ライフ 第11話

Last-modified: 2010-04-25 (日) 00:27:38

ガラガラ!
教室に入ってきたのは竜馬だった。しかしいつもとは違うのはもうわかっていた。
ざわっ!
「なにアレ?ニューファッション!?」
「かっこわりーぞ!!ギャアハハハハハ!」
そう…上履きがなく、制服姿に裸足だったのだ。
夏制服なためか、裸足がいっそう目立ってしかたがない。
 
「………」
歩も竜馬の上履きを握りしめた。
1日渡さないで自分が持っていたというのがバレたらそれこそ竜馬の餌食に…。
もし渡してしまえば愛海達を裏切ることになり、もしかしたら口も聞いてくれなくなる可能性も…。
(どっちも地獄だ…)
歩の顔はどんどん青くなる一方だった。
「おいおい流!ちょっとだらしねーんじゃねーかァ?」
数学の教師も気づき、竜馬を注意した。
「暑いからだよ」
竜馬はそう答えた。
「んなことはきいてねーよ!ちゃんとはけってんだよ!」
教師と竜馬の口喧嘩が勃発。クラスはざわめきだした。
  
一方、愛海達もそんな竜馬達を見て、ニヤニヤ笑っていた。
「クスクスっ!いい気味」
「歩どうすんのかなぁー。」
愛海は歩を見て、ニヤニヤしていた。
「なにもしないよ。 だ っ て ア ユ ム だ も ん」
  
! !
その言葉が歩の起爆剤と化した。
  
も う に げ た く な い
 
すっ…
歩は机から竜馬の上履きを取り出し、竜馬に差し出した。
 
! ! ?

クラス中は歩に視線を向ける。無論、愛海達も…。
 
「………」
竜馬は歩の目を見た。その目はいつものウジウジした歩の瞳ではなく、覚悟を決めた、気高い女の瞳が竜馬には見えた。
「…それがお前の答えだな…椎葉!!」歩はコクっとうなずいた。
「ふっ…そうか…ありがとよ」
竜馬は不敵な笑いをして、上履きを受け取った。
 
シーン…
クラスは静まり返えり、歩も自分の席についた。
「なんかわかんねぇーけどまっ、いっか?」
何事もなかったかのごとく、授業が再開する。
(あたし…まちがってないよね…?)
 
歩は周りを見た。愛海以外の仲間が歩を見てひそひそ話している。愛海本人は見向きもしなかった。
 
………………………
休み時間。
 
歩は焦りながら愛海達の方へ行った。
「まっ…マナミ…」
愛海は歩を見ると一瞬ニコっと笑った。
(もしかしたら許してもら…)
バシーン!
愛海の強烈なビンタが歩の頬に直撃し、歩はすぐそこの机にもたれかかる。
愛海は歩に背を向けてこう言い放った。
「裏切り者」
愛海達はそのまま教室から去っていった。
ただ呆然と赤くなった頬を押さえていたら涙が込み上げてきた。
(これでよかったんだよね…?)
………………………
昼休み。教室では寂しく歩は一人で勉強をしていた。
「………」
それを遠くから見ている愛海。
「もーなんなのアイツ?」
「めっちゃムカつく!超ムカつく」
罵声が飛ぶ中、愛海はニコニコと笑っていた。
「どうせすぐ謝ってくるって」
すると仲間の一人がこう言い出した。
「けどアイツおとなしーカオして、やってることスゲーよ?カツミくんと2人で帰ったりさぁ!」
「ふーん…」
 
! ?
 
愛海の顔が一瞬で変わった。
「え?」
「カツミ君の家にまで行ったんだよ!
マナがずっと学校来てないときに!!」
愛海は信じられない思いだった。
「…うそだぁ」
「うそじゃねーよ!あたしらちゃんと見たんだから!」
「アイツ、絶対カツミ君を盗ろーとしてるって!!」
愛海は手をぎゅっと握りしめた。
「…アユムにそんな…そんなこと出来るワケないじゃん…」
辺りに暗黙な空気が包み込んだ。
………………………
一方、歩は一人、トボトボ帰り道を歩いていた。
すると、
「よっ!元気か?」「?」
見上げるとそこに竜馬が横にいた。
 
歩は顔を俯いたままだった。
「どうしたんだ?アイツらになんかされたのか?」
「…………」
しかし、歩は黙り込んだままだった。愛海に裏切り者扱いされたのだから…。
 
竜馬は歩の頭に手を置いた。
「あん時のお前は良かった。あれが一番正しいやり方さ。あの時のお前はかなりかっこよかったぞ!」
 
「………」
しかし歩はまだ顔を俯いたままだった。
突然
ガシッ!
竜馬は歩の前に立ち、両肩を掴んで歩の顔を見つめた。
「ひっ?」
「椎葉、人の話はちゃんと顔を見て聞いた方がいいぞ。あとなぁ、そんなに落ち込んでても始まんねえだろ?」
 
耐えきれなくなった歩は竜馬の手を振りほどいた。そして拳を握りしめた。
「あんたに…あんたに何がわかんのよ!?
あんたにとっちゃどうでもいいことかも知れないけど、あたしにとっちゃ、とっても辛いことなのよ!
愛海から裏切り者扱いされて、明日からどうすればいいか分からないわよ!」
 
そう言うと歩は竜馬を置いて、走り去っていった。
竜馬は歩が走っていった方向を見て、ため息をついた。
「出るじゃねえか、たくっ…。椎葉は安西に依存しすぎだ。その内、取り返しのつかねえことになるぜ?」
 
………………………
その頃、愛海は帰り道に商店街を歩いていると花屋で克己を発見した。
(あっ、カツミくんだ…。花を買うのかな…?)
克己はこの時、赤バラともう一つの何かの花を束にしていた。
(あの花をどうするのかな…誰かにプレゼント…?
もしかしてマナへのプレゼントかな!?)
愛海は克己についていくことにした。
 
………………………
歩は家に着くと、そのままソファーに転がり込んだ。
(アイツに…何がわかんのよ…ただアイツが絡んできてるだけなのに…)
歩が立ち上がり、周りを見ると、何故かいつもより小綺麗にしてあった。
 
するて親が出てきた。しかし親が化粧をして派手な格好をしていた。
「あら、おかえり♪あんた今日、家にいなさいね」
「……?」
 
ピンポーン!
インターホンがなり、親が鏡を見ながら焦っている。
「来たっっ!ちょっと出て出て!」
歩はワケが分からず、玄関ドアを開いた。そこには…。
 
「こんにちは」
! ! ?
ドアの外にいたのは綺麗な花束を持ったあの男、克己がいた。
「あっ…あっ…」
歩は体を震えながら一歩一歩後退する。
「いらっしゃーい!佐古克己くんだったわよね?」
「はい!」
 
歩はその場でへたり込んだ。
 
な ん で …
 
「あんたの家庭教師よ♪」
! ?
「わたしのお友達が佐古さんのご近所さんでねぇーぇ!
ムリ言ってお願いしたのよ!
なんでも学年トップなんですって!?」
何も事情を知らず、母親は克己にデレデレだった。
そんな克己は母親に花束を見せた。
「これっよかったら…」
「まあきれい…」
 
突然
バサッ!
歩は花束を掴み、克己の胸に押しやった。
「帰ってください!」
「!?」
「帰ってください!」
「アユムっ!?」
しかしそんな歩を見て克己は涼しい顔をしたままだった。
「『ください』なんてよそよそしいなぁ、アユムちゃん?」
「!」
 
克己は依然、ニコニコしたままだった。
「ボクの彼女のお友達なんですよ」
「あらー!なおさらいいじゃない?でも彼女がいるのねぇ?
あなたみたいな子がアユムの彼氏だったら言うことないんだけど!」
アユムをほったらかして話を進める二人を見て、段々苛立ちを隠せなくなる歩。
「勝手なことしないでよ!!」
 
バン!
歩は自分の部屋に入り、ドアの前に座り込んだ。
 
しかし
コンコン…ガチャ!
扉を開けようとドアノブを開く。
「来ないで!」
しかし、少しずつドアが開いていく。
歩は全力で閉めようとするが、そこは男と女の力の差が出てしまった。
 
ガチャ!
ついに扉が開いてしまった。そこにはさっきまでニコニコした顔ではなく、目の色を変えた克己がいた。
「やっとつかまえた♪」
………………………
その頃、愛海はというと…。
「ここは…?」
克己についていくと、あるマンションにたどり着いた。
入り口にいくと、克己が持ってきた花束の破片が落ちていた。
「これは…カツミくんの…?」
愛海は階段を上っていった。花束の葉がいっぱい落ちていて、愛海はそれを頼りに歩いていった。
ちょうど途切れた部屋のドアに止まり、愛海がそのドアを見てみると…。
 
『502号室 椎葉』
 
パリっ…
愛海の頭の中で何かが割れた音がした。それが段々と分解されて、ガラスのように落ちていくようだった。
………………………。
愛海はマンションの入り口で途方にくれた。
「なんで…なんでアユムなの?
マナだって一度も花束なんかもらったことないのに…」
 
その時だった。全てがおかしくなり始めたのは…。
さっきまでの失望から今度は歩への憎悪、怒りがマグマのごとく、溢れかえってきた。
ガン!
愛海は入り口にあった椎葉のポストにいき、力いっぱい殴りつけた。
 
それだけでは収まらなかった。
ゴッ!
愛海はおもっきりポスト目掛けて頭突きし、ポストをへこました。
 
同時に額から多量の血を流していた。
その顔には大粒の涙を流し、物凄い形相をした愛海の姿があった。
 
 
ゼ ッ タ イ ニ ユ ル サ ナ イ … … ! !