「おはようっ!」
次の朝、学校の玄関で羽鳥に声をかける歩。すると羽鳥は黙りこんでこう言った。
「あーゆーのって申し込むものなの?友達になりたいなんて初めて言われた。」
「あっ…。」
歩は顔を赤くし、うつむき出した。
「いやー…あの…よろしくお願いします……。」
羽鳥はしゃがんで歩を見つめた。
「こちらこそっ。」
……………………………
歩と羽鳥は笑顔で教室に入ろうとしたが羽鳥は教室から離れていく。
「…どうしたの?」
「オナカすいたからパン買ってくる……。」
歩はクスッと笑い、教室に入った。
突然、頭を叩かれると周りに愛海たちが集まってくる。
「羽鳥にまとわりついてんじゃねーよ!金魚のフン。」
すると愛海は歩の横に移動すると小声で、
“トイレついてきてよ”グイッと愛海たちに無理矢理引っ張られる。押される、背中にパンチ等で歩を無理矢理連れていこうとする。
「放してーーっ!」
教室に戻り、事態に気づきた羽鳥はすぐさま歩を助けようとした。
すると一人の男子生徒が歩の右手を掴んで、愛海達から放した。男子生徒は愛海達に立ちはだかる。
「いいかげんにしろよ。」
男子生徒の名は薗田優樹(そのだゆうき)。歩のクラスの中でも目立たない存在で、ひ弱な体格でおとなしい性格の持ち主だった。
そんな彼が歩を庇おうと必死だった。
「……はっ?なにが?」
「トイレ行くだけなんだけど?」
薗田の助けも報われず、愛海は無理矢理歩を引っ張り出す。
「女の事情に口はさむなよっ!」
すると、
「きゃっ!」
突然、愛海に飲みかけの紙ジュースが直撃し、飛び散ったジュースが愛海の制服に付着する。
「誰だよ!」
振り向くとグラスの男子達が愛海達を軽蔑するような目で見ていた。
「いつまでやってんの?よく飽きねぇよな。」
「お前ら小学生かよ?」
クラス中が愛海達を笑い者し、それを見て顔を赤くする愛海達。
「…ムカつくっ!」
チカは机を乱暴に蹴ると、愛海と共に教室から出ていった。
「……。」
薗田は顔を赤くして、教室から去っていった。
「あのっ…」
歩は追っていくと、薗田は屋上で一人、黄昏ていた。歩は一歩ずつ薗田に近づく。
「ありがと…」
「ちがうんだ!」
薗田は突然大声を出した。間を置き、震えるような声でこう言った。
「椎葉さんを助けたかったんじゃない、全部、自分のためなんだ。」
薗田は話を続ける。
「オレ…1年ダブってるんだ。中学の時、いじめられて不登校になって…。」
“! ?”
その言葉に歩は強い衝撃を受けた。
「…毎日殴られて…服は脱がされて…そいつらが言うんだ。“おまえはいじめられオーラが出てる”って…どこにいってもいじめられるんだって、笑いながら言うんだ。」
歩は震えていた。まさか自分以外の身近な人もいじめを受けていたなんて…信じられなかった。ショックを受けていた。
「…だれも助けてなんかくれなかった。関わりたくもないって顔してた。
…もう嫌だったんだ。そういうの見るのも、なにもしないでいる自分も!!」
すると歩が涙を浮かべてこう口にした。
「でもうれしかった。…本当にうれしかった。」
そういうと歩は薗田から去っていった。薗田も目から涙を見せていた。
……………………………
歩は教室に戻ろうとすると偶然、羽鳥と対面した。
「あんたどこ行ってたの?」
「とっ…トイレ…。」
すると羽鳥は後ろを向いてのんきにあくびをした。
「…心配かけてごめんね…。」
「別に」
羽鳥は爽やかに笑って歩の方に向いた。
「友達なんでしょ?」
その言葉が歩に“安心”という心の拠り所を見つけた瞬間だった。
涙を込み上げる歩に手を優しく頭に置く羽鳥。
“ひとりじゃない、ひとりじゃないんだ!”
……………………………
夕方、歩と羽鳥は一緒に話ながら帰り道を歩いていると、向こうから自宅謹慎になっていたはずの竜馬が歩いてきた。
「おっ、椎葉と羽鳥じゃねえか?」
「なっ流君!?」
歩はびっくりして、顔を赤くする。
「…なっ流君…自宅謹慎になっていたハズじゃあ…」
「けっ、自宅謹慎なんかできっかよ。お前ら帰りか?」
「うっ…うん。」
すると竜馬の口からこんな言葉が出た。
「あいつらとは大丈夫なのか?」
すると歩は間を置くと、コクッと頷いた。
竜馬はニヤッと笑う。
「ふっ、そうか…。あんま無理すんなよ。じゃあな。」
竜馬は手を降りながら歩達を通り過ぎていった。
歩は竜馬を見つめていると羽鳥がニヤニヤ笑っていた。
「ふふっ、あんた…もしかしてアイツのことが好きなの?」
歩は顔を真っ赤にして首をふった。
「ちっ、違うよ!!」
羽鳥はクスクス笑っている。
「嘘つくとダメだよ。顔に書いてある。」
「はっ羽鳥さんのイジワル…。」
二人はそう楽しい話をしながら帰っていった。
……………………………
その頃、愛海はチカ達を連れてあの男、アキラとその仲間とクラブで酒を飲んでいた。
愛海はタバコをふかして歩と羽鳥について、アキラに話していた。
「こいつらをヤればいいんだな。」
「ふふっ…好きにしちゃっていいわよぉ。」
アキラは愛海に肩かけて酒を飲んでいた。
「アキラ、頼むわよ。」
「愛するお姫様のためならなんでも。」
するとアキラの仲間がポケットからなにやら怪しいものを取り出した。
「なにそれーー!?」
それはなにやら薬のよう錠剤の形をしたものだった。男はそれを酒の中に入れるとかき混ぜた。
「だっ大丈夫なのっ…これっ…?」
「えーコワーイ!!」
男はニヤニヤしながら薬をもっと取り出した。
「大丈夫、ちょこっと気持ちよくなるだけだからね♪」
そう言うも、チカはさすがに飲むのを躊躇していた。
「マナっ大丈夫…?」
チカは愛海をチラッと見た。すると…。
ゴクッゴクッ!
愛海はあの薬入りの酒をイッキ飲みしていた。全部飲みきると愛海はアキラに寄りかかった。
「…どお?」
アキラが声をかけると愛海は頭を下げていた。
「あっ…あうっ…。」
愛海は意識が混濁しているのか、奇声を発しながら頭をふっていた。
それを心配そうに見つめるチカ達。
するといきなり頭を上げて笑顔で笑い出した。
“サイっ コ ー ー ー ! ! ! ”
それを見たチカ達もテンションが最高に。
「ヤベーよマナミ!!キャハハハハハッ!!」
「さすがチャレンジャー★」
そんなテンションでそのパーティーは夜中まで続いた。
……………………………
愛海は酔っぱらいすぎてクラブから飛び出す。それを心配そうにあとを追うアキラ。
愛実は立ち止まると追いついたアキラにもたれ掛かる。
「んーーー♪」
アキラは愛海にこんなことを言い出す。
「なあ、ヤらせてよ。」
バキッ!
本気でアキラに殴る愛海。
「…なんだよ?そんなにダーリンが大事かよーッ!別れちゃえって…うまくいってねんだろ?」
愛海は振り向いて指を指した。
「カツミくんは将来有望なのッ。キープしとかないともったいないじゃん、バーーーカ。」
アキラは愛海の抱きつくと服の中に手を入れる。
「好きじゃねぇならいーじゃん?オレのが気持ちーことしてやれるよ。」アキラはそう耳もとでささやいた。
「…ずいぶん自信あんだね…。」
「あるよ。」
そういうと愛海は町の中であるにも関わらず服を脱ぎ出した。
「いーーよ。」
……………………………
「オマエ…濡れすぎ…。」
「ーだって…久しぶりなんだもん…」
愛海達は誰もいない地下の駐車場で本能のままに[コト]を実行していた。
「ははっ彼氏とケンカ中だもんな。」
「…したことがない…。」
それを聞いてアキラは大声をあげる。
「はあっ!?一度も?」「うん」
「バカじゃねえのそいつ。」
アキラは愛海を激しく突き上げる。
「ーーーっ!」
「なあ…別れて俺と付き合おーぜ?」
「……なら…あたしのお願い聞いて?」
「ーーなんだよ。いいぜ?」
“それは……。”
……………………………
その頃、歩は夜遅くまで家でテレビを見ていた。するとニュースの時間になり、こんな話題が流れた。
“次のニュースです。長野県、浅間山山麓にエネルギー分野の開発研究所を建設するとの発表がありました。完成には約5年の時間と数千億の費用がかかるとのことで、その研究所の所長をエネルギー分野の権威、早乙女賢氏を就任させる模様です。”
歩はどこにでもあるニュースにある不思議な直感が働いた。
「なんだろ?なんか胸騒ぎがする…。」
歩はテレビを消し、自分の部屋に入っていった。