ライフ 第12話

Last-modified: 2010-09-12 (日) 00:06:51

愛海は夜の街をさまよっていた。大粒の涙を流しながら…。
「許さないからね…アユム…」

 

その頃、歩は…。
「ボクがいろいろ教えてあげるよ…『勉強以外』のコトもね…」
克己に追い詰められてその場で座り込む歩。

 

「ああっ…、アユムちゃんのカオリがするなぁ♪」

 

段々と近づいてくる克己に対して後ずさる歩。ニヤニヤしながら歩を追い詰める克己。
誰がこんな狂気の光景を信じることか…。

 

「君のママには感謝するよ。ボクをココに招待してくれるなんてね…。夢みたいだ…」

 

克己は持っていた花束を出して、歩に見せた。
「受け取ってよ♪」
しかし
バシュッ!
歩は花束を奪うとそれごと克己に殴りつけた。

 

「言ってやる!お母さんにもあんたの親にも、愛海にも全部言ってやる!」
歩は涙を浮かべながら答えた。

 

しかし克己は平然とした態度だった。

 

「…へーーぇ、キミの恥ずかしい写真はどうなってもいいんだぁ?」

 

「勝手にすればいいじゃない!全部あんたがしたことじゃなん!
ヤバくなるのはあんたじゃないの!?」
ガシっ!
克己は歩の腕を握った。そう…あの傷のある腕を…。

 

「ならこれもバラしてもいーんだね?」
歩は突然静かになった。思い出したくないことも蘇り、涙が込み上げてきた。
「こわいくせに…」
人 に 嫌 わ れ る の が こ わ い く せ に

 

克己は歩をベッドに押し倒した。
「キミの言うことなんか誰も信じないよ!」

 

ドクン!

 

「そんなこと…ない…」
「なんなら先生にでも言ってみるかい?」
克己は歩の耳元でこう呟いた。
「キミの言うこととボクの言うこと…どっちを信じると思う?」

 

歩の力が緩んだ。今の状況じゃ愛海の彼氏の優等生と愛海に裏切り者扱いされたただの女子高生じゃ差が有りすぎる。歩が必死で訴えても信じてくれないのは誰からの目にも分かることだった。

 

「大人しくなっちゃったねぇ…じゃあまずは花言葉の勉強から始めようか?」
克己はばらまかれた花束から一本の花を取り出した。
「チューベローズ。この花の花言葉は…」
克己は目を色を変えてこういった。

 

危 険 な 快 楽 ♪

 

高笑いする克己をみて非常に怯える歩。
歩の母親は隣の居間でうたた寝していた。

 

そんな中、克己はズボンを脱ぎだした。花言葉「危険な快楽」に従うかのように…。
「行くとこまでイッちゃおうカナ?」

 

歩は恐怖でガタガタ体を震えさせた。

 

「お母さん!!」

 

大声で叫んだが母親は寝ていて気づかない。絶体絶命の歩。
克己は歩の目の前まで来ていた。
「なら始めようか?ボクの『愛』のレッスンを…」

 

「…っ!」
歩は諦めかけた。

 

しかし
「ん!?」
克己の視点が突然さっきまでの光景と変わる。

 

克己が見たものとは…。
「なっなんだこれは…?」
真っ黒な空間が広がり、そこに巨大な鬼の姿をした機械の化け物が数体、自分を囲んでいる光景を目にした。しかも睨まれた状況で…。

 

歩もなかなか来ない克己を見て、不思議でならなかった。

 

「くっ来るなぁ!来るなぁ!?」
克己は錯乱を起こし、ベッドから転げ落ちる。

 

「! ?」
歩はそんな克己を見て、驚きを隠せない。

 

するとドアからノック音がする。母親が起きたようだ。
「アユム?」

 

克己は息を切らしてへたり込んでいた。「なっ…なんだ…今のは?いいとこだったのに…」
すると克己は立ち上がり、ドアを開けた。
「アユムちゃんはちょっと体調悪いみたいなんで、今日は失礼しますね」
「あらほんとにー」
克己は今日は引き下がったようだ。二人が話している中、歩は安心と恐怖が入り混じって涙を浮かべていた。

 

克己は帰宅中、さっきのことを思い出していた。
「なんだあの化け物は…もう少しでアユムちゃんと…くそっ!」

 

一方、歩はというと…。
「アユム!なんなのあの態度は!お母さんに恥かかせないでちょうだい!!」

 

バン!
歩はぶっきらぼうにドアを開けた。そして克己が持ってきた花束をゴミ袋に放り込んだ。
「何してんのよ!?」
「お母さんまで騙されないで!」
涙のこもった顔で母親に訴えた。
「あいつは外面だけで中は変態なの!おかしいの!」

 

歩は花束を捨てたゴミ袋を持ってゴミ捨て場に持っていこうとした。
「あんたのほうがよっぽどおかしいわよ」
………………………
夜中、歩は布団の中で起きていた。今日のコトで全く寝つけなかったのである。 (………あたし…みんなに無視されるのかな…?)

 

するとあの光景を思い出した。
「ありがとよ」
竜馬に内履きを渡した時である。あの時の竜馬は顔が怖いものの、ある種の安心感と説得力のある感じを出していた。

 

(こわいけど…がんばらなきゃ…前に進まなきゃ…)
歩の顔に笑顔が戻った。
………………………
プルルルルル、プルルルルル
翌朝、歩は愛海に電話をかけていた。しかし、コール音がなったままだ。
「やっぱり…出てくれないよね…」
するとコール音が止まった。歩は震えながら声を出した。
「………愛海…?おっおはよ…」

 

しかし
「……………」
愛海は反応しない。しかし電話には出ている。

 

「あの…あたし…」「……………」
歩は勇気を振り絞って叫んだ。
「話したいことがあるの!」

 

すると
「マナも話したい…学校でまってるから」
その言葉で歩の顔が変わった。勇気を振り絞った結果だ。
歩は急いで学校へ向かった。
“科学室に来てね”
その言葉を頼りに歩は科学室へ向かった。
「信じてくれなくても、信じてくれるまで話すんだ。」

 

歩は科学室に入った。カーテンが光を遮り、辺りは真っ黒で何も見えない。
「……?」

 

すると
バン!
突然、科学室のドアがしまった。
! ?
歩は驚き、ドアを開けようとした。しかし、全く開こうとしない。
「愛海!愛海なの!?」
すると暗闇の中から「ゆ―びき―りげんまん…」
愛海と思わせる声がしてきた。
「愛海…?」
歩は真っ黒な視界の中を歩いた。

 

「っ!」
足に何かが引っかかり、 つまずく歩。

 

すると
「うーそつーいたーら」
「はーりせーんぼーんのーーます」
ザアアア!!
複数の声と同時に何かが歩の頭に大量に落ちてきた。それをみると無数の小さな裁縫用の針だった。
バッ!
突然、歩に光が当たるとそこにいたのはライトで歩を照らして睨みつけている愛海の仲間3人と…。

 

「千本買ってきたよ」
現れたのは物凄い形相をした愛海が歩を見下していた。

 

飲 ん で 。歩の顔は恐怖に蝕われていた。
「……………えっ………」
歩は状況を把握できていなかった。
「ゆびきりげんまん!協力同盟破ったんだろ?」

 

その言葉に顔を引きつる歩。
「なっなんのこと…?わかんないよ…ちゃんと…話そうよ…?」

 

ガン!
愛海は力いっぱいライトを歩に投げつけた。
「とぼけないで!カツミくん奪おうとしてたクセに!!」

 

え っ ?

 

「…2人がうまくいってないとき狙ったんだよな!友達が悩んで学校来れなかったときに、協力するフリしてよくやるよ!
好きなんでしょ?カツミくんのこと?」
そう…あの後、誤解をうんだ愛海は仲間に連絡をしてこんな罠を張ったのだった。

 

「ちがう!好きじゃないよ!あんなヤツだいっっ嫌いなのに!!」
歩は必死で全てを話した。
「色んな女の子を裸にして…写真撮ったり変なことしたり…私だってアイツにヤられそうになった!!」

 

しかし、
「なに言ってんだよ!!イミわかんねー!」

 

「ウソじゃない!アイツは変態なの!!」

 

すると
「きのう、カツミくんがアユムの家に行くの見たんだけど?」

 

歩は驚いた。愛海が何故知っているのか…、しかし今はそんなことを気にしている場合ではない。
「そっ…それはお母さんが呼んだの!あたしの家庭教師にって勝手にっ…」

 

それを聞き、後ろでクスクス笑う数人。
「お母さんまで使うなんてすっごーい」
「頭いーいじゃあーん!家庭教師なんていらなくなーい?キャハハハハ!」
全員が笑う中、歩は必死で食らいつく。
「本当だよ全部!!!
愛海もアイツにだまされてるんだよ!?」
その言葉を聞いた愛海は静かになった。 「お願い信じて…」
愛海は歩の元に行き、しゃがむと歩の顔を優しく触った。ニコニコした顔で…。
しかし

 

だ ま れ

 

ニコニコした顔も今度はとてつもなく恐ろしい形相と化した。

 

ガシッ!
仲間が歩の体をホールドし、完全に動けなくする。
その前方には大量の針をつかみ、歩に向けて構えてる愛海がいた。絶体絶命の歩。

 

………………………
その頃、竜馬は…。
「お前やるのぅ…はあはあ…」
「てめぇとはもうやりたくねえぞ…ははっ…」
竜馬とあの極道、岩鬼将造がボロボロになって歩いていた。
#br
実は昨日、歩に別れたあと将造に会ってしまい、ケンカになってしまったのである。
ケンカというものじゃない、マシンガンやガトリング砲等の重火器を使い、街の色々な所を吹っ飛ばしたりして、ケンカではなくほぼ殺し合いだった。

 

竜馬も本気を出し、何とか重火器のえじきにならずに済み、重火器装備の将造相手に互角にやり合ったのだった。

 

その殺し合いが明朝まで続き、弾薬と体力を使い果たした二人は何故か意気投合していた。そして今に至る。
「おめえもなかなかやるのぉ?どうだ?極道にならねえか?」
「いや、いい。俺にはやるべきことがあるからな!」

 

「そうか。惜しいのう。お前ほどの奴ならわしの次に最強の極道になれるのになぁ」
二人は機嫌良く、ふらふら歩いていた。
すると竜馬は懐から一つの拳銃を取り出した。
「なんやその銃は?」
「わからん。昔、敷島っていう頭がおかしいじじぃから渡されたモンだが、「機嫌がいい時に使え」って言われたがな。
最近散々な目にあってこの存在すら忘れてたぜ!?」
「使え使え!今がその時じゃろ?」
将造が煽ると竜馬はノリにのってその銃を斜め上に向けた。 「じゃあいってみるか!祝砲じゃあ!!」

 

竜馬は銃のトリガーを思いっきり引いた。
ズ ド オ オ ! !
! ?
竜馬達は驚いた。爆音が街に鳴り響く。撃った時の衝撃が凄まじく、芯まで到達していた。
街の人々は全員竜馬達の方へ向いた。

 

「あららっ…こりゃあ一体…」

 

すると爆音に聞きつけ、警察がやってきた。
「まずい!今の状態じゃ捕まっちまう!」
「こうなったら隠れるぜ!もう捕まったりするのはごめんだからな!!」
竜馬達は朝から騒がしかった。
(しかし…俺が撃った方向は確か高校だったよなぁ…。空砲ならいいけどな…)
………………………
話に戻って歩は…。
「やっ…やめて…お願…」
少しずつ近づいてくる針千本。もう少しで歩の顔に到達する。
その時
バ リ イ イ! ズ ド オ オ オ !

 

! ! !
化学室の窓の方から凄まじい爆音が聞こえた。全員は驚き後ろを見ると。

 

「なっ何っ…?」
窓ガラスが粉々に粉砕され、隣のガラスにもひびが入っている。天井を見ると、野球ボール程の大穴が開いていた。
「なっ…何が…あったの…?」

 

全員が不思議でならなかった。
廊下ではさっきの音を聞いて教師達が集まってきた。
外で待機していた仲間も、急いで扉を開ける。

 

「さっき何があったの?凄い音で先生達が駆けつけてきたよ!」
すると仲間が焦り出した。
「マズい!逃げよう。準備室から回ろ!」
仲間が逃げようとする中、愛海が針を一本だけ取り出すと歩の首を掴んだ。

 

「一本だけでも飲ませてやる!」
「いやっ!いやっ!」
愛海は歩の口に針を強引に押し入れようとした。

 

「マナミ!!」
その言葉に歩を叩きつけ、針を放りなげる。

 

「ゲホっ!ゲホっ!はあ…はあ…」
愛海が去っていく後ろで歩が泣きながら訴えた。
#br
「うっウソじゃないからっ……」
愛海は歩に振り向くとこう言い吐いた。
「信じない」
ガラガラっ!
化学室のドアが開くと教師達が入ってきた。
「どっどうしたんだ?ガラスが割れて…天井に大穴が…」

 

すると
! ! ?
教師達は驚いた。そこにいたのは沢山の針が落ちている中で呆然として座り込み女子生徒がいたからだ。
「おい!大丈夫か!?」
ビクン!
歩は正気を取り戻すと辺りを見渡した。 すると先生達に囲まれているのがよくわかった。

 

「……っ」
歩は一目散に走り去っていった。
「一体何だったんだ?つか誰がやったんだあのガラス?あと天井の大穴といい…さっきの生徒がやるワケないよな…」

 

………………………。
歩が教室に戻った。すると

 

「………」
女子は全員、歩を見ようとしない。それ以前に無視をしているようだった。
歩は机に戻ると、足場に変な紙を見つけた。

 

「……?」
それを見ると…。

 

“次 は 椎 葉”と書かれていた。
ドクン! ドクン!
歩の心臓が極度に鼓動を打ち始めた。

 

(次の標的は…)
あ た し な ん だ ! !