こくうのおとしもの 3

Last-modified: 2011-03-19 (土) 21:48:53

ガタンゴトンッ ガタンゴトンッ  パァーーーーン
 
夏の日差しが緑の大地を照らす中、ローカル線を電車が走る。
行く先には碧く彩られた海と灼熱の砂浜・・・。
 
― そう― 季節は 夏 なのである ―
 
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
 
「その・・・なんかすまんのう。爆烈・・・。」
「・・・何がですか?」
 
 
―さかのぼる事、数日前―
 
 
カランカラン!!
「大当たり~!! 一等賞 ペア日帰り海旅行券!!!」
「やったー!! 海だよ賢ちゃん!! 新しい僧兵服買って行かなきゃ!!!」
「お前、海なら普通水着だろ! っていうかいつもその服じゃねぇか!」
「いいの!新しいのが欲しいの!!」
商店街の福引の前で騒いでいるのは早乙女と爆烈。
学校帰りにも関らず、ボロボロの僧兵服を身に纏った少女爆烈
それを半ば冷めた目で見守る学ランに白衣を羽織い、下駄を履いている少年が早乙女である。
さて、季節は夏。健康的な若者であるなら終末の休みは海に行って青春を謳歌するのがお決まりである。
それは爆烈も例外ではなく、今年こそは早乙女と二人っきりで海に行きたかったのである。
 
(賢ちゃんと二人であそびにいくなんて私が猿羅神だったころ以来だもんね!!)
 
年頃の少女は、想い人との1日を想像し、胸を弾ませていた    ・・・が、
 
カランコロンッ
「大当たり~!! 一等賞 ペア日帰り海旅行券!!!」
「ゲヘヘ!! 新しく開発した兵器を奴らに試すいい機会じゃ!!」
「・・・」
 
 
―そして今に至る―
 
ガタンッゴトン! ガタンッゴトン!
「・・・。」
 
むくれる爆烈に対し流石にバツの悪さを感じたのか、敷島はどうにか今の空気を変えようと考えていた。
 
「その・・・なんだ。 アーク。 いつもの翼はどうした?」
 
話題の焦点はアークに向けられた。以前のような赤い鎧は纏っておらず、ノースリーブに短パン。そして真っ赤なマントを羽織っている。
 
「私のゲッターウィング(翼)は可変式となっていますので、今はマントの形にしています。飛行能力はゲッターバトルウィングに劣りますが、
身に纏う事でクラゲの電撃くらいは防げますし、敵の頭に巻きつけて顔面パンチをぶちかませたりします・・・。身に纏った状態でビームを放てばスパイラル(ry・・・」
「わぁーったから変な兵装の話は止めろ!!」
「実に興味深い!!!」
「・・・」
 
―そう、季節は 夏 なのである・・・―
 
 
輝く太陽 青く輝く海 白い大地の砂浜 紺碧の大空
早乙女達は目的地である海に到着していた。
 
「うっっっわー♪ きれー♪」
「あちちっひどい暑さだ!! アスファルトも溶け出した!!!」
「ぎゃははっは!!! 行けミサイル共!!! 恐竜達を皆殺しにするんじゃ~!!!」
「うみ・・・?」
「あはははは♪(そうよね、いつまでもむくれてちゃダメ せっかく賢ちゃんと海に来たんだから楽しまないと・・・!)」
 
先ほどまで不機嫌だった少女はみんなのはしゃぎ様を見て気を取り直した。
 
 
 
「ね、賢ちゃん。馬頭竜に乗ろうよ♪ 私借りてくるから」
「あーいあーい。」
 
気の抜けた返事をする早乙女と馬頭竜を借りに関東へ赴く爆烈
しばしの間一人になった早乙女は海を見渡し、そして気付いた。
 
「あれ? アークは?」
 
真夏の海で真っ赤なマントを羽織っている、嫌でも目立つアークの姿が見えなかった。
他の観光客に混ざっているのでは無いかとも考え、一通り周りを見渡すもアークの影は無い。
 
「先に泳いでんの・・・」
 
ドゴォォォォオン!!!
 
沖の方から爆音と巨大な水柱が上がった。そして、それによって形成された津波が浜辺を飲み込んでいった。
一通り波が引いた後の浜辺はそれこそ惨状であったが、そんな事お構い無しに早乙女は海に向かって駆け出していった。
 
「ぜってーアイツの仕業だ!!!」
 
 
 
―海底―
 
そこは我々が考える海とはかけ離れたものがあった。
いつもより濁った海、突然姿を見せる巨大なクラゲ・・・
チョッカクガイ ポトリオレピス サンヨウチュウ ウミエラ などなど
まるで太古の昔に戻ったかのような光景であった。
 
(この様子じゃ日本の海は全部やられているだろう)
 
落ち着いているのか焦っているのか分からないような口調で早乙女は現状を確認していた。そんな中さらに深い場所から爆音が響き渡った。
 
「今回は勝ちを譲ろう。しかしきさまらに明日は無いんだぞ!! これだけはようく覚えて置けよ。 ふふふ・・・さらばじゃ」
「地中に逃げたか・・・」
 
巨大な魚のようなものが地の底にもぐっていき、それを見守るアークの姿がそこにはあった。
もぐってきた早乙女に気付いたのかアークは目線を上げる。
 
「ダチ公!!! 私には地中にもぐる装置はないのか!!」
「ぎばべべぼぼんばぼぼ(知らんねえよそんなこと)!!!!」
 
 
 
ザザァーン・・・
先の津波によって惨状と化した浜辺に二つの影があった。一つは息も絶え絶えでむせ返っている少年。一つはその少年の前で行儀よく座るマントを羽織った少女。
 
「私は主に空中戦用と言う設定を持っていますが、海中でもなんら問題なく動けます。圧壊深度は6000mmを越えます」
「ゲホッ!! ゴホッ!! いろいろ突っ込みたいが・・・せめて人並みに泳いでくれ・・・」
 
それから、早乙女はアークに対し人並みの海の楽しみ方を教えていったが、当のアークは海中を凄まじいスピードで潜水し、穴がボコボコ開いてマグマを発射する巨大な岩の中に突撃して行ったりと、早乙女の教えなどまったく理解できていないようであった。
 
 
 
「賢ちゃん・・・」
 
そんな二人の姿を見守る一つの影と空に浮く巨大な構造物があった。
一つの影は爆烈。関東に行って竜の起動に成功したものの、あまりに馬頭竜が大きすぎた為、MR-4∞兵器区を切り離して飛んでここまで戻ってきたのだ。
 
「賢ちゃん・・・ 人間もまだ捨てたもんじゃないよ・・・」
 
二人の仲むつまじい光景を見て疎外感を感じた爆烈は一人沖の方まで兵器区に乗って進んでいった。
 
「私だって泳げないのに、賢ちゃん忘れちゃったのかな・・・」
 
波に揺られ、一人物思いにふける爆烈であった。
しかし、そんな彼女の遥か上空より、無数の物体が降り注ごうとしていた。
その名は「ミサイル」
先ほど敷島が遥か上空に発射していたハチュウ人類皆殺しミサイルが今になって戻ってきたのである。
 
「・・・敵が来る!!!」
 
言うや否や、爆烈は拳に光(オーラ)を溜め、降り注ぐそれを迎え撃つ。
激しい爆音と振動の中で、確実にミサイルを迎撃して行くも、ミサイルの雨が途切れる事は無かった。
関東での戦闘で体力を消耗していたため、流石の爆烈でもミサイル全てを処理し切れず、
撃ち洩らしたミサイルがドゴンドゴンと兵器区へ突き刺さり、メキメキと音を立てていった。
そして、
 
ドワォオオ!!!!
 
爆烈を乗せて海に浮かんでいたものは兵器区である。一つのミサイルが爆発すれば、他の兵器にまで引火、誘爆し、最終的には兵器区そのものも巨大な爆発を引き起こした。
一方爆烈はと言うと、爆発の衝撃を吸収しダメージを最小限に留めたが、自身は泳げぬ海の中に吹き飛ばされていた。
 
 
 
「ガボッゴボッ」
 
水中で足掻き、海上を目指すも自身の体は海の底へ沈んで行く・・・
そんな中、爆烈は昔の事を思い出していた。
 
泳げない自分を憂いて泳ぎ方を教えてくれる早乙女。それでも全然泳げない自分、そして病弱な自分に瓦割りを教えようとした早乙女、そこで覚醒した爆烈拳・・・。
 
カッ!!!
 
爆烈の眼光が光った。手には光(オーラ)が集まり、目線は遥か先の浜辺の方に向けられた。
 
「光(オーラ)が線になった時 目の前の物は全て・・・ 斬る!!!!   光破爆烈拳!!!」
 
ドワォォォオオ!!!
 
一筋の光が放たれた時、海は真っ二つに割れた。そしてその衝撃は浜辺まで届き、
 
「ぎゃん!!!」
 
早乙女を真っ二つにした。
 
割れた海はその空間を埋めようと水の壁を崩して行くが、その中を音速を超えた速さで爆烈は駆け抜けた。
 
 
 
「アークの事で夢中になってたのは悪かった。ごめん。  ・・・だけど一人で沖まで行ってんじゃねぇ!!!」
 
体をガムテープで補強した早乙女は浜辺で正座をする爆烈に説教をしていた。
爆烈はというとずっと下を向いたままうなだれている。
そんな爆烈を見て流石に悪く思ったのか、早乙女もそれ以上責める事は無かった。
 
「その・・・お前泳げないんだしさ・・・」
「賢ちゃん・・・覚えててくれたんだ・・・」
「溺れる度に海を勝ち割って何故かいつも俺まで真っ二つにされてればそりゃ忘れんわ!!!」
 
 
 
紅の太陽が海に沈んで行く、紺碧の青空も緋色から暗い闇へとその色を変え、あたり一面が夜へと変わろうとしていた。
 
― 季節は 夏 彼らの青春はまだ始まったばかりである ―
 
 
 
 
 
 
 
 
「お前は何者じゃ?」
「?」
「お前は何者かと聞いている」
「私は愛玩用ゲッターロイド ゲッター1 アー・・・」
「惚けるで無いわ 只の愛玩用が、深海6000mm下で自由に動き回り、慣性制御の飛行能力を持ち、その他様々な兵器を備えているものなのか?」
「・・・」
「何が目的で早乙女に近づいた?」
「宇宙(そら)に呼ばれています・・・」
「宇宙?」
「ダチ公は宇宙に呼ばれています・・・」
「・・・宇宙に行くためにその兵器が必要だというのか?」
「遠い未来へ・・・さらなる飛躍へと・・・ でもそれはまだ先の話・・・ 今はまだ種を拾っただけ、その種を植えてもらう為に・・・ 私は来ました。」
「・・・」
 
「私はその日まで・・・ その日が来るまで・・・ ダチ公の傍にいます・・・」