ゲッターギアス(6)

Last-modified: 2010-03-04 (木) 17:57:43

「本日づけを持ちまして、アッシュフォード学園に入学することになりました。
枢木スザクです。どうかよろしくおねがいします」
ユフィとの一件があった数日後、スザクはアッシュフォード学園に入学した。
偶然か、クラスはルルーシュと同じ。
しかし、クラス全体の雰囲気は到底スザクを歓迎しているとは言い難いものであった。
それもそのはずだった。スザクは無実とは言え、クロヴィス暗殺の容疑をかけれれた人間。
さらには名誉ブリタニア人とはいえ、日本人だったことも災いした
だがそんなスザクにも声をかける人間はいた。あの號だった。
「よう、枢木、スザクだったよな? オレは一文字號。お前とおんなじ名誉ブリタニア人だ。
ま、だからってワケじゃねーがこれも何かの縁だ。仲良くしようぜ」
「君も…なのかい? でもあまり僕に関わらない方が…」
「へっ! お前に関わったら学校中からハブられるってか? んなのはもう慣れっこだよ」
「そうか…。やっぱり一文字も…」
「おいおい、そういう辛気臭い空気漂わすのはやめろっての。あとオレのことは號でいい。その代わりオレもお前を下の名前で呼ぶ。
いいだろう? スザク」
「ああ、分かったよ、號」
號の根の良さからか、彼らはすぐに打ち解けた。何人かのブリタニア人学生は陰口をたたき続けていたが、先ほどまでの露骨なものではなくなっていた。
そんな中、ルルーシュが教室を出ていく。襟首の部分に手をやり、何かのサインを送っているようだった。
「…! 號、悪いけど少し席をはずしていいかな? 用事を思い出しちゃって」
「ん? ああ、じゃあまた後でな」
そう言ってスザクはまるでルルーシュを追うかのように教室を出ていく。

 

屋上。
「7年ぶりに使ったよ。このサイン」
スザクが来ると、そこにはルルーシュが既に居た。スザクは手摺に持たれているルルーシュに近づいてゆく。
「屋根裏部屋で話そう、だったよね」
「ああ」
「無事だったんだね、ルルーシュ。安心した」
「ああ、お前のおかげだよ」
二人はそのまま、シンジュクでの事、これまでの事を話し合った。
そう、二人は7年前からの親友だった。
7年前、母が何者かに殺害され、同時に足の自由と光を奪われた妹と共に、ルルーシュは日本に人質として差し出された。
その時に出会ったのが日本の首相枢木ゲンブの息子、枢木スザクだった。
初めの内は、ブリタニアと日本の関係から、険悪な仲の二人だったが、紆余曲折を経て、いつのまにか親友となっていた。
「なんだ、やっぱりあの二人、知り合いだったのかよ」
その様子を、號は遠目に眺めていた。あの後、様子のおかしいスザクを尾行していたのだった。途中渓も合流して。
「どうしたの號? 」
「ん? いや、スザクが変なタイミングで教室を出ていくからよ、タチの悪い連中に呼び出されたのかと勘ぐっちまっただけだ。
どうやら余計なお世話だったみてぇだ。さ、渓、あいつらの邪魔をしちゃ悪い。メシでも買いに行こうや」
二人の久しぶりの再会を邪魔しては悪い、と渓を連れて號はその場を離れるのだった。

 

スザクの一件はルルーシュがスザクを生徒会に入れるという提案により、事なきを得た。
そして生徒会にルルーシュとスザクが出入りしていることもあり、號と渓もいつの間にか準生徒会役員のようになっていた。
「で、そう聞くようじゃ学校では上手くいってるようだな」
「ええ、気のいい人たちばかりで助かりました」
機体の整備を手伝いながら、スザクは竜馬と世間話をしていた。
色々あったが、この二人も依然とは違いトゲトゲしい雰囲気はなくなった。
「だが、今日はその学校の仲間が河口湖へ行ってるんだろう?
お前も行かなくて良かったのか?」
「はい、僕には軍務がありますから」
「ふーん。相変わらずお堅いこって…」
実は今日、生徒会メンバー(スザクとルルーシュを除く)に準役員の號と渓も一緒に河口湖に観光へ行っていた。
しかしスザクは軍務があるからという理由で欠席したのだ。
「大変よ! スザク君! リョウ君!」
そこへセシルがあわてた様子でやってきた。
「何ですかセシルさん? 」
「えらく慌ててるじゃねえか。ナニが大変なんだ。分かるように説明してくれよ」
「いいからこれを見て!!」
そう言って手に持った携帯端末の画面を見せる。
「こ、これは…」
そこには河口湖のホテルを占拠したテロリスト、日本解放戦線とその人質の人々が映し出されていた。
どうやら、解放戦線側から送られてきた映像が報道番組で流されているらしい。
「そんな! まさか!?」
スザクが画面を見て驚く。
「ん? なんだ、そんなに驚くこと、か!?」
竜馬も何かを見て驚いている。
「まさか生徒会のみんなが…」
スザクが驚いた理由。それは人質達の中にアッシュフォードの生徒会のメンバーがいたからだった。
しかし竜馬は違った。彼の視線は渓に向けられている。
(あの娘、まさか…。いやもしかすると…)
「この事件の解決に私達が使われることはないかもしれないけれど、現場には行くわ。
だから、二人も用意してちょうだい。準備出来次第すぐに急行するから」
私も準備があるから、とセシルはその場を去る。
「リョウさん…、あそこに僕の友達が…」
「…解放戦線の連中がトチ狂ったことしねえよう祈るしかないだろうが。
それに、あのナンバーズの区別に厳しいコーネリア総督が俺達を使うとは思えねえ。
今は、性に合わないがそれしかねえ。
とりあえず俺達の出番ってなった時にキチンと働けるよう万全の準備をする。
それが俺達が祈る以外に出来ることだ」
「そう、ですね。分かりました。僕はランスロットの準備をしてきます」
「ああ」
竜馬に励まされ狼狽していたスザクはいつもの様子に戻る。
(まさか生きていたとはな…。じじいといい、なんでこう…。…今はそんなこと考えてる場合じゃねえな)
竜馬も先ほどみた映像を思い出し、考えにふけるが、すぐに出撃の準備を進めるのだった。