しんのすけとカムイ 第七話

Last-modified: 2009-05-29 (金) 02:38:31

「風間君のヒミツだゾ!」

高級マンション「マングースマンション」。
優等生でしんのすけの友達、風間君がそこに住んでいる。

「トオルちゃん宛てに荷物が届いてるわよ!」
(はっ…こっこれは…)
風間君は焦った顔でやって来た。
「こっこれは僕のだ!」
「トオルちゃん、それなんの荷物なの?」すると風間君は焦った顔で部屋に入ろうとする。
「こっ…これは…教材の道具だよ…」
バタン!
「?」
風間君の母親は何か違和感を感じていた。

「…………」
風間君はため息をつき、 荷物を舗装している紙をしわくしゃに破り捨てた。
「ふふふ…」
風間君は怪しい笑い方をしている。気味が悪いニヤニヤ笑いだ。
「つ…遂に…遂に当たったぞぉ!!!もえPステッキが!!」
風間君が取り出したのは先に星の飾りがついたステッキ状の玩具だった。

………………………
今、女の子の間で大人気の少女アニメ「ま・ほー少女もえP」。
その番組プレゼントで応募すると、主人公「もえP」愛用の魔法ステッキ「もえPステッキ」が抽選で当たるのだ。

風間君は実はもえPの隠れファンでコスプレに手を出すほどの熱狂っぷりだった。
風間君は有頂天だった。

「これで…あれが出来るな!!」
バン!
なんと風間君はもえPのコスプレをして(これも懸賞品)、ステッキを持って踊り始めた。
「私はま・ほー少女もえP!」
クルクル!
器用にステッキを回して踊り始めた。
「もえもえピピピ!もえピピピ!うふふふ…」
もう…優等生で通っていた風間君とは別人で、アブナい子供になっていた。

「しかし…これがみんなにバレたら…」
…そう。風間君が一番恐れているのはこれだった。
もしみんなにバレたら沢山の意味で自分の人生は転落してしまう…これだけは避けたかった。
なのでこの「コト」は自分の部屋だけにとどめておき、外ではアニメには興味ない優等生キャラを演じているのだった…。
「特にしんのすけにバレたら……うあああ!!考えただけでも寒気がする!!」
風間君は恐怖にさらされていた………………………

…その頃、公園では、カムイは亜空間に隠蔽したバグの修理状況の確認に来ていた。
「なん……てコト…だ…」
カムイはバグのコックピット内で汗を流していた。

「やはり…この世界に……ゲッター線が…」
そう…信じたくはなかった。が、やはり予想と全く一致していた。
バグのゲッター線ソナーが微量ながらも反応していた。
そう…この世界にもゲッター線は存在していたのだ。

ダン!

カムイは拳を壁に叩きつけた。
「ゲッター線が…存在するということは…俺は…未来のためにも全人類を抹殺しなければならない……
けど…野原家の人達やここの人々には優しくしてもらった……
手を出したくないが…おぞましい未来を回避するには……どうすればいいんだぁ!!」
カムイは深く嘆いた。予想はしてたといえ、現実になると酷なことである。
「…………」
カムイは落ち込んだ顔で出てきた。
しんのすけ達には手を出したくない。しかしこのままいけば、人類は確実にカムイが「あの時」見た残酷な未来の人類の二の舞になってしまう。
すると
「カムイ君?なにやってるの?」
落ち込んでいたカムイのところにしんのすけがやって来た。
「いや…しんのすけ…何もない…」
「今から風間君の家に行くんだけどカムイ君も行く?」
「いや…俺はいい…しんのすけだけいっといで…」
しんのすけはカムイの様子がおかしいことに薄々気づいていた。
「カムイ君…何か隠してない?」
「いや…なんでもない!早く風間君の所に遊んできな!ハハハ…」
「ふうん……」
しんのすけは変な目をしたあと、風間君の家へ去っていった。
カムイは去っていくしんのすけを物悲しい目で見る。
「………………」

その頃、風間君の家では…
「今日のもえPは…葉月ちゃんと遊園地かぁ…楽しみだなぁ~」
風間君は自分のテレビを付けようとした。
ピンポーン

突然、インターホンが鳴り出す。
(ん…誰だろ…?ママはいないみたいだし)
風間君は玄関に行き、ドアを開けようとした。
「風間君!遊ぼー!!」
それはしんのすけの声だった。
(しっ…しんのすけ…マズい!!)
風間君は留守を使おうと静かに後ずさり、部屋の中に入った。
(ふう…留守として使えば…あいつも諦めてく…)
すると
ドンドン!!
「風間君!遊ぼーよ!!」
しんのすけが部屋のドアを叩いていた。
(ギクっ!!勝手に家の中に入ってくるなよぉ!!!)
しんのすけはいつも勝手に家(特に風間君の家)に侵入するため、風間君はしんのすけを嫌っていた。

風間君はかなり焦っていた。しんのすけにこの部屋を見られたら……そんな考えが脳裏を横切った。
(こ…こうなったら…)
風間君は急いで部屋にある、もえP関連の物を全て隠せる所に無理やり押し込んだ。

かちゃ…
「もう…いるならちゃんと返事してよ~…ん?」
しんのすけが部屋の中に入ると風間君がぐったりしていた。
「はあ…はあ…」
「風間君どうしたの?なんでそんなに疲れてるの?」
「お…お前のせいだろ…勝手に人の家に入るなよ…」
「まあまあ、堅いことは言わずですな~ぁ」
風間君は呆れていた。

「ん…?」
しんのすけは床に落ちてる物に気付いた。
「これは…」
(ドキッ!)
風間君は焦った。しんのすけが拾ったものは、風間君が大切にしていたもえPのシールだった。
「風間君…なんでここにもえPのシールがあるの?」
「こっ…これは…いやあ…誰かの落とし物を拾ったから、とりあえず預かっているんだよ…ハハハ…っ」
しんのすけは風間君を変な目で見る。明らかにぎこちない喋り方だ。
「じゃあなんで拾った時、交番に届けないの?まさか風間君…もえPが好きなんじゃあ…」
風間君は必死で否定する。
「ち…違う!!なんでこんな子供っぽいモノが好きになるんだよぉ!ボクはなぁ…」
挙動不審の風間君には勘が鋭いしんのすけを騙し通せるハズがなかった。
「怪しい…」
「ハハハ…あっ…もうこんな時間だからしんのすけも帰った方がいいんじゃないかぁ!?」
時計を見ると、もう夕方の5時だった。
「…………」
しんのすけは変な目をしながら帰っていった。
(ふぅ…なんとかしんのすけには帰っていってもらった……あっ!そうだもえPの見なくちゃ!)
風間君は急いで部屋に戻り、テレビを付けた。
しかし…
「来週もまた見てねぇ♪もえもえピピピ!!もえピピピーっ!」
もえPは終わっていた…。
風間君は崩れ落ちる。
「も…もえP…見逃しちゃった…ハハハ…」
風間君は燃え尽きて灰になった……………。