スマブラ個人小説/Shaillの小説/スマブラキャラの毎日 20

Last-modified: 2014-05-26 (月) 01:24:16

始めに

20より先は「for WiiU、for 3DS」版となります
設定はXより半年後の世界です
キャラの中身に(一部例外)さほどの差はありませんが、世界観が大きく変わります
でもまぁ・・・まだ発売されてないですし・・・
キャラクターは発表され次第、随時入荷させます

 

オリジナル要素が結構強いです!

epsode1 第0章 プロローグ

女の話をしよう


最初は、女は家族の中の三女だった


あるとき、女は初々しい冒険家だった


あるとき、女は王様の遣いだった


あるとき、女はか弱い水兵だった


あるとき、女は老夫婦の養子だった


あるとき、女は優秀な泥棒だった


あるとき、女は世界一の工作員だった


あるとき、女は恭しいメイドだった

 
 

最後は・・・・女は優しい母親だった

第1章 地球にやって参りました

ーあの日から半年が経つ・・・
終点は色の消滅を基にし、二世界間の一体化を秘密裏に迎えていた
しかし外の世界から中の世界に来ることは不可能であって、ほぼ一方的な進出となっていた
それに加え、とあるエセ暴君がシリア近辺で大暴れしている手に負えないなんとかしろ、というクレームが各国から殺到


と、いうわけで・・・




マスター「地球にやって参りました」
「「いやなんでだよ!!?」」
目の前には水平線。後ろは木の生い茂る雑木林。マスターによって、終点から文字通り絶海の孤島へと飛ばされたのだ
マスター「・・・理由は知ってるだろ」
ラトビア「スケールが大きすぎるよ!比喩抜きで世界が変わるってことでしょ!?」
マスター「仕方無いだろ。周りからの苦情がうるさくてな・・・・。まずこの世界に場所を移すことだってかなり大変だったんだ」
マルス「ってかここ何処なの?」
マスター「カナダからちょい西の太平洋に浮かぶ島だ。今日からこの島は人口40人程度の独立国家になる。つまり国だ。名前は終点で」
アイク「進歩ねーな」
ゼルダ「今あちらの世界はどうなっているのですか?」
マスター「クレイジーに任せてる」
ルイージ「・・・」 ←羨ましい
リンク「ふんっ・・・国一つがそう簡単に背負えるものか」
マスター「無論お前たちにも協力してもらうぞ」
オリマー「・・・というと?」
マスター「この小さな島に住む私たちが世界に誇れるものといえば、軍事力ぐらいだ。だから・・・お前たちにはメリカに習い、国々へ派遣させてもらう。そこで傭兵となって稼ぐんだ」
アイク「なんかだりーなぁ・・・」
マリオ「傭兵団団長がいまさら何言ってんだよ」
するとアイクの愚痴を耳にしたマスターの目が光った。耳も目無いけど
マスター「・・・そう言うと思っていた」
アイク「なんだ、分かってたんならやるなよ」
マスター「いや、大丈夫だ。お前みたいなクソ人間のためにちゃんと対策も練ってきた」
アイク「おい・・・」
クッパ「・・・というと?」
マスター「・・・。ランキングを付けるんだ」
サムス「・・・というと?」
マスター「流行語大賞でも狙ってるのか!?」
サムス「いや別に・・・」
クッパ「え、狙ってなかったの?」
マスター「どっちでもいいわ。では気を取り直して・・・・通称『ROSSA』─Ranking Of  Special Skill Ability─の略式だ。常世で強い人間、心の優しい人間のランキングなんだ。この順位を上げるには、部隊でもフリーランスでもいいから戦闘員として働くしかない。その業績が反映されるからな。あと、ここにランク入りするには実力はもちろん、戸籍も必要だ。面倒だろうから勝手に登録しといた」
ピット「じゃあそのランキングはどうなってるの?」
マスター「気になるだろ・・・?」
アイク「・・・まぁ・・・確かにな」
マスター「それは次の回で発表する」
ピクミン「(。ノωノ)」ズコー
オリマー「どうせリンクとかメタナイトが上位なんでしょ」
マスター「メタナイトは世界を駆け回っていて忙しいからランク外だ」
ピーチ「まず参戦するかも危ういですし」
カービィ「ぽよ~・・・」
フィジー「じゃあリンクは?」
リンク「・・・」
マスター「それがな・・・少し驚いたことになってるんだよ」
デデデ「というとゾイ?」
マスター「いい加減にしろ!あとお前が言うとなんか違和感あるんだよ!」
まぁ、全ては次回のお楽しみってわけだ
ディディー「あ、作者」
おぉ、もう出れないんじゃないかと思ってたぞ
マリオ「だからって前触れなしに出るなよ」
まあまあ・・・
おっと、そうだ。今作も新キャラが登場するぞ。その代わり俺の登場は自重するぜ
CF「え?なんで?」
シリアスストーリーが顕在するから、 後々の物語の障害になるんだよ。まあ、しばらくはボケやるが
ピット「さっきからちょっとずつメタイよ」
まあまあ
ソニック「マアマア」
トゥーン「まあまあ!」
リンク「まあまあ」
ピット「うるさいよ!」
マリオ「そういえば新キャラって誰なんだ?」
それも次回のお楽しみだ
マリオ「マジか。なら早く終わろうぜ」
マスター「ではそろそろお開きにするか」


これから新しくスマブラキャラの毎日をお送りすることになりました
宜しくお願いします

第2章 新しい仲間を紹介するぞ

マスターが向こうの世界から転送した終点(施設)のホールの中、目を輝かせたスマブラメンバーがマスターに詰め寄った 
マスター「暑苦しい」
マリオ「さぁ、次の話に入ったぞ」
アイク「俺の順位を教えろ!」
マスター「お、落ち着けよ・・・」
トゥーン「ワーワー!!」
マスター「あっ、子どもは問答無用でランク外だ」
ラトビア「ええぇーー!?」
ガイアナ「・・・どうせランク外だろ」
フィジー「まず19歳は子ども扱いなのかしらね」
ピット「ねぇ、やっぱりリンクが一位なの?」
マスター「とりあえず見てみな。堂々の三位以降だぞ」
胸を踊らせて見つめるスクリーンに、三人の名が映し出された


一位 一色人間〈モノクロ〉
二位 呪いの男〈ディエス・イレ〉
三位 無限の剣〈プロジェクション・アンリミテッド〉


「「・・・?」」
・・・名前、か?
マスター「あぁ、済まん。それは二つ名だ」
「「(。ノωノ)」」ズコー 
マリオ「前もって編集しとけよ!」
マスター「まぁそう怒るな。ちゃんと教えてやるから。まず、リンクは三位だ。無限の剣、PA。格闘や投影能力が買われたんだな」
マルス「え!?リンクが三番手って・・・!?」
それはつまり・・・
リンク「・・・俺より強い奴が少なくとも二人はいる、ということだな」
リンクよりも強いって・・・いったいどれほどの化け物なんだろうか。二位の奴とか閻魔大王なんじゃないか?
アイク「それよりメリカの名前がねぇんだけど・・・」
マリオ「あ、そういやそうだな。本格的に武装したらリンクより強いんじゃなかったか?」
マスター「あいつは戸籍登録するのを嫌がってるんだよ。テロ破壊に色々やりにくくなるから、って。それであいつも無法者になってるがな。でも二つ名はあるぞ。確か、放浪する武神だったかな?」
フォックス「いや、そもそも二つ名って何だ?」
マスター「うーん・・・称号みたいなもんだな。その人物の能力や特徴を簡単に表す仕様になってる、キャッチコピーだと思ってくれ。一定以上強ければ命名されるんだ。因みに終点の連中はほぼ全員が持ってる。順位とタブルネームはキャラクター紹介のときにまとめて発表するから今は飛ばすぞ」
トゥーン「へぇ~、早く知りたいな!」
ラトビア「フィジーは既に持ってたわよね?」
フィジー「・・・?私のは最近更新されたわ」
リンク「ほぅ、何なんだ?」
フィジー「え、えぇっと・・・ゴ・・・幽霊〈ゴースト〉・・・」
・・・リンクが「・・・そうか・・・」と言って頷いたきり黙りこくった
マリオ「・・・なんとなく分かる気がするのは怖いな」
ラトビア「ニャハハ・・・」
マスター「よし、大体の説明は済んだかな。それではお待ちかね、新しい仲間を紹介するぞ」
ラトビア「いよっ!待ってました!!」
さて、そこで問題です
アイク「うわっ。いきなり出てくんな」
淋しいこと言うなよ
えっと、実はもうこの中に新キャラが潜んでいます。さて、それは誰でしょう?
ピカチュウ「・・・ピカ?」
皆が一斉に周りを見回した
いま終点に居るのは(読まなくていいです)マリオ、アイク、リンク、ピカチュウ、フォックス、CF、サムス、ピーチ姫、ピット、クッパ、マルス、トゥーンリンク、ゼルダ姫、ソニック、ディディー、オリマー、ドンキー、デデデ、ルカリオ、フィジー、ガイアナ、ラトビア、カービィ、ルイ((ry の24人で特に変わったところはない
サムス「そいつはゲムヲ的な奴なのか?」
いや、人間だぞ
CF「じゃあ誰かを装っているとかか?」
そうだな。誰かに変装しているから、周りの人間を疑ったらどうだ?
アイク「お前じゃねぇのかよ」
マリオの髭をグイグイと引っ張った
マリオ「&@♧#§○☞」
アイク「俺は頬っぺたを引っ張ってる訳じゃないぞ!?」
ラトビア「ガイアナだったりしない?」
ガイアナ「な、なんだ。俺じゃないぞ」
ラトビア「じゃあフィジーだったり?」
フィジー「・・・、今の言葉・・・そっくりそのままお返しするわ」


ラトビア「え・・・?」
カービィ「ぽよ?」
ラトビア「そ、そんなぁ~!私を疑ってるの!?」
フィジー「だってラトビアは名前で呼ばないもの。いつもアダ名で呼ぶ筈よ」
ラトビア「むっ・・・それくらい私にだってあるわよ!」
フィジー「それにィ・・・」
すかさず反論するラトビアをじろりと睨むと、
フィジー「こんなバニラみたいな香水の芳香はしないわよ?」
ラトビアがしまった、とばかりにと息を詰まらせた
ラトビア「その通り~!流石フィージーね!鋭いわ!」
ホールの扉からひょこりと顔を出したのは、ネコミミカチューシャとメイド服を着たラトビアだった。
ピット「お、同じ顔が二人!」
ガイアナ「じゃあやっぱり・・・」
さっきまでラトビアの声質で話していたのが新しい仲間なのか・・・?
???「あちゃー、もう見破られちゃったのー!?すっごーい!お兄ちゃんを除いたら多分史上最速だよ~!」
唇に両手を合わせてまったく別人の声で喋るこの人物は・・・
マリオ(・・・この声・・・聞いたことあったっけ?)
ふとそんな気がした。いや、これはデジャヴってやつだろう。少なくとも変装してすり替わる能力を持った人間を身近に持ったことはない
彼女は顎のあたりにまで手を伸ばすと、ラトビアの顔をした覆面をペリペリと剥がしていった
その素顔は・・・肩まで伸びた銀髪ショートに、パリジェンヌを思わせるほど白い肌、アイスブルーの猫目をしていた
まずは自己紹介しな
???「はーい!シャーレの名前は、シャーレ=ラトウィージ・フォン・ラミレーナ。シャーレって呼んでね。ニャフフ・・・!」
マルス「ニャ、ニャフフ・・・?」
ルカリオ「変わった笑い方・・・まるで猫だな」
ピカチュウ「ピカッ!」(お前もな!)

サムス「全然気付かなかった・・・一体いつから入れ替わってたんだ?」
ラトビア「この回が始まってからずっとよ!」
サムス「じゃあ今までずっと騙されてたのか・・・」
変装の巧い人間か・・・これは対組織の協力な味方になるな。インテリジェンスオフィサーに利用して情報を盗んだり、
ラトビア「うわあー!メイド服って一度着てみたかったのよ!ありがとうラミーちゃん!これすっごい可愛いよ!」
ネコミミに手をあてがって興奮しながら
シャーレ「でしょ~!?それ気に入ってるのよ!」
ラトビア「可愛いわー!可愛いわー!可っ愛いわー!!」
シャーレ「そんなに気に入ったなら一着あげてもいいわよ?」
ラトビア「えぇ!ウソーー!?ネコミミがいい!」
マスター「・・・」
キャピキャピした女子トークを繰り広げる。まだ会って間もないのに意気投合しているぞ
アイク「・・・もうアダ名付けたのかよ」
ラトビア「アッくんとマーくんにもね!」
アイク「・・・」
マルス「普通だね!」
リンク「シャーレってペトリ皿って意味だぞ」
トゥーン「ねぇ、お姉ちゃん何歳なの?」
シャーレ「そうねぇ・・・シャーレは永遠の18歳!」
CF「アイドルかっ!」
マスター「と、とにかく18歳なんだな」
シャーレ「ふふっ、そうかもねぇ~」
マスター「どっちなんだよ」
ピーチ「まず女性の年齢を聞くなo(`ω´*)o」
まぁ詳しいことはこれから分かるだろ。それより次のキャラを発表するぞ。早く進まないと長くなりそうだからな
シャーレ「ちょっと着替えてくる」
ラトビア「覗いちゃ駄目だからね!」
ガイアナ「はいはい」
衣装チェンジしていた二人がホールの外に消えていった
マスター「え~っと、次は確k(ry
???「うおおおおおおぉぉぉぉーー!!!ついに俺の出番がキタァーーーー!!(・∀・)」
ピット「あ、リトル・マックだ」
???「さあ、俺が誰だか分か・・・あれ・・・?・・・ごほんっ。うおおおおぉぉぉーーー!!p(`Д´)q」
マリオ「やかましいわッ!」
舞台から疾走してきた男は、筋肉質の腕に緑のグローブを嵌めt
「「ちっっっちゃ」」
リトルマック「いきなりそれ言うか・・・」
フォックス「ちょっちょっ、フィジーと並んでみろよっ!」ワクワク
二人の腕を取って無理に引っ付けようとする
リトルマック「や、やめろ!なんでそんなに楽しそうなんだよ!」
ガイアナ「フィジーはいま身長何メートルなんだ?」
フィジー「メートルで測るほど高くはない。大体180cmくらいよ」
じゃあ差は40cmくらいか

クッパ「生まれたての時なんか、ゴルフボールぐらいじゃないか?」

リトルマック「そんなちっちゃくねぇよ」
アイク「ま、でも小さくても良かったんじゃねえか?」
リトルマック「な、なんでそんなことが言える・・・!」
アイク「だって・・・でかかったらハンバーガーになっちまうだろ。カービィに喰われるより良いじゃん」
リトルマック「・・・・・」
カービィ「ぽよ?」
CF「しっかし、技も分かんねぇのによく登場させたな」
乱闘じゃなくて実戦だからな。ボクシングの技使用したらいいだけだし
マスタ「でも他の奴は問題だろ」
そうだな
マルス「否定しないのか・・・」
だから他の奴らは必然的に技は出せなくなる。だから出番が少なくなるということだ
アイク「じゃあ今発表する必要ないんじゃねーの?」
それじゃあ次回作に来た感じがしないだろ。次回からお前たちには仕事をしてもらうわけだが、恐らく新キャラは忙しいってことで出ないと思う
ルカリオ「他国への派遣は理由付けに便利だな」
マスター「ここで一応紹介するが、ご存知の通り彼の名前はリトル・マック。パンチアウト!のキャラクターだな。あんまり弄ると殴られるから、ほどほどにな」
リンク「やめろとは言わないのか」
マリオ「これからよろしくなっ」
リトルマック「おう!よろしく!うおおおおぉぉぉーーー!!」
アイク「らああああぁぁぁーーー!!!」
トゥーン「だあああああぁぁぅーーーー!!!」
ソニック「うるせッ」
サムス「意味もなく叫ぶな」
マリオ「でも幸いラトビアがいなくて良かった・・・」
ラトビア「やあああぁぁぁぁーーー!!」
マリオ「いたのかよ!」
シャーレ「ちょうど着替えが済んだものね」
マスター「じゃあ二人が帰ってきたところで次のキャラにいこうか」
マスターが紹介を始めようとしたそのとき
ルイージ「ん?兄さん・・・、上・・・」
ルイージがマリオの頭を不審そうに見上げた
マリオ「え・・・?うわ!俺の帽子が子牛になってる!?」
なんとマリオの頭の上には、帽子ではなく牛が乗っかっていたのだ
子牛「も~」
フォックス「いや、言われる前に気付けよ!!」
マリオ「い、いつの間に・・・!」
シャーレ「わ!シャーレのネコミミがウサミミになってるよぉー!」
ルカリオ「・・・それはそれでいいかもな」
リンク「俺の耳輪が緑色に変わっている・・・」
クッパ「えらくピンポイントだな。つーかよく見れたな」
マリオ「こんな悪戯するような新キャラは・・・!」
デデデ「ロックマンゾイ!」
ロックマン「ちゃがう!むらびとだろ!」
と言いながらロックマンが舞台袖から登場してきた
アイク「やっぱロックマンじゃねーか」
ロックマン「だからちゃがうって!」
CF「ちゃがう、っなんだよ!」
ロックマン「なんだよ。分かるだろ?」
CF「分かんねーよ!」
マルス「何語だよ」
マスター「まぁいいや、先に紹介しよう。岩男、もとい、ロックマンだ。当然ながら悪戯したのはコイツじゃないぞ」
ロックマン「当たり前だろ」
マスター「ただ!コイツは田舎育ちでな。時々方言やら変なこと言いやがるから、気にしないようなに」
ロックマン「あぁ、機械音痴の自覚もある」
フォックス「機械音痴って・・・自分の姿格好見てみろよ。ハイテクな鎧装着してんだろーが」
ロックマン「使えるのはこれだけだ。因みに以前スネークと手合わせしたときに数々の現代兵器に驚かされたのは一生忘れないぞ」
アイク「それじゃあメリカとなら戦うどころじゃないだろ・・・」
溜め息混じりに吐き捨てた。すると──
シャーレ「─────えっ・・・」
メリカの名前が出た途端、シャーレの血相が変わった
シャーレ「今、何て・・・?」
アイク「あ?お前には関係ねえだろ」
リトルマック「お、メリカって誰なんだ?マスターからは訳ありな女、ってことしか聞いてないんだが」
ロックマン「メリカって誰じゃら!」
アイク「あーーもーーうぜぇ!!」
シャーレ「───・・・っ」
子牛「も~~」
マリオ「・・・も、もういいだろ、こいつ」
子牛「・・・」
マスター「さて、ロックマンの紹介も済んだことだしさっさと残り奴らも終わらせようか」
ピーチ「ロゼッタ?」
マスター「ああ。うちには少ない女性が二人だ」
チコ「よろしくネ」
トゥーン「わあっ!ちっちゃな何か!」
チコ「何かとはなんだヨ!」
ロゼッタ「こらチコ、人様に迷惑ですよ」
ホールの壇上から出て来たのは、『ちっちゃな何か』と、金髪に白銀の冠を頭に乗せた・・・
マリオ「おっ。久しぶりだな、ロゼッタ。2以来だっけ?」
ロゼッタ「・・・世界観ガン無視ね」
そして彼女に続いて登場したのは、青のスポーツウェアを身に付けた全身蒼白で長身な女性だった
トゥーン「あーーーーーーっ!!!
ドンキー「ウホ!?」
トゥーン「僕が夏祭りのときにぶつかったお姉さんだー!!」
トレーナー「え?あ・・・!あのときの僕!ここの子だったのね!?」
トゥーン「やっぱりそうだ!あのときネスがぶつぶつ言ってたけど、こういうことだったんだ!」
マスター「よし、親しい仲の奴もいるだろうが紹介しよう。ロゼッタとWiiフィットトレーナーだ。まぁ、これで女性が9人になってちょっとは均衡が取れるようになったろ」
ピーチ「ねぇ、ロゼッタ。マリオの好きな人って知ってる?」
ロゼッタ「え!?マリオに好きな人なんか居たの!?」
ピーチ「一応ね。誰だか気になるでしょ?」
ロゼッタ「そうね、教えて。どうせ「自分です」とは言わないでしょうし」
ピーチ「ぐっ・・・」
ロゼッタの一撃はどうも図星だったらしく、恨めしげに息を詰まらせた
トレーナー「?」
サムス「アンタ・・・ちょっとこっちに来て」
トレーナー「え?ちょっとちょっと・・・!」
二姫のやり取りを眺めていたWiiフィットトレーナーの首根っこを掴むと、ズルズルと引っ張る。部屋の隅にまで運ぶとようやく解放された。人使いの荒いことこの上ないな
トレーナー「痛っ・・・な、何の用?」
サムス「少しだけ大事な用」
トレーナー「はぁ?」
少しだけ、って・・・しっくりこないな。そう重要でもないんじゃないのか
トレーナー「私に何か言いたいことでもあるの?」
その質問に頷いた彼女の口から出た言葉は、
サムス「・・・アンタ、シングルなんでしょ?」
・・・少しだけ突拍子な問い掛けに、少しだけ肩すかしを喰らった感じ
トレーナー「え?・・・あ、あぁ、そうだけど?」
戸惑いながらも曖昧に返事を返すと、サムスはホッとしたように胸を撫で下ろした
サムス「よかった・・・。これでようやく紅一点でなくなるわ」
トレーナー「ぜ・・・全然意味が解らないんだけど・・・」
サムス「いいのよ。ただ、これからアンタとは長い付き合いになりそうね」
トレーナー「???」

 

クッパ「これで新キャラは全員か」
マスター「よく分かったな。じゃあ、任務に出掛ける奴らにはこれを渡しておく」
そう言ってマスターが手渡したのは・・・
マリオ「・・・スマホ?」
マスター「ああ。全員通信出来たほうが便利だろ。部隊戦になったときにでも活用してくれ」
リンク「・・・なかなか本格的だな」
マスター「そうだな。これからは前回みたいに甘くないぞ。なんせ私の手の届かない場所に邪魔しにいくのだからな。勢いでビルとか壊したらとんでもないことなる」
ピット「うーん・・・壊さない自信ないな」
マスター「くれぐれも!壊さないように。万が一は自業自得で責任とってもらう」
ピット「・・・・・」
アイク「そういや依頼のシステムとか何も聞かされてねえよな」
マスター「他国から寄せられたら依頼は電子掲示板に載せておくから、それを受付に申し出てくれれば大丈夫だ」
アイク「受付、って・・・?」
シャーレ「はーい!シャーレがやりまーす!」
ラトビア「え!?そうなの?」
マスター「ああ。彼女は諸事情により、戦闘には参加しない。ここでの受付、もしくはオペレーターとして活躍してもらうことになっている」
ロックマン「モンハンみたいだな・・・」
シャーレ「機器関連はお任せあれ!ニャフフッ!」
ラトビア「私も戦闘出来ないじゃん!」
マスター「お前はここに残って負傷者の手当てでもしてくれ」
ラトビア「でも、ってなに!でもまあ・・・それしか手伝える事ってないんだろうから受け持つけどさ・・・」
マスター「そういうわけだ。あと、移動は船でも飛行機でも構わない。アーウィンでも、な」
CF「ブルー───」
マスター「そうだ。子どもは任務には出掛けない」
CF「ちょっ───」
トゥーン「えーーー!!?なんで!?」
マスター「もしものときに対応出来ないからだ」
ラトビア「道連れだ!!」
ガイアナ「おい」
ディディー「ガックシ・・・!」
フィジー「まあまあ。残り組は残り組同士、仲良くしましょ」
トゥーン「───海外旅行の夢が・・・・」
アイク「遊びじゃねえんだぞ!」
マスター「大まかな説明は以上だ。人口の9割がROSSA50位以内の人間、ということで周りからはそれなりの注目がある。その期待に応えられる働きをしてくれよ」
フォックス「おお・・・なんか緊張してきたぜ!」
マルス「もう依頼は出てるの?」
マスター「出てるぞ。もう行くか?」
マリオ「もちろんだ!」
ピクミン「(^∇^)」
マスターを先導に、みんながゾロゾロと外に出ようとしたその時・・・!
???「ちょっと待ってよ!」
どこからか誰かの叫び声がした
マスター「ん?誰だ・・・?」
むらびと「むらびとだよ!出るタイミング失った!」
マスター「あ・・・っ!」
そして舞台袖から飛び出したのは、マリオの帽子やら盗んだ物を抱えた・・・むらびとだった!
マスター「・・・すまん。忘れていた」
むらびと「忘れるんじゃないよ!せっかくの客人を!」
しかし全力でマスターに抗議するむらびとの身体は、突然中空を舞い、


すっぽりとリンクの腕の中に収まった
むらびと「え・・・?」
この体勢は・・・お尻ペンペン・・・だろうか
リンク「ふんっ、餓鬼には昔からこれと決まってるんだ」
今ので窃盗物を全部床にぶちまけたが・・・
そう言って掌を振りかざしたリンクは、むらびとの尻をビシバシ・・・というよりドカバキとひっ叩き始めた
むらびと「うわ!いたっ、いたっ!痛いってば!」
リンク「おぅ、悪餓鬼にはしっかりお灸を据えてやらねばな・・・!」
むらびと「ぎゃ~~~~~ッ!!!」


「「・・・・・・」」


・・・来て早々痛い目に遭ってるぞ。自業自得なんだろうが、リンクもリンクだな
アイク「・・・なぁ、もう行こうぜ」
そんな2人を放って行こうとばかりにアイクが催促した。リンクの幼稚園の先生みたいな行為に呆れてる様子
マスター「し、しかし・・・」
マリオ「ま、いいじゃねーか。リンクが世話係みたいになって」
マリオが帽子を拾い上げながら言った

フィジー「・・・」
マスター「───そうだな。・・・もうなんでもいいや・・・」
マスターが再び歩を進め始めた。その後にゾロゾロと続く

 

マスター「そうだ。言い忘れていたが、この島の周りには結界を張っている」
電子掲示板までの道のりの中、唐突に話を切り出した
マルス「え?何の?」
け、結界って・・・神様じみたことしてるじゃないか。この世界では自由自在には出来ないらしいのに
マスター「向こうの世界と同じ空気にするためだ。お前たちは・・・あの少女ほど身体が弱くないから消えることはないが、この結界を越えると向こうの世界ほどの力は出せなくなる。まぁ、それでも一般人より遥かに強いが」
フォックス「そんな大事なこと忘れていたのか!」
マスター「出る前に伝えられて良かった・・・」
良かった良かった、と息をつくが・・・いや、全然良くないぞ
ピット「・・・マスター・・・ここのトップに向いてないんじゃない?」
ピクミン「乂-д-)」
サムス「同意」
マスター「───・・・。お前たちの稼いだ報酬が終点の資金源になる。これから頑張れよ」
「「お、おぉう!」

第3章 こんな雑な仕事で大丈夫か

電子掲示板の前
その内容を拝謁した一堂は唖然とした
マリオ「なぁ・・・ここって、こんな依頼ばっかなのか・・・?」
マスター「さあ・・・」
リトルマック「     」
マスター「注目はされてても、まだ不信感が残っているんじゃないか・・・?ほら、この国って出来立てだし・・・こいつらに任せて大丈夫かな~?って思われてるんだろ、どうせ」
ロックマン「信頼が得られてないのかよ」
アイク「地道にやるしかない、か・・・」
なんとか小さなことから積み上げて、認められるようにならないとな
だがこのままでは、大きな仕事が舞い降りるには時間が掛かりそうだ
CF「こんなので大丈夫なのかよ、資金は・・・」
マスター「・・・ぶっちゃけ、無理だ」
トレーナー「早速!?もう前途多難ね!」
マスター「ここはなんとしてでも信頼を集めるんだ!絶対に成功させろよ!」
こんな調子で果たして無事に食べていくことが出来るのか・・・




アイク「なんか拍子抜けだな・・・。もっとデカい仕事を期待してたのに」
俺に課された任務は、 カジノの警備
どこにも頼めない店が安上がりで済ませるために依頼してきたんだな、クソッ
メリカに比べるとかなりスケール小だが、終点の中ではまだまだマシなほうだ。他には・・・もっと小さな依頼ばっかりだった
報酬はまぁそれなり。だが子どもを含めて食わせるには到底足りない。飛行機に乗ったら一気に潰れてしまいそうだ
場所はイギリスのロンドン、セラフィーヌホテル・ケンジントンガーデン。カジノ付きのホテルだ。海外渡航者向けの施設でもあるから、正装すれば見咎められることはないだろう
警備といっても、適当に巡回していればいいだけの雑な仕事だ。逆にカジノを楽しむ暇もあるかもしれない
シャーレによると、どうも北アメリカ大陸を越えていく長旅になるらしい。搭乗する飛行機は、ボーイングなんたら。別段覚える必要もないだろう
今はラグネルの代役にヴァーグ・カティを忍ばせている。一般客に見つかると面倒なので、ちゃんと鞘に収めて服の中にでも隠しておかないとな
周りを見ると、他の奴らはぼちぼち出発しているようだ。俺も準備出来たしそろそろ出ようかな・・・
と思ったが
シャーレ「にゃー、今ならシャーレが通訳に付くよ~?」
さっき受け付けにいたシャーレがトコトコとやってきた
通訳って・・・
アイク「なんだよ、別にいらねぇよ。マスターから地獄の英語力強化合宿させられたし、一人でも問題ない」
シャーレ「まあまあ、そう言わずに・・・!」
悪戯っぽく笑ったシャーレは、俺の腕に細くて白い腕を絡めてきた
アイク「あ、おい!やめろ!」
シャーレ「遠慮しなくていいんだよ?なんたって仲間なんだからねー」
やたらと擦り付いて来やがる。なんなんだ、こいつは・・・
アイク「いいから離れろッ!大体お前はここに残ってろ、って・・・!」
シャーレ「もうっ、つれないな~♪そうだ!アッ君って確か、珍しい物持ってたよねえ~」
俺の言葉には耳も貸さず、腰のあたりをまさぐってきた。しつこい奴だな・・・!
アイク「───!」
腕を軽く振り回し、シャーレを引き離す。だが溜め息を吐く隙すらなかった
シャーレの手には・・・
アイク「あ!!?」
シャーレ「そうそう!コレコレ!このプレパラートみたいなの!」
プレパラートが、握られていた
いつの間に盗られていたのか。すぐに手が届くような所には入れていなかったが、いとも簡単に盗まれているぞ
アイク「それ返せ!!」
シャーレ「いいじゃーん!ちょっとくらい遊ばせてよ?」
逃げるシャーレをとっさに追いかけようとするが、少し突飛なことに足が止まった
アイク「・・・?」
シャーレの走り・・・かなり、遅いぞ。一言で云えば、鈍足。軽く飛ばせば追いつきそうだ
何がしたいのか分からない奴だったが、ますます分からなくなった
とにかく落として壊されたりしたら堪らない。早く捕まえてやろう、と俺が後を追おうとしたその時・・・

 

逆に首を掴まれた
・・・このシチュエーションにも慣れた。どうせリンクだろう
と瞬時に予測を立てて振り返ると、やっぱりリンクが俺を猫掴みにして見下ろしていた
リンク「おい、もうこれから初任務だぞ。そんな調子でこの先やっていけるのか?」
アイク「うるせぇな。いいから放せ」
リンク「・・・・」
しばらく黙り込んだ挙げ句、「つまんねぇな・・・」とぼやきながらドサッと床に落とした。こいつもいったい何なんだ
フォックス「どうやら同じ飛行機のようだな。行き先は別だが、しばらくの付き合いだ。よろしくな」
アイク「あ、あぁ・・・」
フォックスにリンク・・・異コンビだが、今回はこの3人で空の旅か。目的地までの数時間、暇しなければいいが・・・
アイク(あっ、そうだ・・・!あの野郎は・・・)
慌てて見回すが、シャーレはとっくにどこか行ってしまったみたいだ
くそっ、プレパラート盗られたままじゃねーかよ




しかし、予約してある飛行機に乗り遅れるわけにはいかないのでプレパラートは後回しにし、終点を抜けてマスターに指示されは場所へと向かった。徒歩で
まだ交通網は発達してないな。人もいねえし。道路もねえ。ラジオもねえ。吉幾三か
などと下らないことを考えていると・・・おっ、けっこう早くに空港らしいものが見えてきたぞ
でも・・・なんか変な光景だな。まだまだ木々が茂ってたり荒れてたりしてるくせに、電子掲示板があったり飛行機が飛んでるって。まるで近世と古代を足して2で割ったみたいだな
アイク「・・・信頼はないくせに線はあるんだな」
つーかいつの間に出来上がってるんだ。それになんか見たことあるぞ、この空港
リンク「マスター曰わく、向こうから物を引き出すことは可能、だそうだ。戻すことは不可能らしいが」
疑問を察したのか、即答してくれた
・・・どうやら向こうの世界から卸してきたらしい。じゃあ途中で見た建物も全部そうなのか
フォックス「ここまで一気に発展した国はないだろうな。俺たちが来てまだ1日も経ってないし」
リンク「マスターは半年前からこの移転計画を練っていた。航空機関についてはそのときから出来ていたんだろう」
アイク「ふ~ん」
まぁ、そこらへんの事はアイツに任せてればいいだろ
些か心配だが、俺たちは俺たちの仕事を全うするだけだ
アイク「じゃ、行こうかね。空の旅の入り口へ!」
リンク「だな」
フォックス「ああ!」
・・・意気込みは良かったものの
俺たちはその後、たかが空港の入り口を探すのに苦労することになった。いきなり大丈夫かよ、おい

 

警備用の武器を持っていってもいいのか、という気懸かりが頭の片隅に引っかかっていたが、そこはマスターがうまくやっていた
ROSSA圏内の人間対象に、入国検査の際に銃刀法違反が免除されるシステムが発足されたのだ。その手続きを済ませると、少々の衣服やらの荷物に加えて俺はヴァーグ・カティを、フォックスはブラスターやらいろいろ、リンクはマスターソードを預け・・・
・・・ん?マスターソード・・・?
アイク「あれ!?リンクお前・・・マスターソード、ある!?」
なんでだ・・・!メリカの剣でズタズタにされたんじゃないのかよ?
リンク「む?ああ、近くの名工に作ってもらった」
さも当たり前のように、まるで「近くのケーキ屋でデコレーションケーキを作ってもらったんだ!」と同じくらいの雰囲気で言いやがった
アイク「じゃ、じゃあ、ラグネルも作れるんじゃないか!?」
リンク「ふんっ・・・それは造作もないだろうが、どうあれ彼女に気に入ってもらうことだな」
アイク「女なのか?」
リンク「そうだな・・・いずれ俺から頼んでやる。やる気を出してくれれば二秒で終わるものだ」
は!?に、二秒って・・・
アイク「・・・それ絶対怪しいぞ」
リンク「なに、精度は衰えるが、実物同然に扱っている。しかも無料ときた。まったく、彼女の気前の良さにはほとほと感心させられるよ」
やれやれ、肩をすくめるリンクはどこか嬉しそうだ。その腕利きが誇らしいようだが、二人間に何かしら特別な関わりがあるのだろうか
フォックス「何やってる。早く行くぞ」
リンク「おっと、ここまでだな。続きは、生きて帰れたら、な」
アイク「どういうことだよ・・・」
どう見ても死んじまうような仕事じゃねーよ。カジノで逝く奴がどこにいるんだ
まぁ、マフィアの集団が店に押し掛けてきたりでもしたら話は別だがな

 

それからというもの
俺はカタコトの英語で戸惑い、貴金属のチェックでフォックスが引っかかりまくり、リンクに至っては剃刀が見咎められてしまい、それを引き取ろうとした係員らと喧嘩が巻き起こりそうになった
立て続けの苦労に不安しかねぇよ、もう。まだ依頼内容が始まってすらいないのにトラブル起こしすぎだ
そんな悩みを抱えつつパスポートに変な烙印を押してもらったあとは、ついに飛行機に乗るみたいだ
アイク「そういやお前ら何番席なんだ?」
フォックス「俺はFの1」
リンク「Fの2」
アイク「Lの8・・・・あれ?」
リンクとフォックスはFの列。俺はLの列。嫌な予感が・・・
これは、つまり・・・
アイク「え・・っ?」

 

席が違う
アイク「・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・独りだ
一番右端の座席。かろうじて窓がある
相席してるのは見知らぬ女性。こちらを一瞥すると、すぐに読書を始めた
アイク「・・・・・・クソッタレめ・・・」
ここは思い切り哮りたいところだか、場所が場所なだけにそういうわけにはいかない
アイク「あー、あー・・・ふんっ、くそ・・・!げふんっ」
隣の女性が不審そうに見上げてきた。男が急に謎の独り言を呟いたんだから当然の反応だ
アイク「あ、えっと、いや・・・なんでもないスけど・・・」
適当に取り繕おうとするが、そもそも言語が通じないだろう。女性は訝しげな顔のまま読みかけの本に向き直った。さっき読んでたページと全然違うように見えるが・・・
まぁいいや。わざわざ言葉が通じないと判っている人に話し掛けるほど馬鹿な奴はいないだろう
そんなこんなで、ボーっとしてるうちに機内放送が始まった。もう離陸するのかな
シートベルトのランプが点滅しているから、そう見て間違いないか。飛行に影響が出るので、マスターから貰ったスマホもここじゃ使えないな
CAの指示に従って待っていると、とうとう機体が動き出した。暫くゆったりと移動すると、途端にエンジン音が唸りを上げた。急激に速度を上げて滑走していく
そして・・・・・・・浮いた。徐々に徐々に身体が傾いていく
まだ来て僅かだった島だが、すぐに異国へ飛び立ったのだ。なかなか呆気ないな
段々と蒼に染まっていく窓を覗いてみると・・・
ん?・・・空から見下ろして初めて分かったが、この島は意外に広いんだな。いや、かなり広いぞ
あれはホール会場かな?空から見ると小さいな。そういや、もう結界は越えたのかな。特に体質に変化はないが。イギリスはどんな土地なんだろうな。肉が美味い所がいいな。上手くいけばカジノで勝って仕事量を賄えるかな
なんていう想像力を惜しみなく使って出来る限りの想像を巡らし、淋しい自分をおさらばしよう
アイク「・・・ふぅ・・・」
そんな期待感だけでなんとか凌げるかと思ったが、それも束の間。うん、飽きた
窓の外の風景は既に雲だけだ。そりゃ飽きるわ。折り紙の一つでも持ってこれればまだマシだったかな
数時間に及ぶ地獄の鬱タイム。何して過ごそうか
考えを凝らしに凝らし、頬杖を衝いたり、座席に深く腰掛けたり、羊の数を数えたり、今まで戦った敵の名前を挙げたりと無駄な試みをしたが、どれもこれも十分も保たなかった。あぁ、せめて服の綻びから糸を抜けれれば綾取りが出来たな・・・
本格的に気が滅入ってしまった俺は、とうとう指遊びなんかを始めた
いや、指遊びを舐めるなよ。歴史は浅いものの、独りでも何処へ行っても遊べるんだ。それに意外と楽しいんだぞ(嘘)
などと前向きな屁理屈を立てて準備万端。懸命に指遊びに興じるとしよう
アイク(でもあんま知らねーんだよなぁ・・・指遊びとか)
もう詰んだか。いや・・・まだだ。まだ終われない。終わるわけにはいかない。俺はこれから、暇という最悪の偶像と戦わなければならないんだ。こんなので挫けてたまるか
とりあえず知ってるやつでも・・・と思い、出来る限り記憶から指遊びを探り出した
あ、そうだ!確か弁当箱のやつがあったな。あのしょうもないの。もうこの際なんでもいい。滑稽だろうと笑え
そうして弁当の中身を作ろうとしたそのとき。横に座っていた女性の肩が小刻みに震えているのに気が付いた
まるで笑いを堪えられない、とでもいったようだが・・・
アイク「・・・・?」
なんだ、この人。滑稽だったら笑えといったが、まさか本当に・・・
俺が不審そうに見下ろし返したところで限界だったのか、遂に声を抑えられなくなった
???「フフ、ニャ・・・フフ、フ・・・ッ!」
アイク「!?」
・・・待てよ。この独特の笑い方、聞いたことあるな。えーっと・・・
???「Bonjour, comme Ike。Comment est heureux?」
アイク「・・・?」
謎の言語を放ったその声は、シャーレの声とは似ても似つかない。いやいや騙されんぞ。最後の力で声を変えようったって
シャーレのほうももう諦めたのか、バッと変装キットを脱ぎ捨てると、
シャーレ「じゃじゃーん!仲間と離れ離れになって暇してるアナタには、シャーレのプレゼントー!!」
アイク「シャ、シャーレ・・・!」
普段通りのメイド服を着たシャーレがそこにいた
いや・・・プレゼントって・・・
アイク「・・・何しに来た」
そんな俺の質問は軽く無視され
シャーレ「ねぇ~それよりお話しようよ~、せっかく来たんだしさ。シャーレはなんでもオッケーだよ?」
なーごなーごと自分の頭よりでっかい青のリボンを揺らしながら這いよってくる。どう考えても邪魔だろ、それ。オメーはきゃりーぱみゅぱみゅかっての
まだシートベルトのランプが点滅してるのに、俺の足の上に乗っかってきやがった。注意されても知らねえぞ
アイク「それよりプレパラート返せッ」
シャーレ「え?あんなの置いてきたよ」
これには即答された・・・。他人の物をなんだと思ってやがる
まぁいい、こんなに時間が有り余ってるんだ。なんでも聞き出してちょっとでも正体を暴いてやる
と思ったが、逆にシャーレから問い掛けられた
シャーレ「帰りの飛行機はなあに?」
アイク「は?なんでそんなこと聞くんだよ?」
シャーレ「なんでもっ!」
アイク「・・・」
なんでそんなムキになる。教えるほどでもないし、そもそも予定など立てていない。来た旅客機に乗る。それだけだ
アイク「同じ機種じゃねぇのか」
適当に言って凌いでおくか。するとシャーレは何が嬉しいのか、にんまりと笑った
なんだ・・・気持ち悪いな。飛行機オタクなのか、お前は
まあ一緒に帰るわけじゃあるまいし、あまり関係ある話ではないだろ

 

あの後目的地に着くまで、俺はまるで被告人の如くシャーレ検察官の質問責めに遭い、機内昼食を盗まれるなど散々な目に遭った
おかげでシャーレの正体どころか生年月日すら掴めなかったな。俺にとってあいつの弱みを握るのは、アルセーヌ・ルパンでも捕まえるのと同じくらい難しいんだ。それほど掴み所のない、はぐらかすのが巧妙な奴だった
そんなやり取りを何時間も続けていたら、




イギリス、ロンドンシティ空港に到着した
一気にごったがえしになった飛行機を人に呑まれながら降りる。お疲れさんだったな、ボーイングなんたら。次に逢うときには名前を覚えていられるといいな
シャーレ「ねっねっ、シャーレが居て良かったでしょ?」
通路を歩く俺の様子を窺うように顔を覗き込んできた
なんでそんな笑顔なんだよ。俺はお前のせいでクタクタだ
でも・・・
アイク「・・・まぁ・・・暇は潰せたかな」
と答えると、でへへぇ~・・・と照れくさそうに頭を掻いた
あの時間を指遊びで耐えきるなんて、想像しただけでもゾッとする。その点については救いだった
ただ、恨みも増えた。特に食い物の恨みは恐ろしいんだぞ。中でも俺は、な
そんな感謝と恨みが入り混じった複雑な気持ちのまま入国審査の列に並ぶ
前の人の様子を観察すると、まずパスポート見せて、係りの人がゴニャゴニャ言って質問をしている。ふーん、大丈夫だろ
シャーレがソッコーで終わり、遂に俺の番
「What is the purpose of your visit ?」
アイク「あぁー・・・・カジノの警備です」
シャーレ「ふにゃ!?」
慌てて振り返ったシャーレ。コイツどんだけ肝据わってるんだよ・・・、って顔だな、若干引き気味の
あっ、そうか。返しも英語じゃねーと伝わらないのか。面倒臭ぇな
アイク「えーっとー・・・」
頭の中で英単語を繋いだ俺が口に出すより先にシャーレがワーッと躍り出ると、係りの奴とわけの分からん会話をペラペラし始めた。フォローしてくれてるようだ
一頻り謎の(俺にとっては)やり取りをすると入国審査をも終わった
どうやら俺の英語力は申し訳程度なんだな。その点からしても、シャーレは居て良かったかも
そんな彼女は俺の方を向くと、膨れっ面になりながら
シャーレ「もうっ!警備、なんて言葉は軽々しく言っちゃ、めっ!がぉーだぞ!」
アイク「あ、あぁ・・・分かった」
まるで子どもでも扱うみたいに糺された
でもその通りだ。今は一般旅行者に成り澄ましていたほうがいいな。剣なんかを持ち歩くのだから
ベルトコンベアで流れてきた荷物を引き取るといよいよ出発だ。苦労を重ねたが、なんとか目的国には辿り着いた。あとはホテルまでの道のり、およそ16km
生憎だが地図はない。英国用に切り替えたスマートフォンを頼りにして依頼主のもとへ行くか
アイク(・・・まずどこから出たらいいんだ?)
と、開始10秒で迷い気味の俺が取り敢えずスタスタ。シャーレも俺の後に続いてとことこ
・・・・・・
アイク「いや、なんでお前も来るんだよ!」
「?」って顔してるが、普通はおかしいだろ。ここに来た理由は訊ねたがお察しの通り誤魔化されたし
アイク「俺がここに来たのは遊びじゃねぇぞ?」
シャーレ「知ってるよ。カジノで働くんでしょ?シャーレも手伝うよ」
アイク「手伝うって・・・どうせカジノで遊びたいだけだろ」
シャーレ「うぅん、本当に手伝うよ。それにここは地元だからね。シャーレがいろいろを案内したげる」
アイク「・・・」
・・・意外だった。手伝う、と言ったこともそうたが、シャーレが自分から情報を明かしたのだ
コイツ・・・ロンドンの生まれだったのか。いや、まだ100%信じるわけではないが、もしもこの土地に詳しいのならそうなのかもしれない。18歳で(年齢の割には幼い顔立ちだが)異国の地を完璧に知り尽くすのは早すぎるからな
シャーレ「付いて来て。セラフィーヌホテルはこっちの出口だにゃん!」
と、俺が歩いていた正反対の方を指差しながら腕を引っ張っていく。心なしか、いつもより生き生きしてるな。これが地元パワーか
なんでホテル名を知ってるのかと思ったが、これは受け付けをしていたからだな。誰がどこで何をしているのかも全部分かるのか・・・
アイク「・・・。まぁいい、来たけりゃ来い。どうせ何も事故とか起こりはしないだろうからな」
シャーレ「うー、にゃー!そうするっ!」
まったく、俺に付いてきて一体なんの得があるのやら・・・。でもこちらからすれば結構便利な奴だ。連れてきて損はないだろう
・・・あっ!でも、一緒に居るんなら帰りも今回と同じ飛行機に乗らなかったら、俺が一人じゃ予定通りにいかない奴だと思われちまうじゃねーか。そうなれば確実にからかわれるな
やっぱり適当に誤魔化すのは危険だな。あとで時間調べとこう

 

シャーレの後に続いて外に出てみると、霧が一面を覆っていた
・・・何だこれは
シャーレ「今日は雨かぁ~。シャーレ、雨は嫌いかな・・・」
アイク「あ、雨!?これがか?」
雨粒というより、本当に霧みたいだ。しかも傘差してる人がいない
いきなりのカルチャーショックだな。イギリスの雨は霧のようものなのか
するとシャーレが物惜しそうにネコミミカチューシャを外し、代わりにネコミミのニット帽を嵌めた
シャーレ「気をつけてねー。この雨は酸性雨だから浴びてると髪の毛抜けるよ?」
アイク「はあ!?マジかよ!」
周りにも帽子を被った人だらけだ。帽子着用率やけに高いと思ったらそういうことか
でも帽子とか持ってきてないぞ。迂闊だった・・・
アイク「シャーレ、もう一個持ってないか?」
シャーレ「んー?あるよぉ~!」
よし、助かった。これで抜け毛の心配は・・・
シャーレ「はいっ、ネコミミの───」
アイク「なんでネコミミしか持ってないんだよ!」
シャーレ「じゃーお面被る?」
アイク「もっといらねぇよ!」
しかも頭皮ガード出来ないし。祭でもないのにお面とかただの変質者だろ
シャーレ「む~ん・・・今はネコミミしかないなぁ~」
アイク「くっ、役に立たねえ・・・!」
なんでネコミミしか・・・いや、帽子を大量に持参すること自体おかしいな
だが贅沢は言えない。震える手で躊躇いながらも人生初のネコミミ帽子を付けた
途端、シャーレがぷーッ!と吹き出した。俺はネコミミを地面に投げ捨て、雨もやの中を宛てもなく走り抜けた・・・

 

なんとか駅まで切り抜けたが、勝手が分からないので鈍足のシャーレを待ち続けた
それからケンジントン駅まで地下鉄を駆使し、それから5分少々、ナイツブリッジへ歩いたら・・・
セラフィーヌホテル・ケンジントンガーデンにやってきた
赤レンガで造られているのが西洋って感じだな。これはなかなかの建物だ
鑑賞もそこそこにして中に入り、ホテルマンと軽く会釈すると、依頼主と落ち合うためにある部屋に案内された
アイク(へぇ・・・けっこう俺たち以外にも外国人が多いな)
この施設は渡航者で人気があるみたいだしな
ホテルマンは目当ての部屋の扉の前に立つと、本命の俺よりも先に通訳のシャーレを入室させた
アイク(・・・?)
その後に俺を入れたが、シャーレのときよりもガサツだった。・・・なんだよ、この男女比は
ともかく、一室のソファに座ってオーナーを待つことに
アイク「・・・なぁ、今のって・・・」
シャーレ「イギリスはレディーファーストの国だよ!風来坊のあっくんもココでは紳士でいようねー?」
俺の疑問は読み取られていたらしい
レディーファーストか・・・これはアレだな、文化の違いってやつだな
シャーレ「ついでにシャーレも敬ってね?」
アイク「断る」
一言であっさりと流した。おっ、そういえばこれはリンクお得意の言葉じゃねーか。知らないうちに口調が混ざっているな
「あっくん反抗的ィー!」と喚くシャーレを無視していると、やってきた、ホテルオーナー。が、俺には英語会話スキルがミジンコ並みなのでここは一択、シャーレに任せよう
アイク「・・・・・・」
ずっと隣で黙り込んでいるといつの間にか二人の対談は終わり、後から聞いた話によると、開始は夜かららしく、場所は近くのカジノクラブ。あと俺の服装に問題があるようで、ホテルのほうから支給される、だそうだ
時刻は午後2時過ぎ。任務開始は夜からか・・・まだまだ時間があるな。どこかで時間を潰しに行かないと
アイク「シャーレ、何かいい場所はないか?」
シャーレ「ホテル内にラウンジがあるみたい。無料でバーが楽しめたり出来るオススメのサービスだよ?」
アイク「そうか・・・ならちょうどいい。一緒にそこでくつろぐか」
シャーレ「あー・・・シャーレは遠慮してく。宿泊用の鍵貰ったから部屋で過ごしてるよ」
アイク「───・・・」
なんだ、シャーレならラウンジで猫並のだらけさをお披露目すると思ったんだが、なんとなく。何か仕事があるのかな
仕方無い・・・一人で行くか

 

シャーレに荷物を渡して、俺は単身でなんとか従業員からラウンジの位置を教えてもらい、初めて一人だけで目的地に迷わず行くという偉業を成し遂げた
ここラウンジには観賞用なのかよく分からないワインがズラリと並んでいる。昼からワインを飲む気は起きないので、ここは紅茶でも淹れよう。イギリスは紅茶やそのつまみが美味いらしいし
アイク「よいしょっ、と」
セルフサービスのお茶キットがあり、そこでティーカップに紅茶を注ぎソファに座った。今は一服しながらゆっくりと任務について考えるとしよう
───警備するのは知っての通りカジノクラブ。ルーレットなどが置いてある遊技場だ。チップを賭けて金を稼ぐ遊びだな、やったことないけど
今回は一般客に扮して行動しなければならない。だから不快感を与えぬよう、彼らに紛れて正装することが条件付けられている。カジノといえばスーツが妥当だ
つまり戦闘服一式は無しだ。でもまぁ、中に着付けでおけば大丈夫だがな。そんな暑苦しいマネしたくない
それに、事故が起きてもいつもの大乱闘のような戦い方は出来ない。マスターが言っていたように、ここは相手国。闇雲に剣を振り回すわけにはいかないのだ
無論人質なんかを捕られれば動くことは出来ない。そもそも俺はそっち系統のプロじゃないしな
───出来れば何も起きてほしくはないが・・・わざわざ俺を呼んだんだ。少なからず危険なニオイのする催し物でもあるのだろう
ったく、イギリス人は紳士なんだろ?なら誰も襲ったりしないよな
・・・しないよな?

 

あれから紅茶を20杯ほど飲み干してお手洗いへ直行。そしてホテル内を見て回っていたら小一時間が経った
そうだな・・・あとは部屋のテレビやスマホで時間を潰そうか。あっ、テレビは駄目だな。観てもスポーツぐらいしか分からない
そういえば・・・このホテルはWiFi完備だった。これもホテル人気の一つらしい。なんならオンラインゲームでも出来そうだ
いや、久々にメリカに話し相手になってもらおうか・・・でも笑われそうだな、あまりの任務のスケールの小ささに
でもお得っちゃお得な仕事ではある。報酬も貰える上に、タダで1日宿泊させてもらえるのだ。しかもコンチネンタルビュッフェ朝食があるとか。ビュッフェっていったらバイキングみたいなものだろ、☆☆☆
依頼内容はともかく、なかなかに気前のいいオーナーだ。なんか悪いな・・・
と、いくつもの話題が出ては消えてを繰り返していた
しかし、鍵を開けて部屋に入った途端───
アイク「!!?!」
さっきまでいっぱいに詰まっていた頭の中に漂白剤でもぶちまけたかのように真っ白になった。あまりの不意打ちに思考回路がパニックを起こし、視野に入るものがうまく認識出来ない
鼻腔をくすぐる紅茶の香り。湿っぽくなった室内。どこからか湯気が立っているニオイがする。既にこのとき未来予測でも出来たのか、直感で死亡フラグが建築された気がした
それもそのはず。シックな部屋を背景にしてシャーレがほっつき歩いていた。しかしただ歩いているだけではなかった
それが・・・あろうことか、すっぽんぽんのまま肩に大きなバスタオルを掛け、ティーカップを持って室内をうろうろと徘徊していたのだ。一糸纏わぬ天使達が脳裏を横切った
・・・なるほど。シャーレは風呂に入っていたのか。だからラウンジにも来なかったんだな。そうかそうか、これで謎が解けたぞ
───・・・じゃねえよッ!!!!!なに呑気に自己分析してんだ!!
いきなりの展開に、普通の男子なら大滝の如く盛大に鼻血を噴いてぶっ倒れてもおかしくないが・・・・セーフだッ!横向きだったのと、巨大バスタオルがいい仕事をしてくれた。要所要所は隠れてて見えていないッ!
シャーレ「あっ」
アイク「・・・!!」
ふと目が合った。さっき飲んだ紅茶の作用なのか、俺は大滝の如く盛大に冷や汗が噴き出た。どうすんだ、俺
固まったままでいると、シャーレが「おぉ~!?」と歓喜(?)の声を上げた
とっさに動けなかったものだから、シャーレの目から見るとまるで裸体を凝視してるみてぇになってんぞ!と、とにかく、逃げるっ!
アイク「す───すまん!!」
なんとか絞り出した言葉を残し、バッと超速で部屋から飛び出すと、バタン!タイムラグ0.22秒、ルカリオもビックリの緊急回避だ
アイク(Aaaaaa........ae......!)
床にへたり込んで自己嫌悪に陥る。ぐるぐると何かゴミみたいなのが渦巻く頭を抱えた
───マズい、マズいマズいマズいマズいマズいマズい、マズいッ!猛烈にマズいぞ、これは・・・!
もし・・・もしも、このことがメリカにバレてみろ。恐らく幼少期の記憶がふっ飛ぶまでネックハンキングツリーかジャーマンスープレックスを受けさせられるのは避けられない。もしくは・・・・全殺し・・・ッ!
さらにシャーレは人を困らせるのが大好きな奴だ。メリカとの関係を知ったら最後。無慈悲にもチクってくれるに違いない
絶対にシャーレの口を封じなければ・・・ッ!
シャーレ「ねぇねぇ、どうだったー?」
扉の奥からくぐもった声。ど、どういう意味だよ
これも文化の違いってやつなのか、それともシャーレが馬鹿なだけなのか。出来れば後者であることを願う。イギリス人が信用出来なくなる
アイク「いいから早く服を着ろッ!」
シャーレ「え~~、風呂上がりは暑いよぉ~」
アイク「なんでそっち優先なんだよ!」
やっぱり馬鹿だこいつ
まだ18なんだから乙女の恥じらいとかいうのはないのかよ

 

それからすぐ部屋に入ることにはいかず・・・
服を着た、というシャーレは毎回素っ裸。結局俺が必死で目を逸らしながら着させてやるという、本来ならば父親になってからやるべき労働をフライングでした
もちろんシャーレもそれですんなりいくような奴ではない。袖を通すのにわざと時間を掛けたり、視界をのぞき込んだりして焦らせてきやがった
それにはさすがに噴火した俺は、リンクみたくシャーレのお尻を何回もぶっ叩いてやったが、それでも涙を流しながら大笑いするシャーレに完全に拗ねた。どうやっても喋る気は起きないので、ベッド黙々とスポーツ番組にのめり込んだ。サッカーやってるぞ
シャーレ「ねえ、あっくんー」
俺と隣のベッドにぺったり寝そべって言い寄ってくるが無視だ。シャーレとはしばらく口を利きたくない
シャーレ「ねぇ、ほら、あっくんってば~」
アイク「・・・・・」
シャーレ「聞いてよー。もう笑わないからさぁ」
アイク「・・・・・」
おっ、シュート決まった。本田って奴らしいな
シャーレ「むー・・・まぁ、男女が同じ屋根の下で暮らしてたら、こういうことってよくあるじゃん?」
アイク「・・・・・・・ねーよ」
シャーレ「だよねー」
アイク「・・・・・」
シャーレ「もうっ、そう黙ってるんじゃなくてさ。もっといっぱいお話しようよ」
アイク「・・・・・・・しねーよ」
シャーレの口から出てくるのは法螺話に決まってる。それはもう出会って1日でうんと理解しました
シャーレ「シャーレは暇なの!だからあっくんお話がしたいのー!」
駄々っ子か
アイク「・・・・・他の奴としろよ・・・」
キッパリと断ると、う”ーーーーッと唸ったシャーレは目に涙を溜めて
シャーレ「やだやだやだやだやだやーーだーーーー!!!あっくんじゃなきゃヤダーーーー!」
布団の上でバタバタ。これは最早駄々っ子そのものだな
つーかこんなメイドがあるかよ。服装と言動がちっとも一致してないぞ
アイク「・・・・」
そのまま無視し続けていたら息を切らしたのか、コロンッと寝返りをうって仰向けになり、
シャーレ「ねえー・・・あっくんはシャーレのこと知りたくないの?」
逆さに見上げながら尋ねてきた。それに反応してつい振り返ってしまう
俺の注目を惹いて「しめた」とでも思ったのだろう。なにか企みがあるような笑みを浮かべた
シャーレ「だってお互いを知るにはお話しするのが一番じゃーん」
知りたいかだと?そりゃ少しでも何者なのか暴いてやりたいところだ。だがシャーレの情報を引き出すのには悉く失敗している
アイク「・・・知りてぇよ。知りてーけど、どうせ教えないだろ」
シャーレ「えー?そんなことないよ!プライベート以外だったらなんでもオッケーだよ?」
アイク「───なら正体を明かせよ。生年月日でも星座でもいい。いつ生まれだ?」
シャーレ「あ、あうぅ・・・それは・・・シャーレも覚えてない、なんて・・ニャフフッ」
・・・生年月日忘れるとかババアにしかねえよ
アイク「嘘つけ。お前はまだ十八だろ」
シャーレ「えっ?心外だよぉ~。やだなぁ、あっくんは。シャーレは18歳なんかじゃありませんッ。何でも嘘だと思うと、めっ!だよ?」
いや、18歳って公表してただろ
アイク「それはそれで嘘ついてるじゃねえか・・・」
シャーレ「違う違う。シャーレはね・・・’’永遠の’’18歳なの」
アイク「は?」
・・・それ昨日も言っていただろ。ということはこれは・・・・・意味あり、なのか?おふざけではない何かしらの理由があるのか
永遠の18歳・・・か・・・いや、分からんな
アイク「どういう意味だよ?」
シャーレ「さて、どういう意味でしょうかねぇ~・・・」
お手上げの俺が尋ねたが、シャーレはいつも通りおちゃらけた
・・・やっぱりふざけてるようにしか見えないぞ。少し考えすぎたかな




その後は特に話に進展はなく、部屋でだらけているうちに時刻は七時を過ぎた。ようやく任務開始だ
おっと、その前に・・・
シャーレの相手をしている間にホテルマンから渡された包みを開けた。中に入っていたのはダンディーな黒のフォーマル・スーツだ。サングラスも付いている
うわっ・・・絶対似合わねーよ。俺みたいな人間とは相性が悪いだろ
規則なんだから従うが・・・・・なんか、あれだな。ぎこちないのが自分でも分かるな
まぁいいや。とっとと着替えを済ませてさっさとカジノクラブへ行こう
どういうわけか、シャーレは先に行ってしまった。俺を置いていって
あいつは着替える手間がないしな。でも得体が知れないな、ここのカジノにシャーレを喜ばせる何があるのか・・・

 

カジノクラブはホテルとは別館になっている。なので、一旦ホテルを出てからじゃないと行けなかったんだな
ということは、当然迷ったわけで・・・・・俺が着いたときにはイベントみたいなのが始まっていたみたいだ。お陰で仕組みはさっぱりだぞ。まあ、どうせ分かんねーからあんまり変わらんが。えーっと、取り敢えず状況を把握しておくか。プロだろうがアマチュアだろうが、仕事場の環境を頭に入れておくのは基本の基本だからな
だが気になる物といえば、天井に吊られているシャンデリアくらいだ。ルーレットやビリヤード台も置いてあるが、紳士淑女が一つのテーブルに注目しているせいで誰も手をつけようとしない。見たところ誰かのプレーに夢中になっている。カジノにも一際輝く存在っているもんだよな
そのままぶらぶらとクラブ内を見渡していると、見つけた。座りながらポーカーに興じるシャーレの姿を
俺が珍しく真面目に仕事してるのに、シャーレのほうは「ふおー↑!」とか言って博打を打ちまくってやがる。なんだアイツ、やっぱり遊び目的なんじゃねーかよ
取り敢えず連れ戻して・・・
・・・・・ん?そういやアイツ、客に囲まれているぞ。・・・何かあるのか?
アイク(───!う、嘘、だろ・・・!?)
人集りの外から覗き込んだ俺は目を疑った。なんとシャーレの隣には、天井に届きそうなくらい大量のチップが何列にも並べられていたのだ
お前まだ未成年だろ!なんでその歳でギャンブル得意なんだよ!
アイク(あ、有り得ん・・・!)
ギャラリーから拍手喝采を受けてる。髭の男爵らに賞賛されてんのかよ
言葉の伝わらない俺は完全に蚊帳の外。遠巻きに見つめているだけだ
アイク(でもまぁ・・・会場を盛り上げるのも仕事のうち、ってことにしておくか)
今回は大目に見てやる。突っ込みどころはいっぱいあるが、この場の雰囲気をぶち壊すことなんか出来ないな
チップの塔を次に見たときには倍に増えている。もうそれで一生食っていけるだろ。ちょっとくらい終点の資金に宛てもいいんじゃねーか?
ふとそんな考えが頭をよぎったが、何も言うまい。好きにやせてやろう
そっとその場を立ち去った。俺は俺の仕事を全うするぞ

 

───セラフィーヌホテル・ケンジントンガーデン、カジノクラブ。シャーレの活躍により、かつてない盛り上がりをみせた




仕事終わり・・・オーナーに頼んで貸し切りにしてもらったカジノクラブで独りビリヤードをすることにした。暇つぶしに
あれからは・・・結局俺の予想通り何かあったという訳でもなく、ただぶらぶらと見回っているだけで任務完了となった。警備といっても大抵はそんなもんだ
あんな雑な仕事で大丈夫か。オーナーから不憫に思われるんじゃねーか。報酬なしとか言われたりしねえよな・・・
アイク(まぁ、シャーレから分けてもらえればそれも気にならないが・・・)
もしもの時のために後で交渉してみようか。だが話の巧さなら格段にシャーレのほうが上だから見込みは薄いが・・・
そんなことを片手間にカラーボールを突こうとすると、不意に上階から誰かの駆ける音が鳴り響いた。いや、駆けるなんてのは格好の良い言い方だな
シャーレ「あっく~ん・・・探したよぉ・・・・」
アイク「・・・シャーレ」
さっきまで散々稼ぎまくったシャーレが階段の上から見下ろしてきた
走り疲れたのか、ゼエゼエと息切れを起こしている。それでも踏ん張って二階から降りようとすると・・・
アイク「ぬっ!?」
シャーレ「あっ・・・!?」
ツルッ、ズテンッ!
一段目で足を滑らせ尻餅をついた。しかも直角に刺さるという一番痛いやつ、手すりに頭をぶつけるオマケ付きで。そしてそのままバランスを崩して階段を転げ回った
シャーレ「ゎにゃああああああぁ!!」
尻餅の状態でよくバランス崩せたな。正座でジャンプするのと同じくらい難しいぞ
階段の上で完璧なフォルムのでんぐり返りを披露し、一階の床まで転がり落ちた
うわ、あれは痛い。角にぶつかりまくってるし
アイク「・・・おい、大丈夫か?」
少し心配になって声をかけてやるが、返事は返ってこない
多分シャーレの頭上には星かヒヨコが回っていると思う。仰向けになったまま完全に失神していた
まったく何しに来たんだか・・・、一人コントでも見せたかったのかよ。ドジというか運動神経が鈍いっていうか・・・
アイク「おーい、起きろよ」
シャーレ「────」
アイク「・・・・」
・・・・・・・・・起きないな
あー・・・いちいち部屋まで運んでやらないといけないのかよ。こいつは俺を困らせる達人だな、本当に。まともにビリヤードも出来なかったし
口を開けて気を失っているシャーレを抱え上げる
馬鹿で運動音痴で、変装と盗みとギャンブルが得意・・・そういや兄貴がいるみたいなことも言っていたな、嘘かもしれんが
そんな奴がどういう理由で俺に付いてきたのか、何をしに来たのかも全く分からない。元から関係があったわけもないし、別段こいつに興味もない
───何かしら興味を持たれた。こんな俺の何に惹かれたのかは知らんが、それが
何なのか掴めればシャーレの正体も少しくらい分かるだろう
それとも・・・・・・馬鹿だからただの気まぐれって可能性もあるがな


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