ハヤトのちょー嵐を呼ぶ!金矛の勇者 02

Last-modified: 2009-05-29 (金) 02:16:49

 
その日の午前中、了とハヤトは校庭の隅の木の陰で話をしていた。
「ふう~ん…、夜中にそんなことがあったんだ…」
「なんか夢と本当がわからなくなってきたよ…」
「ハヤト、そのマタってお姉さんに会わせてくれないかな?
もし本当にそんなことが起こっているならオレもハヤト達を助けてあげたい!」
「了…うん!ありがと!」
すると
「ワン!」
ハヤト達の所にあの時の黒い子犬がやってきた。
「あっ…あの時の子犬だ…どうしたの?」
ハヤトは子犬を抱き上げた。
ペロペロっ…
子犬はハヤトの頬を舐めた。
「ひぁっ…くすぐったいよぉ!あはっ!」
了は黒い子犬を珍しがった。
「へえ~、全身黒い子犬って珍しいな!ハヤトになついているな」
「この子、よくボクの後をついてくるんだ。 エサをあげたわけでもないし…」
「ふぅ~ん…」
了は少し間を置いて、ハヤトにこういった。
「こいつに名前を付けてあげないか?ここじゃあ飼えないけど名前ぐらいなら!」
了はそうゆうとハヤトはうなづいた。
「名前かぁ…えっと…よし!お前は全身黒いからクロだ!」
そうゆうと子犬は嬉しそうに尾を振った。
「そうか!じゃあクロ、よろしくね♪」「ワン!」
夕食の時間
ハヤトは子供達と夕食を食べていた。
ここの施設は色々な事情で親がいなくなった孤児たちを養子としてもらってくれる人が現れるまで育てられる。
子供の人数は少なくとも100近くはいる。従業員たちは子供達が早く誰かにもらって幸せになって欲しいと願っている。
ハヤトや了達もその孤児の1人だった。
「わあい!今日はハンバーグだあ!」
子供達はわいわい騒いでいた。
「ハヤト、どこ行くの?」
ハヤトは席を立った。
「ちょっとトイレぇ~!」
 
ジャアア…
ハヤトはトイレから出てきた。
「ふうっ…すっきりした…」
ハヤトは食事に戻ろうとして、廊下を歩き出した。すると
「こ~んばんワ~♪プリリンよ♪」
ハヤトの前にあのプリリンが再び現れた。
「あっ…プリリンのお姉さん!!」
「この間は先に帰っちゃってごめんネ?」
ハヤトは恥ずかしがった。
「気にしないで…下さい…」
「ふふっ…かわいい子ね♪」
 
「実は大変な事が起こっているの…」
プリリンが顔を変えてハヤトに話しかけた。
「大変な事…?」
「とりあえず、その事をみんなに話すから案内して!」
「うん…分かった…」
ハヤトはプリリンをみんなのいる場所まで案内した。
 
「みんなぁ!ちょっと話があっ…」
ハヤトは戻ると信じられないことが起きた。
なんと子供達はまるで時が止まったかのように硬直していた。
「み…みんなぁ…と…止まっている!!!」
ハヤトには全くわけがわからなかった。
「やっぱり!!あいつのせいだわ!!」
現場を目撃したプリリンは叫んだ。
「あいつのせい?」
ハヤトはそうゆうとプリリンはしゃがんでハヤトを見つめた。
「ハヤト君になぜこうなったのか話しておくわ!」
ごにょごにょ!
プリリンはハヤトに小さな声で教えた。 「なっ…なんだって!?」

同時刻、何かに察知したのかマタは施設に入ってきた。
「ハヤト君!大丈夫!?」
ハヤト達はマタが来たことに気付いた。
「お前は…プリリン・アンコック…?」
マタはプリリンを睨みつけた。
「ハヤト君、言った通りでしょ?」
「………」
ハヤトはうなづいた。
マタはハヤトの様子が変だと気付いた。
「ハヤト君…?どうしたんだい?」
ハヤトは拳を握りしめマタを睨みつけた。
「マタの嘘つき!!」
マタはその言葉にびっくりした。
「え!!?何で!!?」
「プリリンお姉さんから聞いたよ!本当はマタが悪者だって事!!」

(ニヤっ…ハヤト君、この調子よ♪)
プリリンはにや笑いしていた。
「ちがうよハヤト君!!」
「「ア法」で時間をゆっくりにしてみんなを動けなくしてるのはマタだって!!」
「そ~なのよそ~なのよ!!色々変な事が起こるのはみんなこの子のせいなのよ!!」
ハヤト達はマタを責め続ける。
「ハヤト君!!プリリンに騙されないで!!ボクを信じて!!」
「ん~~……」
ハヤトはマタの必死の訴えに少し戸惑ったがプリリンがそれを容赦なくかき消す。
「騙されないで!!封印するわよハヤト君!!」
「はっ…はい!!」
プリリン達は封印の体勢をとった。
「ヘイ!フーイン!フーイン!ボイン!!ボイ~ン!」
シュワ~!!
呪文を唱えるとマタの周りが歪み始めた。
「ああっ!!やっ…やめてぇ!!!」
「フ…フーイン!フーイン!ボイン!ボイ~ン」
ハヤトも呪文を唱えるとマタが段々粒子と化していく。
「うわああ~~~っ!!!」
フュルルルル…
マタの体は粒子になり、下じきと化してしまった。
プリリン達は大喜びではしゃぎ回った。
「やった~♪悪いやつを封印したわ!これで地球は平和になるわ!ありがとう!!これもハヤト君のおかげね!♪」

「本当に…平和になったかな…?」
「うん!これでもう安心よ♪」

そして…
「じゃ、またね♪ハヤト君、一緒にいい世界にしていこうね!」
そうゆうとプリリンは施設から去っていった。
「…………」
ハヤトは思っていた。なんか酷い事をした気がするが、これで世界が救われるなら…と。
すると…
ズキン!!
「うっ…」
ハヤトはまた頭痛に襲われた。頭を押さえ、うずくまった。
(頭が…いたいっ…)
突然
「ハヤクオレトカワレ!カワレ!カワレ!カワレ!カワレ!カワレ!カワレ!カワレェェ!」
ハヤトの心に叫びが聞こえた。
「なっ…何っ…?」
すると頭痛は治まった。ハヤトは立ち上がると嫌悪感に襲われた。
(はぁ…はぁ…、何なんだ?この頭痛は…)
すると
「美味しいね♪今日のご飯」
子供達が元に戻ったようだ。
ハヤトは何もなかったかのように席に戻った。

そして次の日…
子供達が遊んでいると、施設の従業員がみんなを呼び集めた。
「皆さんにお知らせがあります。今日から少しでも時間に遅れるとお仕置きを受けることになりましたので注意してください。」
それを聞いたハヤトと了は驚いた。
「「え!?」」
「あとむかつく子がいれば、どんどんいじめてもよくなりました。みんな、ありのままの自分でいきましょう」
その言葉にハヤト達はびっくりした。
「「え~~~~~!!?」」
「いじめていいとか有り得ないだろ!何だ?このきまり!?」
「了…何かおかしいよ」
ハヤト達は信じられなかった。
それを聞いたあと、みんなは校庭にいくと
「お前、むかつくんだよ!!」
バキっ!
「やあ~い!バ~カ!」
「なんだと!こいつめ!」
子供達は一斉にいじめ始めた。
そして…乱闘みたいに殴り合い、ある子は蔑み、もう子供達の仲は崩壊した。

「「…………」」
ハヤト達はそれを驚いた表情で見ていた。
「ハヤト…これって何かの間違いだよな…?」
「うん…」
ハヤト達は呆然としていた。
「ハヤト、多分ここにいたらオレ達も巻き込まれる!どこか安全な場所に行こう!」
「了、ボクの部屋に来て!」
二人はとりあえずハヤトの部屋に戻った。
「ここでじっとしてるしかないな…」
「うん…」
チカチカっ…
ハヤトは部屋の片隅に何やら光っている物に気付いた。
「………?」
ぺりっ…
ハヤトは光っている物をはがしてみた。すると…
パリ…パリパリ!
何とハヤトの目に前にひびが生じた。段々ひびが大きくなっていく。
「こっ…これは…」
ガシャァァン!!
ひびが割れ、ハヤトの周りの空間がすべてが割れ、別の空間が生じた。
「なっ……」
「ハヤト!何だこれは!」
ハヤト達は外に出てみた。すると外が昼間だったにも関わらず、真っ暗な夜のままだった。
「ハヤト!一体どうなってるんだ!?」
「まさか…敵の空間…?」

ハヤトは了に今までのことを全て話した。
「…オレはプリリンって女が絶対に怪しいと思う。」
「…うん…」
「お前が封印したマタお姉さんはどこに行ったんだ?」
「下じきになってどっか行っちゃった…」
すると了は何かに気付いた。
「下じき?まさかあのカラフルな下じきか?それなら落ちてたからそこの机の中にしまったよ!」
「えっ…本当!?」
ハヤトはすぐそこの机の引き出しを開けた。するとマタが封印された下じきを見つけた。
「よおし、マタお姉さんを復活させるんだ!!」
「でもどうやって?」
「オレに聞かれてもなぁ…」
ハヤト達はどうしたらいいかわからなかった。

すると
…………
了は何かに気付いた。
「ん…、ハヤト?この下じきから何か聞こえないか?」
「えっ?」
ハヤトは耳を下じきに傾けた。
すると…
「…呪文を反対に唱えて……」
「!!」
微かだか、下じきからマタの声が聞こえた。
「マタ…呪文を反対に…よおし」
ハヤトは封印をとく体勢をとる。
「ンイボ!ンイボ!ンイーフ!ンイーフ!!」
し~ん…
辺りは静寂な雰囲気になる。
了はすこし呆れた。「何だその呪文?本当にきくのかよ!?」

ボン!モクモク…
何と下じきが爆発、煙が上がる。
「ちょ…まさか…?」
煙からマタが現れた。しかしマタは浮かない顔をしていた。
ハヤトはマタを見て、少し気まずくなった。
「マっ…マタ…大…丈夫?」
マタはハヤトを睨みつけた。
「ハヤト君、ボクは君を見損なったよ!」
ハヤトはその言葉にショックを受けた。 「えっ……?」
「君はプリリンにそそのかされ、ボクの事を信じてくれなかった…
その挙げ句にボクを封印して、世界がめちゃめちゃになったじゃないか!」
「そ…そんな……」
ハヤトはとても深刻な顔になった。
「今、世界はドン・ クラーイに侵され始め、世界がめちゃめちゃなんだ!君はその責任を取れるのかい!?」
ハヤトはその言葉でプリリンに騙され、世界を混乱させたのは自分だと自覚し、罪悪感と後悔でいっぱいになり、涙が込み上げてきた。
「ごっ…ごめん…なさい……」
ハヤトから涙がこぼれてきた。しかしマタはハヤトを一方的に責める。
「ハヤト君、謝って済む問題じゃないんだよ!君がしたことはとても重いことなんだ!」
「うっ…うっ…」
ハヤトはもう泣き崩れた。

しかし
「やめろぉぉ!」
ドン!
いきなりハヤト達のやり取りを見ていた了はマタを押し倒した 。
「つっ…何するんだよ!」
了の顔は怒りで赤くなっていた。
「あんたなぁ!ハヤトばかり悪くゆうけど、あんたは一度も騙されたり間違ったりした事がねえのかよ!!?」
「なっ……?」
「そもそも、そんな大事なことをなんでハヤトみたいな子供にやらそうとすんだよ!?」
「……………」
その言葉で静寂な雰囲気に包まれる。

「うう…ボクの……せいだ…」
ダッ!
ハヤトは泣きながら机の引き出しを開けた。
ハヤトは机の中からハサミを取り出した。
マタ達はとっさにハヤトが何をしようとしてるか気付いた。
「ハっ…ハヤト…お前…まさかっ!!?」
ハヤトはハサミを逆に持ち、手を上げた。
「ボクのせいだぁぁぁ!!!!!」
クチュ!!
「くああああああ!!!!!!」
何とハヤトはハサミを振り下ろし、足に突き刺した。
「やめてぇぇ!ハヤト君!!!」
「ハヤトぉ!バカかお前は!!!」
マタ達は急いでハヤトを止める。
しかしハヤトは混乱していた。足から大量の血液が流れた。
「ボクのせいなんだぁ!ボクのせいなんだぁぁ!!」
「ハヤト、落ち着け!!これ以上すると死ぬぞ!!!」
「ヘンジル!!」
マタは「ヘンジル」で巨大な救急箱に変身した。
「了君、これを使って!!」
マタは包帯を取り出した。了はそれを使ってハヤトの受傷部位に巻いた。
しかしハヤトの混乱は止まらない
「うわああああ!!」
「落ち着けっていってんだろ!!!」
「ハヤト君!!!」
しかし
ズキンっ!!!!
「あがぁぁっ!!!」
ハヤトはまた頭痛に襲われた。しかも今までと比較にならない程の…
「ハヤト!!どうしたぁっ!!!」
「ハヤト君!!大丈夫!!!?」
(また…頭が…痛い!痛い!)
(ハヤクココカラダセェェェェ!!オマエニカワッテオレガコノカラダヲシハイシテヤルァ!」

「いやだぁ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだぁぁっ!!」
マタ達はハヤトの異変に気付いた。それを見た二人の顔が青ざめた。
「しっかりしろっ!!!」
「ハヤト君!!」
「…あうっ…」
ドサッ…
ハヤトはその場に倒れた。どうやら気を失ったようだ。
「ハヤト…」

「…ん…っ」
ハヤトは目覚めた。すると目の前にマタ達がハヤトを見ていた。
「ハヤト、気がついたか!」
「大丈夫?」
ハヤトはかすれた声でしゃべった。
「あれ…ボクは一体…」
「君は気を失ってたんだ。かなりうなされてたよ…」
マタがそう言うとハヤトは黙り込んだ。 「マタ…ごめんね…もう騙されたりしないから…」
ハヤトがそうゆうとマタは手をハヤトの肩に置いた。
「ううん、もういいよ…君がそこまで責任を感じているならもうボクには君を責める権利はないよ…
こちらこそ一方的に責めてごめんね…」
「マタ…」
了もハヤトに目を輝かせていった。
「ハヤト…お前がここまで思い切ったことをするなんて凄いよ…」
「了………」
空気は少し穏やかになった。

「ねえ、マタお姉さん何でハヤトがこんな目に遭うんだ?」
「そういえば、マックがボクのことを「選ばれし者」っていってたけど一体何なの?
あとなんでボクが敵に狙われたりするの?」
ハヤト達は疑問になってた事を聞いてみた。
「そっか…まだそのことを話してなかったね…わかったよ、教えてあげる。」
マタはハヤトが敵に狙われる理由、「選ばれし者」とは何か、その全てを話した。
………………………それはマタの生まれ故郷ドン・クラーイ世界に伝わる言い伝えから始まる。
「暗黒の世界ドン・クラーイに「金の矛」と「銀の盾」あり。ドン・クラーイ世界が乱れし時、「金の矛」と「銀の盾」は失われる………。
それを見つけられるのは「銅鐸」のみ。
「銅鐸」が「金の矛」と「銀の盾」の場所を示す時、新たな地平が開け「選ばれし者」が現れ、ドン・クラーイ世界に平和をもたらすだろう……。」

ドン・クラーイ世界…
ブウウウウ…ン
ブトムシみたいな生物と巨大な竜が追撃戦を繰り広げていた。
パウっ!
竜の口から巨大な光弾をカブトムシめがけて発射された。
ドワッ!
「うわっ!!」
光弾はカブトムシに直撃し爆発した。
「くう…なんの!!くらえっ!!」
ビィィィ!!
カブトムシは竜にめがけて光線を発射した。
しかし
バリバリバリっ!
竜の周りにバリアが展開し、光線を遮断させる。
「ぬははは……効かんぞ!!貴様の負けだ!!」
ズババババババ!
竜は光弾を無数の光弾を拡散発射した。 そして
ズドン!バン!
光弾たちがカブトムシに直撃する。
「うわあ~~っ!このままじゃ…」
すると
カシャ!
カブトムシは腹部から金色の矛を取り出した。
「オドュルー・アフォー・ニィー・ミルッア・ホー!!」
ピシッ!オオオオオ…
カブトムシが呪文を唱えると、空間に歪みが生じ、穴が発生した。
ぶんっ!
しゅるるる!
カブトムシは金の矛を穴に向かって投げ、穴に吸い込まれた。
「これで「金の矛」が「選ばれし者」を捜してくれるはずだ!!」
しかし
ドワオオオ!!
「ぎゃああ!!!」
無数の光弾はカブトムシに直撃し、大爆発を起こした。
「た…頼むぞタミ!伝説を甦らせるのだ……!」
爆発が治まるともう、カブトムシは消滅していた。
「ふん…」
竜は変身を解いた。竜の正体はドン・クラーイの王「アセ・ダク・ダーク」だった。
「無駄なあがきをしおって…。
「金の矛」がどこへ行こうとこの「銅鐸」さえあれば簡単に突き止められるわ!!」……………………

「そう…そのカブトムシこそが「ヘンジル」で変身したボクのパパ、「マタ・タビ」だ…
ボクはパパの遺志を継いで、「選ばれし者」を命がけで守ってるわけ!」
ハヤト達は驚いた。そんなことがあったとは全く知らなかった。
「それじゃ「金の矛」」は…」
「そう…「金の矛」はハヤト君、君が持ってる。だから君が「選ばれし者」なんだ!
敵は「金の矛」を所持している「選ばれし者」を狙っているから君が敵に狙われているんだ!」
「けどボクは「金の矛」なんか見たことないよ」
「「金の矛」は目立ちやすいからあのままでは敵に見つかってしまう。
だから「金の矛」に「ヘンジル」をかけて別の姿でハヤト君の身近にあるはず」
了は疑問をマタに聞いてきた。
「けどなんでハヤトが「選ばれし者」に選ばれたんだ?」
「くじに当たる人がいるよね?それと同じでただの偶然だよ!
これは現実だよ!君達がドン・クラーイ世界の影響を受けなかったのはハヤト君が「選ばれし者」だったからなんだ!
了君も無事だったのはハヤト君の近くにいたから君も影響を受けなかったんだよ」
ハヤト達は頭がこんがらがった。
「う~ん…、なんかアニメみたいだな…」
「うん…」

突然
ビュワ!!
「!?」
ポン!
なんとのハヤト達の服装が変わった。
ハヤトはウサギのぬいぐるみ、了はネコのぬいぐるみに変えられていた。
「なっ……なに…これ…?」
「何だ何だぁ!!?」
マタはとっさに気付いた。
「空間をヘンジられた!!敵が来る!!」
すると
ビュワ!!
突然空間が歪み、マックの時同様、別の空間に変えられた。
「おとなしくしてればよいものを……もう少しでこっちはドン・クラーイの物になるのよ!」
「!?」
ハヤト達は後ろに振り向いた。そこにハヤトを騙した張本人、プリリンが待ち構えていた。
「てめぇがプリリンかぁ!!よくもハヤトを…世界をめちゃくちゃにしやがって!!」
「ガキがあたしにえらそうな口きくんじゃないわよっ!」
「なんだとぉ!?」
「この世界がこっちの手に堕ちれば伝説の矛とか盾とか関係なくなるのよぉ~~~!」
マタ達はその言葉に立ち向かう。
「そんなはずはない!!矛と盾はドン・クラーイを救うんだ!!」
しかし一番怒っていたのはハヤトだった。
「プリリンお姉さん…よくもボクを騙したな…よくもマタを酷い目に合わせてくれたな!
ボクはもう許せない!!」

しかしプリリンはハヤト達の言葉を聞くはずがなかった。
「…もういいわ!「選ばれし者」ごといただいちゃう!」
するとプリリンはいきなりしゃがみ込んだ。
「ヘンジル!!」
ボウン!
「プリリン・ザ・スピードキング!!」
プリリンはヘンジルで奇妙な形をした車に「ヘンジ」た。
「さあ…あたしを楽しませてよね♪」
ブロロロ!!
プリリンは高速でハヤト達に突進してきた。
「危ない!!」
「「うわあ~~~っ!!」
ハヤト達は間一髪で突進を避ける。
「こうなったボク達もヘンジるよ!!二人とも、走って!!」
ハヤト達は全力疾走で走り出した。
「待ちなさぁ~~いっ!」
プリリンも負けじとハヤト達を追いかけてきた。

「いくよっ!ヘンジル!!」
ギュンっ!!
マタは粒子と化し、二人を取り込んだ。そして
バン!!
マタも奇妙な車に「ヘンジ」た。しかしプリリンの車と比べて変だった。
ハヤト達がタイヤの上で走ることにより、タイヤもその連動で動く、なんとも情けない動力を持った車だった。
「あ~~ん!格好悪いよぉ!!」
「これ本当に速いのかぁ!?」
しかしマタだけは絶対的な自信を持っていた。
「二人の強い意志の元で作られた「マッタ轟」はプリリンに負けるはずがないよ!!」
「「うう……」」
二人ともマタの感覚を疑った。

しかし明らかにプリリンの性能が良かった。もうすでにマタの後ろにまで追いついていた。
ガバァ~!
プリリンの車の前面が、鋭い牙の生えた巨大な口に変形した。
「あれはっ…オレたちを喰う気か!!」
「いやだぁ~っ!!」
 
ガブッ!
ついに口はハヤト達に噛みついてきた。「ひぃぃっ!!」
「二人共、最大出力で行くよ!
「マッタ・ゴー!」」「ゴー!」
「ゴー!、……ネタが古いよぉ~っ…」
これより、ハヤト達とプリリンの激走!カーチェイスが始まった。

ブロロロォォ!
「もひもひィ、今ぁ?ウン平気ィ~♪」
プリリンは余裕そうに化粧とケータイしつつ、パンを食べながらハヤト達を追ってきた。
もうマナーもくそもなかった。
「てめぇ!マトモな運転をしやがれ!」
了はそんなプリリンに叱りつけた。
「うるさぁ~~~い!!そんなのあたしの勝手でしょ~~~っ!!」
プリリンは急にキレだした。
「了!!余計に怒らせてどうするんだよ!!」
ハヤト達が必死で逃げていると先に曲がり角があった。
キキィィ~!
マタ達は何とか曲がった。しかし、
「うっ…うわあ~~!」
ハヤトは曲がった時の衝撃に耐えきれず、マタ達から離れ、空へ宙を舞った。
「ハヤトォォ!!」
ひゅううううっ
飛ばされたハヤトはプリリンの方にめがけて落ちてきた。
「うわあ~~!」

プリリンはハヤトを見逃さなかった。
「ハヤト君♪食べちゃうわよ♪」
プリリンは巨大な口をハヤトに向けて、食べる体勢をとった。
「食べられたくないよぉ~~!!」
ズキィ!
ハヤトは頭痛に襲われる。今度は頭が割れそうな程の激痛だった。
「あがぁぁ~!!頭がまた…」
空中でハヤトは頭を押さえる。
(クウナラオレガクッテヤルゥゥ!!」
(うわあ~~!)

ドン!
ハヤトは何と喰われず、プリリンの目の前に着地した。
「あれっ?ちゃんと位置を確かめたのに…まあいいわ♪「選ばれし者」が目の前にいるから手間が省けたわぁ~っ♪」
ハヤトは顔を下に向けたままだった。
「ハヤト君?どうしたのぉ~♪お姉さんがかわいがってあ……ん?」
ハヤトは顔を上げた。
「!!!!!!!?」
プリリンが見たのははいつものハヤトではなかった…いや、見てはいけないものを見た。
「ひぃぃぃぃっ!!」プリリンの顔は恐怖で一気に青ざめた。
「ダーク様ぁ~~!!!」
グシャア!!

マタ達は必死で逃げていた。
「マタお姉ちゃん!ハヤトはどうなった!?」
「分からない!逃げるのに夢中だったから…」
「あのなぁ…」

突然
ドワオオオ!!
プリリンの車は大爆発を起こした。
「!?」
「そんなバカな!?」
すると
ひゅううううっ…
ハヤトが飛ばされてきた。
「マタ~っ、助けてぇ~!!」

マタ達はハヤトを発見した。
「ハヤト!!大丈夫かぁ!?」
「ハヤト君!!無事だった!!」
ボン!
マタはヘンジルを解いた。
そして
ボフッ!
マタはハヤトを受け止めた。
プニュ…
ハヤトはマタの胸に当たる。
「マタの胸、柔らかぁい~~!」
「あう…………っ」
マタの顔は恥ずかしさのあまり、真っ赤になった。
「……いいな……」
その光景を見ていた了は羨ましがった。
「ハヤト君、どうしてプリリンの車が突然爆発したの?」
ハヤトは首を横に振る。
「ううん…分かんない…気がついたら爆発して、空へ飛んでた」
「そっか…なんでだろうね…?まっいいか」
「プリリンをやっつけたのか?」
「うん!!でもまだ安心はできないよ。敵のボス、「アセ・ダク・ダーク」が残っているはず…」
マタ達が話していると
ポッ!キュルルルル!
「うわっ!」
さっきの空間がまた違う空間に変化した。とても真っ暗でほぼ何も見えない。
「何だここは!?」「暗くて何も見えないっ!」
マタは深刻な顔をしていた。
「奴が……アセ・ダク・ダークが来る!!」
すると
ゴゴゴゴゴゴゴゴっ!!
すると地響きがなり始め、床から塔みたいな物が伸び出てきた。
「こいつが…敵の…ボス…」
「あ……っ」
塔から筋肉質の奇妙な格好をした男が出てきた。
「お初にお目にかかる。私はアセ・ダク・ダーク、こっちの世界も暗くしてあげよう……」
ハヤト達は呆然と見ていた。
「お前が…ダークかっ!?」
するとダークは歩きながら話した。
「私は選ばれしエリートだ。代々、人民を支配、贅沢な暮らしをしてきた……
貧乏でバカなお前ら下等生物は私の指示通り生きるのが幸せなのだ!
何にも考えず私に従え!!」
ダークの言葉にハヤト達は当然納得するはずがなかった。
「なんだとぉ!?んなバカな考えがあるか!!?普通に生活をして普通の幸せを送るんだ!」
了はそうゆうとダークはあざ笑う。
「ちっぽけな望みだ…たかが子供にここまでナメられるとはな…
貴様らは捨て子で親の顔も知らず、可哀相だな…クックック!」
その言葉にハヤト達はキレた。
「なんだとぉっ!!!人のことをバカにしやがって!何様だてめぇは!!?」

「ボクはもうお前を許せない!!みんなと力を合わせて、お前を倒す!!」
「ダーク!お前の好きにはさせないぞ!!」
しかしダークは余裕そうに笑っていた。
「ムダだな…、愚か者に何を言っても時間の無駄使いだな…」
ダークはハヤト達を睨みつける
「ヘンジル!!」
ヒュルルルル!
ズドドドド!!
ダークは「ヘンジル」を唱えた。すると粒子に変形し、どんどん巨大になっていく。
「ウオ~~~~~ッ!!!」
ドォォン
何とダークは超巨大な竜に「ヘンジ」た。
「「わあ~~~ッ!!!」」
「こうなったらオレ達もヘンジルを使おう。マタお姉ちゃん!!頼むぜ!!」
「うん!!」
三人の心を一つにした。
そして
「「「ヘンジル!!」」」
ギュルン!
カッ!
「ダーク!!これがお前がナメていた子供の本当の力だ!!」
光の中から、見るからにとても強そうなロボットが出てきた。
「これなら…勝てるかも!」
「ダーク、いくぞ!!」
ダークは口を開け、パワーを収束させた。コオオオオ!
「死ねえっ!!」
ズハバババババハ!
ダークは無数の光弾を拡散させた。

「了、ボクに任せて、ゲッタァァァビジョン!!」
シュン…
ロボットは目に見えぬ程の高速移動で避けまくる。
ゴゴゴゴ
ダークはロボットを追ってきた。
「了、ダークが追ってくるよ!」
「オレにまかせろ、ゲッタァァァウィングゥ!!」
ぶわっ!
ロボットは背中からマントを展開し、空中に浮上した。
「よおし!!マタ、お願い!!」
「うん!!任せて!!」
ギュルルルル!!
ロボットは手を広げて回転し始めた。
ゴオオオ!!
ロボットの高速回転で巨大な竜巻が発生した。
「いっけぇ!!マッタ・トルネード!」
ロボットは竜巻をダークに投げつけた。ズゴゴゴゴっ!
「ぐわあああっ!」ダークは竜巻の直撃をくらい、上空へ吹き飛ばされた。
「今度はボクの番だ!!」
ジャキン!
ロボットの腕が巨大なドリルに変形し、ドリルをダークに向けた。
「ドリルゥ!アタァック!!!」
ドシュン!
ロボットはドリルをダークめがけて発射した。
ズガガガガガ!!
「ぎゃあああ!!」ドリルはダークの腹部を貫通した。ダークは地上へ落下する。
「よおし!今度はオレの番だぁ!!」
ウィーン…ジャコっ!!
ロボットの両肩が開き、中から巨大なキャノン砲が出てきた。
シュイイイイン!
キャノン砲にエネルギーが収束し、落下中のダークに照準を合わせる。
「くらえぇ!!プラズマァァ!ノヴァァ!!」
ズギャアアア!
キャノン砲から高出力のビームを発射した。
「ぐええっ!!」
ゴオオオ…ン
ダークは直撃をくらい、地上を叩き落ちる。
「了!マタ!三人の力を合わせるんだ!!」
ハヤトのかけ声で3人は心を一つにする。
「おう!(うん!!」
ガシっ!
ロボットは手を平行にして、力を溜める。
ギュオオオ!
平行にした手を広げると巨大な剣が発生した。
「「「ソゥゥドォ・トマホォォク!!」」」
ロボットは剣を振り上げ、ダークに突進する。
「「「いっけぇ!!!」」」
ザン!
「あ゛あ゛あ゛あ゛~!!」
ロボットはダークを容赦なく斬った。
「ば…ばかなぁっ!!」
ドワオオオオン!!ダークは大爆発を起こし、消滅した。

………
「これで全ては元通りになるんだよね?」
「ボク達が世界を救ったんだね?」
すると
ガシャアアアン!
空間が割れ、元の施設の風景に戻っていく。
「あっ…元に戻っていくよ!」
マタは2人をみて笑う。
「2人共、本当にありがとう!ダークがいなくなれば「金の矛」や「銀の矛」も簡単に見つかるはずだよ!」
ハヤト達も思いっきり笑う。
「ハヤト、お前がこんなに笑うなんて初めてみたぞ!!」
「うん♪」
辺りは明るい雰囲気に包まれた。

しかし…
「はっ!?」
マタは何かに気づいた。
「ハヤト君!!了君が!?」
「えっ?」
ハヤトは了を見た。「!!?」
了は時間が止まったかのように体が硬直していた。
「うわあっ!ま…また止まってるぅ!!」「時間がゆっくりになっているんだ!!」
グーン!
次第に了はハヤトから遠ざかっていった。
「了!!」
ハヤト達は周りを見まわすとまた別の空間に変化していた。
「これは…ダークのヘンジル空間だ!!」
ハヤトは驚いた。
「ええっ!ダークはさっき倒したんじゃないの!?」
「さっきのダークは…偽者?」
「ええっ!?ボク…怖くなってきた…」
「大丈夫!!ボクが守ってあげる!」
マタはハヤトを勇気づける。
「フッフッフッフ……」
「!?」
ハヤト達が振り向くと、目の前に2つの鏡が現れた。すると鏡の後ろからダークが出てくる。
「ドン・クラーイの王、アセ・ダク・ダークを倒したと思うとは…」
「おめでたい奴らだ……」
「なっ!!」
ついに本物のダークが現れた。
「ひい!!」
ダークはチョキにした両指を合体させる。
「ハヤト君!!危ない!!」
マタはハヤトをいそいでかばう。
「ダーク!!」
ビィィィィィ!
「うわああああ!!」
ダークは指から黒い光線を発射し、ハヤトをかばったマタに直撃させた。
「マタぁぁぁぁっ!!」
カチン!
何とマタはダークの攻撃を受け、石化してしまった。
ハヤトはいそいで石化したマタに駆け寄る。
「マタ!!マタ!!返事してよ!!いやだよ!!」
ハヤトは恐怖で体中が震えていた。
「フッフッフッフ…ギャ~~~ッハッハッハ!」
ダークはハヤト達を見て高笑いした。
「ひいい…」
「確かにお前達は強かった…しかしマタが石化した今、もうお前を助ける者は誰もいない!
「金の矛」と「銀の盾」の伝説など、お前には何の意味もなかったのだ!
ちなみにマタの父親を葬ったのもこの私だ!」
「…………」
ハヤトの顔はものすごく青ざめていた。恐怖感と絶望感が残酷なまでに体中が震えらせる。
ハヤトは石化したマタを見ると、マタの目から一滴の涙が流れていた。
よほど悔しかったのだろう、ハヤトを守れなかったことを後悔しているのだろう、その思いがハヤトにどんどん伝わってきた。
「マタ……」
ハヤトはダークを睨みつけた。
「よ…よくもマタを…ボクはお前を封印してやる!」
その言葉にダークは焦る。
「そ、それだけはやめてくれぇ!!」
ハヤトは体勢をとる。
「フーイン!フーイン!ボイン!ボイ~~~ン!」
「ぐあああああ!!!」
ハヤトは呪文を唱えるとダークはのたれうちまわった。
「や…やった…!」
しかし
ダークはピンピンしていた。
「……なんてな!!オレ様の空間で「ア法」が使えるわけないだろうが!この阿呆ぅが!!」
「うあ……」
シュ…
ダークは顔をハヤトの顔に近づけて脅した。
「「どうする」?、ハヤト君…?」
ハヤトの精神は恐怖で限界にきていた。
「うわあああああっ!!!」
ハヤトは一目散にダークから逃げ出した。
(もういやだ!!これは夢なんだ!早く覚めてお願い!!」
しかし
ミヨイン…ミヨイ~ン…
床から大量のダークの部下達が飛び出してきた。たちまちハヤトは囲まれ、逃げ場を失った。

「もう終わりだ!」
「!!」
振り向くとダークが待ちかまえていた。 「いやっ…いやっ…」
「たった五年しか生きていない、何の役にも立たんガキだ…ましてや泣き虫で弱気なお前はなおさらだな…
もういい!こんなガキはこの私が直接手を出すまでもない!
我が部下達よ!このガキを始末しろ!」
「はい…ダーク様…」
「うっ…」
ハヤトは何もかも諦めかけた。
突然
ズキィィィン!
「ぎゃああああっ!」ハヤトはこれまでにない頭痛に襲われた。
「あがああああ!」
ハヤトはその場でうずくまった。
(なんか…変なモノが…コミアガッテクルァァ!ウギャアア!」

「ん……?」
ダークはハヤトの異変に気づく。ハヤトが明らかに苦しそうだ。
「フハハハハ!恐怖でもう混乱しているのか!いい眺めだ!!
よし、部下達よ!いけ」
「はい…ダーク様…」
ガサガサっ!
ダークの部下達はハヤトに襲いかかる。
そしてハヤトのいた場所はたちまちダークの部下達に覆い尽くした。
「フッフッフッフ…!これで「選ばれし者」も終わりだ…」

しかし
ズバアアアアン!
ダークの部下達は一気に吹き飛ばされた。「なっ!!なんだ!!?」
ダークはハヤトのいた方向を見た。
「なっ…なんだとぉ!!?」
ダークは見たのはとても信じられないことだった。
なんとダークの部下達の体がバラバラにされていた。
そこにはダークの部下の首を食べている血まみれのハヤトの姿があった。
「キっ…キヒ!!」
 
 
………………………
ここは万能移動要塞「ゲット・ボマー」の指令室。
そこに8年前、浅間山山麓での大事故の元凶である科学者「早乙女賢」の血縁関係を持ち、
この要塞の司令官「早乙女達人」とメカニック部門の権威で、宇宙最狂のマッドサイエンティスト「敷島博士」が話しをしていた。
ブゥーッ!ブゥーッ!
突然サイレンが艦内に鳴り響く。
「どうした!?」
モニターに出たのはムサシだった。
「司令!ハヤトがまた暴走してます!」
達人は頭を押さえてため息をつく。
「はあっ…またか…、スーパートランキライザー(強力精神安定剤発射装置)で落ち着かせろ」
「はいっ!」
プツン!

「どうしたんじゃ?またハヤトか…?」「そうです…」
達人は崩れるように椅子に座り込む。
「しかしハヤトのあの性格に困ったものです…」
少し間を置いて、敷島博士は立ち上がり、指令室からゲッターロボの格納庫を眺める。

「ゲッターロボ」は対イデア用最終兵器で、「アンチゲッター線(闇のゲッター線)」というエネルギーで起動するスーパーロボットである。
「ゲッターロボ」は三機の戦闘機「ゲットマシン」から構成し、ゲットマシン同士が後ろから合体することにより、ゲッターロボになる。
さらに、ゲッターは三形態あり、合体する順で攻撃力が高い空戦用「ゲッターⅠ」、高速戦闘を得意とする陸戦用「ゲッターⅡ」、パワー、装甲が高い海戦用「ゲッターⅢ」となる。
まさに変幻自在、無敵で開発者、敷島博士にして「究極の殺戮兵器」と称されるほどの能力を秘めたスーパーロボットだった。
そのゲッターロボを操縦するのが「了」、「ハヤト」、「ムサシ」の「チーム・ゲッター」である。
その中でもハヤトは要監視人物であった。

敷島博士はゲッターロボを見ながら口を開いた。
「奴の特性を生かせば、イデアなんぞ敵じゃないんだがのう」
「ハヤトの出生によると、奴は検査で生まれてすぐに脳波に異常があったらしいですね」
「ふむっ…物心つく前に親に捨てられて…可哀相な奴じゃ」
敷島博士はさらにハヤトについて話し出す。
「奴は本当は「チーム・ゲッター」のリーダーになれる素質は充分にあるんだがなぁ…
戦闘能力、特に殺戮に関しては三人の中ではダントツでハヤトが高い。」

「しかし、問題は奴の性格ですね…」
「ああ…、奴は普段は冷静だがその本性は「凶暴にして凶悪」だからな…。「キチガイ」と言われても仕方がない。
だから奴はいつも精神安定剤を随時服用して、本性が現れるのを防いでいるワケじゃ」
「しかし奴がいつからあんなに精神が不安定になったんでしょうね…?」
「それなんじゃが、ハヤトは子供の時に施設にいたらしいがな…そこで本性が現れて、子供を数人虐殺したらしい…。
それでハヤトはその後、精神病院に行かされたらしい。
安定剤を飲み始めたのもそこからじゃろう。
奴を戦闘時に「覚醒」させてやるのも良いが…全く手がつけられなくなるのがたまにキズだがな…」
「ふむっ…」

その「本性」は「凶暴にして……」
「凶悪!!」
………………………
「…………」
ダークは今の現状を見て、 大量の冷や汗をかいていた。

グチャっ!ズバア!ザクっ!
「ぎゃああああっ!」「ダークさまぁぁ!!」
ハヤトはダークの部下達を素手で胴体をバラバラにしていく。
ある者は引きちぎられ、ある者は咬みちぎられ、そしてある者は爪で引き裂かれた。
「俺はお前達が好きだぁぁっ!!こんなに醜く殺せるんだからなぁぁぁ!!」
ハヤトの顔はもう今までのハヤトの顔ではなかった。
顔中に血管が浮きまくり、目も興奮過剰で充血していた。
ハヤトは今「狂気にとりつかれた」。
「ひぃぃ…!」
部下がハヤトを恐れ、逃げようとした。 ガシッ!
「楽しんで」いるハヤトから逃れることはできなかった。
「めえぇぇぇぇぇぇぇっ!」
ザクッ
「うぎゃあああ!」
もうそこはバラバラ死体と飛び散った血だらけで地獄絵図のようだった。

「お前は一体何者だ!?」
「あ!?俺かぁ!?俺はハヤトだぁ!」
「なっ何!?」
「これが俺の「本性」だ!!」

ついにハヤトは「狂気の本性」を覚醒させた。
「ふっ…ふざけるなぁ!!」
ダークはまたチョキを重ねる。
「ダークっ!」
「!?」
シュン!
ドゴオオオ!
ダークの攻撃が炸裂した。辺りに粉塵が巻き起こる。
しかし
「!?」
ハヤトは無事だった。そこにいたのはあのクロだった。
「クウ~~!!」
キュイイ~ン
クロは何と「ヘンジル」を使った。
「ハヤト君を僕を使って!」
なんとクロは銀色に輝く盾に「ヘンジ」た。

「「銀の盾」だとぉ!?」
ダークは驚いた。
「ボクの本当の姿は「銀の盾」のギンギンさ!!」
なんとクロの正体は伝説の「銀の盾」だった。
「僕はハヤト君を選んでよかったよ、五歳児ハヤト君のおか……ん?」
ギンギンはハヤトを見た。しかし今のハヤトは今までのハヤトと全く違っていた。
「誰だクソてめぇはよぉ!!殺すぞ!!」
ギンギンはびっくりした。ハヤトから威圧感と危険な匂いが伝わってきた。
「ハっ…ハヤト君…?
しかしハヤトは狂気的な笑いをした。
「しかしまあ、役に立つなら使ってやる!!しかし使えないんならお前を捨てるぞ!」
「ひぃぃいいい!!」
ギンギンはハヤトに対しての恐怖感を覚えた。

ダークは攻撃体勢に構えた。
「ダーク!!」
ビィィィィィィ!
バリバリ!!
ギンギンはダークの光線を受け止める。 「安心して!!ボクはダークのあらゆる攻撃も前からなら防いでみせるよ!」
「当然だぁ!!俺の役に立たねえ奴はいらねえな!!」
「うう………」
ギンギンは段々ハヤトが「選ばれし者」でよかったのか不安になってきた。

一方、攻撃が効かないことが分かったダークはいらいらしてきた。
「お~の~れ~!!
封印できずとも痛みつけることは出来るぞ!」
しかしハヤトはその言葉に興奮した。
「ひゃはあっ!キサマを俺が醜い姿にするまで遊んでやるァァ!」
しかし、ギンギンはハヤトを止めに入る。
「てめぇ!!邪魔するならこの場で捨てるぞ!!」
「ハヤト君、「金の矛」を持っていない君がダークと戦っても圧倒的に不利だ! 「金の矛」はハヤト君の近くにあるはずだから探すんだ!」
「ちぃ!ふざけやがってぇ!俺は俺のやり方でやらァ!ごちゃごちゃいってっとぉ…」
「頼むよハヤト君!ダークを倒せるのは君しかいないんだ!」
ふとハヤトは思いついた。
(けどもし「金の矛」を手に入れたら……くっくっくっ…)
「分かった!その代わりに「金の矛」まで案内しやがれ!伝説の物ならお前達は自分達の居場所ぐらい分かるだろぅ!」
「えっ…ムリだよそんなこと…」
「ほぉ!そうかぁ!ならお前は役に立たなかったなぁ!!」ハヤトはギンギンを投げ飛ばそうとした。
「ちょっ!!待ってよ!!探してみるよ…」
(うう…このハヤト君コワイよぉ~っ!!)

それを聞いたダークは部下達に命令を下す。
「「金の矛」を見つけさせてたまるかぁ!!お前達!全力であのガキを始末しろ!」
「うおおおお!」ダークの部下達は全力でハヤト達に襲いかかった。
「いいぜぇぇ!!そっちから向かって来るなんてよぉぉ!!」
ハヤトは急激に興奮した。
ドクン!ドクン!ドクン!
ハヤトの脈拍はすごぶる早かった。

ザシュ!!バキ!ブシャアァ!
「ハアッハ!!ハアあああハアアあああっ!!!!」
ハヤトは鬼神のごとく、奇声を漏らしながらながら部下達を「喰って」いく。
「ドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリィィ!!!!」ズドォォ!!

「ハヤト君!「金の矛」を探すのが先だよ!!」
「んなら早く案内しやがれぇ!!」
「うう………っ」

ギンギンはハヤトの部屋へ行かせた。
ダークも必死で後を追いかける。
「ガキぃ!どこだ!!」
ダークはハヤトを発見した。しかしハヤトは「銀の盾」の他に何かを持っていた。
「何だそれは…」
ハヤトが持っていた物…それは部屋に落ちていた何の変哲もない定規だった。
キュイイ~ン!
定規は「ヘンジル」で別の物に変化した。
キラキラっ…
ハヤトの手には黄金色に輝く物…「金の矛」があった。
「これが「金の矛」かぁ!」
「はじめまして、ハヤト君!私は「金の矛」のキンキンよ!」

しかしハヤトはなぜかキレていた。
「てめぇ!気持ちワリぃ声出すんじゃねぇ!吐き気がするぜ!」
ハヤトの言葉にキンキンはショックを受けた。
「なっ…!?レディーに向かって失礼よ!」
「おめぇはもうオレに喋んな!ムシズが走る!!」
「何ですってぇ!!」
喧嘩勃発寸前でギンギンが止めに入る。
「二人ともやめなよ!ダークがすぐそこにいるんだよ!」
「あなたは…ギンギン!?久しぶりね♪」
「うん、1582年ぶりだね!」
キンキンとギンギンが話していると、 ハヤトはしびれをきらす。
「ガタガタうるせぇぇぇ!!てめぇら、分解されてぇぇのかぁぁ!!」
(うう…)
キンキン達は黙り込む。
(ねえ…この子が本当に「選ばれし者」…?)
(もしかしたら「選ばれし者」を間違えたかもしれない…)

一方、ダークは「金の矛」がハヤトが持っていたことに驚いていた。
「伝説の矛と盾が揃っただとぉ!?
こしゃくな!!」
ジャキーン!
何とダークは背中から光輝く二本の大剣を取り出した。
「ダークブレード!!伝説の武具などドン・クラーイには必要無いのだ!!」
ズバッ!!
ハヤトは一瞬でダークを真っ二つにした。
「不意打ちとは…卑怯だぞ…!」
しかしハヤトは聞いてはいなかった。
「これがぁぁ…オレの力だぁ…これがぁぁ…オレの力だぁぁぁああ!!」
ハヤトは伝説の武具を手にしてたことにより、狂気の声を上げていた。

しかし、
「フフフフ…」
「フフ…」
ダークは死んではいなかった。しかも二人に分裂していた。
ハヤトはダークを見るなり、歯を出して笑った。
「ウレシいぜ…俺をここまで楽しませてくれるなんてよぉ…お礼にキサマらを喰ってやるよぉぉ!!!」

「「だあっ!」」
二人のダークは一斉に襲いかかる。
キン!ガキィ!キンっ!
もの凄い接近戦の応酬だ。ハヤトは矛と盾を駆使してダーク達に立ち向かう。
「「だあっ!」」
ドゴオオオン!
ハヤトはダーク達の攻撃に弾かれ、壁に激突する。
「ククク…何が伝説の武具だ!恐れる事などなかったな…」「ガキをやった後で溶鉱炉で溶かしてしまおう!」
「くっ……」
ハヤトは立ち上がったがふらふらだった。無理もない。狂気を覚醒させたとはいえ、体はまだ子供だ。
力的にも体力的にもダーク達と比べたら圧倒的に不利だった。
「お前一人の力などその程度の物だ!」
「自分の力の無さを呪いながらここで散るがよい!」

ダーク達はハヤトをあざ笑った。

「ハヤト君!大丈夫!?」
「しっかりしてハヤ……えっ!?」
ハヤトの体は震えて笑っていた。
「おれをぉぉ…あざ笑ったなぁああっ!!おれをぉぉぉあざ笑ったなぁあああああっ!!」
ハヤトはついにぶちギレ、キンキンを空にかざした。
「めぁぁぁぁああああ!!」
グサッ!
ハヤトは何とキンキンを自分の肩に突き刺した。
「なっ…!?何するのハヤト君!?」

ハヤトの肩から大量の血液が流れ出てくる。
「ケアアアアアアア!!ギャアアアアアアアアア!!」
ついにハヤトは暴走した。その顔はもう人間の顔をしていなかった。体中に血管が浮き出ていた。

ギンギン達、ダーク達はハヤトを暴走を見て、一瞬で震え上がる。
「「ハッ…ハヤト君……」」
「こ…こいつ…」
「狂ってやがる……っ!」

「ウギャアアアア!!」
暴走したハヤトはダーク達に襲いかかる。
ズドォォ!ドゴオオオン!
ハヤトはダーク達を圧倒していく。もう五歳児の身体能力ではなかった。
さらに伝説の武具の力も相まって、ハヤトの力は異常なまでに増大する。
「ぐああああ!!!」
「なんだ…っ?こいつの力は!?」
ハヤトは笑っていた。しかし普通の笑い方ではない。「狂暴にして狂悪」のハヤトにふさわしい狂気の笑い方をしていた。
「ドワオォオオオ!!!」
ドギャアアア!

「「ヤバい!!一時退散だぁ!!」」
ダーク達は明らかに不利と分かり、逃げようと背を向けた。
グシャアア!!
「ぐああああ!!」
一人のダークから悲痛の叫び声が聞こえた
ハヤトはダークの腹部を突き刺していた。
バシュュウ!
一人目のダークは粒子となり、消滅した。
残ったもう一人のダークは今までにない恐怖にさらされた。
「バカなっ…?こんなガキにこのドン・クラーイの王がぁ…っ」
「アヒァヒァヒァァァァァァ!!」
そして…
ドグシャ…
…………………………

「あっあれ…ボクは…?」
ハヤトは元のハヤトに戻っていた。
「こっこれは…?」
ハヤトの手に持っていたには伝説の「金の矛」と「銀の盾」だった。

「ハヤト君、元に戻ったの?」
すると銀の盾は喋り出した。
「うわあああ!盾がしゃべった!!?」「そっか…君はあれから知らないのか…。ボクは「銀の盾」のギンギン。そして…」
「ハァイ!私は「金の矛」のキンキンよ!!」
「君達が…「銀の盾」と「金の矛」…」
ハヤトは何かに気付いた。
「あっ!そういえばダークは!?」
「ダークはもう消滅したよ!君がダークを倒したんだよ!」
ハヤトは驚いた。全く何があったかわからなかったからだ。
「ダークは…ボクが倒した…?けどどうやって…?」
キンキンとギンギンは少し落ち込む。
「それは…君は知らない方がいいよ…絶対…」
「うん…」
「?」
ハヤトはギンギン達の態度に疑問をもった。

ハヤトはふと金の矛を見た。黄金色に輝き、神々しい存在感があった。
「……ヒッ………」
ハヤトはギンギン達にきいてみた。
「でもどうして二人はボクを選んだの?」
「一目惚れかしらね…「愛」よ。好きになったってこと!君ならきっと世界を救うことができると思ったのよ!」
「そうそう!ボクらは伝説を作り続けている。「伝説」って人の物語だからね…たいてい好きになったか嫌いになったかのお話なのさ!」
「ハヤト君は本当によく頑張ったわ!私達から何か贈り物してあげる!」
「どんなに高いおもちゃでも大丈夫だよ!!」
ハヤトは迷う。いきなりそんな事を言われてもわからなかった。
ハヤトは決断した。
「ボクは…高いおもちゃなんていらない…ただ……マタを…マタを元に戻して!!」
ギンギン達は大喜びで答えた。
「「モチロンだよ!!」」

ハヤト達は石化したマタの所にいった。
ギンギン達は力を集中する。
「「せーのっ…「キンキンがギンギン」!!」
「え~~?そんなのが呪文なの?」
シュワワワ…
すると石化したマタが段々元に戻っていく。
「ん……ボクは……?」
マタは元に戻った。そしてすぐにハヤト達に気付いた。
「「金の矛」に「銀の盾」に……ハヤト君!!」
ハヤトはマタが元に戻り、嬉しかったのか、涙が溢れていた。
「マタァ――!また会えたぁ~~っ!!」
ハヤトはマタに泣きながら抱き付いた。

マタはそんなハヤトを優しく受け止めた。
「マタァ!元に戻ってよかったぁ!」
「ありがとう、ハヤト君…大変だったろうね!」
マタも少し涙が溢れた。
辺りは暖かい雰囲気に包まれた。

しかし
「……………」
ハヤトは急に無口になった。
「ハヤト君、どうしたんだい?」
するとハヤトはマタにこういった。
「…ねえ…マタ、お願いがあるんだけどいい?」
「えっお願い?いいよ!君は世界を救った英雄だ!何だって言って!」

ハヤトはするとこういった。
「じゃあいいかな…この「金の矛」の切れ味、試していい…?」
「え?」
ドスっ!!
「なっ…がはっ…」
何とマタの腹部はキンキンに貫かれた。
「ハっ…ハヤ…ト…くん…?」
「「マタァァァァ!!!」」
ギンギン達は叫んだ。
ズブっ…
ハヤトはキンキンを握りしめ、マタの腹部に押していく。
「イヒっ…ヒッヒッ!」
「うわあああ!!痛い!痛い!痛いぃ!」
マタはあまりの激痛にのたれうち回る。
「まっ…まさか…」ギンギンは気付い。た
そう……ハヤトはまだ狂気をはらんだままだった。

「ひっ…酷い!!なんてことをすんのよぉ!!」
キンキンはハヤトに怒るがハヤトは聞いてなかった。

マタは腹部を押さえてなんとか立ち上がり、ハヤトを見た。今まで知っているハヤトではなかった。
「ハヤト…君…なんで…?」
するとハヤトは口を開いた。
「るせんだよぉ!!このアマが!何様のつもりだバカがぁ!!」
「なっ…」
「これがぁぁ「本当」のオレ様だぁぁ!!」
「なっ…なんだってえ…?」
マタの腹部から血が大量に溢れでてきた。出血で目が霞む。
するとハヤトから衝撃の事実が明らかになった。
「オレ様はなぁ、今まではコイツの意識下で潜んでいただけだ!
こいつは今までは弱虫で泣き虫でどうしようもねぇクズなハヤトだった。
しかしなぁ…それはオレ様が作り出した仮の人格だ。本当のコイツの人格はオレ様だぁ!
あと、プリリンてウザい女を殺ったのもこのオレ様だぁ!」「「「!!!!?」」」

そう…最初の内気なハヤトは偽物だった。今のハヤトこそ、「正真正銘」のハヤトだったのだ。

「ありがとよぉ!楽しませてくれてぇぇ!しかしな…もうテメェらはもう用済みだぁ!!」

マタはこれ以上にない恐怖感と絶望感、そして激痛を味わった。

「キ…ンキン…ギンギン…ボ…ボクを助け…て」
しかしキンキン達はなんの反応もない。
「どっ…どうしたの…?」
すると
「アヒァヒァヒァ!」
「!?」
ハヤトはいきなり笑い出した
「こいつらはもう死んだよ!さっき、こいつらの核を見つけて潰した。
グシャ!てなぁ!!」

「……………」
マタは涙が込み上げてきた。
「こんな…奴を…「選ばれし者」に…したなんて…」

「今さら後悔すんのがおせぇんだよぉぉぉ!!!マタァァァァ!!」
ズボっ!
「目だぁ!耳だァ!鼻ぁ!」
「ぎゃああああぁぁ!!!!」
マタはキレたハヤトによって顔の各部位を潰されていく。
バタっ!
マタは倒れるが、それでも這いつくばって逃げようとする。
目も潰され、耳も鼻も無残に引きちぎられ、マタはもう人間の顔をしてなかった。
「うう……誰…か…助け……っ」

しかしハヤトはそのまま逃がすはずがなかった。
「逃ィげんなよぉ!マタお姉ちゃぁぁん!!」
ガシッ!
ハヤトは瀕死のマタを掴み、引きずり回す。

バキッ!!ゴキッ!グシャァ!!
「イイっヒッヒッヒッ!!アヒァヒァヒァァ!!!」
ハヤトは素手で瀕死のマタを容赦なく襲いかかる。
「……………」
マタはもう意識がなかった。それでもハヤトの暴虐は止まらない。

……「選ばれし者」をハヤトにしたのが間違いだったのかもしれない。
結果的にはハヤトはドン・クラーイを救ったかもしれない。
しかし、ハヤトの本性を知らなかったばかりに、キンキンやギンギン、そしてマタまでもが狂気の犠牲になった。
しかし、本当の犠牲者は事件に巻き込まれ、その挙げ句に凶暴と化した「ハヤト」だったかもしれない……

…………
「……くん…ヤトくん…ハヤト君!!」
「はっ…!!」
ハヤトはハッと気がついた。

ハヤトはベッドで寝ていた。ハヤトは全く状況がつかめなかった。
「ここは…どこ……」
ハヤトの目の前に白衣を着た医師だった。
「ここは病院だよ。もう落ち着いているね」
「えっ…、何…?」
ハヤトはダークとその部下達に囲まれてから、それ以降の記憶が全くない。
「君は全く知らないのかい?あんな事をしといて…」
「あ…んな事…?」
「とにかく君は絶対安静が必要だ!もし感情を抑えられなくなったら、そこにいる看護婦さんがいるから大丈夫だよ」
「……?。ボクは一体……?」

ハヤトはあのあと看護婦さんから何があったか話をきいた。
朝、施設の従業員が仕事に来た。
するとそこに無残な姿で倒れている子供達と子供の頭を地面に何度も叩きつけている血まみれのハヤトを発見した。
従業員はびっくりしてハヤトを止めようとしたが暴れて手のつけようがなかった。
そこで病院と警察に要請してもらい、強力な鎮静剤を打ってなんとか落ち着き、精神病院に運ばれたらしい。

「了は…マタは…どうしたのかな…?」
ハヤトはベッドの中でいつもそう思っていた。
今までは全て夢だったのか…しかし妙に感覚があった。
了は何故か施設の倉庫で気を失っていたが、これといった怪我はなかったらしい。
ハヤトはそれを聞いてホッとした。

ある日、ハヤトは病室で絵を描いていた。
それは自分と了、そしてマタの事を描いた絵だった。
(ボクはすごい冒険をしました。このことはずっと…ずっと覚えていこうと思います。
大人になっても覚えておこうとおもいます。マタにまた会えるといいなあと思います。)………………………

ハヤトはあの時の絵を見て感傷に浸っていた。
「そうか…あれからだったな…オレが精神安定剤を飲み始めたのは…
そしてあの大事件が起きて、世界中でイデア共が生まれちまった。
ふっ…夢だったのか現実だったのか知らねえがな…マタはもうこんなオレとあってくれねえな…ふふ…」
ブゥーっ!ブゥーっ!!
突然サイレンが鳴り響いた。
すると部屋のモニターに了達が写る。
「ハヤト!ニューヨークにイデアが出撃した。「チーム・ゲッター」出撃だ!」
ハヤトは立ち上がった。
(マタ…遠くでオレの生き様を見ていてくれ…)
「ああ!今行くぜ!イデア共!テメェら はオレが八つ裂きにしてやる!」