こくうのおとしもの 2

Last-modified: 2011-03-19 (土) 21:32:51

無限の宇宙が広がっていた・・・
何処までも暗く、何処までも大きく。
そして、何処までも残酷な宇宙が・・・。
 
(・・・!)
(・・・・・・!!!)
賢(何だ? 誰だ?)
 
誰かの声が聞こえる・・・ 聴いた事があるような無い様な、自分であって自分で無いような・・・
 
???(急がねば)
賢(・・・何・・・を・・・?)
 
 
見慣れた天井が見えた。外からは雀のさえずり、窓からは太陽の光が差し込み、今が朝であり、ここが自分の家である事が理解できた。
 
賢(何だ・・・? 今日の夢は?  何を急がないといけないんだ?)
 
早乙女は今しがた見ていた夢の内容の意味を考えながら起き上がった。
 
???「おはようございます。 ダチ公。」
 
賢「・・・・・・・・・・・。」
 
布団から起き上がった早乙女に対し朝の挨拶をする存在が一つ。
蝙蝠のような羽が生え、頭には角のような二対の赤い突起物、体には赤い鎧を身に纏った、虚ろな眼をしている少女の姿があった。
 
賢「・・・。」
 
早乙女は昨晩の事を思い出していた。
敷島先輩の提案に無理やり付き合わされた結果、空から降ってきた悪魔のような少女と出会い、なりゆきで共同生活を送る事になった事を。
 
アーク「どうされました? ダチ公?」
賢「いや・・・何でも無い・・・。それより【ダチ公】って何だよ?」
アーク「貴方はわたしの【ダチ公】です。あなたを楽しませるためだけに創られた【エデン宇宙】の製品です。」
賢「・・・。」
 
 
早乙女は固まっていた。
異様なナリをした少女から発せされる言葉を一つ一つ噛み締め、内容を繰り返し確認しながら考えたが、現状を正確に判断する事ができなった。
頭の中がショートを起こしそうになった所で、彼の頭の中で一つの結論に達した。
 
賢「素晴らしいことじゃないか!!! 具体的にどんなことが出来るんだ!?」
アーク「何でも・・・」
賢「何でも!?      フッフッフッフッ~☆」
 
早乙女の瞳はいつに無くギラついていた。元々、【ゲッター線】なんていう未知のエネルギーに対して異様なまでの執着がある彼であったが、それ以前に彼は健康的な男子である。
その男子たる早乙女が何でも願いを叶えてくれる青狸のような存在を得てしまえば、どのような結果が待っているが、火を見るより明らかであった・・・筈なのだが。
 
早乙女が願った事は
倒壊するビルの上で今年一番の波に乗る
合体ロボットに乗って鼻血を噴き出す。
後一打で優勝となるゴルフの大会で心臓発作を起こす
大汗フビライの暗殺
ムラサキイトユリを食す
いい音の出る三味線を奏でる etc・・・
 
と、どれもこれもまともな人間には理解できないような内容ばかりであった。
 
アーク「・・・あの、ダチ公。 今までのにはどういった意味が・・・」
賢「好奇心だ!!!」
 
バカと天才は紙一重である
 
アーク「いかがですか? ダチ公」
賢「サイコーだよ!!! さすがは神の戦士アークだ!!!」
アーク「私は神の戦士ではありませんが・・・ ともかく、他に何か御命令はありませんか?」
賢「そうだな~」
 
 
 
賢「脱・げ     ・・・とか?」
アーク「任せな!!! ダチ公の願いを叶えられるのは俺だけだ!!!」
 
荒々しい言葉と共に、まるで仮面をとるかのようにアークは自分の顔に手をかけた。
 
ベリッ
 
賢「何!?」
 
 
                 ―完―
 
 
 
賢「わーっ!!! ごめんごめん 今のナシ!!」
アーク「命令の中止は出来ません。私はそういう風に造られていませんので」
賢「中止は出来ませんって!!! なんか魔空間から娑婆に出たがってる化け物たちがいっぱい見えるんですけど!!!」
 
結局噴出した魔物たちを全て消し飛ばすハメになり、最後の一匹を駆逐したところで1日が終了した。
 
アーク「他に何かご命令はありませんか?」
 
虚ろな目で命令を求める少女の足元で、大の字に倒れてピクリとも動かない早乙女の姿があった。
 
賢「いや・・・もう十分願い事したからいいや・・・。 残ってんのは世界征服ぐらいか・・・」
アーク「・・・」
 
見慣れた天井が見えた。雀のさえずりは聞こえず、窓からは差し込む光は無いものの、ここが自分の家である事は理解できた。
昨日と変わらぬ今日が来たと早乙女は思っていた・・・が、今度ばかりは違っていた。
窓から見える光景は、正に地獄そのものであった。
 
見渡す限り瓦礫の山と化した町、暗い雲に覆われた空と鳴り響く雷と地響き。
そして蠢き、殺しあう巨大なロボット達。
 
昨日までの現実がまるで嘘であったかのような光景に早乙女は愕然としていた。
 
賢「何だよこれ・・・」
アーク「間もなく、【世界征服】の準備が完了いたします。 ダチ公」
 
呆然と立ち尽くしていた早乙女の後ろから、文字通り「悪魔のような」言葉が呟かれた。
 
アーク「世界征服をするためには人間は余りに未熟であるため、今よりもっと強大な力を持つように進化する必要があります。それをなす為に必要な過程が今の現状であり、これにより、ダチ公は世界を征服しうる力を得る事が出来ます」
 
虚ろな瞳をした少女は淡々と現状を説明した。
その瞬間にも外ではロボット同士の醜悪な闘いが繰り広げられていた。
 
賢「中止は・・・?」
アーク「できません。 私はそういう風に造られてはいませんので」
賢「俺のせいでこんな世界が・・・出来ちまったのかよ・・・」
 
早乙女は震えていた。
自分の望みがこのような結果を招いてしまったことへの責任と、それを実現させてしまう少女に対する恐怖で。
 
アーク「お気に召しませんでしたか? 申し訳ありません・・・ てっきり命令だとばかり・・・」
賢「・・・。」
アーク「お望みなら・・・私を破棄処分に出来ますが・・・」
 
言うと同時に、アークの右腕がバキバキと音を立てて変化していき、一つの巨大な銃が出来上がった。
そして銃口を自身の頭部へ移動させ、引き金に指をかけた。
 
ガシュンッ!!!
 
早乙女のまるで昆虫型ロボットのような速さの攻撃で、ブラストキャノンは粉々になった。
 
賢「お前は何も悪くない。 何も考えずにバカみたいなお願いをした俺が悪いんだ。 俺を一人にしないでくれよ・・・ 頼むよ・・・」
アーク「はい・・・ ダチ公」
 
アークは震えながら無く早乙女を包み込むように抱きしめた。
 
 
 
         ―何かの鼓動が聞こえた―
 
          ―強く・・・ 弱く・・・―
 
          ―強く・・・ 弱く・・・―
 
      ―まるで子守唄のリズムのようなそれは、早乙女の身体に深深と溶け込んでいった―
 
 
アーク「私(ゲッター線)は、ずっと貴方の傍にいます・・・」
 
 
 
 
 
 
 
見慣れた天井が見えた。外からは雀のさえずり、窓からは太陽の光が差し込み、今が朝であり、ここが自分の家である事が理解できた。
 
賢(あれっ? 夢オチ!? ネタなのにこんだけまじめっぽくやっておいて、結局夢オチってどうなんだよこれ・・・)
 
結構メタ的な発言をしながら早乙女は布団から起き上がった。
 
アーク「・・・」
 
布団から起き上がった早乙女を見つめる存在が一つ。
蝙蝠のような羽が生え、頭には角のような二対の赤い突起物、体には赤い鎧を身に纏った、虚ろな眼をしている少女の姿があった。
 
賢「まさか― お前が?」
アーク「夢です・・・」
賢「夢」
アーク「夢を見たはずです・・・ 」
賢「夢・・・なんだよな・・・」
 
 
 
 
 
 
賢「え!? もう願い事叶わないの!?」
アーク「はい、私の力も一部夢となってしまいましたので・・・」
 
賢「俺の黄金城への夢が~!!!!」