クルマの駆動方式の1つでミッドシップエンジン、リアドライブ(Mid-shipEngine・RearDrive)を意味する。
車の運転席と後車軸の間にエンジンを搭載して後輪を駆動する方式である。
この駆動方式の長所・短所を挙げると、
長所
- 最も質量の大きいエンジンの重心が車体の重心に近くなるため、運動性能が向上する(ヨーイングとピッチングの慣性モーメントが小さくなり、旋回に入りやすくまた旋回を止めやすい)。*1機敏に走れ、コーナーリング限界が大変高い駆動レイアウトである。
- 前述の通り、重いエンジンやトランスミッションが駆動輪の近く(ほぼ真上)に存在するため、加速時には後輪(駆動輪)に荷重が乗ることでトラクションがかかりやすい。またブレーキング時にはリアの荷重が抜けにくくフロントにもバランスよく荷重がかかるため安定性がある。
短所
- コーナリング性能の限界を超えるとスピンに入りやすい。(前述の長所とも重なるが)旋回に入りやすいということは逆に言うとオーバーステアが出やすいということであり、旋回運動が機敏なため、オーバーステアの出方・戻り方が唐突である。*3
オーバースピードでコーナーに進入してしまうと、フロントの荷重が軽いため旋回しようとする力が路面に伝わりづらくアンダーステアが出てしまう。ブレーキングによってフロントに荷重をかければ対処できるが、フロントに荷重をかけすぎてしまうと今度は旋回しようとする力が路面に伝わり過ぎて、オーバーステアになってしまう。
つまり、ドライバーには「フロントにかけるべき荷重をその都度判断してブレーキングの強さで調整する」という高い技量が求められる。一言で言い表すならば「乗りこなすのが非常に難しい」ということである。
- ボディの車室後部と後輪の間に大穴を開けてパワーユニットを配置するため、ボディ剛性の確保が難しい。また、エンジンフードを開けた時の開口部が広く取れないため、整備性はフロントエンジン車に劣る。作業工数が多くなることから整備工賃も高い傾向にある。*4
- (日常的に使う実用面で見た場合)運転席と後輪の間にエンジンがあるため、ほとんどの場合は後席を設けられず2人乗りに限定され、荷室も広く取れない。
まれに横3人乗りや非常に狭い後席付き(2+2)の例もあるが、いずれにせよ乗用車に採用するには実用性に欠ける。*5*6*7*8
などである。
横置きに搭載する場合
- 既存のFF車種のエンジン、トランスミッション、サスペンションなどを流用することでコストが抑えやすく、安価に仕上げることができる。
- 横置きエンジンのFF車はエンジンルームがコンパクトにまとめやすいため、横置きエンジンのMRの場合もエンジンルームをコンパクトにまとめやすい。
結果、全長・ホイールベースが短縮しやすく旋回性を向上させやすい。 - FF車の部品を流用する場合、重心が後車軸寄りとなり、車体中心に重心のある縦置きのような理想的な重量配分は得られない場合が多い。
同様の理由で重心が高くなりやすいため、運動性能は縦置きエンジンと比べると劣る。*9
縦置きに搭載する場合
- エンジン搭載位置が車体中心に近くなるため、理想的な重量配分を得やすく重心位置設定の自由度が高い。
重心を低くしやすいことから運動性を劇的に向上させることが容易である。
- エンジン、トランスミッションなどの部品の流用はほとんど利かないため、1から設計・開発する必要がある。
そのため、コストが嵩み価格も高価になる。
- (大排気量・多気筒のエンジンを搭載する場合)エンジンルームを横置きエンジンより広く取る必要があるため、車室が狭くなりやすい。
同様の理由から全長・ホイールベースが長くなりやすいため、旋回性は横置きエンジンと比べると劣り、車体も大柄になるため取り回しが悪くなる。*10
- 採用例:ランボルギーニ(カウンタック以降の車種)、デトマソ・パンテーラ、ロータス・エリーゼ、ホンダ・NSX(2代目NC型)、アウディ・R8、ポルシェ・ケイマン(ボクスター)、アルファロメオ・4C、ブガッティ・ヴェイロン、など。
一般的にはコストを抑えて安くしたい場合は横置き、コストや価格を度外視して性能を重視する場合は縦置きが採用されることが多い。*11
湾岸マキシに登場している車でMR方式を採用している車種は、
- トヨタ・MR2 GT-S (SW20)
- ホンダ・NSX (NA1)、NSX-R (NA2)
- RUF・RK coupe
- BMW・M1 (E26)
- ランボルギーニ・Countach LP400
- ランボルギーニ・Miura P400S
が該当する。
- アウディ・R8 Coupe 5.2 FSI quattro (ABA42)
- ホンダ・NSX (NC1)
- ランボルギーニ・AVENTADOR LP700-4
- ランボルギーニ・Diablo VT
も一見するとMRの様に見えるが、これらはミッドシップエンジンレイアウトを採用した4WDである。*12
余談だが、一部のFRスポーツカーでは重量配分を改善するため、エンジンを前輪の車軸と運転席の間に搭載することがあり、「フロントミッドシップ」と呼ばれることがある。*13