しんのすけとカムイ 第五話

Last-modified: 2009-05-29 (金) 02:35:42

“カムイ君とあいちゃんだゾ!”

「………」
「………」
これよりあいちゃん対カムイのフェンシング対決が始まろうとしていた。
「黒磯、あなたが審判になって」
「お嬢様…」

みんなは2人の無事を祈っていた…1人以外は…
「おいウロコ男、金持ち女!!どっちも負けたら承知しねえぞ!!」
上尾先生だけはやけにハイテンションだった。
スっ…
しんのすけが上尾先生のメガネを付けなおした。
「おろろろろ……一体今まで何があったのでしょう……?」
メガネを付けた上尾先生はまた気弱な性格に戻ってしまった。

そして、黒磯が不安になりながらも審判の位置に立つ。
「プレ!(準備はいいか?)」

2人の集中力はもう勝負のことに集中していた。どっちも負けられない…そんな思いが2人の頭の中にぐるりと回っていた。

「アレ!(始め!)」
黒磯が試合の合図を叫ぶと2人の威圧感がいっそうに強くなった。

カムイは構えた少したりとも動こうとしない。
まるでスキを探しているのか、はたまたとりあえず守りに徹しているのか。
しかし、カムイの目から、確実に相手を仕留める狩猟者(ハンター)の威圧感がじわじわと伝わってくる。
元々ハチュウ人類とのハーフであるカムイの目はとても人間と比べてハチュウ類に近い瞳をもっていた。

それに対してあいちゃんはカムイと違い、少しずつカムイに近づいていく。
お金持ちのあいちゃんは多種多様のお稽古に通っているため、五歳児の女の子にしては並外れた運動神経やスキル、思考能力をもっていた。
その中でも赤ん坊の時からフルーレを持っていた(あいちゃん談)こともあり、フェンシングは得意中の得意で、同時で誇りでもあった。

しかし、ハチュウ人類のハーフの青年と能力が高いが普通の人間である五歳児の女の子では圧倒的に差があり、あいちゃんはかなり不利な状況だった。
それでも、あいちゃんからは大好きなしんのすけのためにも、負けられない思いがじわじわと伝わってくる。

全く動かないカムイとじわじわと近づいてくるあいちゃん。その異様な雰囲気に見ている先生やみんなは息を呑んで見守っている。

突然
「キャアアアア!!」
幼稚園の表門から女の子の叫び声が聞こえた。
「なっ……なに…?」

みんなは振り返った。すると、女の子がナイフを持った男に捕まっていた。
「おい!この子を殺して欲しくなかったら金を渡せ!」
男はナイフを女の子にちらつかせた。女の子も恐怖で全身震えていた。

「あっ!なんてことを!!」
「バカな事をやめてその子を離しなさい!」」
よしなが先生達はそう言うも男はナイフを女の子の喉に当てる。
「動くなよ…動くとこのガキの喉からプシャー!だ!」
「ひぃぃ~」
男は興奮し、少しでも刺激すると女の子の喉を切り裂きそうな状態だった。

カムイ達もそれに気づき、男の方を見た。
「何だと!?」
「まずいですわ…あのままじゃ…」

しかししんのすけは何故か興奮していた。
「おお!お祭りですなぁ~オラにも混ぜて!」
しんのすけは男の方に近いていった。男もしんのすけに気づく。
「ん?何だお前は?」
男はドスの効いた声でしんのすけを脅した。
「おじさん……その子が好きなの?」
ガクッ(肩が崩れる音)
「違うわ!オレはこのガキを人質に!」
「いやあ~おじさんもロリコンだなぁ~」
「ぐぅぅぅ!」
男はしんのすけの発言に少しづつ怒りを覚えた。

「しんちゃん!刺激しちゃダメよ!!」
「しんのすけ君、戻ってきなさい!!」
園長先生達がそう言うとしんのすけは渋々戻ってきた。

「早く金を持って来い!ガキを血祭りにされたいか!?」
状況が悪化するばかりで、一刻の時も許されない状況だった。
すると
「やめろ!!」
カムイが決闘をやめて、男に近づいてきた。
「誰だオメェは?近づいくとこのガキは死ぬぞ!!」
しかしカムイは男の脅しに臆することなく少しずつ近づいてくる。
「殺るなら今すぐ殺れ!」
《!!?》

カムイの言葉にみんなは全員凍りついた。
「アナタなに言ってるの!?」
「何、あの男を刺激すること言ってるのよ!!!」
よしなが先生達はカムイの発言に納得がいかなかった。

しかしカムイはそんなことをお構いなしにさらに言っていく。
「殺すか殺さないかハッキリしろ!まあ殺した時のお前に待っているのは「死」だけどな」
「なっ……」
男は焦りながら後ずさっていく。
「お…お前は一体何者だ!?」
「お前にそれを知る権利はない…何故ならお前の行動次第でお前は死ぬからだ!」
「なっ何ぃ!?」
男はカムイの言っている意味が分からなかった。男の興奮はピークに達した。

「くっそう!!そんなに殺してほしかったら殺してやらぁ!!」
男はナイフを上に上げた。
「ひい!」
みんなは目をつぶって覚悟を決めた。

シュ…
突然カムイは消えた。
「ん?」
するて男の目の前にカムイの顔があった。
「何ぃ!?」
カムイは女の子を奪い返した。
「もう安心だ。大丈夫か?」
「うっ…うん…」
女の子は何があったのかわからず、きょとんとしていた。
しかし納得いかないのは男の方だった。「この野郎!!こうなったらあのガキから殺してやる!」
男はナイフを振り回しながら近くにあいちゃんの方に向かってきた。
「なっ……」
「お嬢様ぁ!!」
あいちゃんは目をつぶった。
ドスっ…
鈍い音があいちゃんの方から聞こえる。
「まっまさか…あいちゃん!!?」
みんなはまさかと思い、あいちゃんの方へ向いた。
「大丈夫か…」
「えっ?」
目を開けるとなんとカムイが自分を包んでいた。
「あっ…あなた…は」
後ろでは、男はカムイの背中にナイフを奥深く突き刺していた。
「あなた!大丈夫ですの!!?」
「ああ…」
みんなもカムイが刺された事に気づいた。
「カムイ君!大丈夫!!?」
「あわわわわわ……」
カムイは立ち上がると物凄い目つきで男を睨みつけた。今にも自分を殺しそうな瞳をしていた。
「ひっ…ひいいい!!」
男は恐怖を感じ、逃げ出した。しかしカムイは逃がすハズがなかった。
シュ…
カムイは男の目の前に現れた同時に、態勢を低くした。
「うあああ!!」
バキィィィ!!
カムイは男の顎目掛けてアッパーを繰り出した。
男はまるで野球ボールをバットで打ち上げたかのように上空に上がっていく。
ドサッ!
男は10メートル先の地面に叩き落ちた。男は鼻血と口から泡を吹いて気絶していた。
「ふん…」
カムイは背中に刺さったナイフを抜き、地面に落とした…………

あの一見からカムイは幼稚園の人気者になった。特に…
「カムイ様ぁ~!!私とデートしましょう!」
「やばい!あいちゃんだ!」
あの一見以来あいちゃんはカムイに心を奪われてしまい、執拗にカムイを追いかけるハメになった。
「しんのすけ!助けてくれ!!」
「もう、カムイ君も罪深い男だなぁ~!」
「ふん…男ってみんなそう…」
「いいなぁ…あいちゃんに追いかけられて…」
「ボー…」
5人ともカムイを見て笑っていた。

「ちきしょう…誰か変わってくれ…」
カムイは必死であいちゃんから逃げまくる。
「黒磯!カムイ様を追いますわ!ああ…しん様とカムイ様を両方お好きになるなんて…私はなんて罪深き女なんでしょう…」
あいちゃんからは物凄いカムイLOVEパワーが伝わってくる。
「これにて一件落着!!」

………その頃、この世界での浅間山山麓では…
「素晴らしい…こんなエネルギーが見たことがない…」
一人の科学者がある新エネルギーの発見により、発狂していた。
「ふははは…宇宙から無限に降り注ぎ、さらに微量で膨大なエネルギーになる魔法のようなの光体…
こいつは使える…こいつは使えるぞぉ!!わはははは!」
科学者は新エネルギーを流している真空管を見て、高笑いしていた…