ゲット・ダイバー 12

Last-modified: 2011-07-13 (水) 16:13:11

  12

 

 兵装ビルから一斉砲撃が起きた。第三新東京市に竹の子のごとく生えるビル群から、ミサイ
ルというミサイルが煙を吐いて突き進み、街へ侵入したゴジラの足を止めんと次々に爆裂を起
こしていく。
 市民の待避が完了した街に、無数の爆煙と残骸が降り注ぎ、さながら最終戦争とでもいわん
ばかりの轟音がとどろき、大地を揺らす。
 しかしゴジラは止まらない。
 分厚い漆黒の皮膚は直撃するミサイルの爆風をものともせず、豪腕を振り回し、まとわりつ
く蠅を叩き落とすように前進してくるのだ。

 

 もっとも、予測済の光景ではあった。
 シト相手にもまず通用したことがないのだ。ゴジラがこの程度で倒せる敵なら、ゲッターも
エヴァも要りはしない。
 竜馬のドラゴンが飛んだ。
 ミサトのマジンガーはゴジラからだいぶ距離を取っているが、満身創痍だった。いや、極め
て頑丈な機体だから、内部機構への深刻なダメージは無いはずだ。まだまだ動けるだろうが、
しかし、もうパイロットが限界だ。
 ミサトは特殊耐圧スーツの恩恵とはいえ、ゲッターの凶機動に耐えた人間の一人であり、ス
ーパーロボットの操者として適性があった。
 しかし、あくまで常人としてのそれだ。竜馬や隼人のような超人とは次元が違う。ゴジラを
相手に、よくぞここまで無事誘導してきてくれたと、拍手を贈ってもいいぐらいだろう。

 

「よくやってくれたな、ミサト!」
「死ぬ、死ぬかと思ったわよ……」
「まだ生きてるじゃねえか。とはいえ、限界だわな。下がんな」
「今日はずいぶん優しいじゃない、リョウ君。せっかくだからお言葉に甘えさせてもら」
「葛城三佐、聞こえるか。こちら神だ」
 無線。モニタに隼人の姿は映らない。どうやら映像通信の出来ない環境下にいるらしい……
移動中かなにかだろうか。
「神さん」
「葛城三佐、第八ケイジへ戻ってくれ」
「第八ケイジへ……?」

 

「そうだ。あんたはよくやってくれた、後は俺たち……いや、俺の仕事だ。マジンガーの操縦
を交代してもらう」
「了解。このロボットはお返しさせてもらいますよ」
「おい隼人、どうするつもりだ」
「シンジと共にケリをつける。ゲッターGの全エネルギーと、マジンガーZの最終兵器でな」
「さいしゅうへいきぃ?」
「そうだ。だがお前達は何も考える必要はない。ただ、ゴジラへシャインスパークを撃ち込ん
でくれればいいだけだ」
「……なんか企んでやがるな。それをやるとどうなるのか、説明しろ隼人! ちゃんと俺の解
るようにだ!」
「なに、簡単なことだ。フルパワーのゲッター線エネルギーで次元の狭間をつくりだし、同時
に、マジンガーの光子力エンジンをオーバーロードさせ、そこへ突っ込む。ゴジラごとな」
「次元の狭間だと? そんなものをこじあけられる程、ゲッターGにパワーがあるか?」
「あるさ。昔おれ達が乗っていたのとは次元が違う。乗ったなら解ると思うがな」
「悪ぃが俺は、オリジナルのゲッターGがどんなもんだったのか、よく知らなくてよ」

 

「……ああ、そうだったな。だが言ったはずだ、真ゲッター並にパワーを引き上げてあると。
いや、本当を言えば、それ以上だ。真やアークを土台に、俺とシンジで新たに造り上げたゲッ
ターなんだからな。
 ただ機体に盛り込む機構、アイデアの部分ではまだまだ早乙女博士の採用していたものの方
が優秀だったから、機体形状にゲッターGのものを流用したまでの話だ」

「なるほどよ。じゃあ次の質問だ。お前、マジンガーでゴジラごと次元の狭間に突っ込むと言
いやがったな? だが次元の扉が開いているのはほんの一瞬だぜ。マジンガーはシャインスパ
ークの中を突っ切ることになるが、耐えられんのか?」
「フ、次元の狭間に突っ込む瞬間だけ耐えてくれりゃいいんだ。計算上それぐらいなら、なん
とか持つ。あとはシャインスパークがゴジラを滅せばよし、よしんば無理でもやつを狭間に封
じ込める」
「お前達はどうなる」
「むろん脱出して元の世界へ帰るさ。そのためにも、キューティハニーを見つけ出したのだ…
…彼女とゲッターが連動すれば、開いた次元の先をコントロールすることも容易だ」

「私が?」
 ザ、とハリケーンハニーの顔がドラゴン号のモニタに割り込む。隼人の顔は相変わらず映ら
ないままだった。

「そうだ。しかし難しいことを考える必要はない、その時になれば何をするべきか、ゲッター
が教えてくれるだろう」
「ゲッターが」
「多少は賭けになるが……だから竜馬。すまないが今少しゴジラの足止めを頼むぞ!」
「け、言われるまでもねぇ!」

 

 ドラゴンが再び空を駆けた。もうパワーをセーブする必要はない、竜馬はゲッターGの炉心
をフル稼働させるべく、ブーストペダルを目一杯に踏み込んだ。
 ドン、と身体がシートにめり込む程のGを伴い、発生する衝撃波で大地を砕きつつドラゴン
は猛加速をはじめ、小さかったゴジラの姿が一瞬にして大写しとなっていく。
 そして一気にすれ違い様、

「スパイラル! ゲッターッビィィィィムッ!!」

 ぶわァッ……! と、ドラゴンの額に埋まった半球状のエネルギーコアから、無数のビーム
が雨あられと吐き出されてゴジラの皮膚を焼き焦がしていく。
 拡散連射式のゲッタービームだ。
 旧ゲッターで竜馬が編み出した技である。マッハウイングに機体を包んだままダメージ覚悟
でビームを撃ち、内部で起こる乱反射を利用した拡散ビームだが、ドラゴンに搭載されたエネ
ルギーコアはそれを見事に再現した。
 市街を蹂躙するゴジラへ向かってゲッタービームの弾幕を張りつつ、竜馬は隼人が指揮から
降りたせいか、散り散りになってしまったシンジ達に号令を飛ばす。

 

「シンジ、ぼやぼやするんじゃねえ! A.T.フィールドを展開して敵の懐へ入れっ。アスカ!
 三時方向から援護射撃だ! レイ! ……無理すんな!」

 その叫ぶ最中に、ドラゴンの横っ面を超熱源が掠めていき、コクピットに警告音がうるさく
喚き立てた。
 今ので頭部装甲が溶融したのだ。
 ゴジラの放射能火炎だった。火炎とは名ばかり、ゲッタービームもかくやという程のスピー
ドを伴っている。
 もしも直撃を受ければ、ゲッターといえどひとたまりもあるまい。

「空も飛ばねえクセ、この対空性能だ。たまったもんじゃねえぜ」

 へっ、と笑う。
 ゴジラは恐ろしい相手だ。恐ろしい相手だが……同時に闘う相手として不足はない。メカザ
ウルスより、百鬼メカより、インベーダーより、あの忌々しい清明と、神を気取っていたワケ
のわからない連中よりも。
 だが。

「このケンカ勝ってやろうじゃねえか。将造、ハニー、気絶するんじゃねえぞ! 行くぜぇぇ
えッ!!」

 竜馬はドラゴンを縦横無尽に機動させ、幾重と迫り来る恐怖の放射能火炎を、紙一重でかわ
しつつ、ゴジラへの接近を繰返す。もちろん初号機と弐号機の動きも頭に入れた上で、敵が身
動きのとれなくなるように包囲網を狭めていく。
 シャインスパークは一度しか撃てない。絶対に外すわけにはいかない上に、今回はマジンガ
ーZの最終兵器とやらに、タイミングを合わせて撃ちださねばならない。

 竜馬といえども慎重に慎重を重ねねばならない。そのためにはゲッターシャイン発動の、無
防備な瞬間はエヴァに護ってもらうしかないのだ。

 自分を含めた「駒」は一切の無駄なく動かす。
 力任せに大暴れしているようで、そのじつ綿密な戦術をリアルタイムで電算機のごとく練っ
ていける。これが竜馬の生来より喧嘩上手たる由縁だ。

 

 そんな中、綾波のボロットも健気にゴジラへ立ち向かっていた。
 四畳半のコクピットは揺れに揺れるが、正座の少女は必死にハンドルへしがみつく。視界は
格子状の窓からの目視がゆえ、大怪獣の脅威はとてつもない臨場感をもって伝えられた。
 だが、逃げるわけにはいかない。なぜなら、

(シンジ君が闘っているんだもの。惣流さんも)

 当のボロットも、本来の運転手とはかけ離れた美少女に乗ってもらえたことが嬉しくて仕方
ないのか、いつの間にか日の丸ハチマキを巻いた表情が勇ましかった。
 ゲッター3に負けじと蛇腹状の腕を振り回し、ゴジラを倒さんと駆ける。どこに設置されて
いるのか解らないエンジンも、いつにも増して回転があがっている。
 雨のように降ってくるゲッタービームを避け、嵐のように襲いくる弐号機の弾幕をかいくぐ
り、ゴジラへ後ろから迫った。

 だが、慣れないことはするものでないと、いつの時代も賢者は言ったものだ。

「あ」

 綾波の頬に風圧が掛かったかと想うと、ドワオッ、と黒い衝撃が全体に走った。
 巨大なゴジラの尾が、ボロットを思い切り引っぱたいたのだ。振り向きもされていない。ど
うやら邪魔だったらしい。
 ボロットのボディは一撃で破砕し、残った頭部だけが哀しげな表情であらぬ方向へと吹っ飛
んでいく。

「……お約束、なのね……」

 それでも今日は、不思議な色のバリアが張られて、中の綾波が無様に目を回すことはなかっ
た。これはA.T.フィールドか、ゲッター線シールドか、光子力バリアか、はたまたフォースフ
ィールドか。
 よく解らないが、女の子には怪我をさせないぞ。と、ボロット最期の頑張りだった。

 

 吹っ飛んでいくボロットの頭を尻目にする、暴走状態の初号機が呻いた。その細まる視線の
先には怪獣王の姿。
 弐号機やドラゴンが大立ち回りを演じる中でただこの一機、いや、一体のみが動くことを出
来ないでいた。当然、竜馬とアスカの両方から罵声がとぶ。

「なにやってんのよバカシンジ!」
「馬鹿野郎、なにをぼうっとしてやがる!」
「だ、だって、動いてくれないんですよ!」
「なんだと!?」
「……まさか、初号機が怖がっている?」

 ウゥゥ……。
 まるで睨みあいに負けた獣のように、初号機は唸る。どころか、その場から踵を返してしま
いそうになっていた。間違いあるまい。
 シンジは泡のように生じた疑念を、この瞬間、確たるものにした。
 そう。いかにヒトの魂が宿っていたとしても、それは器であるエヴァの肉体そのものとは本
来、別個のものだ。
 そして今、相手にしているのは怪獣王の名も誉れ高き最強の生物、ゴジラ。生物としてのエ
ヴァが持つ本能が、敵の強大さを悟ってしまい、闘える相手と認識できず、ただ恐怖の対象と
見ているのだろう。
 暴走状態のエヴァが狂暴なまでの威力を奮うのは、ヒトによる操縦という理性の鎖を解いた
からこそだが、それゆえに理性があるからこそ恐怖を払え、立ち向かっていける相手には無力
だった、という訳か。
 ……ならば。

「竜馬さん! もう少しだけ時間をください」
「ちっ、仕方ねえ。早くしろよ」
「ありがとうございます。よし……いいか初号機、君はよくやった。あの黄金色の化け物を倒
したんだ、もう十分だよ。だから今は眠れ。後は「こっち」の仕事だ、君は眠っているだけで
いい。さあ、おやすみエヴァンゲリオン」

 そこまでシンジが語りかけると、ふっ、と何かの止まった気配がした。と同時に、照明が全
て消えていたコクピットに光が灯り、意味をなしていなかった手元のコントロール装置が、息
を吹き返していく。
 孤高の獣が、人間に操られる機械に戻ったのだ。

「……よし! 行けるぞ」

 直後、モニタに稼働限界時間が表示される。

 

 なるほど、眠っているものを無理に動かすから、エヴァには電源が必要なんだな――シンジ
はこんな時に妙な感慨に耽りつつも、側の電源ビルに走り寄ると、背部電源を再接続する。
 接続完了をコクピット計器が感知し、稼働限界時間表示は「電源接続」の文字に切り替わる
と共にフェードアウトしていった。

 これで元通りだ。
 しかしここで、新たな懸念も浮かび上がった。今までギドラとも格闘戦に挑めたのは、あく
までエヴァ本来の力を呼び起こす暴走状態にあったからに他ならない。
 今の、単に制御されたメカに過ぎない状態では、圧倒的なパワーを誇るゴジラに格闘戦を挑
むのは無謀というものだ。
 となれば、敵との接近戦はドラゴンに任せ、弐号機と同じように火器での援護にまわる他あ
るまい。竜馬の負担が増えてしまうが、A.T.フィールドが通用しない相手なのである。
 無意味に近づけば、かえって足手まといと化してしまう恐れがあった。

 

「OKです竜馬さん。でも、すみません、格闘はお任せします!」
「何ィ……ああ、そういう事か。解った。だが俺を撃つんじゃねえぞ!」
「了解!」
「……ったく、結局タイマンかよ仕方ねえな!」
「仕方ない言う割にゃあ、嬉しそうじゃのう竜馬」
「へっ。こっちもドラゴン、あっちもドラゴン。どっちが上のドラゴンか試してやろうじゃね
えか」
「恐竜はドラゴンじゃないと思うわよ……」
「細けぇことはいいんだよ! ダブルトマホーク!!」

 さらに増えた火線の元、ドラゴンが空よりゴジラへ躍りかかる。
 肩部より射出した両刃のゲッタートマホークをそれぞれ片手に、真っ正面から斬りかかる…

「なんてな、オープン・ゲット!」
 激突寸前にゲットマシンに散開すると、機動力を活かし一気に後ろへ回り込んで瞬時にドラ
ゴンへの再チェンジを敢行し、背ビレへ力任せにトマホークを叩きつけた。
 ゴジラが叫ぶ。
 かすり傷程度にはなったようだった……が、こちらはトマホークが折れてしまった。

 

「畜生、なんて固ぇ野郎だ」

 そこへ復讐すべしと、巨大な尾が襲いかかる。竜馬は回避しようとしたが、間に合わずに、
脚にズゴンッ、と派手に重い衝撃音が響いた。衝撃でドラゴンが虚空へと放り出される。

「うおおッ……くそ、思ったよりも速ぇッ」
「ライガーに任せてみる?」
「止めておくぜ。ライガーじゃ空戦能力が落ちる。わざわざ不利を選択するなんてバカをやる
こともあるまい」
「フハハ、最もやっこさんはオドレよか頭よさそうじゃがのう!」
「なんだと将造! てめえ、あとで覚えていやがれッ」
「忘れんうちにゴジラを倒せりゃあ相手してやるぜ!」

 

「なあに、忘れない内に倒せるさ。勝負は一瞬で決まる」
 通信が割り込む。隼人の声だった。今度はモニタに顔が映っている……通信は、どうやらマ
ジンガーZからのようだった。
 ミサトからの受領を完了したのだろう。

 

「隼人か!」
「僕もいますよ」
「お前はどうでもいいんだよ」
「ひどいよ竜馬さん……強化ドラゴンを設計したのも、ゴッドスクランダーを模造したのも僕
なのに」
「ゴッドスクランダー?」
「ああ。マジンガーZの飛行ユニットであり、追加武装でもある。見ろ!」

 その言葉と共に、虚空よりマジンガーZが現れる。
 そう、虚空より、だ。マジンガーZは背にまるで真ゲッターのバトルウイングを彷彿させる
羽を背負い、空を飛んでいるのだ。
 自身を包んでも余りあるほどの巨大な翼を広げたその姿は、それまでのマジンガーZより数
倍は大きくなったかの様に見え、竜馬も思わず感嘆する。そこへ、シンジがすかさず通信に割
り込んで来た。

「やっと調整が終わりましたよ。どうです竜馬さん、凄いでしょコレ。まったくもう少し敵の
出てくるのが遅ければ、完調の状態で出迎えられたっていうのに」
「竜馬、シャインスパークの準備をしろ。思い切りゴジラへ叩きつけてやれ」
「援護がねえとゲッターシャインの隙を突かれちまうぜ。マジンガーで何とかしやがれ」
「そいつは難しい相談だな。こっちもこっちでワケアリなんでな。ゲッターで何とかやってく
れ」

「僕のことは無視なんですね……」

 

 隼人の説明に、何だとてめぇ、の二回目が竜馬の口から飛び出していく。相も変わらず力任
せの作戦立案ばかりのゲッターチームが二人の通信を、しかし初号機のシンジと弐号機のアス
カは笑って聴いた。
 なら、その仕事は自分たちが引き受けよう。

「……よーし、ここは見せ場よシンジ」
「この間、アスカが考えたっていう技をやるんだね」
「そ。あの双子シト……イスラフェル戦を思い出して。あの時は同時にトマホーク攻撃を仕掛
けたけれど、あの要領をエヴァのスピードで活かせば分身した忍者みたいに動けるはず。ゴジ
ラを攪乱しつつ、速度を乗せた一点集中攻撃!」
「それなら流石のゴジラでも吹っ飛ぶぐらいはする、か」
「ただし、電源はパージしなきゃならないわ。チャンスは一度きり。しくじれば死ぬわね」
「でもゴジラの動きを止めるには、やるしかないね……よし! 竜馬さん!」
「……なんだ!」
「今から僕とアスカでゴジラの動きを止めます。その隙に、シャインスパークを!」
「大丈夫なんだろうな」
「大丈夫に決まってンでしょ、このアスカ様を誰だと思ってるのよ!」
「うるせえ赤猿! だったら早くしやがれ、こっちゃ苦戦してんだよッ」

 

 竜馬の許可が出た。
 あとは迷うことなどない。電源パージ後、最大戦速での稼働限界時間は六二秒。おおよそ一
分間の間に、攻撃に使うのが五〇秒、そしてシャインスパークの有効範囲から逃れるための離
脱時間が一〇秒。残りの二秒はタイムラグ修正用だ。
 二機のエヴァがクラウチング・スタートの姿勢をとった。

「電源、パージッ!!」

 どすん、と路面に巨大なプラグが落とされる。アスファルトがめり込んだが、今はそんなこ
とを気にしている余裕はない。むしろその音をスターターピストル代わりに、初号機と弐号機
が同時に駆け出した。
 大地を揺らして疾走しつつ、構えたパレットライフルをフルオートでゴジラへ向かって全弾
射撃。すれば、敵がこちらに気を逸らし、放射能火炎を吐き出してくる。
 エヴァはその火炎の筋を中央に挟むように、だんッ、とまったくの同タイミングで左右に横
っ飛び、再び走る。
 どれほどに放射能火炎が強力でも、あくまでゴジラは一体だ。まったく同じ動き・同じ速度
で迫ってくる二機のエヴァに対してはタイミングをずらして当てる、といった芸当が効かなか
った。
 そして一定の距離まで近づいた瞬間。
 肩のコンテナから飛び出たプラグナイフを引っ掴み、初号機と弐号機は同時に投擲する。ナ
イフが、一直線に敵へ向かった。
 それを叩き落とそうするゴジラの一瞬の隙を突き、シンジとアスカはフルパワーで跳躍する
と天高く舞い上がり、堕ちかけた陽光を背にしたまま万有引力に身を預けて、一直線に降下し
ていく。
 そして突きだした脚へ全体重を乗せ、ピンポイントへと絞りに絞った衝撃のエネルギーを、
「必殺ぅ!」
「ユニゾンキック!!」
 爆発させた。
 事実、エヴァ二機の全質量を超高速でまともに受けたゴジラは、ドンッ!! という爆発音を伴い、金切り声と共に山間の方角へと向かってもんどり打ちながら吹っ飛ばされていく。
 直後、初号機と弐号機は接近してきたドラゴンの背が示す方向へと向かって一目散にダッシ
ュをしていき、その場からは縮尺模型のようにしか見えない姿となって、停止した。

(やるじゃねえか)

 その様を振り返りながら、ドラゴンの竜馬がニマリと笑った。
 上出来だ。

 

「ようし、俺たちもやるぜ。準備はいいか将造、ハニー」
「おうよ!」
「……待って、ゲッターが私に語りかけてくるの。そうか。私の力はゲッター線の具現化のた
めにあるのか。青児さんも、そこに? わかった……良いわよ竜馬。私の持つエネルギーを全
てドラゴンへ預ける」
「ワケのわかんねえこと言ってねえで、ペダル踏むタイミングを合わせろ!」
「解ってるわよっ」
「いくぜ! ゲッターッシャインッ!」

 ゲッターGの全エネルギーがドラゴンのボディへ収束し、まとわれた。全体が白く眩き、周
囲の景色が歪んで見え始める。
 ドラゴンが、山にめり込み身動きの取れないゴジラへを睨み据えると一瞬、その目へ真ゲッ
ターのような瞳孔が出現して消えた。
 地球の権化に、ゲッター線の意思が何かを語りかけたのか。
 しかしこの状況でそんな事を気に掛ける者は、誰もいなかった。

 

「シャイン・スパーーーーーーークゥッ!!」 

 

 空に舞うドラゴンから、球状になった超高密度のゲッター線エネルギー塊が放たれた。それ
はゴジラと、その背景たる山間に突っ込んでいき、触れたものを全て粉々に砕いてまだ進む。
 いや。
 違った、砕いているのではない。呑み込んでいた。シャインスパークの触れた箇所は、空間
そのものが削り取られているのだ。
 これがシャインスパークだと?
 なんという威力だ。これでは、まるで真ドラゴンではないか――。
 驚愕する竜馬を尻目に、背後に控えていたマジンガーZが翻った。

「シンジ!」
「了解です!」

 ギュンッ、とシャインスパークの光弾を追うマジンガーZは、その最中でゴッドスクランダ
ーの羽で機体を包むと、なんと胸部が割れて頭が体内へ格納されていく。代わってそこには羽
の付け根にあった三対のジェットノズルだと思われていた部分が起き上がり、マジンガーの肩
へ覆い被さるように変形していった。
 見る見る内に、その姿はマジンガーZを象徴する武器であるロケットパンチ……そのものに
なっていくではないか。巨大な腕。それが、いま突如と空に現れたのだ。

「覚悟しやがれゴジラ! ……竜馬ァ、邪魔してすまなったな、後のことは頼むぜ!!」
「行きます、ビッグバン・フィンガー!!」

 シャインスパークに包まれるゴジラを、ぐわっ、と開いた巨大な五指が掴み取る。もはやそ
の叫びも、轟く世界にかき消されるままシャインスパークが開けた次元の裂け目へ共に突っ込
んでいく。
 だがゲッターもエヴァもエネルギーを使い果たし、動くことがままならない。竜馬も、こち
ら側のシンジも、アスカも、ハニー、そして将造も。
 この光景を、指くわえ見ているしかなかった。

 そして文字通り掌握されたゴジラは、しかしそれでも次元の狭間へ消え去るまで、必死のあ
がきを見せる。その力に、包むマジンガーそのものの拳がみしみしと音を立てて悲鳴をあげて
いく。
 だがもう少しだ。
 このままゴジラを封じ込め、あとは元居た世界へパイルダーで脱出するだけだ。誘うように
光のトンネルが、パイルダーがギリギリ通れる程度の穴が、目の前に開いている。
 ハニーの空中元素固定装置がゲッター線エネルギーと絡まり、具現化した結果だろう。
 さすがのゴジラも、もはや為す術があるまい。

 

 ――おのれ、人類め。ゲッター線め! 地球を汚す悪魔どもが……!
 ――違う。それは違うのだ。地球の使者よ。
 ――なにが違う! 何億年もの時を刻み築き上げた、我らが星だけの豊かな自然をたったの
数百年で食い物にし、そしてゲッター線で破滅させたのは貴様らではないか!
 ――それについては謝ろう。だが、全ては予定された調和だったのだ。
 ――なに!?
 ――言うなれば、地球は人類を生み出すために創られた星であり、糧だということだ。
 ――我らが、創られた……!? バカな、宇宙のどこかに意思があったとでもいうのか!
 ――左様。すべては大いなる意思によって。しかし、嬉しい誤算もあった。それが、ゴジラ
細胞の誕生……人類を恨むあまりに地球は、人類と同じかそれ以上の可能性をもった生命体を
誕生させたのだ。いまや、ゴジラ細胞はブラックホールを通じて、この宇宙の様々な場所へと
進出している。大変に喜ばしい出来事だ。
 ――貴様らはいったい……何を考えている。
 ――大いなる意思は、宇宙の外から来る無限の脅威を打倒するために、戦力を用意しなけ
ればならない。強ければなんでもよい。星々を喰らう魔物でも、宇宙を消滅させる機械の化物
でも……同化を否定した拒絶の人神でも、そして全てを憎む、怨念の怪獣でもな。
 ――そうか。そういうことか……ならば、我らは今後幾度でも人類に対して挑戦状を叩きつ
けよう。無限の脅威を倒すのは、お前達が用意した人類などではない。我らの意思だ。ゲッタ
ー線など軽く蹴散らしてみせようぞ。
 ――それでもよい。時天空を倒せるのなら、何でも……よいのだ。倒せるならば……。

 

 会話。
 音ではない、空気の振動などではない、意思の飛び交い。それも人間には想像しきれない、
途方もなく巨大すぎるスケールの、何らかの意思同士の会話。
 ゴジラを道連れに、次元の狭間へ突入した隼人とシンジはパイルダーでの脱出間際、その会
話を聞いたような気がした。
 そして見た。
 金星の軌道に待機していた、第3惑星人たちの艦隊が無数のゴジラにも似た、肩に巨大な突
起をつけた宇宙怪獣に殲滅させられていく光景を。
 あれは、新たなる脅威か、それとも未来への希望なのか。

 

「シンジ」
「はい」
「どうやら俺たちの戦いも、まだまだ続くみたいだ。やれるか」
「もちろんですよ。隼人さんと一緒だから」
「やめろ、くっつくな。俺が好きなのは野郎じゃなくてボインちゃんだ」

 

  13

 

「終わった……のか」

 エネルギーを使い果たし、非常電源が必要最低限の機器類だけを動かす、静かなドラゴンの
コクピットで、竜馬がつぶやいた。
 照度の落ちたモニタからは、シャインスパークが穿けたはずの次元の裂け目は無くなり、ゴ
ジラや他の兵器に傷つけられた街以外、なにも無かったかのように元通りとなった風景が映
し出されていた。

「そうらしいのう。やれやれ、竜馬ばかり暴れよって。ワシャ欲求不満じゃ」
「……へっ。だったら今すぐ降りて殺りあうか? さっきの言葉、忘れてねえからな」
「そりゃあ名案じゃ! と言いたいところじゃがのう、ワシャおどれと違って組を運営せにゃ
ならん。暇でないんじゃ。ケンカはまたにして、一足先におさらばさせてもらうけえの」
「あっ待ちやがれっ」

 言うやいなや、将造は例によって腕力で無理矢理ポセイドン号のコクピットハッチをこじ開
けると、数十メートルはある地面へとドン、と降りたち痺れさえ見せずに走り去っていく。
 ……もしかしすると、彼はゲッターに乗らずに生身でゴジラと闘った方が、活躍できたかも
しれない。

「ち、あの野郎……」

 

 どすんとシートにもたれ掛かり、竜馬が悪態をつきはじめた。
 もう、やることは何もない。
 あとはエヴァが電源を接続し直し、ゲッターGの回収へ来るのを待つだけだ。そういえば暇
つぶしになりそうなのが、まだライガー号に居るではないか。

「ようハニー、元気か」
「エネルギー使ったからちょっと疲れたけれど、すぐ回復するわ。大丈夫」
「くうちゅうゲソなんとかって奴の効果か。メシも食わなくていいなんて、便利なんだか、つ
まらねえんだか」
「空中元素固定装置、よ。それにしても、このゲッターってロボット、面白いのね」
「そうかよ。俺にゃあ憎たらしいだけだぜ」
「そんな事いっちゃ可哀想じゃない」
「ぬぁにが、可哀想、だ。まったく女の考えることは解らねぇ」

 

(あらら。この人エンペラーの主になっても、まだ気づいていないのかしら。自分がゲッター
線に見初められた唯一の人間だってことを……報われない恋って大変ね)

 竜馬は気づいていなかった。
 淡々と話すハニーが、ハリケーンハニーからキューティハニーの姿へと戻った彼女が、ただ
ひとりライガー号のコクピットで、狂気にも似た笑みを浮かべていることを。 

 

・・・

 

 そしての後日。
 半壊した第三新東京市が大ピッチで修繕されていく中、一足早く修理の終えたゲッター1が
陽光を浴び、ドラゴンと共に並び立っている。
 格納庫から出て模擬戦でもやらかそうというのではない。
 ドラゴンを、ゲッターGをハニーが引き取ることになったのだ。その見送りである。

 というのも、あれから回収されたドラゴンは竜馬のアドバイスとリツコの指示によって、エ
ネルギーの補充と修理・メンテナンスを受けたのだが、はじめは誰もが新たな戦力にするのだ
と思っていた。
 が、竜馬は

「こいつはもう用済みだ。太陽にでも射出して破棄するぜ」

 と、言い出したから周囲は驚いた。
 真っ先にリツコが反対したが、竜馬の言いだしに押し勝てる人間など将造以外にいるはずも
ない。そして当の将造は、ネルフの戦力増減になど興味がないからお手上げだった。
 しかし竜馬にしてみても、この強化ゲッターGを使えば今後の戦闘は楽になるのは確実であ
る。それこそエヴァを用いることなくシトを殲滅していけるに違いない。
 なのになぜ、性能の劣るゲッターを用いようとするのだろうか。
 それには、

(闘う必要性がなくなったら、シンジはまた閉じこもる。それじゃ駄目だ、それじゃあ最終
的に滅ぶっていうこの世界の運命を変えられねえんだ。男の成長にはケンカの経験値がねえと
な……)

 そういう竜馬の考えがあったのだ。

 

 もっとも、この先シンジに待ち受ける運命を考えると、竜馬も途中でゲッターGを手放した
ことを後悔していた可能性はあるが。
 そして不必要になったゲッターGだったが、放っておくには危険すぎる代物だし、さりとて
竜馬のいう通り、太陽に射出するにも手間とコストが掛かりすぎる。そうでなくともここの所
ゲッターとエヴァの破損が多く、予算が逼迫しているのだ。

 そこに名乗りをあげたのが、数日、市内のあちこちをぶらぶらしていたハニーだった。ゴジ
ラ消滅後に、忽然といなくなったかと思えば、また忽然と現れる。隼人のいった通り、神出鬼
没であった。

 

「いらないなら、このゲッターは私がもらうわ。そろそろ別の世界に行こうと思っていたとこ
ろだから、移動できるお家が欲しかったの」
「家ってな、お前……」

 普通の人間なら、乗って動かすだけで死ぬ可能性が大の代物を、竜馬でさえ戦闘の時以外に
乗っていたいとは思えないゲッターを、家にすると言い張るハニーには誰しもが呆れると同時
に、おののいた。
 とはいえ、丁度いい引き取り手であるのも事実だった。

「大丈夫、悪いことには使わないわ。約束する」
「なあにゲッターを使って悪いことしようとしても、どっかからか別世界の「俺」が出てきて
ぶちのめすだけよ。心配はいらねえ」
「アっはっは! ホントに心配いらずね、それじゃありがたく使わせてもらうから」
「なあ……お前はどこから来て、どこへ行くつもりなんだ。ハニー」
「さあね。でもゲッターは教えてくれたわ、青児さんはどこかで生きているって。彼を探して
みようと思う」
「青児?」
「私の、大切な人よ。この間までもう、二度と会えないと思っていたけど」
「……どうも女の行動原理は俺にゃわからねえ。ま、いいさ。好きにしな」
「うん、じゃあ素敵なプレゼントをありがとね竜馬! 他のみんなも、顔を会わせたぐらいの
出会いだったけど、また縁があったら会いましょう。アデュー♪」

 

 言い、ドラゴンがマッハウイングを射出する。と、一瞬にして見あげても小さな影にしか見
えないほどの高度へ達すると、そのまま大気圏外へ飛んでいった。
 さすがのドラゴンである。 
 ゲッター1では追いつくことも難しいだろう。もっとも、それが束になって掛かってきても
竜馬は負けるつもりがなかったが……。
 そしてハニーに操られ地球を離れたドラゴンは、やがて国連やネルフのレーダーからも捉え
られなくなり、いずこかへと消えた。

 その、コクピットの中でハニーがひとりごちる。

 

「人間が……ゲッター線と共にあるのなら、全ての人間は、生き物は、ゲッターという光の中
に居る。青児さんも、パパも、そしてパパの本当の娘、本物の如月ハニーも。
 ならばゲッターロボよ、あなたが求めるものを私は与えましょう。竜馬とはまた別のカタチ
で。それが進化に必要な……破壊と殺戮だというのなら。私は喜んで悪魔になるわ」

 

 地球圏を離れ、金星へ近づくドラゴン。
 その張り巡らせたレーダー網の中に、ひとつの影が映った。一気に加速し、近づいてみれば
どうやら脱出艇のようである。
 場所を考えると、地球文明のものではなさそうだった。

 ――こやつらは第3ブラックホール惑星人の、生き残りだ。キングギドラを失い、本隊から
はぐれた連中であろう。もはや何を為す術もあるまい。

 ゲッターが教えてくれる。
 ならば、自分が成すべきことはただひとつ。

 

「フフフ……ミンナ、死んじゃえ」

 

 暗黒の宇宙に、赤い光が妖しく輝いた。

 

・・・

 

 エピローグ

「で、このあたりなのは確かなんだな?」

 と、山狩りの風体に身をやつした竜馬が、後続のシンジやアスカに問いただす。誰もがすっ
かり忘れていたのだが、吹っ飛んだボロット……の、中に居た綾波の消息が絶えていたことを
ゲンドウが思い出したのだ。
 みな、ハッ、とした。

 そういえば何かが足りないと思っていた――!

 と。
 そして先日の戦闘を記録した映像から、ボロットの頭が吹っ飛ばされた場所を計算すると、
どうやら箱根の、開発の行われていない山間の一部区画に堕ちたようだった。
 もしや、その衝撃で彼女はもはやかえらぬ人になっているのでは!
 だれもが心配した。
 だからこそ、シンジやアスカが待機任務を抜け出して竜馬に付き合っていたのだ。シンジは
もちろん、何のかんのと言いつつアスカも綾波に対して、ある種の仲間意識が芽生えていたら
しい。
 これも岩鬼組での成長結果だろうか。

 そして、見つけた。
 でかい円盤で色も派手なピンク色だから、間違えるはずがない。
 少しばかり傾斜した場所に堕ちていたのでシンジとアスカの手が出なかったが、竜馬がすか
さず猿のように辺りの木々を渡って近寄り、格子状の覗き窓に手を掛けた。

「レイ、無事か! いたら返事しやがれ!!」

 すると。

 

「あ、流さん。どうしたの」

 

 中には四畳半の上で浴衣に着替え、ウチワでぱたぱたと胸元を仰ぎながら、座布団を敷いて
くつろぐ綾波の姿があった。
 内部だけ反重力でも発生しているのか、傾斜に堕ちているというのに中は完全に平である。
謎の技術だ。それともボロットのド根性か。

 そこには、いつのまにやら古いブラウン管のテレビが設置されており、なぜか電波を受信して番組まで
映っている。
 置かれたちゃぶ台には、懐かしさ全開の豚さんの蚊取り線香入れが置かれて、これまた懐か
しさそのものの臭いが漂っていた。半月形に切ったスイカもある。どこから手に入れたのだろ
う。
 クーラーはさすがに設置されていなかったが、代わりに扇風機があった。
 それも現代のプラスチックが多用された単色の安物ではなく、まだ扇風機が高価な家電だっ
た頃の、国産の、金属部品が多用され、青や緑の涼しげな色合いが、やたらでかいスイッチの
ひとつひとつに居たるまで、鮮やかに彩られたやつだ。
 たぶん、初代ゲッターロボが本放送していた時代ぐらいに造られたものだろう。
 そんな三丁目アイテムに囲まれて、のんびりする綾波はこの上なく幸せそうだった。インタ
ーネットの存在なんて、人間を忙しくさせるばかりの代物だ、とでも言いたげに。

 

「どうしたもこうしたもよ、お前……帰ろうぜ」
「嫌」
「なんでだよ」
「もう戦うのは疲れたから、ちょっとお休み。ぱちんこの出演もこりごり。賭博なんて嫌い」
「おい、ふざけんじゃねえぞっ」
「これからお風呂はいるの。もう帰ってくれない」

 

「てめぇーーーーッッ!!!!」

 怒った竜馬が格子状の窓を破壊しようと、力を入れるがビクともしなかった。もしかすると
頭だけ超合金Z製なのかもしれない。
 そんな光景を見たシンジとアスカが「どうしたものか」と顔を見合わせる。

 どうやら、レイを連れ戻すにはだいぶ時間がかかりそうであった……。