Aパート
ミサト(留守番電話):はい、ただいま留守にしています。発信音の後にメッセージをどうぞ。
加持:最後の仕事か…まるで血の赤だな。
ミサト:拉致されたって、副指令が?
諜報部員:今より2時間前です。西の第8管区を最後に、消息を絶っています。
ミサト:うちの署内じゃない。あなたたち諜報部は何やってたの!?
諜報部員:身内に内報、および先導したものがいます。その人物に裏をかかれました。
ミサト:諜報2課を煙に巻ける奴?…まさか!
諜報部員:加持リョウジ。この事件の首謀者と目される人物です。
ミサト:で、私のところにきたわけね。
諜報部員:ご理解が早く、助かります。作戦課長を疑うのは、同じ職場の人間として心苦しいのですが、これも仕事ですので。
ミサト:彼と私の経歴を考えれば、当然の処置でしょうね。
諜報部員:ご協力感謝します。お連れしろ。
冬月:久しぶりです、キール議長。まったく手荒な歓迎ですな。
キール:非礼を詫びる必要はない。君とゆっくり話をするためには、当然の処置だ。
冬月:相変わらずですねぇ、私の都合は関係無しですか。
SEELE:議題としている問題が急務なのでね。やむなくの処置だ。
SEELE:分かってくれたまえ。
冬月:委員会ではなく、SEELEのお出ましとは。
SEELE:我々は、新たな神を作るつもりはないのだ!
SEELE:ご協力を願いますよ、冬月先生。
冬月:(冬月先生…か…)
学生:先生!冬月先生!
冬月:ん?ああ、君たちか。
学生:これからどないです?鴨川でビールでも。
冬月:またかね。
学生:リョウコらが先生と一緒なら行くゆうとりますんや。
学生:教授もたまには顔出せゆうてはりましたで。
冬月:ああ、分かったよ。
教授:たまにはこうして外で飲むのも良かろう。
冬月:はぁ。
教授:君は優秀だが、人の付き合いというものを軽く見ているのがいかんな。
冬月:恐れ入ります。
教授:ところで冬月君、生物工学で面白いレポートを書いてきた学生がいるんだがね、碇と言う学生なんだが、知ってるかね?
冬月:碇?…いいえ。
教授:君の事を話たら、ぜひ会いたいと言っていた。そのうち連絡があるだろうからよろしく頼むよ。
冬月:碇君ですね、分かりました。
冬月:これ読ませてもらったよ、2・3疑問が残るが、刺激のあるレポートだねぇ。
ユイ:ありがとうございます。
冬月:碇・ユイ君だったね、この先どうするつもりかね、就職か?それともここの研究室に入るつもりかね?
ユイ:まだそこまで考えていません。それに、第3の選択もあるんじゃありません?
冬月:ん?
ユイ:家庭に入ろうかとも思っているんです。いい人がいればの話ですけど。
冬月:…
SEELE:S2機関を自ら搭載し、絶対的存在を手にしたエヴァンゲリオン初号機!
SEELE:われわれには具象化された神は不要なのだよ。
キール:神を作ってはいかん。
SEELE:まして、あの男に神を手渡すわけにはいかんよ!
SEELE:碇ゲンドウ。信用に足る人物かな?
冬月:六分儀ゲンドウ?聞いた事はあります。いぇ、面識はありませんが…いろいろと噂の絶えない男ですから。
冬月:えぇっ、私を身元引受人に?いえ、うかがいます。いつうかがえばよろしいでしょうか?
ゲンドウ:ある人物からあなたの噂を聞きましてね、一度お会いしたかったんですよ。
冬月:酔って喧嘩とは、意外と安っぽい男だな。
ゲンドウ:話す間もなく一方的に絡まれましてね。人に好かれるのは苦手ですが、疎まれるのは慣れています。
冬月:まぁ私には関係のない事だ。
ゲンドウ:冬月先生、どうやらあなたは、僕が期待した通りの人のようだ。
冬月:そう。彼の第一印象は、嫌な男だった。
冬月:そしてあの時はまだこの国に季節、秋があった。
冬月:本当かね!
ユイ:はい、六分儀さんと、お付き合いさせていただいてます。
冬月:それを聞いた時、私は驚きを隠せなかった。
冬月:君があの男と並んで歩くとは…
ユイ:あら、冬月先生、あの人はとても可愛い人なんですよ。みんな知らないだけです。
冬月:知らない方が幸せかも知れんな。
ユイ:あの人に紹介した事、ご迷惑でした?
冬月:いや…面白い男である事は認めるよ。好きにはなれんがね。
BGM:3-9
冬月:だが彼は、ユイ君の才能とそのバックボーンの組織を目的に近づいたというのが仲間内での通説だった。
冬月:その組織は、SEELEと呼ばれるという噂を、その後耳にした。
冬月:セカンドインパクト。20世紀最後の年に、あの悲劇は起こった。
冬月:そして、21世紀最初の年は、地獄しかなかった。他に語る言葉を持たない年だ。
BGM停止
冬月:これがかつての氷の大陸とはな。見る影もない!
ゲンドウ:冬月教授。
冬月:君か。よく生きていたな。君は例の葛城調査隊に参加していたと聞いていたが?
ゲンドウ:運良く事件の前日、日本に戻っていたので、悲劇を免れました。
冬月:そうか…六分儀君、君は…
ゲンドウ:失礼、今は名前を変えてまして。
冬月:はがき?名刺ではないのかね?
冬月:碇!碇ゲンドウ!
ゲンドウ:妻が、これを冬月教授に、とうるさいので。あなたのファンだそうです。
冬月:それは光栄だな。ユイ君はどうしてる?このツアーには参加しないのかね?
ゲンドウ:ユイも来たがっていましたが、今は子供がいるのでね。
冬月:君の組織、SEELE、とか言ったかな、いやな噂が絶えないねぇ。力で理事会を押え込むのは、感心できん。
ゲンドウ:変わらずの潔癖主義だ。この時代に、きれいな組織など生き残れませんよ。
冬月:今回のセカンドインパクトの正式調査。これも、SEELEの人間だけで調査隊を組めば、いろいろと面倒な事になる。
冬月:そのための間に合わせだろ、私たちは。
ゲンドウ:…
BGM:2-11
ミサト:暗いとこは、まだ苦手ね…いやな事ばかりを思い出すわ。
冬月:彼女は?
男:例の調査団ただ一人の生き残りです。名は、葛城ミサト。
冬月:葛城?葛城博士のお嬢さんか!
男:はい、もう2年近くも口を開いていません。
冬月:ひどいな。
男:それだけの地獄を見たのです。体の傷は治っても、心の傷はそう簡単には治りませんよ。
冬月:…そうだなぁ。
冬月:こっちの調査結果も簡単には出せないなぁ。この光の巨人、謎だらけだよ。
冬月:その後国連は、セカンドインパクトは大質量隕石の落下によるものと正式発表した。
冬月:だが、私の目から見れば、それはあからさまに情報操作をされたものだった。
冬月:その裏にはSEELE、そして、キールと言う人物が見え隠れしていた。
冬月:私は、あの事件の闇の真相を知りたくなった。
冬月:その先に、たとえ碇ユイの名があろうとも。
BGM停止
冬月:なぜ巨人の存在を隠す!セカンドインパクトを知っていたんじゃないのかね、君らは。その日、あれが起こる事を。
ゲンドウ:…
冬月:君は運良く事件の前日に引き揚げた、と言っていたな。全ての資料を一緒に引き揚げたのも、幸運か?
ゲンドウ:こんな物が処分されずに残っていたとは意外です。
冬月:君の資産、いろいろと調べさせてもらった。子供の養育に金はかかるだろうが、個人で持つには額が多すぎないかね?
ゲンドウ:さすが冬月教授。経済学部に転向なさったらどうです?
冬月:セカンドインパクトの裏に潜む、君たちSEELEと、死海文書を公表させてもらう。あれを起こした人間たちを、許すつもりはない!
ゲンドウ:お好きに。ただ、その前にお目にかけたいものがあります。
冬月:随分潜るんだなぁ。
ゲンドウ:ご心配ですか?
冬月:多少ね。
冬月:これは…
ゲンドウ:われわれではない、誰かが残した空間ですよ。89%は埋まっていますがね。
冬月:もとはきれいな球状の地底空間か…
ゲンドウ:あれが、人類がもてる全てを費やしている施設です。
ナオコ:あら、冬月先生。
冬月:赤木君、君もかね。
ナオコ:ええ、ここは目指すべき生体コンピュータの基礎理論を模索する、ベストな所ですのよ。
冬月:ほぉ。
ナオコ:MAGIと名づけるつもりですわ。
冬月:MAGI?東方より来たりし三賢者か。見せたいものとは、これか?
ナオコ:いいえ、こちらです。リツコ、すぐ戻るわ。
リツコ:…
冬月:これは…まさか、あの巨人を!?
ナオコ:あの物体をわれわれゲヒルンではアダムと呼んでいます。が、これは違います。オリジナルのものではありません。
冬月:では…
ナオコ:そうです。アダムより人の造りしもの、EVAです。
冬月:EVA!
ゲンドウ:われわれのアダム再生計画、通称E計画の雛形たる、EVA零号機だよ。
冬月:神のプロトタイプか。
ゲンドウ:冬月。俺と一緒に人類の新たな歴史を作らないか。
Bパート
リツコ:…
マヤ:あの、先輩!
リツコ:あぁ、ごめんなさい、レイの再テスト、急ぎましょ。
マヤ:葛城さん、今日見ませんね。
リツコ:そうね。
リツコ:葛城さん?
ミサト:そー。葛城ミサト、よろしくね!
BGM:1-7
リツコ:母さん、先日葛城と言う子と知り合いました。
リツコ:他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度母さんの名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼女だけは私に対しても屈託がありません。
リツコ:彼女は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になったそうですが、今はブランクを取り戻すかのようにベラベラと良く喋ります。
ナオコ:リッちゃん、こっちは変わらず地下に潜りっぱなしです。支給のお弁当にも飽きました。
ナオコ:上では第二遷都計画による第三新東京市の計画に着工したようです。
リツコ:このところミサトが大学に来ないので、理由を白状させたら、バカみたいでした。ずっと彼氏とアパートで寝ていたそうです。
リツコ:飽きもせず、一週間もだらだらと!彼女の意外な一面を知った感じです。
リツコ:今日紹介されました。顔はいいのですが、どうも私はあの軽い感じが馴染めません。
ナオコ:昔から男の子が苦手でしたね、リッちゃんは。やはり女手一つで…ごめんなさい、ずっと放任してたものね。
ナオコ:嫌ね、都合のいい時だけ母親面するのは。
BGM停止
ナオコ:…母親か…
オペレータ:L.C.L.変化、圧力、プラス0.2。
オペレータ:送信部にデストルドー反応無し。
オペレータ:疑似回路、安定しています。
冬月:なぜここに子供がいる!
ナオコ:碇所長の息子さんです。
冬月:碇、ここは託児所じゃない。今日は大事な日だぞ。
ユイ:ごめんなさい冬月先生、私が連れてきたんです。
冬月:ユイ君。今日は君の実験なんだぞ。
ユイ:だからなんです。この子には明るい未来を見せておきたいんです。
BGM:3-12
ナオコ:それがユイさん最後の言葉でした。イレギュラーな事件は彼女をこの世から消し去ってしまいました。
ナオコ:私の、願いそのままに。何て嫌な女なんでしょうね。
ナオコ:リッちゃん、この日を境に碇所長は変わったわ。
BGM停止
冬月:この一週間どこへ行っていた。傷心もいい。だが、もうおまえ一人の体じゃない事を自覚してくれ。
ゲンドウ:分かっている。冬月、今日から新たな計画を推奨する。キール議長には提唱済みだ。
冬月:まさか、あれを!
ゲンドウ:そうだ。かつて誰もが為し得なかった神への道、人類補完計画だよ。
リツコ:母さん、MAGIの基礎理論、完成おめでとう。そのお祝いと言うわけでもないけど、私のゲヒルンへの正式入所が内定しました。
リツコ:来月から、E計画勤務となります。
警備員:誰だ!
リツコ:技術開発部赤木リツコ。これID。発令所の躯体ができたそうだから見にきたんだけど、迷路ね、ここ。
警備員:発令所なら今、所長と赤木博士が見えてますよ。
ナオコ:本当にいいの?
ゲンドウ:ああ、自分の仕事に後悔はない。
ナオコ:嘘!ユイさんの事忘れられないんでしょ。でもいいの。私。
ゲンドウ:…
リツコ:…
ゲンドウ:あれがゲヒルン本部だよ。
ナオコ:所長、おはようございます。お子さん連れですか?あら、でも確か男の子…
ゲンドウ:シンジではありません。知人の子を預かる事になりましてね、綾波レイと言います。
リツコ:レイちゃん、今日は。
レイ:…
ナオコ:この子、誰かに…ユイさん?
ナオコ:綾波レイに関する全ファイル、抹消済み?白紙だわ。どういう事?
BGM:3-11
ナオコ:MAGI-CASPER、MAGI-BALTHASAR、MAGI-MELCHIOR。MAGIは三人の私。科学者としての私、母親としての私、女としての私。
ナオコ:その3つがせめぎあってるの。
リツコ:3つの母さんか。後は電源を入れるだけね。
リツコ:今日、先帰るわね。ミサトが帰ってくるのよ。
ナオコ:そうそう、彼女、ゲヒルンに入ってたのねぇ。確か、ドイツ。
リツコ:ええ、第三支部勤務。
ナオコ:じゃあ、遠距離恋愛ね。
リツコ:別れたそうよ。
ナオコ:あら、お似合いのカップルに見えたのに。
リツコ:男と女は分からないわ。ロジックじゃないもの。
ナオコ:そういう醒めたところ、変わらないわね。自分の幸せまで、逃しちゃうわよ。
リツコ:幸せの定義なんて、もっと分からないわよ。さてと、飲みに行くの久しぶりだわ。
ナオコ:お疲れさま。
リツコ:お疲れさま。
BGM停止
ナオコ:…?何かご用?レイちゃん!
レイ:道に迷ったの。
ナオコ:あらそう。じゃあ私と一緒に出ようか?
レイ:いい。
ナオコ:でも、一人じゃ帰れないでしょ?
レイ:大きなお世話よ、ばあさん。
ナオコ:…何?
レイ:一人で帰れるから放っといて、ばあさん。
ナオコ:人の事ばあさん、なんて言うもんじゃないわ。
レイ:だってあなたばあさんでしょ?
ナオコ:怒るわよ、碇所長に叱ってもらわなきゃ。
レイ:所長がそう言ってるのよ、あなたの事。
ナオコ:嘘!
レイ:ばあさんはしつこいとか、ばあさんは用済みだとか。
レイ(エコー):ばあさんはしつこいとか、ばあさんは用済みだとか。
レイ(エコー):ばあさんはしつこいとか、ばあさんは用済みだとか。
レイ(エコー):ばあさんはしつこいとか、ばあさんは用済みだとか。
レイ:ばあさんは用済み。所長が言ってるのよ。
ユイ:あなたの事。ばあさんは用済みだとか。
レイ(エコー):所長が言ってるのよ、あなたの事。
レイ(エコー):あなたの事。
レイ(エコー):あなたの事。
レイ(エコー):あなたの事。
レイ(エコー):あなたの事。
レイ(エコー):あなたの事。
ナオコ:…あんたなんか、あんたなんか死んでも代わりはいるのよ、レイ。私と同じね。
ナオコ:はっ…
BGM:3-12
冬月:キールローレンツを議長とする人類補完委員会は、調査組織であるゲヒルンを即日解体。全計画の遂行組織として特務機関ネルフを結成した。
冬月:そしてわれわれは、そのまま籍をネルフへと移した。ただ一人、MAGIシステム開発の功績者、赤木博士を除いて。
冬月:君か…
加持:ご無沙汰です。外の見張りには、しばらく眠ってもらいました。
冬月:この行動は、君の命取りになるぞ。
加持:真実に近づきたいだけなんです。僕の中のね。
諜報部員:ご協力、ありがとうございました。
ミサト:もういいの?
諜報部員:はい、問題は解決しましたから。
ミサト:そう…彼は?
諜報部員:存じません。
加持:よぅ、遅かったじゃないか。
ミサト:ただいま…
シンジ:…
ミサト:……………!
BGM:3-13
加持:葛城、俺だ。多分この話を聞いている時は、君に多大な迷惑をかけた後だと思う。すまない。リッちゃんにもすまないと謝っておいてくれ。
加持:後、迷惑ついでに俺の育てていた花がある。俺の代わりに水をやってくれると嬉しい。場所はシンジ君が知ってる。
加持:葛城、真実は君とともにある。迷わず進んでくれ。もし、もう一度会える事があったら、8年前に言えなかった言葉を言うよ。じゃ。
電話:午後、0時、2分、です。
ミサト:バカ…あんた、ほんとにバカよ…
シンジ:…
シンジ:その時僕は、ミサトさんから逃げる事しかできなかった。他には何もできない、何も言えない子供なんだと、僕は分かった。
BGM停止