ライフ 第13話

Last-modified: 2010-09-12 (日) 00:12:33

次の日
歩は教室の扉に立っていた。
“次は椎葉”

 

その言葉が脳裏にあった。

 

ガラガラっ!
歩は力いっぱいドアを開けた。しかしみんなは何事もなかったかのように友達と喋っていた。
(よかった…いつもどーりだ…)

 

歩は気がゆるみ、自分のイスに座った。しかしそこからが地獄の始まりだった。
歩が机に手を置いた。
! ?
違和感を感じた歩が手を引こうとした。
ニチャっ…
! !
粘着性が高い液体が歩の手の平につく。そして、立ち上がるとイスも歩の尻にくっていていた。

 

ガタン!
歩はその場に倒れると床に強力接着剤のチューブが落ちていた。

 

キャハハハハ!!ハハハハハ!!
その光景を見ていたクラス全員が笑い出した。
「……っ!」
グッグッ!
恥ずかしくなった歩は必死でスカートを引っ張って取ろうとする。しかし、完全にくっついて取れようとしない。
それを見ていた愛海達も爆笑している。
そして…
ベリっ!
嫌な音を立てて、イスから離れたが、スカートが破れてしまった。

 

「おおーー!」
クラスの男子が全員騒ぎ出した。スカートが破れ、パンツが丸見えとなってしまった。
歩は悲しくなり、机を直そうとした。今度はあることに気付いた。

 

(うそっ…ない…机に入れといた今日の教科書と辞書が全部!!)
歩は教科書を探しに教室のゴミ箱をあさり始めた。しかし

 

バシャ!
ゴミ箱からコーヒーの入った紙コップが落ちてきた。歩の両手がズブズブに濡れ、袖にまでついていた。

 

「あれー?なんかゴミ箱がもう一つ増えてない?キャハハハハ!」

 

女の高笑いが教室中に響き渡った。

 

「もう燃やされちゃってるかもねー?」誰かが言うと歩は急いで学校のゴミ捨て場に向かった。

 

「はあ…はあ…あった…」
ゴミ捨て場の奥に歩の教科書が置いてあった。歩は教科書を手に取った。しかし
! ! ?
教科書は沢山の落書きで埋め尽くされていた。中のページにも落書きされていた。その中に「死ね」「消えろ」とかの酷い言葉なども書かれていた。

 

「………。」
歩がトボトボ教室に帰ろうと階段を上がっていた。

 

すると
「2組の椎葉ってあんた?」
突然、肩を捕まれた歩は振り向くとそこに数人の女子がいた。
女子達に囲まれる歩。何が何だか分からなかった。

 

「あんた佐古のこと盗ろーとしてるんだって?」
! ?
歩は驚いた。何故そんなことを知っているのだろうと…。

 

「ちが…」
「中学の時、佐古のことを好きな子がめっちゃいたの知ってんの!?みんな泣く泣くあきらめたんだ!」
「安西だってすぐに彼女になれたわけじゃないんだよ!?この子だって今でも好きんだからね!」

 

(なっ…なんで…なんでこんなすぐに広まって…)

 

「イキナリ出てきて調子のんじゃねーよ!」
しかし歩も負けじと反論する。
「あたしだってアイツのことなんか好きじゃないっ!全部デタラメよ!!」

 

バン!
一人が壁に手を叩く。
「泣くぐらいなら最初からすんな!わざとらしんだよ!」
「テクニックなんじゃないのぉ?」
「その涙で佐古を落とそうってワケね?」
誰も歩の話を信じようとせず、一方的に歩を悪者扱いする全員。それを痛感する歩。

 

ドン!
女子が歩を押し倒した。
「佐古にもう近づくんじゃねえよ」
女子達はそのまま去っていった。
辺りに教科書をバラまいて座り込む歩。
信 じ て よ … … だ れ か … …。
………………………。
昼休み中、一人で食事を食べている歩。
するとトイレに行きたくなり、弁当を結んで机にスッといれ席を離れる歩。
すると愛海の仲間が歩が残していった水筒に何やら怪しい粉末をいれる。
それをニヤニヤしながら見ている愛海。
「本当の苦しみはこれからよ」

 

………………………5限目、歩は黙々と勉強していた。不安になりつつも。
隣では竜馬は相変わらず寝ている。それを見てため息をつく歩。
(気楽でいいな…流君は…)

 

ゴロッ…ゴロゴロッ! ?
歩は腹部を押さえた。
「なっ…何っ…お腹が…」
歩は突然腹痛に襲われた。しかも、ただの痛みではなかった。

 

(やっヤバいっ!と…トイレっ…)
歩はトイレにいきたくなったのだ。しかし、女子達は歩を見てクスクス笑っている。

 

(ひっ…!)
そう…。歩の水筒の中に入れた物…それは粉末状の下剤だったのである。愛海達はこの時を待っていたのであった。

 

すると
「先生!椎葉さんが何かおかしいでーす」
一人が高らかに声を出す。
「椎葉?どうした?」
先生が声をかけたが歩は恥ずかしくて言えそうにない。

 

しかしそんな歩にさらに追い討ちをかける。
「先生!もしかしたら椎葉さんトイレに行きたいんじゃないんですかぁ?」
「……っ!」
歩が恥ずかしすぎて涙が出そうになる。しかし、腹痛はさらに加速する。

 

歩は体を震えていた。腹痛の痛みとさらに恥ずかしさが混入して何が何だか分からなくなっていた。
「椎葉…行ってこい」
先生がそう言うと歩は急いで教室を出て行った。

 

「キャハハハハ!アイツまじでやばそうだったよ」
「多分休み時間トイレいったらくせーぞ!」

 

もう最低の屈辱だ。「静かに!授業を再開するぞ!」
そんな中、竜馬は顔をうつ伏せながら全員の顔を見ていた。
(ついに椎葉が標的かぁ…?これでわかっただろうよ?俺の言ったことが…)

 

……………………… ジャアア…
数十分後。トイレでやっと腹痛が治まった歩。
その顔からは大粒の涙が流れていて止まらなかった。

 

(いつまで…)
い つ ま で つ つ く ん だ ろ う。
チャイムがなり、しばらくすると…。

 

ドン!ドン!
いきなり個室の扉を叩く音がした。その音は段々強くなる。歩は耳を押さえてそこにうずくまる。

 

ボコっ!
歩の頭に何かが落ちてきた。それは大量のトイレットペーパーだった。

 

「くっせぇ!やっぱくせーよ。アイツ何食ってんだろ?」
「あいつが困らないようにどんどんトイレットペーパーをあげよう♪」
それを聞いて立ち尽くす歩。

 
 

誰もいなくなった後、歩は無我夢中で保健室に入る歩。
それに気づいて駆けつける保健の先生。
どうみても顔色がおかしい歩を先生はベッドに連れて行く。
「私、ちょっと外出するけどゆっくり休みなさいね」
歩の頭の中はみんなに笑われているビジョンしか映らなく、歩は頭を抑えた。

 

ゴン!
しかしそれでも止まらず、ベッドの枠に頭をぶつける。

 

や め て ! ! も う や め て ! !
歩はベッドから飛び出し、机の引き出しからカッターナイフを取り出した。

 

ガリ!
歩はカッターを手首に押し当て、力いっぱい引いた。

 

プツ…プツ…。
手首から血液が流れ出し、それを見ている内に少し落ち着いてきた。

 

パシャ!
突然、写真を撮る音が聞こえた。
「!!?」

 

歩が横をみるとそこには…。
「またいい絵が取れたよ?アユムちゃん」

 

克己だった。携帯を上に投げながら笑っていた。
「君を信じてくれる人は見つかったかい?」
克己は歩のそばに座り込み、傷をつけた手首を見てニヤリと笑った。
「かわいそうに…ボクが慰めてあげようか?」

 

ドカッ!
歩は克己を本気で殴る。
「あれ?今はそーいい気分じゃないカナ?」
「あんたの顔なんて見たくもない!吐き気がする」
すると克己はフッと笑う。

 

「まっいっかァ?いい写真が撮れたからね?そろそろ一気にバラまきしょーかァ」
! ?
その言葉に過剰に反応する歩。克己はそそくさと保健室から出て行った。
歩は激怒し、克己を追いかけた。

 

ついに歩は克己に追いつくなり、すぐに携帯を奪おうと必死になる。
それを窓から見ていたクラスの数人が一年全員に話した。すると野次馬のように見るクラス全員。
「うわーっモメてる!」
「「安西さんと別れてよ!」みたいな!」
愛海達もその光景を見ていた。
「あんのバカ!ぜんっぜんこりてねー!いくよマナミ!!」
「………っ」
愛海は窓から動こうとしなかった。

 

そのころ歩と克己は携帯を取り争っていた。
「放せよ!大事にコレクションなのに!」
歩は必死に奪い合い、ついに携帯を取り上げた。それを窓を開けて、外の池に向かった投げつけた。
「はあ…はあ…」
克己は落胆し、その場にへたり込んだ。
「何やってんだよ?」
後ろをむくと、愛海達が歩を睨みつけていた。

 

「………っ」
歩はその場から逃げ出した。
「まっ待てやコラァ」
一人が歩を追い、手を掴む。

 

ゴツ!
歩は仲間を殴ってしまった。
「!」
「いっいって…」
「ちょっとだいじょーぶ!?」

 

歩はその場からすぐに逃げ出した。

 

愛海は克己にこう聞いた。
「カツミくん、歩にアユムになにされたの?」
「気にしなくていいよ?」

 

すると愛海は克己を見つめた。
「アユムをかばうんだね?」
「えっ?」
「椎葉のことが好きなの?」
突然の言葉に不意をつかれ、焦り出す克己。
「いやっ…そんな…」
そんな克己を見て、涙を浮かべる愛海。
「もういい!」
愛海はそのまま走りさっていった。

 

「カツミくんひどいよ!マナ傷ついてんだからね」
「マナとの約束断ってアイツん家行ったりしてさ!あんなサイテー女のドコがいいの!?」
その言葉に克己はニコっと笑った。
「俺が好きなのは愛海だけだよ?今までもこれからもずっとね」

 

その言葉を聞いて、少し安心する仲間達。
「じゃあやっぱり、あいつがしつこくつきまとってんだね…?」

 

(アユムちゃんも大変だねぇ?)
克己は窓の池の方向に指を指した。
「あれ見てよ」
すると克己の携帯がプカプカ浮いていた。
「あれってカツミくんの!?」

 

「椎葉さんが投げたんだ」
その言葉を聞いた瞬間、歩への怒りを募らせる三人。
「あーあ…愛海がくれたメールも写真も全部消えちゃったよ…大事にしてたんだけどな…」

 

ガン!
壁に本気で殴りつけた。
「全部あいつの計算だよ!あたしを殴ったのも!!オドオドしたフリしやがって…」

 

「絶対許さん!!」歩への怒りを爆発させた。

 

その頃歩は保健室に戻り、傷口に消毒液をつけてテープを巻きつけていた。

 

(なにやってんだろあたし…切ったって何も変わらないのに…)
すると
「どーこ行ったんだよ椎葉はぁ!!」

 

「!」
愛海の仲間が保健室に乗り込んできた。歩は急いでベッドの下に隠れる。

 

ドキン!ドキン!
見つかったら何されるか分からない…非常に緊張と恐怖で心臓が鼓動を打っていた。

 

「いないね…あいつ逃げられると思ってんのかね?」
「ひでえ目にあわせねーと気がすまねー」
「あたしらをコケにしやがって…」

 

言葉を聞くたびに段々と涙が溢れる歩。
そして
死 ぬ ま で 追 い つ め て や ろ ー ぜ
その言葉を放った後、仲間は保健室から去っていった。
歩は保健室の窓から飛び降り、錯乱したかのように学校を飛び出していった。

 

も う い や だ ! !
お わ ら な い ! !
ず っ と ず っ と ず っ と
強 く な ん か な れ な い
も う 死 に た い ! !

 

歩は泣きながら走っていくと目の前に、トラックが歩に向けて飛びこんできた。頭の中が空っぽになっていて避けようとしない歩。

 

死 っ …