ライフ 番外

Last-modified: 2014-02-20 (木) 22:56:33

――ここは真ドラゴン内部。無事に突入した竜馬達だったがそこでインベーダーに取り込まれてしまう……そこで、三人が見たものとは。

「う、ウソだ!!」
「あ、あれは事故だったんだ……!!」
竜馬と隼人が見たもの、それはミチルが事故で死ぬあの忌々しい記憶の断片。
戦闘用且つ量産を目的とした機体、ゲッターロボGの合体テストでの不具合から起きた、ミチルの乗るポセイドン号が潰されたあの惨劇……。
それに映っていたのは悪魔の笑みをした自分達の姿だった。まるで意図的に事故を引き起こしたかのように――二人は悪夢に狼狽えていた。

「隼人、竜馬、どうしたんだ!!」

関与していない弁慶だけがまともであったが、彼もまた……。

「弁慶、助けてくれえ!!」
「先輩!!」
迫り来るインベーダーから自分に助けを呼びながら必死に逃げる、死んだはずの仲間、巴武蔵の姿が……。

それぞれに降りかかる悪夢の幻影……。

「竜馬君助けて……あたし死にたくないよ……」
「ミチルさん……許してくれ……っ」

「あれは竜馬がやったことよ、隼人君が悪いんじゃないわ。合体を解いてあたしの敵討ちをして……竜馬を殺すのよ……」
「竜馬……お前の責任だ……お前が死ねばよかったんだ……っ」

「見捨てないでくれ、弁慶!!」
「待ってくれ、先輩っ!!」

三人の精神を蝕む幻影でもはやインベーダーの思うつぼであった。

“犯した罪、もはや消し去ることはできない。キサマらはこの精神的苦悶にまみれて死に絶えるがいい!!”

どこからか早乙女博士の嘲笑う声が聞こえるのであった――。

 

――一方、真ドラゴンとの戦闘で膨大なゲッター線を吸収しようとして爆散したタワーから脱出した小型挺には、竜馬達の後輩である新ゲッターチームが乗り込んでいた。
早乙女の血を引く少女、ミチルの子供、早乙女元気こと、渓。ゲッターロボの整備士だった父を持つ剴。そして中央のカプセル内に眠るは早乙女の血を引き、ゲッター線を照射して誕生させたクローン人間である真人類、號。

「ミチルお母さん……親父達を……親父達を助けて……っ」

昔撮った集合写真を見つめながら呟く渓に號は突然、呼応した――。

 

號の送り込んだ意識が、幻影に囚われていた竜馬達にも影響が。

「ぐああああああっっ!!」

竜馬と隼人を、ミチルの姿で惑わした化け物が突然、うめき声を上げて苦しみだす。

「ん……?」

竜馬は気づいた。自分の着ていたボロボロのコートのポケットから凄まじい光が。彼は手を突っ込み、取り出すとそこには……。

「こ、これは……あの時の……っ」

彼の手の内にあったのはプリクラ写真の片きれ。それは未来が引っ越す前日、歩と園田と未来の三人と共に街のゲーセンで撮った、最後の楽しい一時の思い出……プリクラに写る、様々な落書き。
それが光の輝きがましたときだった。

“流、聞こえる!?”
「は、羽鳥っっ!?」
なんと目の前に現れたのは淡い光に包まれた未来本人であった。

“流、こんな化け物に惑わされたらダメ!!こいつらはインベーダーよ!!”

「しかし……」

“あんたらしくないよ!アユムの子でしょ、気をしっかり持って!
ミチルを殺したのは流達じゃない、コイツらよ!”

彼女は本当の真実を彼に見せた。

……ミチルの身体はインベーダーに侵されていたのだった。合体する瞬間にヤツが彼女の体を突き破り、飛び出した。もはや助からないと悟ったミチルは、合体を緊急解除させて自分もろともインベーダーを葬ったのである――。

“流、頼みがあるの。どうかミチルを……あたしと達人の娘、早乙女ミチルの仇を、そしてお義父さんの早乙女博士にかかった呪縛を解き放ってあげて!!”

「ミチルさんが……まさか羽鳥の子供だったとは……っ」

ついに彼が知った衝撃の事実。それを聞いた瞬間、竜馬はインベーダーに対する、マグマが溢れかえるような怒りが込み上がったのだった――よくも羽鳥を踏みにじりやがったな、と。

“流、頼んだよ……”

そう言い残し、未来はスゥと消えてしまった――竜馬はプリクラを再びポケットに戻し入れる。

「武蔵先輩、俺は必ずあんたの仇を……」

弁慶も元に戻り、彼が遺してくれた帽子を深く被り込んだ。そして隼人も涙を流しながら、鬼の形相となりレバーを強く押し出した。

「よくもミチルさんをォォォォォっっっ!!」

……ついにブチ切れて悪夢を振り払った竜馬達旧ゲッターチーム、そして早乙女博士、コーウェン、スティンガーの開発チームの駆るゲッター、『メタルビースト・ドラゴン』との壮絶な闘いが今始まった――。

「ジジイ、てめえに少しでも良心が残ってるなら目を醒ませ!!羽鳥をこれ以上悲しませてどうすんだ!!」

その時早乙女博士の顔色は一瞬変わった。

「な、竜馬ァ!!なぜキサマはミキの名を知っておるのだ!?」
「俺はてめえらインベーダーをこれ以上生かしておけねえ、それがゲッターを駆る者の宿命ならばっ!!」
繰り出される超高速の合体合戦、ドリルとドリルとの激突、ミサイル同士の撃ち合い、ビームとビーム、トマホーク同士のぶつかり合い……まさに苛烈を極めていた――。

「ワリィな、俺達は目ェ瞑ってても合体できるんだよ!」
「開発チームと戦闘チームの差って奴か」
「竜馬、やっちまえ!!」

一瞬の合体の隙をついて博士達の機体合体を妨害した竜馬達。それにより優勢に見えたのだが……。

「ここが真ドラゴンの体内だということを忘れたのかァ!」
何度でも復活するメタルビースト・ドラゴンに対し、今度は彼らが苦しめられることになった――。

「ぐおあああああーーっっ!!」

旧ゲッターチームの苦戦する姿を垣間見た渓達は、

《ゴウっっ!!》

すがる思いで號に向かって名を叫んだ。すると彼は全員の意識にこう語りかけたのだった。

“……ストナーサンシャインだ……ストナーサンシャインを出すんだ……っ”

「號……?」

それが竜馬の意識にもはっきり伝わった。

“三つの心を一つにしろ……ゲッターを、ゲッターを信じろ!”

……真ゲッターは飛び上がり、両手の平を合わせて真上にかざした時、まるで太陽のような輝きを放つゲッター線の球体が形成されたのだった――。

「ぐっ、ぐっ、ぐううっっ!!」

そのあまりの強大なエネルギーに三人は翻弄されていた。

「やべえ……俺でも抑えきれねえ……このままじゃあ……暴発しちまう……」

竜馬でさえ弱音を吐くほどの凄まじいエネルギー量の塊だった――。

“竜馬……”

どこからか声がした。それは竜馬にとって一番、聞き覚えのある女性の声……それは歩の声だった。
「し、いば……オフクロなのか……」

“竜馬、あなたならできる。あたしの誇る息子なんだから……力を貸してあげるから一緒にガンバろう”

彼女は幻影であるが、高校生の時の姿で現し、竜馬と被る形でレバーを握り込んだ。

“落ち着いて意識を集中させて。そしてみんなの思いを一つにしてゲッターの力を引き出すの”

「オフクロ……」

竜馬は歩の言う通りに、精神統一し隼人、弁慶の意識を同調させる。

“……ミキ、見てて。あたしと一岩の子、竜馬がミキを救う姿を……”

――そして、

《ストナアアアァァーーーッッッ、サァァァン、シャァイン!!!》

そして一気に膨れ上がった巨大な光球は真ゲッターから投射されて、一気にドラゴンへ向かっていきついに直撃した――。
装甲が剥がされて原子分解されていく機体に早乙女博士は……。

「竜馬、隼人、弁慶、ワシの引いたレールも最後だ!!」

「「「博士(ジジイ)っっ!!」」」

最後の最後で人間としての自意識を取り戻す博士でだった……。

「あとはお前達の手で切り開け、人類の未来を……竜馬っ!」
「ジジイ!?」
「……お前がなんでミキを知っていたかは分からんが、おかげでわしは、これ以上達人とミキ、そしてミチルに迷惑をかけずにすみそうじゃ……ありがとな、竜馬」
「ジジイ……」
それは博士が未来を達人の妻として心から愛していたことを意味していた。

「さらばっ!!」

そして光球はこの一帯を、そして真ゲッターまでも包み込んでいった――。

 

――インベーダーとの最終決戦でついに打ち勝った真ゲッターと最終進化を遂げた真ドラゴン。しかし冥王星方向に時空の裂け目が……。星よりも大きくなり、飲み込む姿はまさに最強最悪の怪物にふさわしい存在であった。

「あれを使うぞ、真ドラゴンがゲッターロボGの集合体だとしたら……」
「ああ、ゲッタードラゴンなら……號、分かってるだろうな?」
「ダメだ、思った以上にゲッター炉心のパワーが上がらない……」

先ほどの戦闘で大量のエネルギーを消費してしまった真ドラゴンの炉心。だが竜馬は、ニイと笑い、彼らに自分の乗る機体を差し出した。

「炉心ならここにもあるぜ」

なんと真ゲッターの炉心を使えという指示にさすがの號も戸惑った。

「しかし、それを使ったら……」
「號、他の方法はない!」
「ちょ、ちょっとみんな、なんの話してるの!?」
理解できない渓に、義父である弁慶が優しく説明する。

「真ゲッターの炉心と直結させて、真ドラゴンの最終兵器を使う」
「さ、最終兵器っ!!?」
「大将、ムチャだ!!そんなことしたら、真ゲッターが……」
剴の心配に竜馬は非常に説得力のある言葉で安心させた。

「俺達が死ぬわきゃねえだろ?」
「竜馬さん……」
……そして真ゲッターの露出した炉心が真ドラゴンの炉心とたくさんのチューブで連結された。

「みんなの心を一つにして……號に託すんだ……」
そして竜馬、隼人、弁慶、いや全員が目を瞑り意識を集中させる。

「行くぞ!!」
號の掛け声と共に巨大な真ドラゴンは黄金色に発光し、凄まじいエネルギーの塊を身に纏ったのだった――。

《シャアアアアイン、スパァァァァァァクっっ!!》

そして真ドラゴンはそのまま発進、全力でその時空の裂け目へと突入していった――超光速、そして超エネルギーの塊に翻弄される彼が見たものとは……。

「待っていたぞ、ゲッターチーム」
見たことのない、真ドラゴンを遥かに越える全長のゲッター艦隊、そして未知の敵……。

「なんだこれは……」
「これって……ゲッターロボなの……」
そして竜馬もその中でただただ前を見つめていた。

「そうか、俺たちは……」
「そうだ、この未来永劫の時の狭間で戦うために……」
「あとは俺たちで十分だ。渓、お前達は……」
弁慶のレバーを引き、號達の駆る真ドラゴンを無理矢理時空間の裂け目から元の宇宙まで戻していった。その後で竜馬はついに、

「親父、オフクロ……っ」
彼の目の前には手を差し出して笑顔で迎える、父親の一岩と母親として成長した歩の姿が……。

“おかえりなさい、竜馬”

竜馬は今にも泣きそうになりながらも、穏やかな笑みで彼女に答えた――。

「……ただいま」

竜馬は今ここで、彼らと一つとなった――そして彼らはここで、永遠とも言える時間の中で戦っていくのだろう――生きるために生きていくのだろう。

――fin――