a day (1)

Last-modified: 2020-06-29 (月) 08:49:55
549 名前: a day 1 投稿日: 2003/08/08(金) 06:37 [ eKsbI/0A ]
ある日曜日の午後。
近所の公園のベンチで読書をしてると、
ジーンズが引っ張られているような感触がした。
何かと思い、ヒョイと足元を見ると一匹のベビしぃが
ジーンズの裾をチョイチョイと引っ張っている。
「おい、どうした?」
問い掛けてはみたものの、そのベビしぃはまだ言葉を話せないのだろう、
こちらに顔を上げて「チィ」と小さく鳴くだけだった。
「はは、可愛いな」
空いた手でベビしぃを持ち上げてみる。驚くほど軽い。
手のひらに乗るぐらいの大きさだから、軽いのも当たり前か。
「どうした?お母さんと逸れたのか?」
「チィ」
「迷子になったのか?」
「チィ」
何を言っても「チィ」としか鳴かない。
どうしようもないので、とりあえず膝の上にそっと置いてみた。
ベビしぃは嫌がりもせず、そのまま丸まって膝の上でじっとしている。
これだけ人に慣れている処をみると、野良しぃではなさそうだ。
この公園で捨てられた元飼いしぃなのかもしれない。
いつの間にか、そのベビしぃは小さく寝息をかきながら眠り始めた。
膝の上の温もりを感じつつ、そのまま読書を続ける事にした。

550 名前: a day 2 投稿日: 2003/08/08(金) 06:37 [ eKsbI/0A ]
カラスが鳴いている。
ふと見上げるともう空は真っ赤になっていた。
二時間は経ったようだ。
小さく伸びをして、膝の上のベビしぃを見た。
熟睡しているようだ。寝息に合わせて体が上下しているのが可愛い。
そのまま寝かせてやりたかったが、もう帰らなければならない。
チョンチョンとベビしぃの体を突付く。
「チ?」
「起きたか?もう帰るからお前もおウチに帰んな」
言いながらベビしぃを持ち上げ、ベンチの下に置いてやった。
「チィ、チィ」
帰るという言葉が理解できたのか、ベビしぃは不安げな表情で何度も鳴いた。
正直、可愛そうだとは思うが連れて帰る訳にはいかない。
住んでいるアパートはペットの飼育が禁止されている。
ゆっくりと腰を降ろして、鳴いているベビしぃの頭を撫でてやった。
「ごめんな。お前を連れて行く訳にはいかないんだよ。大家さんに怒られちまう」
ベビしぃはその円らな瞳に涙を浮かべ、一所懸命に鳴いている。
「また今度な」
その場から離れようと、公園の出口に向かって一気に走り出した。

「チィッ!? チィッ! チィッ!!」
背中越しにベビしぃが何度も鳴いている。
恐らく口を顔一杯にして鳴いているのだろう。
背中と良心が痛い・・・・ごめんな、ごめんな。
出口まであと100メートル。その時だった。
「ヂィィィ――――――――ッッ!!!」
異常とも思えるようなその叫び声で、とうとう足を止めてしまったのだ。
ダメだ。あの鳴き声を聞いてしまったら、もう無視できない。
ふぅと一息してから、後ろを振り返る。
思ったより近くに、覚束ない足取りでぽてぽてと懸命に駆けてくるベビしぃの姿があった。
なんだか笑ってしまう程、必死の形相で。
その姿をずっと見ていたくて、腰を降ろしてベビしぃが来るのを待った。
心無しか、ベビしぃの表情が明るくなっているような気がする。
あと10メートル・・・5メートル・・・1メートル・・・
駆けてきた勢いそのままで、ぽふっとベビしぃはジーンズの裾に顔を埋めた。
両手で抱上げて目線を合わせた。
涙と鼻水で顔がぐしゅぐしゅになっている。
それでもベビしぃは嬉しそうに笑っている。
「しょうがない。一緒に帰るか?」
「チィ!」

551 名前: a day 3 投稿日: 2003/08/08(金) 06:38 [ eKsbI/0A ]
帰り際、大家さんの処に行ってベビしぃを飼う許可を貰った。
どうやら大家さんはしぃ好きのようで、自分の家でも何匹か飼っているようだ。
やっぱり許可を貰いに行って良かった。
隠れてしぃを飼うのは社会人として失格だ。
「お前、いい大家さんで良かったなぁ」
コンビニで買ってきた『しぃフード』を皿に開けながらベビしぃに言った。
ベビしぃはそんな事より早く御飯をくれと言わんばかりに、
短いしっぽをピンと立たせて視線を『しぃフード』に集中させている。
苦笑しつつ、『しぃフード』をベビしぃの前に置いた。
その瞬間!
ベビしぃは皿に顔を突っ込むようにして、猛烈な勢いで食べ始めた。
余りの勢いに息が続かないのだろう「フガッ、フガッ」と唸りながら。
「・・・・お前、よっぽどハラが減ってたんだなぁ・・・・」
半ば感心しながら、その食べっ振りを眺めていた。

さて問題がある。
拾ったは良いが、しぃの飼い方が全く判らない。
生まれて此の方、生き物を飼った事がないのだ。
さぁてどうする?
困った時、疑問のある時はインターネット。
皿と格闘しているベビしぃの側を離れて、ベッドの横の机に向かう。
早速パソコンの電源を入れ、某巨大掲示板を開く。
「確か、『ぞぬしぃ大好き板』ってのがあった筈・・・・」
あった。
すかさず『【拾った】しぃ飼育ガイドpart5【生まれた】』というスレを見つけ、
貼ってあるurlのリンクに跳ぶ。そこは『初心者の為のしぃの飼い方』というサイトで、
非常に細かくベビしぃから大人しぃまでの飼い方を載せてあるサイトだった。
集中しながら隅々まで解説を読んでいく。
どうやら以外としぃを飼うのは難しくないらしい。

・しぃは基本的に家の中だけで生活出来る。
・エサは『しぃフード』のみでOK。
・トイレは『しぃ砂』を用意し、ほぼ一度でトイレを覚える。
・ぞぬとは違い、散歩は不要。
・生後二週間程度で言葉を話し始める。
・ダッコされるのを非常に好む。・・・・・etc

「なんだ、楽勝じゃん」
少し気分が楽になった。飼い方が判らなくて少しナーバスになっていたようだ。
ベビしぃの方を見やると、姿が見えない。
するといつの間にかベビしぃがエサを食べ終えて、足元で頭をスリスリさせていた。
満腹で御機嫌らしい。
顔を上げて笑顔で「チィ」と一鳴きした。
ベビしぃをパソコンデスクの上まで運んで、飼い方の勉強を続ける。
ベビしぃはマウスを動かす手の動きや、切り替わるモニター画面にキョロキョロと忙しなく目線を動かした。
何にでも興味が湧く年頃なのだろう。
言葉が話せないとすると、こいつは生後一週間ぐらいか。
「早く言葉を憶えてくれよ?」
その言葉に反応したのか、こちらに顔を向けて「チィ!」と元気よく鳴いた。

552 名前: a day 4 投稿日: 2003/08/08(金) 06:39 [ eKsbI/0A ]
ベビしぃを拾ってから早くも二週間が過ぎた。
暫くは「おい」とか「なあ」でベビしぃを呼んでいたが、さすがに名無しはあんまりなので名前を付けることにした。
名前は『ベビぃ』
笑わないで欲しい。安直だという事は重々承知している。
さて、生後三週間ぐらいと思われるベビぃは、もうかなり言葉を話せるようになっていた。
さすがに人間でいう『赤ちゃん言葉』ではあるが。
留守番も一匹で大丈夫。多少のいたずらはあるが笑って許せる範囲だ。
それよりも困るのが朝の出勤時。
「パァパ、イッチャヤダ、イッチャヤダァ」
毎朝、ピィピィ泣きながら足元にすがり付いて離れない。出勤時間は迫ってくる。
可愛いといえば可愛いが、毎朝これだとさすがにウンザリもしてくる。

今日もやっぱり愚図り始めた。
「パァパ、イッチャダメェ。イッチョニ オウチデ アチョボゥヨウ」
ベビぃは結構な力でズボンをグイグイと引っ張る。
「パァパ、ナッコ!ナッコチテ!」
暫くはなだめ空かしていたが、今日は何故か堪忍袋の緒が切れた。
「うるさいッ!いい加減にしろ!」
考えるより先に平手がベビぃの頬に跳んだ。いや跳んでしまった。
内心『しまった!』とは思ったが、その前にベビぃの小さな体は平手の勢いでぼすっと尻餅をついた。
「アニャ?・・・・・」
一瞬の茫然自失。その刹那。
「ピィィィィィィィィ――――――――ッ!!!」
何かが弾けたかのような、烈火のような、超音波のような泣き声が耳を劈いた。
「アニャッ――――ン!!!アニャッ――――――――ン!!!」
ベビぃは顔と云わず体全体を真っ赤にして、手足をバタつかせながら泣き喚く。正に『赤ん坊』だ。
平手に力は入れなかった。赤ん坊相手にそこまで馬鹿ではない。
それが証拠にベビぃの鼻からは血も出てないし、平手が跳んだ頬もうっすら赤くなっているかな?という程度だ。
生まれて初めて怒鳴られ、平手が跳んできたという精神的なショックだろう。
謝って優しくダッコをしてやりたい衝動に駆られたが、躾という文字が頭に浮かぶ。
何より出勤時間が迫っていた。
「パパの言う事を聞かないからだ!判ったらイイ子でお留守番するんだぞ!」
「アニャッ、アニャッ・・・アニャ・・アニャァ・・・・・・・・」
ベビぃはしゃくり上げながら、それでも怒られたという事は自覚したらしくコクンと小さく頷いた。
そんな姿を長く見る事はせず、少々乱暴に玄関ドアを閉めた。
その音でまたベビぃはビクンと驚いただろう事は容易に想像できる。

腕時計で時間を確認しつつ、駅までの道程を早足で進む。
『かなり驚いただろうな・・・・あんなに怒ったのは初めてだし』
赤ん坊みたいなベビぃ相手に大人気なかったとは思う。
しかしそろそろ本格的な躾を始めないと、とんでもない我儘な性格になるとも飼育サイトにはあった。
『そうさ、あれは躾だ。暴力じゃない。ベビぃもきっと理解できる筈だ』
頭の中で薄い靄のようなものが掛かったような気がした。
頭を押さえながら改札を抜けると、丁度電車がホームに滑り込んできた。
列の最後尾に並ぶ。
靄のようなものは頭の中から消えていた。

553 名前: a day 5 投稿日: 2003/08/08(金) 06:40 [ eKsbI/0A ]
その日の帰り道、ベビぃの為に砂糖のたっぷり入ったケーキを買った。
今朝のお詫びの印しという訳ではないつもりだったが、ベビぃの喜ぶ顔がとにかく見たかった。
ベビぃは甘いものが大好きだ。チョコレートだろうが角砂糖だろうが何でも食べる。
飼ったばかりの頃、余程甘いものに飢えていたのだろう。
白砂糖の袋に頭から突っ込んで一所懸命にもがいていた事があった。
さすがにその場で注意はしたが。
その滑稽な姿を思い出し、喉の奥でクックックと笑った。
今日はケーキに顔を突っ込まなければ良いが。

「ベビぃ、ただいま」
玄関ドアを開けて一声掛けると、リビングドアの隙間から満面の笑みでベビぃが駆けてくる。
「アニャーン!パァパ!オカエリナチャイ!!」
いつの間にかジャンプ力も付いて、一気に胸元まで飛んでくるようになった。
頭を優しく撫でてやるとベビぃは喉を鳴らして喜ぶ。
どうやら今朝の事は気にしていないようだった。
「イイ子にしてたか?」
「アニャーン。ベビィハ イツモ イイコデチュヨ」
「よーし。じゃあご褒美だ。一緒にケーキ食べよう」
後ろ手に隠していたケーキの入った箱を、ベビぃの鼻先に軽く押し付けてやった。
「アニャッ!ケーチ?パァパ、コレ ケーチナノ!?」
ベビぃは心底嬉しそうに、ケーキの箱をポンポンと叩いた。
「そうだよ。御飯食べた後に食べような」
「ワーイワーイ!ケーチケーチ♪」
買ってきて良かった。こんなにはしゃぐベビぃを見たら心底そう思った。
「ケェチ♪ケェチ♪」
ベビぃのケーチの歌はずうっと続くようだ。
有頂天のベビぃを抱えたまま、リビングに入った。

554 名前: a day 6 投稿日: 2003/08/08(金) 06:40 [ eKsbI/0A ]

「・・・・・・なんだこりゃ・・・・・・・・・・」

今朝のリビングの光景とは一変していた。
棚にあった全ての本は床に散乱。出窓の観葉植物は床で鉢ごと叩き割られ土が飛散。
その出窓のカーテンはビリビリに裂かれ、リビングの中心のテーブルの上に置いてあった小物も全て床の上。
右手の台所を見ると、シンクの上に洗いっぱなしで置いてあった茶碗や皿やコップが
一つ残らず床の上で粉々になっている。御丁寧に冷蔵庫の中身までブチ撒かれていた。
「空き巣かよ・・・・・」
力無くベビぃとケーキを床に置いてその場にへたり込んでしまった。
「畜生・・・盗むモンなんかないだろうが・・・・」
この部屋で一番高価そうなパソコンや自慢のAVシステムは何故か無事だった。
とりあえず、盗まれた物があるかどうか調べてみる。
中身のあまり入っていない通帳、印鑑、その他それなりな貴重品は全て無事だった。
「アニャーン アニャーン パァパ ゴハントケーチハァ?」
ベビぃは親の心子知らずか、ケーキの箱に夢中のようだ。
「あぁ、ちょっと待って・・・・・て?」
そうか。空き巣ならベビぃが見てる筈だ。
10畳一間の狭いアパート、ベビぃが隠れながらも犯人を見ているに違いない。
ケーキの箱からベビぃを離し、両手で抱えて目線の高さまで上げる。
「アニャ?」
ベビぃはケーキから離され少し不満そうにじっと見返してきた。
「ベビぃ、今日このおウチに知らない人が来ただろ?どんな人か見たか?」
「アニャァ・・・・ウウン ミテナイデチュヨ」
「本当か?こんな狭いウチで見てない訳ないだろ?」
「・・・エト・・・・ベビィ コワクテ ベッドノシタニ カクレテタノ。・・・ハヤク ケーチ、パァパァ」
ベビぃはそんな事より早くケーキが食べたくて仕方がないようで、イヤイヤをするように体を捻った。
『?』
その時ベビぃの口の周りに、白い粉のようなモノが付いている事に気付いた。
視線に気付いたか、ベビぃは顔を見せないようにブンブンと頭を振った。
「ベビぃ!顔見せろ!」
その声に驚き、しょんぼりと観念したようにベビぃはゆっくりと顔をこちらに向けた。
白い粉を指に掬い取って臭いを確かめる。臭いは無い。
その指を舌で舐めとってみた。思った通り砂糖だった。
台所にもう一度顔をやると、割れた食器の向こうに袋ごとバラ撒かれた白い砂糖が見えた。
「・・・ベビぃ、また砂糖食べたのか?」
「ゴメンナチャイ・・・・ドウチテモ ドウチテモ オサトウガ タベタカッタノ・・・・」
おずおずとバツの悪そうな上目遣いをしながらベビぃが呟く。
「パパがイイと言うまで食べちゃダメって前にも言っただろう?覚えてないのか?」
「・・・ゴメンナチャイ・・・・モウ チマセンカラ ユルチテ・・・」
「全く・・・・・・」

555 名前: a day 7 投稿日: 2003/08/08(金) 06:41 [ eKsbI/0A ]
その吐き捨てと同時におかしい事に気付く。
台所の上の食器は全て床に落ちて割れている。
しかしベビぃ用の皿だけは隅の方に残っている。
それを見た瞬間、ベビぃを少々乱暴に床に降ろし窓際に近づく。
やっぱりだ。壊されている処か窓のロックは掛かったままだ。
リビングを出て風呂場の窓も一応見る。
元々、人が通れるような大きさではなかったが、ここもロックは掛かったままだった。
玄関もしっかりロックがしてあった。
空き巣の足跡らしきものも残っていない。
では空き巣が御丁寧に窓のロックを壊さずに靴を脱いで進入し、
何も盗まず部屋を目茶苦茶にした挙句、また出て行く時にロックしていったと?
そんな馬鹿な。そんな親切な空き巣など居る訳がない。
とすると・・・

「ベビぃ」
「アニャッ?マンマ?」
ベビぃはもう先ほどの砂糖の事は無罪放免になったと思ったのか、笑顔で見上げた。
「御飯じゃない。おウチをメチャメチャにしたのはお前だろう?」
「ア、アニャァ。・・・チ、チガイマチュヨウ。コワイオジタンデチュヨウ」
「おじさん?さっき顔は見てないって言ったよな?」
「ア・・・・・アニャ アニャァ・・・・・・・・」
ベビぃは焦ってしまったらしく、口をパクパクさせている。
判っていた。自分の表情から少しずつ理性が消えていくのが。
見下ろされたベビぃもガタガタと小さく震え始めていた。
「嘘なんだよな?パパに嘘付いたんだよな?」
「チ・・・チ・・チチチ チガイマチュヨウ。ベビィ ウソツカナイモン ウソツカナイモン・・・」
頭の中にまた薄い靄のようなものが掛かっていく。
 
 
『 躾 の 時 間 だ ・・・・・・』

556 名前: a day 8 投稿日: 2003/08/08(金) 06:42 [ eKsbI/0A ]
ボスッ!!

足元に置いてあったケーキの箱を思い切り蹴飛ばした。
ケーキの箱はベビぃの顔を掠めながら壁にブチ当たり、ずるずると重力で床に落ちていく。
「アニャーン!ベビィノ ケーチィガ!」
ベビぃが叫びながらそのベコベコになった箱に飛びつく。
なんて浅ましいヤツ!
ベビぃが箱に取り付いた瞬間、もう一度箱を蹴飛ばした。
「!?ヂィィィ――――ッ!!」
箱ごとベビぃの小さな体が壁に叩き付けられる。
「ヂイィッッ!?」
ベビぃはケーキ塗れになりながら、床にぼすんと転がった。
何が起こったか理解出来ないようだ。ゆらりと起き上がり頭をフルフル振っている。
目には一杯の涙を貯めて。
「ア・・アニャァァァン・・・・アニャァァ・・・・・」
ケーキ塗れになったベビぃの首根っこを摘んで目の高さまで持ち上げた。
涙がボロボロと流れている。嘘つきのクセに。
「今朝の事、気に入らなかったんだろ?怒ったんだろ?」
「オコッテナイデチュヨウ・・・・ユルチテヨウ・・・・」
「嘘はいけないなぁ、ベビぃ。怒ったから仕返しでおウチをメチャメチャにしたんだろう?」
「パァパァ・・・コワイヨォ・・・ベビィ モウ ウソチュカナイカラ・・・・・ゴメンナチャイ・・・ユルチテヨォ・・・・」
ポタポタと音がする。
チラリと下を見ると、床が濡れていた。恐怖のあまり失禁したようだ。
「あーぁ、ベビぃ。お漏らししちゃったねぇ。ダメだなあ、オシッコはトイレでしなさいと言ってるだろ?」
「ゴ・・ゴメンナチャイ・・・・ベビィ オソウジシュルカラ ユルチテ・・」
「いいよいいよ。パパが掃除するから」
ニッコリ微笑んでやった。
ベビぃは少しホっとしたのか安堵の表情を浮かべた。

「お前が雑巾だがなっ!!」

557 名前: a day 9 投稿日: 2003/08/08(金) 06:43 [ eKsbI/0A ]
ベビぃの体を力一杯床に叩きつけた。勿論顔は下向きだ。
「ヴォヴッ!!?」
声にならない声が洩れる。バウンドしたベビぃを掴み、小便で汚れた床に押し付けた。
「汚したらキレイにしないとねえ」
「ヂ・・ヂ・ヂ・・ギュヂィ・・・・・」
ベビぃを押さえ付けている右手にゆっくりと力を加えていく。
「ヂ・・・・ヂ・・・ヂィ・・・・」
「おっと雑巾は拭かなきゃな」
押さえ付けたベビぃを上下にゴシゴシと床に擦り付ける。何度も何度も力強く。
ベビぃは息が苦しいのか先程までのか細い泣き声さえも上げなくなっていた。
そのかわり短いシッポが痙攣するようにプルプルと震え出した。
この辺りが限界のようだ。解放してやるか。
「さ、キレイになったよ。ベビぃ」
ベビぃの顔をこちらに向けてみた。
鼻血を大量に出したようだ。顔中、涙と鼻血と小便とケーキでぐちゃぐちゃになっている。
なんて滑稽な顔なんだろう。
ベビぃは恐怖で目をギュっと瞑っている。耳も後ろに畳んだままだ。
さらに今までに無いぐらいガタガタと震えている。
これで良い。躾は遊びではないのだ。少しくらい恐怖心を持って貰わないと意味がない。
「ああ、汚れちゃったねぇ。お風呂入ろうか?」
優しくベビぃの頭を撫でながら、バスルームへと向かった。




続きます。

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