ライフ 第19話

Last-modified: 2010-10-31 (日) 21:01:37

今は1学期の期末テストの真っ最中。クラスはテスト勉強で必死だった。歩や羽鳥もまたしかり、朝からテキストを必死に読んでいた。

 

「椎葉さん。」
歩は顔を上げると薗田が立っていた。

 

「これ…頼んでもいいかな?オレら、今日日直みたいで…。」
薗田は持っていた学級日誌を歩に渡す。

 

「あっ、うん…。」
「あとはオレがやるから。」
去っていく薗田を見つめる歩。

 

「…へーー。仲いーーんだーぁ。」
羽鳥は赤くなってる歩を見てクスッと笑う。

 

「そっ…そんなんじゃ…。」
すると羽鳥は日誌を開いて中を覗いた。

 

「…あのコ、薗田優樹っていうんだね。ここだけの話だけどあたし、まだ全員の名前覚えてないんだ…。」
それを聞いて歩は笑った。
すると
「あっ……。」
なんと竜馬が一週間ぶりに教室に入ってきた。もう謹慎は解けたらしく、クラスメートは竜馬をちらっと見てはまた勉強に入る。
「よっ、テスト勉強か?」
竜馬が歩に声をかける。「うん。」
歩は顔を赤くしながら頷く。

 

「まあ俺はテスト勉強なんざ、やる気もでねえよ。眠いしテスト始まるまで寝とろうかなぁ…。」竜馬は席につくと顔を伏せてまた眠り始めた。
羽鳥は寝ている竜馬を見てクスッと笑う。

 

「流って本当に面白いよね。期末テスト期間に入ったっての寝るのを優先するなんて…ココの高校生にいないタイプだね。」
「う…うん。けど…かなりケンカは強いよ。前、ヤクザとケンカしてたトコを偶然見たんだけど、逆にヤクザがコテンパンにされてた。」
「へぇーっ。あんたも罪深き女だねぇ。大人しそうな薗田や不良っぽい流の二人に囲まれて…。」
「だっだからちがうって!!」
「うっそーよーん♪冗談冗談♪」
「もう……。」
二人はテスト勉強中にも関わらず、ゲラゲラと笑っていた。それを廊下から気に食わぬ顔で見ているエミ達。

 

「…だいたいさ、なんでマナミが悪者みたいになってるワケ?」
「大事な彼氏寝取られてボロボロなのにさ、なーにがイジメだよ!!」
「理由もねーのにこんなことしねーっつの。」
「腐った性格叩き直してやってるだけっつの!!」
エミ達は廊下でテキストを見合ってる克己と愛海を見つめた。

 

「…カツミくんがいてよかったね。今のマナミに唯一の救いだよね。」
……………………………
夜、克己は塾が終わり、家に帰ろうとテキストを読みながら歩いていた。
突然、

 

“ドン!!”
克己の背中に激痛が走り、前に倒れ込んだ。

 

「ぐっ…っつ…」
克己が後ろを向くと、数人の男がニヤニヤしながら克己を見つめていた。
「………!!」
克己はどうしていいか分からず

 

バキッ!!ドゴっ!
男達は克己に殴る、蹴るの暴行をくわえる。
克己はただ必死で耐える。
「財布出せや!」
男が今度は恐喝を仕掛ける。胸からナイフを取り出すと克己の顔にちらつかせる。

 

「うっうわあああああっ!!」
恐怖で限界にきた克己はその場から一目散に逃げたした。

 

「いっ…いやだ…死にたくないよぉっ」
逃げるも虚しく、男達に捕まり、顔面から叩きつけられた。

 

「金を出せっていってんだよっ!!」
完全にグロッキーになっている克己はついに手をズボンの裏ポケットに偲ばせる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ハイッ、ハイあげるッ…」

 

なんとも情けない…克己は涙を流しながら男達に財布を差し出した。
「なんだぁコイツ、キモチわりぃ…。」

 

すると、
「あーーーっ!」
男の一人が大声を上げた。
「コイツ、ションベン漏らしているぜ!!」
克己は恐怖から失禁して、ズボンがずぶ濡れになっていた。

 

「ギャアハハハハ!!チビリをガリ勉くんかよ!!」
「写真とるべ写真!!」
男達は克己を囲むと携帯の前でピースをした。写真をとると男達はゲラゲラ笑いながら克己から去っていった。

 

数分後、偶然戸田が通りかかると、そこに克己が倒れているのを発見した。
「さっ佐古くんじゃないの!!」

 

克己に触ると血まみれでぐったりしていた。
戸田は急いで大声で叫んだ。
「誰か救急車を!救急車をお願い!!」

 

……………………………
次の日の朝、朝礼で戸田が昨日の出来事を話した。
ざわざわとクラスはざわめき出した。

 

「マジかよ知ってた?」
「知らねえ、誰だよ!?」
するとクラスの一人が急いで教室に入ってきた。
「4組の佐古だって!!」
その言葉に反応する歩。一方、それを聞いて騒ぎ出す女子達。

 

「安西さんどーしてんだろぉ。」
「かわいそー、昨日はずっと病院にいたって…。」
クラス中が騒ぎになっていると愛海がエミ達に連れられて教室に戻ってきた。
「マナちゃん……。」
克己のことで泣いてる愛海に声をかける女子達。
「大丈夫?寝てないんでしょ!?」
「保健室でもテストを受けれるよ。」
愛海は心配させまいと涙を浮かべつつ、ニコっと笑った。
「…ヘーキ。」

 

……………………………
テストの初日が終わり、クラスが帰り支度をしていた。
「えらいよなマナミ、ほんとは学校なんか来ねーで佐古んトコにいたいんだろ。」

 

「いつも一緒なのにね…。」
「そもそもあんなことがなけりゃ平和な二人だったんだ。」

 

そう言いつつ女子達は歩を方を見る。しかし、歩は淡々と帰り支度をしている。

 

「…………よく平然としてられるよね。アイツだって佐古くん好きなんでしょ!?全然心配してなさそーだけど。」
「さっすが友達の彼、奪う人はちがうよねーー。」
その言葉にクラスの男子達もざわめき出す。

 

「うぇぇ!?そんなことがあったんだ!?」
「椎葉さんがいじめられてんじゃなかったの?」
「ちげーよバァカ!!」
聞いていたエミが大声を上げる。
「マナは悪くねんだよ。なんも知らねークセに勝手なこと言うな!!」

 

すると入り口付近にいた愛海が突然、涙を流し始める。
「なんで…なんでマナばっかこんな目にあうんだろう…。」

 

すると女子達はすぐに愛海に寄りかかっていく。他のクラスメートは全員、歩に嫌な視線を送る。「………。」
歩はカバンのヒモをぐっと握りしめる。

 

すると

 

《ドン!!》
教室から出ていこうとした竜馬が愛海に当たる。
「邪魔。」
「…………。」
愛海達はあの一件から竜馬を見ては恐怖を覚えるようになってしまった。竜馬は震える愛海達を見て、シワをよらせる。
「…さっきからピーチクパーチク騒ぎやがって…。少しは静かにできねぇのか?」
そう言うと竜馬はぶっきらぼうに去っていった。
「…ちっ、流の野郎、関係ないからって調子乗りやがって…。」
チカが竜馬を見て、舌打ちをする。

 

すると男子達は突然、こんなことを言い出す。
「流ってなんかスゴくね?」
「威厳があるっていうか、大人ってゆうか。さっきまで騒いでいた俺らが馬鹿みてぇ。」

 

竜馬を賛美する声が上がり、愛海達は顔を歪ませる。
「マナミのほうが酷い目にあってるのにーー!!」
「バカな男子には付き合ってらんねえよ。」
そういうと愛海達はそそくさと去っていった。
一方、歩はさっきの状況を見てポカーンとしていた。

 

(流君…もしかして…あたしをかばってくれた…?)
そう思うと歩は顔が赤くなった。恥ずかしい感情ではなくどことなく嬉しい感情だった。
……………………………
次の日、テスト最終日。二限目を迎えようとしていたクラスに突然、ざわめき出した。
「カツミくん…!?」

 

校庭を見ると、自宅休養していたハズの克己が遅れて登校してきていた。
愛海はすぐに克己の元へ駆けつける。
「カツミくん!!」

 

愛海は克己に飛びかかった。
「もう会えなくなるかと思ったよ……。」
涙を流す愛海に克己は頭を撫でる。

 

「心配かけてごめんな。けど今から職員室に行かなきゃならないんだ。」そう言うと克己は職員室の方へ去っていった。

 

……………………………
「テスト受けるって…オマエ、ホントに大丈夫なのか?」
「無理することないのよ。」
自宅休養のはずの克己がテストを受けるために登校してきたということに職員室の教師たちは驚いていた。

 

「2時間で3教科受ける覚悟で来ました。どうしても受けたいんです。」深々と頭を下げる克己。
「そー言われてもなあ…2時間で3教科は厳しいと思うぞ。今回は諦めろ、佐古。」

 

しかし、克己はもっと頭を下げる。

 

「お願いします!!」
どうしても受けたいという克己を見て、戸田が涙を浮かべて克己側に回った。
「わたしが責任もって監督します!
戸田の懸命な願いによって克己はテストを受ける許可をもらうことができた。
……………………………
そして結果発表当日…。
結果が書かれていてる看板を前に顔色を悪くしている克己の姿があった。
“第3位 佐古克己”

 

「オイオイオイオイすげーじゃん!!時間、全然足りなかったのに3位かよーー!!」

 

「さすがだねー!」
「でもやっぱトップは無理かぁ…。けどあんな状況で大したもんだよ。」
全員が克己を誉め称えるが克己は愕然としている。
「…カツミくん…しょーがないよ。あんなことがあったんだから。」

 

横にいた愛海が克己を慰める。
「…また次があるじゃん…マナはね、成績が一番のカツミくんが好きなわけじゃないんだよ。」

 

「…………。」
ちなみに。

 

“第2位 流 竜馬”
“第1位 羽鳥 未来”

 

それを見ていた歩はすぐに教室に戻ると羽鳥の所に駆けつけた。

 

「おめでとう!!羽鳥さん!!」
その言葉に羽鳥はニコッと笑う。
「ありがと。」

 

その言葉に歩は笑顔になった。
すると
「さすがだな。羽鳥」
竜馬が羽鳥を見てそういった。

 

「けどあんた、テスト勉強しないで居眠りしてたのに2位ってすごいじゃん。カンニングとかしてないよね?」
「ふん。授業中、寝てると見せかけてちゃんと話を聞いてんだよ。椎葉、オマエはどうだった?」
「あたしは……。真ん中くらいかな…。」
すると竜馬は少し笑った。
「いいじゃねえか。平均保ってりゃあ。」
すると歩は顔を膨らます。
「もう…ヒトのことだと思って…。」

 

三人は仲良さそうに話に夢中になっていた。

 

「あっそうだ。羽鳥さんてケータイ持ってるの?」
羽鳥は肘をついてこう言った
「もってなーいっ。」
「…………そっかぁ。」
歩はきょとんとなり、静かになった。
(夏休みになったらどうやって連絡とろうかな……。」

 

すると羽鳥はノートに絵を描き出した。それを破ると歩に渡した。
内容は羽鳥のバイトの日程とバイトの場所が分かりやすく描かれたものだった。
「いつでも来なよ。」

 

歩は笑って羽鳥に感謝した。

 

「……ありがとう。」

 

羽鳥は歩のあの傷のある腕を優しく触った。

 

「…最近切ってない?」
優しくも心配そうな羽鳥を前に歩はコクッとうなずく。

 

「うん…大丈夫…。ひとりじゃないってことが分かったから…。」

 

そういうも歩の心の中は落ち着かなかった。

 

(あれからイジメもなくなったけど…。)

 

すると歩は愛海の方へ向いた。

 

(何か…たくらんでるような気がする…。)

 

そういうと歩は腕をぎゅっと握りしめた。