やわらか 第1話

Last-modified: 2013-06-17 (月) 10:11:27

「ゲッターチーム、出撃せよ!!」

早乙女研究所からサイレンが鳴り響く。それに応え、三人の熱き男が長い通路を走っていく――。

やわらか竜馬、90式隼人、鬼塚武蔵曹長の一人の男、一機の戦車、一匹のカス、計三人である。

三人が向かった場所は研究所内部の格納庫。中には顔と角のついた紅いコンニャクのような物質にキャタピラーの付いた、いともかしこもおかしい乗り物であった。
三人は直ぐ様それに乗り込む。

「やわらか竜馬、一号機搭乗しました!」

「二号機キューマル、搭乗した」

「三号機、いつでもいいぜ!」

操縦席のモニターから研究所の所長、ジミおじさんが現れた。

「みんな聞いてくれ。研究所北東90km地点にメカザウルスが出現し、こちらに向かってきている。
君達はただちにこのやわらかゲッターで向かい、侵攻を食い止めてくれ!」

「みんなの無事を祈るわ」

「バーブーっ!(気をつけて!)」

モニターに映る、ジミおじさんの娘(?)、ジェーンとベイベーの心配する姿が……。

「ボウズ、行くぞ!!」

「さっさとぶち殺してカップラーメン食おうぜ」

鬼塚とキューマルに応え、竜馬は自分のキャタピラーを手のように動かし、操縦幹を握った。

「それではやわらかゲッター、出撃~~っ!!」

ゲッターのキャタピラーの後部からブースターが出現、カタパルトが全開すると怒涛の勢いで発進した……。

……一方、恐竜帝国。爬虫人類を束ねる地底魔王ゴールはこちらへモニターに映る不倶戴天、やわらかゲッターを睨み付けていた。

「来たかやわらかゲッター。貴様らサルが造ったそんなプニプニしたマシンを今度こそ破壊してくれる!!ゆけ、メカザウルス・ツマミ!!」

メカザウルス・ツマミ。頭にくわがたのオオアゴのついたメカザウルス。だが見た目は……可愛らしい女の子だ、幼女だ。
その可愛らしさとは裏腹に巨大な身体をもってして、進行中の森をバキバキ破壊していく。
ちなみにこのオオアゴは何でもツマめるが机の切手だけは超苦手らしい、そしてスイカをオカズにご飯を食べるそうだ。

「メカザウルスを補足しました、これは……」

「あんなメカザウルスなんてあったのか。恐竜帝国の奴ら、悪趣味すぎるな……」

「けっ、ブッ潰してしまえばそれでおしまいよ」

やわらかゲッターはメカザウルスの元に辿りつき、着陸。

「我らやわらかゲッターが来た限り、恐竜帝国の思い通りにさせないぞ!!」

竜馬は操縦幹をグッと引いた。

「やわらかゲッタートマホークっっ!!」

……叫んだが何もでない……。

「……あれ?」

「ボウズ、どうした?」

「センパァイ!!トマホークがでないんです~~っ!」

「ナニイ!!じゃあビームを使え!!」

竜馬は操縦幹の横にある赤いボタンをポチッと押した。

「やわらかゲッタービ~~ムっっ!!」

……しかし何の動作も起きない……。するとキューマルは直ぐ様ジミおじさんを呼び出した。

「博士、武器が一つも使えないとはどういうことなんだ!!?」

「あっ、ごめ~ん。整備中で武器はおろかゲッター炉心まで取り外しておいたままだった」

「「ええ~~っっ!!?」」

二人は驚愕とパニックに陥っている。

「ええ~っ、そりゃあないですよお!!」

「ちょっと待て!!ゲッター炉心がないならこれ、何で動いてんだ!!?」

「これナマモノだから」

「ふざけんなよ!!武器もなくてこんな状態でどうやって戦えっていうだよ!!」

「分かった、今すぐ持っていくから待ってなさい」

「ホントですかあ?」

「ああっ。武器使いたいか?使いたいに決まってんだ」

「使いたいです!!」

「何でもいいから早く持ってきてくれ!!」

ジミおじさんは少し黙り込んだ後、手を出した。

「トマホークとゲッター炉心をつけて総計12500000円だあああ!!」

「はあっ!??金とんのかよお!!?しかもなんだよその金額はあ!?」

「生活かかってますもんで。研究所の所長だけじゃやっていけないんだよ」

「んざけんなコノヤロオ!!パイロットに法外な金額で武器売りつける人類の平和を守る基地の所長がどの世界にいるんだよ!!」

「それにさあ、ゲッタービームは炉心あるだけじゃ撃てないよ?」

「はあ!?」

「ゲッタービームを発射するには要素と言うものがありまして。
まず炉心は必要不可欠、もう一つは……はい、こちら『感謝の心』!!」

「…………?」

「『大地よありがとう、宇宙よありがとう』。この気持ち忘れていませんか?

この気持ちが宿ってこそ初めてゲッター線が反応するのです!!

……というわけで、感謝の気持ちの極意が書かれた私薯の本、
そしてゲッタートマホーク、炉心、そしてサービスにトマホーク、炉心用の専用ホルダーボックスを付属して、なんとお値段9000000円なりィ!!どうだ買ったあ!!」

「だからふざけんな!!アンタ悪徳商売から足洗ったつってたじゃねえか!!オレらは死んでも払わねえぞ!!」

するとジミおじさんは首をコマのようにぐるぐる回して怒り狂ったのだ。

「ああーーっそうかい!!全くケツの穴小さいったらありゃしねえなあ!!
トマホークや炉心造んのに数十億円、その一割にも満たない額で売ってやろうとしてんのになんだその態度は!!??
なら武器送ってやんないもんねえ、誰が送るかいっ!」

「テメエ、帰ったら覚えとけよ!!」

「そんな無駄口はちゃんと勝って生き延びてから言ってくださあい!!」

「くそお……っ!!」

二人は揉めあってる内に竜馬はあることに気づいた。

「……あれ?曹長は!?」

この機体に乗っていたはずの鬼塚がいなくなっていたのだ。彼はどこに……。
一方、その頃。遥か上空では一機のC-1輸送機が丁度通り過ぎようとしていたその時である。

「うあああああああああああああああああっっっっ!!」

一人の人間が輸送機から飛び降りた。黄色いマントに剣道の防具、そして工事用ヘルメットをつけたその厳ついタコ……鬼塚だ。

「メカザウルスの野郎、俺がぶち殺してやるぜえ。元空挺団のリーダーをなめんじゃねえぞ爬虫類野郎!!」

パラシュートなどつけておらず、直立不動のまま落下する彼だが果たして……。
「上空1200メートルから謎の物体がメカザウルスに向かって降下中。これは……人間!?」

「なにい!!」

ゴール達爬虫人類は驚愕していた。ツマミ目掛けて突入していく鬼塚。互いの距離が間近に迫る。そして――。

「…………」

「…………」

ツマミの片方の角先が鬼塚の尻に見事直撃。彼は一瞬で身体が蒼白くなった。

「曹長ーーっっ!!」

「あのバカア!!」
……どうやら鬼塚は昇天したようだ。これでチームは二人になってしまった。

「ああっ、三号機乗りはやっぱりこんな運命辿るのかよ!!」

「こうなったら…… 」

「こうなったら?」

竜馬は目を閉じて念じる。瞑想し、ぐわしと目を開けた。

「酢トナ~サァンシャインヌっ!!酢トナ~サァンシャインヌっ!!」

「……」

「酢トナ~~……」

「黙れオマエ!!」

――解説しよう、『酢トナーサンシャインヌっ』とは竜馬がさっき考えた必殺技である。
お酢の塊を相手に投げつけて、酸性に弱い者はたちどころに溶けて死に至らしめる、とてもイヤな技なのだ。

「先輩、一度退却したほうがいいのでは……」

「ここで逃げたらどうなる!!俺ら人類は終わりだぞ!!
俺らに不可能などない、気合いを入れろお!!」

「おっしゃあ、気合いを入れて……退却~~っっ!!」

「ちょっ!!待てボウズ!!」

やわらかゲッターのギアが入りキャタピラーが後転し後退りはじめた。

「二人しかいなくて、武器もないんじゃどうしようもないですよお、一度帰って態勢を立て直しましょう!!」

「かくなる上は特攻だ!!男として誇りと自覚がないのか!!」

「たかが戦車二台で挑んでも歯が立ちませんて!」

……そんな中、早乙女研究所では。

「ベイベ、いいわね」

「バーブーっ!!」

日の丸の書かれた頭巾をつけたベイベにジェーンは巨大なミサイルを持たせているが……。
――そして夕日が落ちる頃、みじめに帰ってきたやわらかゲッター、そして後を猛追するメカザウルス・ツマミ。このままでは研究所にツマミが突撃してしまう。

「うわはははっ!!我々の勝利だ!!所詮、サル如き我ら誇り高き爬虫人類に敵うはずなどなかったのだ!!」

ゴール達はこれから起こるであろう研究所の最後を確信し、勝利の酔いに浸っていた。
だが……そのときである。やわらかゲッターの反対側から小さい何かが来るのを……。自分の何倍もある巨大なミサイルを背中に固定し、ガサガサほふく前進しながら走ってくる勇姿……そう早乙女ベイベだった!!

「べっ、ベイベえ!!!」

気づいた竜馬が叫んだが時すでに遅し、ベイベはツマミにもう直ぐ目の前にまで迫っていた。

「バーブーっっ!!」

ミサイルの先がツマミの足にコツンと当たった時、それは核のような爆発、衝撃波が周囲一帯を襲ったのだった。

ツマミはその閃光に飲み込まれていった。そしてベイベも。

早乙女研究所ではジミおじさんと窓からジェーンはベイベに対し敬礼していた。

「ベイベ、よくやった」

そしてやわらかゲッター内部では……。

「無茶しやがって……」

「ベイベ……」

こうして今日も平和は守られた。二人の尊い犠牲を出して……。

【続く?】