Aパート
リツコ:おはようシンジ君、調子はどう?
シンジ:慣れました、悪くないと思います。
リツコ:それは結構。EVAの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、全部頭に入っているわね?
シンジ:多分…
リツコ:では、もう一度おさらいするわ。
リツコ:通常EVAは有線からの電力供給で稼動しています。非常時に体内電池に切り替えると、蓄電容量の関係でフルで1分、ゲインを利用してもせいぜい5分しか稼動できないの。
リツコ:これが私たちの科学の限界ってわけ。お分かりね。
シンジ:はい…
リツコ:では昨日の続き、インダクションモード、始めるわよ。
リツコ:目標をセンターに入れて。
リツコ:スイッチオン。
リツコ:落ち着いて、目標をセンターに。
シンジ:スイッチ…
リツコ:次。
マヤ:しかし、よく乗る気になってくれましたね、シンジ君。
リツコ:他人の言う事にはおとなしく従う、それがあの子の処世術じゃないの?
シンジ:目標をセンターに入れてスイッチ…目標をセンターに入れてスイッチ…目標をセンターに入れてスイッチ…目標をセンターに入れてスイッチ…目標をセンターに入れて…
BGM:2-8
テレビ:それではスタジオから、松崎のシノハラナツコさーん!
テレビ:はい、おはようございます、シノハラです!今朝は何と、西伊豆の松崎へ、ダイビングに来てるんですよ!本日も西伊豆地方は今日も快晴!予想最高気温は…
シンジ:ねえ、ミサトさん…もう朝なんですけど…
ミサト:ん~、さっきまで当直だったの…今日は夕方までに出頭すればいいの…だから、寝かせて~
シンジ:じゃ、僕…
ミサト:今日、木曜日だっけ!?燃えるゴミ、お願いね~
シンジ:…はい。
ミサト:学校のほうは、もう慣れた?
シンジ:ええ…
ミサト:そう、行ってらっしゃい…
シンジ:行ってきます…
BGM停止
ミサト:ううん、うーん…はい、もしもし…なんだ、リツコか…
リツコ:どう?彼氏とはうまくいってる?
ミサト:彼?…ああ、シンジ君ね…転校して二週間、相変わらずよ…いまだに誰からも電話かかってこないのよね…
リツコ:電話?
BGM:1-5
ミサト:必須アイテムだから、ずいぶん前に携帯渡したんだけどね、自分で使ったり、誰からもかかってきた様子、ないのよ…あいつ、ひょっとして友達いないんじゃないかしら。
リツコ:シンジ君て、どうも友達作るのには不向きな性格かもしれないわね…ヤマアラシのジレンマ、って話知ってる?
ミサト:ヤマアラシ?あのとげとげの?
リツコ:ヤマアラシの場合、相手に自分の温もりを伝えたいと思っても、身を寄せれば寄せるほど、体中の棘でお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことがいえるわ。
リツコ:今のシンジ君は、心のどこかで痛みに怯えて、臆病になっているんでしょうね…
ミサト:ま、そのうち気付くわよ…大人になるってのは近づいたり離れたりを繰り返して、お互いがあんまり傷つかずに済む距離を…見つけ出す、ってことに…
BGM停止
ケンスケ:ギューン!ダダダダダダダダ!グワーン!
ケンスケ:なに?委員長?
ヒカリ:昨日のプリント、届けてくれた?
ケンスケ:え、あ、いや、トウジのうち、なんか留守みたいでさ…
ヒカリ:相田君、鈴原と仲いいんでしょう?2週間も休んで、心配じゃないの?
ケンスケ:大怪我でもしたのかなあ?
ヒカリ:ええっ、例のロボット事件で?テレビじゃ一人もいなかったって…
ケンスケ:まさか…鷹巣山の爆心地、見たろ?入間や小松だけじゃなくて、三沢や九州の部隊まで出動してるんだよ。絶対、10人や20人じゃ済まないよ…死人だって…
ケンスケ:トウジ…
ヒカリ:鈴原…
トウジ:何や、ずいぶん減ったみたいやなぁ
ケンスケ:疎開だよ、疎開。みんな転校しちゃったよ。町中であれだけ派手に、戦争されちゃあね。
トウジ:喜んどるのはおまえだけやろなぁ、生のドンパチ見れるよってに。
ケンスケ:まあね…トウジはどうしてたの?こんなに休んじゃってさ。この間の騒ぎで、巻き添えでも食ったの?
トウジ:妹のやつがな…
トウジ:妹のやつが瓦礫の下敷きになってもうて、命は助かったけど、ずっと入院しとんのや。
トウジ:うちんとこ、オトンもオジイも研究所勤めやろ?今職場を離れるわけにはいかんしな。俺がおらんと、あいつ、病院で一人になってまうからな。
トウジ:しっかし、あのロボットのパイロットはほんまにヘボやなあ!むちゃくちゃ腹立つわ!味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ!
ケンスケ:それなんだけど、聞いた?転校生の噂。
トウジ:転校生?
ケンスケ:ほら、あいつ。トウジが休んでる間に転入してきたやつなんだけど、あの事件の後にだよ。変だと思わない?
ヒカリ:起立!
老教師:えー、このように、人類はその最大の試練を迎えたのであります。
老教師:20世紀最後の年、宇宙より飛来した大質量の隕石が南極に衝突、氷の大陸を一瞬にして融解させたのであります。
老教師:海洋の水位は上昇し、地軸も曲がり、生物の存在をも脅かす異常気象が世界中を襲いました。
老教師:そして、数千種の生物とともに、人類の半分が永遠に失われたのであります。
老教師:これが世に言う、「セカンドインパクト」であります。
老教師:経済の崩壊、民族紛争、内戦、その後生き残った人々もありとあらゆる地獄を見ました。
シンジ:ん…あ…
老教師:だが、あれから15年、わずか15年で私たちはここまで復興を遂げる事ができたのです。
コンピュータのモニター:碇君があのロボットのパイロットというのはホント? Y/N
シンジ:はっ!
老教師:それは私たち人類の優秀性もさる事ながら、
コンピュータのモニター:ホントなんでしょ? Y/N
老教師:皆さんのお父さん、お母さんの血と、汗、涙、努力の賜物と
シンジ(キー入力):YES
老教師:言えるでありましょう。
シンジ(キー入力):(リターンキー)
クラス:ええーっ!
老教師:そのころ私は根府川に住んでいましてねえ。今はもう海の…
ヒカリ:ちょっとみんな、授業中でしょう!席に着いてください!
女子:あー、またそうやってすぐに仕切るー!
男子:いーじゃん、いーじゃん!
ヒカリ:よくない!
女子:ねえねえ、どうやって選ばれたの?
女子:ねえ、テストとかあったの?
女子:恐くなかった?
女子:操縦席ってどんなの?
シンジ:いや、あの、そういうの、秘密で…
男子:えー、なんだよそれー!
女子:ねえねえ、あのロボット、なんて名前なの?
シンジ:よくわかんないけど、みんなが、EVAとか初号機って…
女子:EVA?
男子:必殺技は?
シンジ:何とかナイフっていって、振動が…えっと、超音波みたいな…
女子:でも凄いわ、学校の誇りよねえ!
老教師:で、ありますから…ああ、では今日はこれまで。
女子:碇君、どこに住んでるの?
女子:旧市街のほう?
ヒカリ:起立、礼!ちょっと、みんな、最後ぐらいちゃんと…
女子:凄いよねー。
トウジ:済まんな、転校生、わいはお前をなぐらなあかん。なぐっとかな気がすまへんのや。
シンジ:…
ケンスケ:悪いね…こないだの騒ぎであいつの妹さん、怪我しちゃってさ…ま、そういうことだから…
シンジ:…僕だって、乗りたくて乗っているわけじゃないのに。
トウジ:…!
シンジ:…
レイ:…非常召集…先、行くから。
放送:ただいま、東海地方を中心とした、関東・中部の全域に、特別非常事態宣言が発令されました。速やかに指定のシェルターに非難してください。繰り返しお伝え致します…
Bパート
BGM:2-12
シゲル:目標を光学で捕捉、領海内に侵入しました。
冬月:総員、第一種戦闘配置!
オペレータ:了解、対空迎撃戦、用意!
マコト:第3新東京市、戦闘形態に移行します。
オペレータ:中央ブロック、収容開始。
オペレータ:中央ブロック、および、第1から第7管区までの収容完了。
シゲル:政府、および関係各省への通達、終了。
オペレータ:現在、対空迎撃システム稼働率、48%。
ミサト:非戦闘員、および民間人は?
シゲル:既に、待避完了との報告が入っています。
BGM停止
放送:小中学生は各クラス、住民の方々は各ブロックごとにお集まりください。
放送:第7…
ケンスケ:ええっ、まただ!
トウジ:また文字だけなんか?
ケンスケ:報道管制、ってやつだよ。僕ら民間人には見せてくれないんだ。こんなビックイベントだっていうのに!
ミサト:碇司令の居ぬ間に第4の使徒襲来…意外と早かったわね。
マコト:前は15年のブランク、今回はたったの3週間ですからね。
ミサト:こっちの都合はお構い無しか。女性に嫌われるタイプね。
冬月:税金の無駄遣いだな。
シゲル:委員会から、再びエヴァンゲリオンの出動要請が来ています。
ミサト:うるさい奴等ね。いわれなくても出撃させるのに。
オペレータ:エントリー、スタートしました。
マヤ:L.C.L.電荷。
オペレータ:圧着ロック、解除。
シンジ:(父さんがいないのに、なんでまた乗ってるんだろう。)
シンジ:(人に殴られてまで…)
ケンスケ:ねえ、ちょっと二人で話があるんだけど…
トウジ:なんや?
ケンスケ:ちょっと、な?
トウジ:しゃーないなあ。
トウジ:委員長!
ヒカリ:何?
トウジ:ワシら二人、便所やー。
ヒカリ:もう、ちゃんと済ませときなさいよ!
トウジ:で、何や?
ケンスケ:死ぬまでに、一度だけでも見たいんだよ。
トウジ:上のドンパチか?
ケンスケ:今度いつまた、敵が来てくれるかどうか、分かんないし。
トウジ:ケンスケ、おまえなぁ…
ケンスケ(軍人口調で):この時を逃しては、あるいは、永久に!
ケンスケ:なあ、頼むよ、ロック外すの手伝ってくれ。
トウジ:外に出たら、死んでまうで?
ケンスケ:ここにいたって分からないよ。どうせ死ぬなら、見てからがいい。
トウジ:あほ!何のためにNERVがおるんじゃ。
ケンスケ:そのNERVの決戦兵器って何なんだよ?あの転校生のロボットだろ?この前もあいつが俺達を守ったんだ。それをあんな風に殴ったりして。それも二度も。
トウジ:う…
ケンスケ:あいつがロボットに乗らない、なんて言い出したら、俺達死ぬぞ。
ケンスケ:トウジには、あいつの戦いを見守る「義務」があるんじゃないのか?
トウジ:しゃーないなぁ。
トウジ:おまえ、ホンマ、自分の欲望に素直なやっちゃなあ。
ミサト:シンジ君、出撃、いいわね?
シンジ:はい…
リツコ:よくって?敵のA.T.フィールドを中和しつつ、パレットの一斉射、練習通り、大丈夫ね?
シンジ:はい…
ミサト:発進!
BGM:1-14
ケンスケ:凄い!これぞ苦労の甲斐もあったと言うもの!おっ、待ってました!
ケンスケ:出た…
シンジ:目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ…
マヤ:A.T.フィールド、展開。
ミサト:作戦通り、いいわね?
シンジ:はい!
ミサト:バカ!爆煙で敵が見えない!
BGM停止
トウジ:なんや、もうやられとるで!?
ケンスケ:大丈夫…
ミサト:予備のライフルを出すわ。
ミサト:受けとって!
ミサト:シンジ君?…シンジ君!?
ケンスケ:あっちゃー、やっぱ、殴られたのが効いてるのかなぁ?
トウジ:う、うるさいな!
BGM:1-3
シゲル:アンビリカルケーブル、断線!
マコト:EVA、内蔵電源に切り替わりました!
マヤ:活動限界まで、後4分53秒!
ケンスケ:こっちに来る!
ケンスケ・トウジ:うわああああああああああああ!
ミサト:シンジ君、大丈夫?シンジ君!?ダメージは?
マコト:問題なし、いけます!
ミサト:シンジ君のクラスメート?
リツコ:何故こんな所に?
トウジ:なんで闘わんのや?
ケンスケ:僕らがここにいるから、
ケンスケ:自由に動けないんだ!
マヤ:初号機、活動限界まで、後3分28秒!
ミサト:シンジ君、そこの2人を操縦席へ!
ミサト:2人を回収したのち一時退却、出直すわよ!
リツコ:許可のない民間人を、エントリープラグに乗せられると思っているの!?
ミサト:私が許可します。
リツコ:越権行為よ!葛城一尉!
マヤ:初号機、活動限界まで後3分。
ミサト:EVAは現行命令でホールド、その間にエントリープラグ排出、急いで!
ミサト:そこの2人、乗って!早く!
トウジ:なんや、水やないか!
ケンスケ:カメラ、カメラが…
マヤ:神経系統に異常発生!
リツコ:異物を2つもプラグに挿入したからよ!
リツコ:神経パルスにノイズが混じっているんだわ!
BGM停止
ミサト:今よ!後退して!
BGM:1-19
ミサト:回収ルートは34番、山の東側へ後退して!
トウジ:転校生、逃げろゆうとるで!転校生!
シンジ:逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ。
マコト:プログレッシブナイフ、装備!
ミサト:シンジ君、命令を聞きなさい!退却よ!シンジ君!
シンジ:わああああああああああ!
ミサト:あの、バカ!
シンジ:うわああああああああ!
マヤ:初号機、活動限界まで後30秒!28、27、26、25
シンジ:うわああああああああ!
マヤ:14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1!
BGM停止
マヤ:EVA初号機、活動を停止。
マコト:目標は、完全に沈黙しました。
トウジ:…
トウジ:今日で、もう3日か…
ケンスケ:俺達が、こってりと叱られてから?
トウジ:あいつが学校に来んようになってからや。
ケンスケ:あいつって?
トウジ:転校生や、転校生…あれからどないしとんのやろ…
ケンスケ:心配なの?
トウジ:別に、心配、っちゅうわけじゃ…
ケンスケ:トウジは不器用なくせに強情だからね…あの時、別れ際にでも謝っておけば、3日も悶々としないで済んだのに。
ケンスケ:ほら、転校生の電話番号。心配だったら、かけてみたら?
トウジ:…