ー作り笑いだな、完全に。それに・・・)
このと?と、って何だ?
色「いぇ、なんでもありません」
リンク「・・・」
マスター「お喋りはここまでだ。まずは色の消却を停止させなければならない。それが最優先だ」
ゼルダ「でもどうするのですか?私の治癒魔術も弾き返すような手癖の悪いモノを・・・」
ラトビア「・・・うん・・・私もダメだった・・・」
残念そうに告げるゼルダ姫と、ガックリうなだれて肩を落とすラトビア。彼女は終点きっての色大好き人間だったから、この事態の反動も人一倍なんだろう
ガイアナ「元気出せ。そこをなんとかしてやるんだよ」
ラトビア「・・・どうやって?」
ガイアナ「さぁ・・・」
マリオ「マスターとか神様なんだから、何かしらの力使えないのか?」
それは無理なんだよ
ピット「えっ?何でも出来るんじゃなかったの?」
マスター「俺たちの融通が利くのはこの世界の中だけだ。色は外とも繋がっているから、中の糸が解放されても外と関与されている限り、色は助からない」
アイク「神様でも不可能なのかよ・・・!」
トゥーン「じゃあ・・・いったいどうすれば・・・」
クレイジー「う~~ん・・・」
マスター「ーーーー」
リンク「・・・」
・・・さっぱり、だな
色「私は大丈夫ですから・・・覚悟はとっくの昔に決めてましたし・・・。それに、」
リンク「それ以上言うな」
色「っ・・・」
リンク「今はとにかく考えろ。それしかない。取り敢えず浮かんだ案は述べろ。全員だ」
そうだな。それが一番合理的なのかもな
マリオ「・・・それなら・・・なぁ、ちょっといいか?」
アイク「どうした?いい案が浮かんだのか」
マリオ「いや。ただ・・・訊いてみる価値はあるかな」
ソニック「?」
マリオ「アイク、行くぞ」
アイク「は?」
マリオ「俺たちには・・・・頼れる天才がいるだろ」


リンク「・・・」

 

-21:30






半ば吹っ飛ばすかのように扉を開けた
そこには以前来たときと同じように、食い散らかしやらで散らかった部屋・・・ではなく、何故か整頓されてキレイになっている
そして荷造りしてパンパンになったリュックの隣には
アキュリス「・・・なに」
残念な天才、アキュリスがふてぶてしく呟いた
マリオ「お前・・・どっか行くのか?」
アキュリス「うん」
アイク「珍しいな。それでその荷物か。つーことは、もうここを離れるのか?」
アキュリス「まぁ、しばらくはね。今から旧友に会いに行って、そこで世話になるの」
アイク「旧友?お前にもそんなのが居たのか」
アキュリス「むっ・・・」
マリオ「誰なんだ?その旧友ってのは?」
アキュリス「言っても分かんないでしょ」
アイク「でも興味はある」
アキュリス「・・・昔働いてた職場の後輩よ。まぁ、半分化生で半分人間って子だけどね。その子が新しいテクノロジーでどうかな~?、って訊いてきたから今から討論しに行くの。それで、訊いてきたのは結構面白いものでね・・・硬化性を備えた布で、それを」
アイク「あぁあぁ、もういい。話の内容に興味はない」
マリオ「俺たちが知りたいのは、色を助ける方法なんだ。もう出ていくんなら、これが俺たちからの最後の仕事だ」
アキュリス「そんなのいきなり言われても・・・」
マリオ「頼む、知恵を貸してくれ」
アキュリス「・・・・・・」
アイク「ソフトぐれー買ってやるからさ」
アキュリス「もーーしょーーーーがないなぁーーーーッ。いいよ、事情話して」
マリオ「・・・」
アイク「どうだ。その気にさせてやったぜ」
少々呆れ顔のマリオに親指を立ててみせた

 

アキュリス「・・・ふんふん、なるほどなるほど。あの時代遅れの少女がハックされたみたく消えるわけですか・・・」
マリオ「お前・・・一部始終見てなかったのかよ」
アキュリス「荷造りでディスプレイなんか見てる場合じゃないのよ!大体急に押しかけてきて急に仕事頼むのやめてくれない!?こっちはねぇ、あの子と対談しようt」
アイク「続き」
アキュリス「・・・・・・はい」
マリオ「----」

 

アキュリス「えっとねぇ、住めば都、って諺は知ってるよね?」
アイク「ああ。実際住んでみたらいい場所だった、ってやつだよな」
アキュリス「そうだね。じゃあその反対の諺は?」
マリオ「・・・?」
アキュリス「いや、まぁないんだけどね。住めば都、ってーのは人間と土地の適合性を表してるんだよ。分かりやすく言ったら、洞窟の中で暮らし続けてた人は外の世界には合わないじゃん?それは存在不適合者になる。色に至っては生まれながらにしてそうだったみたいだけど」
アイク「それは・・・両目がおかしかったからか?」
アキュリス「そ。典型的な例だね。人と違うものが視えている人間は普通じゃない。普通じゃないってことは異常ってこと。異常な人間は正常な社会では生きていけない。それが彼女の社会に対しての存在不適合の理由ね」
マリオ「でもいくら色が社会と不適合でも、消える理由にはならないだろ」
アキュリス「そうねぇ・・・・確かに、世界に合わなくても消滅はしないわ。外でもそうだったみたいだしね。目は世界に対して不適合、っていうだけで、あまり消える原因じゃないわ。問題は十中八九、身体ね」
アイク「中と外とが入り混じって不安定な状態だったから、って奴だな」
アキュリス「・・・・・え?なんて?」
アイク「?いやだから・・・作者が言ってたけど、心と体がそれぞれ別のものである筈なのに、それが一体になったことで色が」
アキュリス「あははっ、そんなのは関係ないよ」
マリオ「なんだって?」
アキュリス「二重人格者がいい例だね。二つの心が一つの体を、各々主張することなく共有している・・・。それと同じ。中の体に外の心が入り込んだところで、消えるなんてありはしないよ」
マリオ「じゃあ・・・本当は何が原因なんだ・・・!?」
アキュリス「・・・。さっきも言ったけどさァ~・・・」
溜めてから説明を始めるアキュリスの顔には、少し喜々とした表情が浮かんでいる
アキュリス「住めば都なんだって。色は元々御神様の創った場所に住んでたんでしょ?だったらそことの相性は抜群なんでしょーね。適合してる、って言えるわ。でもそれが仇になっちゃったんだと思う」
つまり、逆を取れば
マリオ「・・・っ!まさか・・・」



アキュリス「そうよ。理解力も身についてきたわね。説明省けて助かるわ。まぁ、要するに、この土地には激烈に合わなかった。それが破滅を招いた一番の要因ね」
アイク「・・・ただ、それだけのことで、か・・・?」
アキュリス「異常なまでの適合性を誇る故郷を離れて、不適合力のある場所にやって来た。でもまぁ?さっき言ってたやつも間違ってないよ。二つの世界跨いでるから不安定なんだもん。ふとした弾みで消えてしまうくらいにね。色にとって、この土地はシックハウスも同然なんだから」
マリオ「~~~!」
やはり色はあの場所に居るべきだった
だが、あの場所に残っていても消える運命だった
色が消えると・・・本体が感染症に侵されて死んでしまう
これじゃあ、色の居場所なんて何処にもないみたいじゃないか!
アキュリス「誰が悪い、というわけでもないけどね。でも、強いて犯人を挙げるなら・・・」
やめろ・・・
それ以上、言うな・・・!




アキュリス「彼女を連れ出す、なんて浅はかな考えを持った人が悪いんでしょうね!」

 

その言葉が この上ない鋭さを以て、二人を貫いた
と同時に、コンクリートの砕ける音が部屋の外から響いた
アキュリス「ん・・・?」
アイク「今のは・・・リンクか・・・」
恐らくそうだろう。だが、立ち上がって確かめる気力も失せた
マリオ「・・・俺のせいだ。俺が色を振り回したから、こんなことになったんだよ・・・。そのまま消してもらっとけば、色を辛い目に遭わさずに済んだのに・・・ッ」
アイク「・・・まぁ、そう自分を責めるなや」
依頼を終えたアキュリスが、英気の抜けた二人に退室を促す
アキュリス「そうだ。先に言っておくけど、今更元の場所に戻したって進行は止められないよ。治す術はなし。せめて残された時間を有意義に過ごすことだね」
マリオ「・・・お前は何者なんだ?」
催促を諦めて、荷物を持って自分から出て行こうとするアキュリスを呼び止めた
これほどの知識人、只者である筈がない
アキュリス「何者って訊ねられても・・・・・悪い組織の工作員でした、って言って、信じる?」
最後には軽く一笑し、一体何日住み着いていたのであろう住処を後にした

 

アキュリスの物だった部屋に残されたマリオとアイク
アイク「・・・良くしてやったことが悪い結果を生むって・・・何度か経験したことだよな、俺たち」
マリオ「色を少しでも生き永らえさせてやろうとしたことが過ちだったんだな・・・」
色はこのことを知っていた筈だ。それでも隠し通そうとしていた理由など、言うまでもないな
アイク「彼奴は良い子すぎなんだよ。周りの人に気を遣わせねぇように、って全部自分の中に仕舞込んで、自分の責任にしてる。近くにも同じような人間がいたから、そいつを好きになったんだろうな」
マリオ「・・・」
そしてアキュリスが去り際に吐いていた。もう救う術はない、と
それだけじゃない、残った時間を有意義に使えとも
マリオ「・・・。行こうか、アイク」
アイク「?」
マリオ「最後になるかもしれないんだ。せめて、出来ることは全部してやろうぜ」

 

ー17:20




部屋の外には、案の定打撃痕があった。大きさからしてもリンクの左拳と合致する
尾行して盗み聴きしていたんだろう。でもリンクは見当たらない
アイク「・・・彼奴も後悔してんのかな・・・色を連れ出したことに」
一体どんな顔をして話に聞き入っていたのだろうか
マリオ「リンクも俺らの意見に賛成していた一人なんだ。もし彼奴が色を気に入っていたと仮定すれば、・・・いや。確実に、気に入ってたな」
マリオの言葉にアイクも頷いた
自分から、色の好きな鮎入り粥を作ってやったり、あるときには命を助けてやったり、この打撃痕もそうだ
アイク「それにリンクだけじゃねえ、俺達もだ。ラトビアとかゼルダ姫とか、その他にも色が好きな奴はいっぱいいる。そいつら、同じ気持ちなんだろ」
マリオ「あぁ・・・今出来ることをする。皆やってんだろうな。こんな所で立ち止まってられない。早く行って、やってやろうぜ。最後の最後まで満足して還ってもらえるようにな」

 

保健室
ネス「あっ」
アイク「ん?なんでお前が・・・」
保健室にはさっきまでは居なかった、ネスやリュカなど・・・少しだけ懐かしい面子が顔を揃えていた
ネス「キナ臭い・・・いや、水臭いよ。もっと早くに連絡くれないと・・・」
ベッドに寝ころんでいる色の手を取りながら、
マスター「帰ったみんなに電話したんだよ。無駄な行き来でオウム返しになるから強制はしない、と言っておいたんだが・・・皆が皆口を揃えて、な」
色「私は、止してくださいと・・・世話になった皆さんに、」
リュカ「ダメだよ!色が突然いなくなるなんて寂しいよ!」
ネス「シキは自分が世話になりすぎてる、なんて思ってるのか?もしそうなら、それは間違いだよ」
ナナ「そうよ!私たちだって!」
ポポ「色にはいーーーーーっっっっぱい世話になったんらかあ!!」
色「・・・えっ?」
レッド「ほら、いつも手持ちの面倒みてくれたりね」
ルカリオ「だな」
ファルコ「アーウィンの整備も手伝ってくれたじゃねぇか」
ウルフ「え?お前もなのか?」
フォックス「俺も俺もッ!」
ルイージ「僕みたいな日陰者にも、たくさん話しかけてくれたよね」
ピット「・・・あれ?じゃあやっぱ僕は日陰者・・・?」
ガノンドロフ「酔いつぶれた時に水運んでくれるしな」
スネーク「教わったあやとりの五重の塔、一生忘れない」
トゥーン「兜の折り方教えてよね!」
マリオ「・・・色、お前・・・」
アイク「俺たちの知らない間に、そんなことしていたのか」
この調子だと、全員に何かしら働きかけている
色「・・・私、みんなに迷惑掛けないように、ってずっと思っていて・・・だから、出来る限り・・・皆さんのお手伝いをして、少しでも、嫌われないように・・・」
話の間隔が途切れるごと色の顔がどんどん俯いていった
ネス「そんなわけあるかい。シキは誰にだって好かれてる。みんな大好きさ。なぁ?」
ワリオ「勿論だ」
ネス「・・・ほら。悪役もこう言ってるし」
ワリオ「おい!いや、色にとっては善悪もないよな」
マスター「こいつらに座敷わらしだとバラしたところ、『で、それがなにか?』ってな。色が何者だろうと、色は色ってわけだ」
ラトビア「色が居てくれるだけで雰囲気ってのが全然違うのよ?あわよくば抱きしめtぐほぇぉっ」
フィジー「それはラトビアだけッ」 ←犯人
色「・・・、私・・・このことを言っても・・・後悔なんて絶対にしません」
マリオ「・・・・」

 

色「・・・ココに来れて良かった・・・・ッ!」
涙混じりにそう言った
彼らに付いて行ったおかげで、こうして周囲を愛し愛されるような存在になれたんだ、と
マリオ「・・・それが聞けて安心した」
自分達の執った行動は、少なくとも間違いではないと。そう悟ったマリオは満足そうに頷いた
窓の外には、沈みかけの太陽が最後の陽光を放っていた




ー16:14

 

月の綺麗な夜だった。澄み渡った空は淀みなく、無数の星々が月明かりに反射されて輝いている
部屋の中には空気を読んだのか、色とマリオ二人だけの空間が作られた
掛け布団ごしでは見えないが、色の体はもう半分ほど消えかかっているところだ
マリオ「・・・久しぶりだな、こうして一緒に夜を過ごすのは。キャンプ以来になる」
色「あの時はこっそりマリオさんのテントに忍び込んじゃいましたね」
マリオ「あぁ、そうだったな・・・」
思い出話に浸りながら、もう片一方のベッドに腰を掛けた
マリオ「その頃には、もう既に感づいていたんだろ?」
色「ええ・・・だいぶ侵食が進んでいましたから」
マリオ「じゃあ具体的にいつからなんだ?異変を察知したのは」
色「・・・実を言うと、リュカさんの家に泊まりに行ったときくらいから気付いていました」
マリオ「じゃあもうそのへんから症状が・・・?」
色「目眩とか微熱とか、目に見えるような症状は大したことはなかったんです。それよりも、中身を削っていく症状のほうが重くてですね・・・」
マリオ「ーそうなのか・・・」
見えないところでも、色は病原と闘っていたんだな。誰にも何も言わずに、不満の一つも垂らさずに
その時その時の笑顔に苦痛を押し殺して・・・
マリオ「色!!」
色「え!?はい?なんでしょう?」
マリオ「ー・・・お前は・・・もっと人に頼ることを覚えろよ」
色「え・・・?」
マリオ「苦しいなら苦しいって言え。嫌なら嫌って言え。ずっと自分だけのものにするなよ。俺達はいつでも隣に居たんだから、少しくらいは頼ってくれよ」
色「・・・でも、それじゃ・・・迷惑掛けちゃうし・・・」
マリオ「みんなが色に迷惑掛けてるくらいなんだぞ。ちょっとくらいのワガママなんか恐れないでいい。それに、みんな仲間だろ。仲間なんだから気が置けないで良い。それとも、ここの連中は頼れない奴等ばかりなのか?」
皮肉混じりの一言に、握り拳をぶんぶん振るモンキーダンスを演じながら即座に否定した
色「そ、そんなことありません!皆さん頼れる人がたくさん・・・ー!」
マリオ「そうだろ?ならもっと頼ってくれてもいいんだよ」
色「でも・・・」
マリオ「あー、今から『でも』ってナシな。あと敬語もナシだ」
色「ええ!?でも・・・!」
マリオ「はいアウト」
色「うぐっ・・・!?」
マリオ「ハハッ。まぁ、頼りすぎるのは良くないが、頼られすぎるのも良いとは云えないぜ」
色「・・・・ーでも・・・そうですね。いつか何者かに生まれ変わったら・・・その時は、誰かを頼って誰かに頼られて・・・そんな存在になるのが良いのかもしれませんね」
マリオ「ああ、そのとおりだな・・・」
言い終わると同時にベッドの上に勢いよく倒れ込んだ
すぐ横を向くと、こっちを見つめていた色と顔が合った
マリオ「んー?」
色「な、なんでも、ありません・・・っ」
顔を赤くしてわたた、と慌てた後、口を尖らせて態とらしく天井を見つめなおす
マリオ「・・・」
それからしばらく会話を交わさことなく、長い沈黙が辺りを覆った
マリオ「・・・色。寝たのか・・・?」
色「・・・」
目を閉じて幸せそうに眠っている。結構だらしないんだよな、この時の表情
でも色の蕩け顔を見るのもこれで最後なんだな・・・
そう思うと、いつまで見ていられる気がする
マリオ「色・・・・」
明日の今頃には、もう色の姿はないのかもしれない
そうと分かっていながらも早く眠りに落ちれるのは、色なりの覚悟の表れなのだろう
などと考えに耽る俺のほうは、覚悟が出来てるのかと訊かれると簡単には頷けない。当たり前だ
長い間慕ってくれた人の死を24時間で受け入れろ、と言われても・・・
人間、そんな事態には急遽合わせられない
マリオ(しかし・・・そうだな。人間のつくりがどうこうより、色がやったってんなら・・・俺も覚悟を決めないといけないのか)
熟睡している色の顔を改めて確認すると、
マリオ「・・・よし、俺も寝るか」
小さな欠伸をしてベッドの中に潜り込んだ




ー7:25

 

目を醒ますと、時計の針は午前6時半過ぎを指していた。色はまだ寝ているのか、布団にしっかり収まっている
九時間睡眠・・・身体の侵食がかなり進んでいる。おおよそ胸のあたりまでだ。この調子だと正午を過ぎたら完全に消滅するだろう
止める手段が無いなら、色の行きたい場所にでも行って最後の思い出でも作りたかったが・・・あの姿じゃ外に出歩くことすら躊躇われる
それどころか、したいこともろくに出来ない
残りの数時間・・・いったい何をして過ごしたらいいんだ
なんてことをずっと考えていると、色の頭がくるり。気持ち良さそうに歪ませた顔をこっちに向けてきた
マリオ「・・・」
色「・・・んにゃんにゃんにゃ・・・、んふっ・・・マリオ・・・さん?」
マリオ「?」
色「・・・あっ、ダメですよ。マリッ・・・・ん、あぁっ・・・」
マリオ「   」
・・・相変わらず何の夢を見ているんだ、早朝のコイツは。時間をどう利用するか真剣に考えていた自分が馬鹿みたいになる
まぁ、色は寝言をよく言う人間なんだ。しかも恥ずかしいことを人に聞こえるくらいの声で
もちろんそんな妄想など聴きえないので
マリオ「お、おい。起きろよ・・・」
色の肩を揺さぶって眠り(妄想)から醒ましてやる
色「あうっ、あぐっ、あうっ・・・んん・・・、はっ!マ、マリオさ・・・お・・・おはよう、ございます・・・」
目を覚ますなり慌てながら会釈してきた
マリオ「あぁ、あはよう」
さっきの妄想から漏れた言葉を拾っていた俺は、いつもより頬を引き釣らせてのニッコリスマイル
その不気味な笑顔から察したのか、色は布団に顔を埋めて小さくなった
色「うぅ・・・          聴いてました?
マリオ「え?なに?」
色「・・・だから、その・・・寝ている時の私・・・変なこと言ってませんでしたか・・・?」
マリオ「あぁ!バッチリ聴かせてもらった!」
色「!!!
おもむろに首を縦に振ると、案の定『タイムセール時のおばはんの突進』以上の衝撃を喰らった感じだ。顔はピンクに染まり、口もちぐはぐになってる
行き場を失った色はガバッと勢いよく布団を被ると、その中でアルマジロみたいに丸くなった。頑なに
マリオ「おーい、出てこいよ・・・」
色「嫌です嫌ですもう自分が嫌いですっ!毎日のようにマリオさんが夢に登場して寝言に出ちゃうんです!そしてそれを聞いたみなさんに誤解されるんです!!どうせ私は救いようのない恋愛脳ですよ!どうせ頭の中はパルスイートよりも甘いスウィーツですよーーーーーーーッ!!!」
マリオ「・・・」
言いたいことを言うだけ言った後、ハァハァと息を切らすのが布団越しに聞こえた
色「マリオさんにまで聴かれちゃった・・・もうオシマイだ・・・嗚呼・・・」
既にキャンプで聴いてんだけどな
マリオ「お、落ち着けよ・・・」
色「~~~!」
布団を引き絞る手にさらに力が籠もった
ここは何か色に味方するような言葉を掛けてやるべきだな
マリオ「・・・夢なんて誰もが見るもんだし、寝言だって色の癖だろ。俺は気にしないから安心しろ」
うわっ、我ながらお人好しだな。しかも気にしないって言っちゃったよ
色「・・・・本当ですか?」
そーっ、と布団から顔をちょこんと覗かせ、上目遣いで様子を伺ってきた
色「本当に、気にしないんですか・・・?」
マリオ「あ・・・ああ。だから出てこいよ」
色「---」
手袋をした右手を、亀みたいに布団を甲羅代わりにした色に差し伸べた
しかし、色がそれを握ろうとした瞬間ー

 

フィジー「ちょっといいかしら」
マリオ「え?って、どわあああぁぁぁぁーーーー!!!!」
マリオの隣に、かき氷を片手にしたフィジーが忽然と姿を現していた。まるで瞬間移動でもしたように
彼女の出現に面と向かっていた色も目を丸くして驚いている
マリオ「頼むからそれやめろ!!いずれ心臓止まるわ!」
フィジー「その心配は要らないわよ。寿命は縮まるだろうけど」
マリオ「充分ダメだろ」
色「な、何持ってるんですか・・・?」
見れば分かるんだが、確かに訊かずにはいられない
フィジー「見て分からない?か き ご お り、食べる?」
マリオの右手に代わり、かき氷を差し出してきた。こんな真冬の候にかき氷食べる奴の気がしれない
色「いらないです・・・」
フィジー「霙とメロンのブレンド味だけど。食べる?」
明らかに季節外れの物だが、それを不審がっている様子はない
この箱入りっぷり・・・さすが令嬢なだけあるな。あと勧誘するな
マリオ「食べねぇよ。それより寒くねーのかよ」
フィジー「好きな物はいつ食べても美味しいのよ」
自分の相棒に視線を移したフィジーは、その相棒をスプーンでつつき美味しそうに頬張る
・・・あっ、今ちょっとだけ目閉じた。頭痛くなったろ
マリオ「つーか・・・何しに来た」
突然の侵入者の目的を探るべく、かき氷を口に運ぶ手を掴んだ
フィジー「あっ」
マリオ「おい」
フィジー「ー・・・。ちょっとだけ、ね。聞きたいことがあって・・・色のことと直接関係はないけれど・・・」
色「?」
マリオの手を振り払うと急いで残りの分をかき込み、少しだけ顔を逸らして言った
フィジー「実は・・・リンクの姿が見当たらないの。昨日の同行を探っているところなんだけど・・・」
マリオ「・・・っ」
そういえばアキュリスの部屋の壁をブッ壊してから消え失せている。その後も彼の姿を見ていない
マリオ「どうしたんだろうな・・・まさか、また迷いの森に行ってたりしないだろうな」
色「そこってリンクさんの安息の場所なんですか・・・」
フィジー「・・・」
マリオ「そうだッ!いいこと思いついた」
フィジー「なに?」
マリオ「ゼルダ姫の探査魔術に頼ってみたらどうだ?」
・・・これはこの状況下では、ちっとも問題発言ではなかった。常識で考えたら良い案かもしれない
ただの提案を口に出しただけなのだが・・・ただ人が悪かったのだ
フィジー「・・・は?」
一瞬にして、フィジーの顔に陰が差した。声色も明らかに低くなっている。あと、目の下にクマが浮かんだ
マリオ「え?いや、だから・・・ゼルダ姫に手伝ってもらったらどうだ?今から起こしにいって、」
フィジー「私が?あの女にものを頼むって?フフッ、冗談は髭だけにしてね?マリオさん・・・」
薄気味悪い笑みを浮かべたあたりで異変に気付いた
なんか・・・怖いな。お化け屋敷の幽霊を側に置いてるみたいだ
肌も白いし、突然現れるし、この笑い方もだし・・・・ヤベえ、本当に幽霊に見えてきたぞ
マリオ「な、なんだよ、ゼルダ姫と喧嘩でもしてるのか?」
フィジー「さぁどうかしらね。とにかくおかげで有力な情報が得られたわ。ありがと」
髪を靡かせながら反転すると、何故か閉まったままの扉に向かって歩き出した
色「・・・でも、どうしてそんなことを調べようと?」
ドアノブに手を掛けたと同時に色がそう訊ねると、
フィジー「・・・」
そのままの姿勢で硬直した。こちらを振り返りもせずに
色「?」
マリオ「どうしたんだ?」
フィジー「・・・」
無言を貫き通したまま立ちすくみ、暫くして出ていった時もやはり何も言わなかった
なにか癪に障っただろうか。でも顔は見えなかったが、怒っている様子でもなかったな
その跡を見つめながらマリオと色はただただ肩をすくめるしかなかった




ー6:10

 

八時頃
眠りから覚めたみんなは普段とは異なり、保健室に集まってきた。全員は収容しきれないので、幾人かは部屋の外で待機してもらっているが
マスター「どうだ、色。具合は」
普段どおりに問いかけると、いつもなら「大丈夫です」と答える筈の色が、少し暗い表情になった
クレイジー「どうしたんだ?」
色「・・・・実は・・・さっき、歩く機能がなくなりました。病人ですからあまり変わりないですけど・・・」
マスター「・・・どういうことだ」
色「このノイズは・・・完全に侵し切るまで身体こそ保たれますが、徐々に昨日を奪っていくんです。喋る機能とか、見る機能は残っていますけど・・・あと、物を消化する能力は昨日の間に消えてしまいました・・・」
着物の振袖をくいっと引っ張り、頑張ってお腹を見せた。そこには、脚からフライングしたノイズが色の胃のあたりを蝕んでいる
色「見る機能がなくなるときは、きっと目にノイズが発症する筈です・・・でも、最期まで皆さんの顔は見ていたいです・・・」
マリオ「・・・大丈夫だ。きっと」
なんの根拠もないが、励ましの言葉を掛けてやるしかない。どの機能がなくなるなんて、これは運だ。俺たちは手出しできない
色「ふふ・・・言いたいこと言ったら、なんかスッキリしました。これでもう大丈夫です。もう・・・恐くありません」
マリオ「そうか・・・」
とうとう色は決心を着けたようだ。だったら俺たちもグズグズしていられないな
アイク「・・・つーかさ、昨日からリンクの奴が居なくなって」
瞬時に話題を切り替えたアイクだが、彼の話題は唐突にブザー音を鳴らしたプレパラートによって遮られた
アイク「ん?なんだ?メリカか」
ぎこちない手つきで映像を映し出した
しかしメリカだろうという予想というか確信というか、とにかくそれはプレパラートが投影した立体映像によって見事に裏切られた
アキュリス『あーあー。こほんっ、天才アキュリス様より入電~』
なんとそこにはメリカではない、巣立ちしたアキュリスの上半身が写されたのだった
アイク「はあ!!?な、なんでお前がこれを・・・!?」
これらは対機の筈だ。そもそも世界に三つとない物だろう
アキュリス『まぁ、そんな細かい話は置いといてさ。そんなことよりとっておきの朗報デース。忘れないうちに話すから、よく覚えておいてね』
アイク「なんだよ。この空気をブチ壊すに相応な知らせなんだろうな」
アキュリス『勿論。えっとねー、実は---』
そこまで言いかけたとき、奥からもう一人の声が聞こえた
???『先パ~イ。朝から何してるんですか~?』
マリオ「・・・?」
人影だけではっきりと見えないな。若い女性ということなら分かるが
アキュリス『ああっ。ちょっと報告をね』
???『ほーこく?そんなのありましたっけ』
アキュリス『いや、あれとはまた別件・・・』
マリオ「おい、ちょっと待てよ!今どこにいるんだ?そこにいるのは誰なんだ?」
アキュリス『昨日言ってた旧友とその家だよ?終点代わりに居候させてもらってるの』
???『ん?先パイ試作品使ってるの?誰と通信してるのか、ちょっとよく見せて』
アキュリス『あっ!ダメ!ほら、そうやって人の物をすぐ盗もうとする!手癖の悪さは相変わらずね!』
???『いいよね?ちょっとくらい。もとは私の私物なんだし』
アキュリス『ダメだってば!』
バタバタとプレパラートを奪い合うという三文コントを披露した。なんかもう・・・見てられないな
アイク「おい。それより朗報をさっさと言えや」
マリオ「そうだ。重要なんだろ?」
俺と同じく、そんな様子を見かねたアイクに続いて茶々を入れてやった
アキュリス『あ?うん。勘で分かってるだろうけど、色に関することね。じゃあちょっと黙っててね?』
???『うぁーい』
アキュリスの催促に従い、謎の人影は軽く返事をすると部屋の奥に引っ込んだ
彼女の後輩ということで正直興味はあったが、結局どんな人かはあまり分からなかったな
アキュリス『さてと。・・・あまり期待させたくないからまず先に断っておくけど、どうやっても侵蝕は止められない。色が消えるのは確定なの。これはしっかり考慮しておいてよね』
アイク「なら一体何を・・・?」
アキュリス『ハッピーエンドは迎えられなくても、最悪のバッドエンドだけは免れさせる。最低彼女の死期だけは回避させるの』
マリオ「ッそれは、つまり・・・」
色が外の世界に戻っても、感染症に侵されることなく生存が可能、ということだ
マスター「しかし、そんなことが出来るのか?」
アキュリス『出来るよ』
自信満々に面と向かって告げた
ピット「・・・本当なの?」
アキュリス『まぁ成功率は七割くらいかな。その代わり、代償はかなり重いけどね』
スネーク「代償って・・・金か」
アキュリス『違うよぉ~!色に対する負担が重いってこと!』
ゼルダ「いくらですか?」
アキュリス『だから違うってば!』
リュカ「じゃあそのダイショーは何?」
アキュリス『うーん・・・、よし。まずは分かりやすいように説明からさせてね。色がこの世から抹消されるとき、外の世界の器と合体するんでしょ?んで、色が分裂する以前に感染した感染症が、今の器にも残っているから死んじゃうわけだ。それを切り抜ける方法・・・それはね、』
映像の中で人差し指を突き立てた

 

アキュリス『ー健康な過去の器と繋げるの。それが出来れば色は死亡することなく生存が可能になる』
・・・それはあまりにも現実とかけ離れていた
ネス「現在の意識と、過去の体を・・・繋げる・・・?」
アキュリス『そう。俗に云う、歴史を変える、ってやつ』
アイク「・・・そんなタイムマシンまがいの物でもあんのかよ」
アキュリス『あるよ』
アイク「・・・」
即答しやがった。どういう構造なんだ、こいつの頭は
アキュリス『もう分かっただろうけど・・・代償っていうのは時間のズレだ。身体はともかく、中身は分裂していた時間だけ年上になる。それが原因で二次症状が発症しないとも言えない。だからこれは完璧な手段じゃないの。実行するもしないも、彼女の意志次第だよ』
色「・・・」
アキュリス『まぁ、猶予は残ってるし、じっくり考えるといいよ。消える瀬戸際になっても問題ないわけだし・・・』
???『・・・先パイ、その件なんですけど・・・』
恐る恐る口を挟んだ後ハイ
アキュリス『ん?何か問題あった?』
???『ええ、まぁはい・・・そうです、あります。実は使用する機器が壊れかけなんです。古くてデリケートな代物ですから・・・。今から全部直そうとすると、一日じゃあとても終わらないですし・・・午前10時30分以降使用不能になる、って言ってました。だから時間は圧してます』
アキュリス『え?それって・・・結構ヤバいんじゃないの?』
今は・・・9時45分だな

 

・・・って、あと一時間しかないじゃないか!!それまでに決断しろってのかよ
アキュリスも、あちゃー、って顔してるな。どうも想定外だったらしい
アキュリス『・・・でもまぁ、これは仕方ないよ。あの子がそう感じたんなら、機器がオフしちゃうのは明確なの。だからそれまでに考えておいて。リミットを過ぎたらもうこの手は使えない。もしも使ったら、色は過去の身体と合体した時点で消滅してしまう。早めに消えて生き残るか、長く足掻いて死ぬか。選択肢は二つだけね』
早口で、そっれでも簡潔に説明を終えると、有無を言わさずに通信を切った
色「・・・」
マスター「また決める事が増えたな」
時間と二次症状というリスクを犯す代わりに生き延びるのを選ぶか、このまま死を待つのを選ぶのか
マリオ「・・・そんなの決まってる。色が生きれるように早くアキュリスに頼んでやる」
マリオの意思に全員が頷いた。みんな考えていることは同じだろう
ファルコ「当然だな。それでいいだろ」
アイク「じゃあ連絡するぜ・・・・ん?」
誰かが、プレパラートを展開しようとしたアイクの袖を摘んだ。まるで通信するのを拒むように
それは・・・
色「厭です。私は・・・このままがいいです」
囁くような小声で開口一番異を立てると同時に、首を横に振った
・・・あり得ない
アイク「な・・・なに言ってんだよ・・・?このままだと死ぬんだぞ!?分かって言ってんのかよ!」
色「充分に理解しているつもりです。それでも譲りません」
頑なに反対する色の表情はいつになく真摯だ
クッパ「どうしてなんだ?なんで生きる選択をしない?」
そう尋ねると・・・

 

色「・・・だって・・・・・向こうの世界に、マリオさんは居ないから・・・ちっとも嬉しくないんです」
マリオ「---っ!」
それは彼女の本心からの言葉だった
色「・・・マリオさんの居ない世界で一生を過ごすより、今の時間のほうが私には大切なんです。だから・・・」
マリオ「そんなこと言っても仕方ないだろ・・・!俺はお前が死ぬようなことはさせたくないんだよ」
強制で実行してもらおうか
いや、アキュリスは俺達の希望ではなく、色の意思を尊重するように言っていた。色が拒絶している今、アキュリスは恐らく俺達が何と言おうと実行しないだろう
色「これだけは譲れないです。自分の最期くらい自分で決めます」
マリオ「お前一人の問題じゃないんだ!。皆は色に生きて---」
色「好きな人と生涯会えないなんて生きていけませんッ!」
マリオ「たかがその程度のことで、命を無駄にするなッ!!!」
アイク「おい・・・っ!」
色と口喧嘩するなんて初めてだな。アイクに窘められたが、興奮してつい怒鳴ってしまった
俺の叱咤を真に受けた色は驚きに目を見開いて、しばらく言葉を失った
色「ー・・・その程度・・・って、何ですか?・・・無駄って・・・ああやって、一緒にお話していたのは・・・全部、マリオさんにとっては無駄だったんですか・・・!?」
マリオ「な・・・そんなこと言ってないだろ!」
普段から大人し目だった色が叫んだものだから、流石のマリオもたじろいだ
色「どうせマリオさんには分からないんですよ!だって・・・・・だって、マリオさんは別に私のこと好きじゃないからッ!!」
マリオ「・・・!!」
色「私が片思いしてるだけでッ、一度も『好き』って言ってもらえずに・・・!そりゃあ私も最初から気がない、って知ってましたけど!せめてどんな形でもいいから返事が欲しかったんです!でも・・・どうせ、今のこんな私なんか嫌いだって思っているんですよッ!」
息が荒くなり、途切れ途切れに呼吸を挟みながら泣き叫んだ
マリオ「そんなことない!俺は、」
色「もういいです!私のことは放っておいてくださいっ!!」
・・・もし歩けたなら、終点の外まで飛び出していただろう
しかしそれは叶わなかったので布団の中にくるまると、啜り泣く声を必死に抑えようとするような、そんな嗚咽を漏らした
ピーチ「・・・」
マリオ「ー・・・クソッ。もう・・・どうしたら、いいんだよ・・・!」
泣きたくなる衝動を食い止め、隣のベッドで頭を抱えた
どうしたら分かってもらえるんだ・・・
周りの気遣いより、自分の望みを優先してほしいと言う色の初めてのわがままだ。その想いを曲げるつもりはないだろう
ならこちらが折れるしかないのか・・・だが、そうすれば色の命は途絶えてしまう。でも色を説得する以外に他に道はない
マスター「・・・残り30分ほどだ。適合に時間が懸かるだろうから、もう少し短いぞ」
マリオ「っ!」
それまでに説得しなければ色は助からない。その色は今も布団の中で涙を堪えている
ここは一つの修羅場。覚悟を決めなければ
マリオ「・・・おい、色。俺はお前に嫌われる決心だ。好き嫌いとか、そういう感情を関係無しに、俺は皆の意志の一部として分からず屋のお前を説伏にかかる」
色「ッ---!」
そう言ってマリオが布団に手を掛けた。色がよりキツく布団を引き絞った
と同時に、扉に凭れていた奴らが吹っ飛んだ

 

GW「・・・」
何が起きたんだ
といった表情を見せたのは、ついさっき扉を勢いよく開けて注目を惹いた・・・リンクだった
リンク「・・・何かあったみたいだな」
どっちのほうだ、と聞きたいが、そんなことを言っている場合じゃない
ファルコ「おい!いきなりドア開けンじゃねえ!」
リンクに吹き飛ばされ壁にぶち当たったファルコが真っ先に抗議した
リンク「ドアに凭れる貴様が悪い」
そんなファルコに煽るように手を振って突き放す
アイク「何してたんだよ、昨日から」
リンク「あぁ・・・少し遠出をな。大したことではない」
アイク「?」
リンク「・・・いや、なに・・・海岸まで行って、『馬鹿野郎ー!!』と叫んで帰ってきたのだ。ハハッ」
後ろ頭を掻いて少し照れたあと自嘲気味に笑っている
アイク「・・・なんだよそれ」
そんな意味不明な行為に呆れ返ったアイクが嘯くと、当の本人であるリンクも同調した
リンク「そうだ、俺も自分に聞きたいくらいだな。衝動的に行動したのだから。だが・・・・意は決したぞ」
アイク「・・・」
最後の台詞からして、リンクも意志が固まったようだ
息を吐いたリンクは話題を切り替えるかのように、ベッドの上の物体にさっと視線を移した
リンク「それで・・・何だコレは」
マリオ「・・・。少し長くなるが説明する」

 

一通りの説明を終えたが、案の定話が理解出来なかったようで、顎に手を当てて考え込んでしまった
リンク「むぅ・・・」
マリオ「理解出来たか?」
リンク「いや分からん」
マリオ「だよな・・・」
この現象自体俺にもよく分からない
ただアキュリスとその後輩が何かしらの装置を使って色を過去に返す、というのが大まかな説明になるかな
そんなマリオを余所に、近くのイスに足と腕を組んで考えこんでいたリンクは、しばらくすると手招きでフィジーを呼んだ
フィジー「?」
リンク「いいから来い」
フィジー「・・・」
とてて、と歩み寄ったフィジーに、リンクは突然、ぐいっ。彼女の細い腕を引っ張り、顔と顔とを近づく距離にまで引き寄せた
フィジー「!?だ、だだダメよ、こ、こんな所で、そんな・・・!」
リンク「・・・何を勘違いしているのか知らんが、お前に聞きたいことがある。横、向け」
顔を赤らめて右を向いたフィジーとは逆に、神妙な顔つきで彼女に耳打ちをし始めた。でも・・・リンクの奴、さりげなく身体触ってないか?
あと何やら話しているようだが・・・小声で聞き取れないな
うんうんと頷くフィジー。ゴニョゴニョと話を続けるリンク。そんな二人の空間が終了すると、リンクは確信を得た、とばかりにニッと笑った
マリオ「何か分かったのか?」
リンク「いや、それより・・・もう時間がないんだろう。手早くそいつを納得させてやらねばならん。ったく、こう口も利けんようじゃ、一緒に居ても嬉しくないだろうに・・・」
語尾のほうは消え入るような声でグチグチ言っていたので、中身はよく分からなかった
リンクは布団に丸まっている色に近づくと、バシッ、っと一叩き。続けて二回、三回
リンク「おい、いつまで拗ねているつもりだ。お前も理解してるんだろ、自分が合理的でないことぐらい」
叩いた手でぐっと布団を引っ張り上げると、その布団の裏にへばりついていた色ごと持ち上げられた
リンク「・・・」
もう一度叩くと、ぽとんとクレーンゲームの景品のようにベッドの上に落ちた。頭を柱にぶつけながら
とたん、リンクの顔が険しくなった。いち早く違和感に気付いたのか、
リンク「おい。顔・・・見せろ」
命令口調の堅い声で色に向けて言い放った
色「・・・っ」
ネス「・・・なんていうか・・・ちょっとだけ、おかしいよ?」
リンクだけじゃない。ここにいる大半が感じただろう
彼女の手が、顔を覆いかぶさるように隠しているのだ
まるで見せたくないものでもあるかのようだ
リンク「いいから見せろっ」
色「・・・ッ!」
いやいやして抵抗する色はまったく明後日の方を向いている。どう考えたって変だ
ついに色の腕を押さえつけ、彼女の顔を露わにした。その瞬間、背筋が凍るような感覚が走った
マリオ「!!」

 

---色の両目周辺が、黒に変色していたのだ




視覚を失った。もう皆の顔も、姿も、自分の身体のことすら分からなくなったのだ
ついに運にまで見放されて・・・いったい、色はどこまで痛めつけられればいいんだ
色「あ・・・ぅ・・・」
苦しそうに息を荒くする彼女の顔の上半分は、既にノイズにやられている。辛いだろうが、もう泣くことも出来ないだろう
リンク「・・・」
色「・・・マリオさん・・・どこに、居るんです、か・・・?」
色が虚空に手を伸ばし、手当たり次第探るようにフラフラと漂わせた
マリオ「こ、ここだ。ちゃんと隣に居る」
その黒化した手をマリオが握ってやると、落ち着いたのか、安堵の息を吐いて小さく微笑んだ
ついさっきまで喧嘩して泣いていたのに・・・やっぱり想いは揺らぎないな
リンク「・・・待っていられないんで水を差すようで悪いが、色。外の世界に戻るつもりはないのか」
横で見ていたリンクが口を開けた。その言葉の裏には何かを含んでいる感じだ
色「・・・・・ない、ですけど・・・」
リンク「それは何故だ?」
色「え・・・?えぇっ、と・・・その・・・っ」
リンク「言い辛いことを訊いたようだな。まぁ、理由は分からんでもないが・・・」
そこで言葉を切ると、チラリとフィジーを横目で見た。それに応じるかのように点頭で合図する
・・・なんなんだ、この流れは
リンク「では、この際だから言っておく。・・・・九分九厘、あちらにもマリオはいるぞ?
マリオ「ぬ!?」
色「・・・・・え?」
あまりにも突飛なことに、つい声を上げちまったよ
マリオ「お、おいっ!デタラメ言うなよ・・・!」
リンク「なんだ、虚言ではないぞ?紛いも無い事実だ。阿呆は、再度、見直してこい。記憶を辿ればすぐに解るさ」
マリオ「いや待てよ!現に俺はここにいるわけだし、色は過去に戻るんだよ。俺が向こうの世界に行ったところで、だ」
リンク「・・・!そうか・・・過去に戻るのか・・・。いや・・・あぁ、問題はないな」
よく解らないが、リンクは意見を変えないようだ
そしてもう一度色に向き直ると、
リンク「どうだ、色。時間は少しズレるかもしれないが、マリオに逢える可能性はある。戻りたくなったか?」
色「あぅっ、え、ええっと・・・?」
狼狽える色はまだ状況が呑み込めていないようだ
それでも精一杯固唾を呑んで、僅かに震える口を開いた
色「・・・信用、しても・・・・いいですか・・・?」
リンク「構わないさ。偏差値90が保証する」
再び笑みを見せたところで、アイクがさっきとはうって変わって素早くプレパラートを展開させた
アイク「おい!アキュリス聞こえてるか!?いいから早く頼んだぞ!」
アキュリス『遅っーーーい!!もう5分もないよ!待ちくたびれそうになった!ほら、アンタも手伝って!』
???『うー、ラジャー!』
急いで準備に取り掛かるアキュリスの奥に、ドデカイ装置が佇んでいるのが見える。その装置の裏では謎の後輩が配線を接続しているようだ
マリオ「こっちでは何をしていればいいんだ!?」
アキュリス『色を寝かせといて!照射はこっちでするからそれだけ!あとは出来るだけリラックスさせて!予定は2分後!』
マリオ「わ、分かった」
・・・・・いま照射って言わなかったか?レーザー光線でも撃つつもりなのかよ
でも集中してる彼女の気を逸らすのはよくない、と思い訊ねることはしなかった
マリオ「・・・色」
色「・・・」
マリオ「あー・・・まぁ、俺にもよく分からんが・・・もし向こうの俺に逢ったら・・・嫌いにはならないでくれ」
色「もぅ・・・・私がマリオさんのこと、嫌いになる訳ないじゃないですか」
頬を膨らませて言ったあと、口だけの笑顔を見せた。少しだけ赤く腫れているが・・・
マリオ「そ、そうか・・・」
いつの間にかあの件がうやむやになったことに口元をほころばせた
でもその笑顔もこれで最後だ。色は助かり、この世から消滅する
だったら、伝えておかないとな。後悔しないように・・・色に、自分なりの真情を
マリオ「・・・なぁ。色、聞いてくれるか?」
色「?」
若干手に汗を握った。俺は今いったいどんな表情をしているんだろうな
色も真面目な顔をしてこっちを向き直った
マリオ「・・・・俺・・・お前のこ---」
・・・残念だが、先の言葉は紡がれなかった。紡げなかった
アキュリス『はいはいはい、のいてのいてーー!ほら下がって!』
マリオ「---」
大声量の邪魔に話を盗られた。無念なり・・・
アイク「さっきからうるせぇよ。もう準備完了なのか?」
アキュリス『オッケーだよッ!けどもう時間がないんだよ!惜別の言葉あるならちゃっちゃと手短に手早く、ね!』
相当焦ってるな。ということは、もう機械が壊れる寸前なんだろう
色「それで・・・何だったんですか?」
マリオ「ああ・・・いや・・・まぁ、なんでもないぜ・・・」
雰囲気というか言う気が一瞬にして失せてしまったので、色の追求は適当にはぐらかす
マリオ「あ!それよりも、さ・・・・これ、やるよ。形見とでも思ってくれ」
そう言って俺が差し出したのは・・・
色「???」
マリオ「帽子だよ。Mのイニシャルが入った」
それは俺が毎日欠かさず身につけていた、赤の帽子だった
色「わぁ・・・いいんですか?コレ、マリオさんの大切な物なんじゃないですか?」
マリオ「いいのいいの。在庫は大量にあるんだし」
色「そうなんですか・・・。とにかくありがとうございますっ。コレ、一生大切にしますね!」
賞状でも受け取るかのように帽子を手にした色は、心底大切そうに抱きしめた
・・・まあ、まずは外の世界に持ち出せるかどうかなんだけどな
色「あ、そうだっ!」
何かを思い出したのか、色がぽんっと手を打った
色「私、リンクさんにお返ししなくちゃならない物が・・・」
マリオ「リンクにか?」
色「そうです!」
ごそごそと着物の帯を探り、目が見えないぶん手惑いながらも一本の棒を出す
その正体は、いつぞやのリンクが色の脱半人前を祝して、と言って渡した小刀だった
鞘に収めたまま空中をぶらぶらさせている。リンクに渡そうとしているんだな
マリオ「おぃ・・・受け取ってやれよ」
リンク「・・・」
難しい顔をしているリンクを肘でつつく。すると組んでいた腕を解き、小刀を握っている色の手を掴んで彼女の胸に押し付けた
これは・・・受け取り拒否ってことか
色「・・・?」
リンク「俺はくれてやる、と言ったんだ。返す義務はないし、返される権利もない」
色「えっ・・・でも、」
リンク「でもはナシだ。いいから受け取っておけ」
色「うー・・・」
リンク「・・・要らないなら返せよ」
色「い・・・いいです!有り難くいただきます!ありがとうございますッ」
リンク「そうだな。俺もそのほうが気も動きも楽だ」
どこか満足したかのように言うと、丁度アキュリスからのコールが鳴り響いた
アキュリス『・・・転移、開始するよ。やるべきことはやったね?そっちの具合は?』
???『正常作動に失敗する確率0.000000001%(ナインワン)。特に問題ありません』
アキュリス『なら大丈夫ね。転移開始するよ、みんな色から離れて』
今から何が起こるのか。先ほどの言葉からして危険なんだろうが・・・
アキュリス『ここから色に透明の光線プラズマを撃ちます。それをしばらく撃ち続けたら色々あって過去の器と合体するの。このプラズマの構造は、0と1の集合体で電子虚構世界の・・・』
アイク「おい、理屈はいい。お前たまに暴走するよな」
アキュリス『そーかもね。でも一言いっておくと・・・ちょっとでも触れたら色は一生電子虚構世界にさまようことになる。だから気を付けて』
やっぱり危険なものだった。電子なんたら世界の意味は知れないが、今の一言でみんな部屋の隅にまで下がったぞ
???『リ・・・リミット27sですよ、先パイ!ヤバいです!プラズマが逝きそうですよ!』
アキュリス『長話したね・・・プラズマ稼動させるよ』
マリオ「じゃあ・・・・あっちに戻っても、元気でな」
最後に色の手を取ると、別れの言葉を告げた
色「ー・・・・マリオさん・・・」
言葉も早く切ると、何か言いたげだった色の傍らを離れた
アキュリス『じゃー行きますか・・・・。スイッチ、ON!』
立体に浮かび上がったアキュリスの指先が、発射装置のボタンを押した。それに応じてプラズマが作動音を鳴らし始めた
マリオ「・・・」
これで色は感染症のかかった体ではなく、過去の体へと移される







































・・・筈だった




色「・・・ッ!?」
光線を浴びたであろう色の体がびくんっと跳ねた
同時に・・・ノイズ化の速度が急激に速まっている!?
それだけじゃない。色の全身が・・・
色「あ・・・ぐッ!ぅ、ああ・・・あ!」
腐敗していくように、ノイズに侵された細胞がボロボロに壊れて削れていっている・・・!
ベッドの上で苦しそうに顔を歪める
アイク「おい!どうなってんだよこれは!!」
???『脳波値異常・・・!ルーチンワークは正常に作動しているのに・・・心拍数もどんどん減少しています!こ、これは一体・・・!?』
アキュリス『わ、解んないわよ!ただ・・・解んないわよ!!とにかく止めて!!早く!!』
???『とっくに停止してますってば!』
ダメだ。この未曾有の事態で完全なパニック状態に陥っている
マリオ「色!!」
薄れながら、分解されながら悶える色に急いで近寄る
俺のことなど見えてないのか、脚や腕を暴れさせてベッドに強く打ち突ける。脆くなった細胞がその衝撃に耐えきれずに崩れていく
詳しくは分からないが、素人目で見ても予測が立つ
これは・・・












外の色を襲った、感染症の症状だッ!
細胞の結合力が極端に弱くなる。それがこちらの色にも影響を及ぼしているということは、過去の色も感染症にかかっていたというのか?
いや、そんなことはどうだっていい!!
あと数十秒、もしくは数秒で色は消滅する。それは火を見るよりも明らかだ
しかもこんな望まない終わり方で、誰も予測しなかった展開で
でも俺は・・・そんな形で終わらせたりは、絶対にしない!
今まで無情な事が連続して、苦痛に呻いて・・・散々な目に遭ってきた。最後の最期まで
だがそんな顔をしてこの世界から、もしかすると二つの世界から消えていってしまうのは嫌だ
だから俺が今してやれる・・・一番のことをする。それで願わくば、お前がこの苦痛の中でどれだけ小さくても、確かな幸せを見出せたなら・・・それで十分だ
マリオ「いいか、よく聴けよ!!!」
色「うああ・・・あっ!マ・・・マ、リ・・・ぅ・・・ああああ!・・・ッ!」
透けている色の手をもう一度握り締め、またもう一度、俺の名付けた名前を叫ぶ
マリオ「色!」
色「ッ・・・!」
色が痛みを堪えながらこちらを振り向いた
言うなら今しかない。今を逃せばもうチャンスは無い
そういえば色も俺にはっきりとは言ってなかった。ただ確かな行動でそれを示してくれた
なら俺は、確かな言葉として伝えてやる



















マリオ「好きだッ!!!」



















天地神明に誓って、それは心の底からの想いだった
突然の告白を受けた色は・・・苦しみの中、口元を少しだけ曲げて・・・・・弱々しく笑った
力が入らないのか微笑になっているが、それは作り笑いなんかじゃなく、本心からの淀みない、純粋な精一杯の笑顔
マリオ「色・・・っ」
色「マリオ、さん・・・私もッ・・・マリオさん、が・・・---」
衰弱しきった声で必死に言葉を紡いでいく
だがその努力も虚しく言い終わることのないまま、しかし最期までその笑顔を絶やすことなく、








少女は この世界から跡形も無く消滅した
満遍なく食べられた鮎のお頭を残して・・・




アイク「逝っちまったな・・・」
マリオ「・・・嘘だろ・・・色」
俺は、亡き人の寝ていたベッドに突っ伏したまま
実感が湧かないが、今日から色が居なくなる。この目で見届けたんだ
その後は向こうの世界で・・・感染症に侵されて死んでしまうのだろうか
ラトビア「えぐ、ひっぐ・・・し、色が・・・死んじゃうとか、ヤだよ?絶対生きていてほしいし・・・あんなの、酷すぎるよ・・・こんなのってないよ・・・!」
フィジー「・・・」
どう足掻いても結末は変わらなかった。俺たちでは変えることが出来なかった
室内全体がラトビアの泣き声に支配されたその時
アイク「なあ、アキュリス・・・」
アキュリス『言いたいことは分かってるけど・・・プラズマに誤作動はなかった。何か思い違いをしていたとしか考えられないわ。でも何年も前の体に感染してたなら、現在まで持ちこたえられる訳がない』
内容は不明だが、何かしらの間違いがあったのは確かだ
その思案を巡らせていると、プラズマを整備していた女性の腕が突然現れ、何かをアキュリスに手渡した
???『あのー・・・先パイ、これって・・・』
アキュリス『何これ』
???『プラズマを放った際、偶然抽出された物で・・・。誰かの記憶を物質化した物と思われますよ。再生しますか?』
アキュリス『え・・・!?ちょっと待って!』
慌てて別の部屋へと駆け込んだ。また何かの機械をイジッている
そして後輩から受け取ったものをしばらく眺めていると・・・
途端、アキュリスの顔つきが変わった。真剣な顔から一転して、フィジーと話し終えたときのリンクと同じような表情だ
アイク「・・・っ?」
アキュリス『そっか、そういうことだったのね・・・。全部読めたよ』
また確信めいたことを平然と言ってのける
マリオ「読めた、ってどういうことだよ?」
アキュリス『待ってて。いまそっちに映し出すから』
???『アリスには見せてくれないんですか?』
アキュリス『あんたは別にいいでしょ。よいしょっと』
プレパラートからスクリーン並の一際大きなディスプレイが飛び出した
そこに映っていたのは・・・
ネス「これは・・・・・まさか、ポーキーの!?」
薄暗い部屋。人一人入れる程の大きさをした、コードが大量に繋がれたカプセル
ポーキーの中枢にも類似した物が見られた
アキュリス『冷凍睡眠装置、ってやつね。人間を血ごと凍らせて年齢を固定化したまま未来へと引き継がせる・・・。じゃあこの中に入っているのは誰だ?』
画面がカプセルにズームアップしていく。透明のケースだから、目を凝らせば・・・
マリオ「!!!」
映像の焦点が合い、冷凍睡眠装置の中に収められている人物がくっきり見えた瞬間、驚愕に目を見開いた
そこには、幾つか幼さを感じさせる・・・・色の顔が映されていたのだ
これは一体どういうことだ・・・
フィジー「---色は・・・何十年も前に産まれた人間だったのよ」
じっとしていたフィジーがいきなり口を挟んだ
マリオ「!?」
アキュリス『正解。いい勘してるじゃなーい』
マスター「理解出来るように説明してくれ」
フィジー「だから・・・ずっと昔に誕生して、ずっと昔に感染症に染っていたの。当時の医学では手のつけようがないほどの。そこで医者は考えたわけ。未来に託す、ってね。そのときに冷凍睡眠装置が使用されて、色は何十年も眠り続けていた。きっとその期間に転送してしまったんでしょうね。だから色は感染症に侵されたのよ」
アキュリス『ちょっと考えてみてよ。色は今も眠ってるわけ。死の直前で止まっているにせよ、凍らされてたら崩壊も進行のしようがない。つまり・・・』
マリオ「・・・色は、医学が一定まで発展したら・・・助かるのか!?」
アキュリス『ズバリ!!そーゆーことーーッ!いやあー、結果オーライですなあ!でもこれで私も安心安心!後は向こうの医者に任せてわたブツッひいでへぇ・・・ひ、ひら噛んだ・・・!』
上機嫌になって喋りまくったせいで舌を噛んだ。いきなり何だ。ムードをぶち壊しやがって
いや、でも・・・・何より・・・

 

マリオ「色が、助かるって・・・!」
アイク「おらっっっしゃあああああぁぁぁぁーーーー!!!!」
この上ない朗報に、アイクが途轍もなく大きなガッツポーズを決めた
ラトビア「やったあああぁぁーーー!!!」
対抗するようにラトビアも両手を上げた。ついさっきの鼻水やら悲し涙やら嬉し涙やらが混じってえもいえない顔になっているが
俺も・・・ヤベえな。勢いで告白した時のこととか思い出すと泣きそうだ
マリオ「・・・」
俺は本当に色のことが好きだった。でも、もう逢うことはない・・・
いつも隣にいて自分のことを慕ってくれて、照れ屋で甘えん坊で、時々ハプニングを巻き起こして、誰よりも優しくて可愛い・・・
・・・そんな色と二度と会えなくなるのか・・・
リンク「・・・なんだ、ヒゲ。泣いてるのか」
マリオ「は?俺は別に泣いてなんか・・・」
リンク「なら何故このシーツが濡れている?」
マリオ「え?」
俺がずっと凭れていたベッドの上に、黒色の斑点がぽつぽつと点在していた。それは紛れも無い、俺の目から垂れた涙だった
マリオ「あ、あれ?俺・・・泣いてるじゃねか・・・!なんだってこんな・・・、泣くことなんかねぇのに・・・!」
リンク「泣くことがみっともないことはない。泣きたいときは思い切り泣き叫べ」
マリオ「な、泣いてなんかたまるか。色は笑っていったんだ。だから俺は泣かないぜ」
ごしごしと涙を拭き取るが、それでも負の感情は拭えない
マリオ「色、俺は淋しいな・・・お前が居なくなると一ヶ月は眠れそうにない」
アイク「お似合いじゃねえか。色がマリオの分も寝るってことで」
マリオ「どんな均衡の取り方だよ!」
アイク「それが丁度良いぜ!」
そんなふざけたことを言い放つ
でも、こうやって気を紛らわせてくれてるんだな。やっぱりコミュニケーション力のある奴だよ

 

・・・色・・・
この先逢うことはないのかもしれないが、いずれお前の治療が成功することを全員で祈っている
だから・・・絶対に元気になってくれ。見えない所でエールを送っている
もし逢えるようなことがあったなら光より速く駆けつけてやるよ。・・・まぁ、それだけ想いが強いってことだ
そして俺はいつだって、お前を好きで在り続けるからな・・・・・・
























-END-








エピローグ

「は・・・ー」
薄暗い部屋。そこに安置されているカプセルの中で帽子と刀に挟まれつつ目を覚ました
ここは・・・
温度を取り戻しつつある身体を動かし、カプセルの上蓋を懸命に持ち上げる
煙を立たせながら開くカプセルから身を乗り出し、周りを見渡す
そこには同じような機器が数台と一つの人影がひっそりと佇んでいた
「・・・やぁ。ずっと君を待っていた」
白衣を着たその人はこちらを向くと、大きな鼻と髭をたくわえて微笑んだ。その笑顔には優しい人柄が滲んでして、本当に待っていたんだと言っている
「・・・」
「今まで見ていた夢を覚えているかい?誰かと共に過ごした長い長い夢を」
「夢・・・?」
私は夢など見ていただろうか・・・
「色。君の名をこう呼ぶ人間が居ただろう」
「シ、キ・・・・?」
でも・・・その名前を覚えている
「あぁ、色だ。色。いいか、よく聴けよ・・・好きだ
「わ、わたしも・・・」
そんなの・・・決して忘れたりはしない
脳裏に色濃く焼き付いたあの毎日を、あの言葉を、あの人達を


そういえば、この人も・・・大好きだった彼と・・・どこか似ているような・・・












けれども 私はまだ知らなかった


この先に待っている、私を一変させたあの悲惨な出来事を・・・・