ライフ 第21話

Last-modified: 2010-11-05 (金) 20:55:36

歩の家では、23時を過ぎても帰ってこない歩を見かねて母が歩のカバンをあさりだし、成績表を見つける。

 

それを見ると意気消沈して居間のイスに座ると肘をついてため息をついた。
「逃げたんだわあの子。」
ちょうど勉強中だった妹の茜は母の方を向いた。「なにがすぐ帰るよ…。」

 

茜は心配そうな顔を見て、声をかける。
「…お母さん、顔色悪いよ。もう寝たほうがいいんじゃない?」
母親は気遣う妹に対し、笑顔で頭を撫でた。

 

「遅くまでがんばってるのにじゃましちゃって…。」
“茜だけは頼りにしてるからね…。”

 

……………………………
次の日、学校にて。
職員室では羽鳥と竜馬のことについて持ちきりだった。

 

「しかし、羽鳥には驚かされましたねぇ。」
「トップですよトップ!!才色兼備とはよく言ったもんだ。」
「あと、流も前よりは落ちたがそれでも羽鳥と数点の差ですからね。あんな凶悪顔で…人は見た目ではないですなぁ。」
克己が職員室に入ってくると教師達からこんなことを耳にした。
「案外、本物は佐古よりあの二人かもしれませんな。」
それを聞いた克己は不機嫌そうに職員室から出ていこうとした。

 

「佐古くん!!」
振り向くと心配そうな顔をした戸田が立っていた。
「くやしいのよ。あたしだって。」
意外なことを聞いて顔色を帰る克己。
「先生……。」

 

……………………………
「欠席は椎葉だけだなー?」
今日は歩だけが欠席していた。

 

それを聞いて何かピンとこない羽鳥。すると男子生徒からこんな声が。

 

「椎葉さん結局こなかったな。」
「なあに安心してんだよ。」
「椎葉と安西いたらなにがあっかわかんねーもんなぁ。もーゴダゴダは勘弁してほしーよ。」
それを聞いて、腑に落ちない顔をしてる羽鳥をニコッと見つめている愛海。

 

ーー放課後、羽鳥は学校の公衆電話から歩の携帯、家に電話をかけるが全く通じなかった。

 

「薗田。」
羽鳥は帰ろうとしていた薗田を引き止めた。

 

「椎葉の家、誰もいない。ケータイもつながらない。」
「えっ…それどういうこと?」
羽鳥は薗田にノートの紙切れを渡した。

 

「これ…あのコの番号。わたしケータイ持ってないから何回かかけてみてくれない?」
「うっうん。」
「あと薗田の番号も教えてよ。」
薗田はカバンからノートを出し、携帯番号を書いて、羽鳥に渡した。

 

「もし流に会ったら椎葉を探すよう言ってあげてよ。アイツ、あのコと一番仲良さそうだからきっと協力してくれる。」
薗田はコクっと頷いた。
「よろしくね。」
そう言うと、羽鳥は去っていった。
……………………………
その頃、歩はただ一人、廃墟のような部屋でぐったりしていた。今は夏の真っ盛りでコンクリートに覆われた密室の温度はかなり高く、歩の元気を容赦なく奪う。

 

“あっ…暑い…ここはどこ…今…何時だろ…”
歩は起き上がり、そこにあった水の溜まったバケツに顔ごと突っ込む。

 

“もう一人たんねーしな…。”
その言葉が歩の頭によぎった。

 

“もう一人って…まさか…。”
頭に浮かんだのはそう…羽鳥だった。

 

“羽鳥さんが…羽鳥さんが危ない!!”

 

歩の顔が険しくなり、ガタガタ震えて止まらなかった。
……………………………
一方、羽鳥は歩を探して街の至る所を自転車で探し回っていた。

 

“一体あのコ、どこにいるの?嫌なコトに巻き込まれてなければいいけど。”

 

人通りの少ない所にさしかかった時、一人の男が手を振っていた。その男はかなり若く、困った顔をしていた。
羽鳥は男の前に止まる。
「急ぎ中悪いけど、〇〇〇ってどこにあるか教えてよ。」
「えっと…ここから真っ直ぐ言って、右に曲がった所に…。」

 

次の瞬間。

 

《ドゴスッ!》
「ぐっ……。」
男は羽鳥の腹部に打撃を与えた。羽鳥はそのまま気を失い倒れ込む。

 

「もう一人捕まえたぜ」すると蔭に隠れていた男達がわらわらと羽鳥の所に集まり始めた。

 

一方、薗田も近くの場所で歩を探している最中だった。

 

“椎葉さん…どこ言ったんだろ?電話つながらないし…”
そう言いながら歩いていると。
「……!?」
あの場所に何やら男達が集まっている。不思議になり少しずつ言ってみると…。

 

“はっ羽鳥さん!?”

 

男に担がれている羽鳥を偶然目撃した。羽鳥は気を失っているようで抵抗もなくぐったりしていた。
薗田はすぐそこの角に隠れて、行動を観察することにした…。
すると男達からこんな言葉を耳にした。

 

「場所はどこだったけ?」
「H市の廃病院の6階の奥の部屋だとよ。そこに昨日アキラが捕まえた西館高校の女もいるだってよ。」
それを聞いた薗田は唖然とした。

 

“アキラ…やっぱりあいつか!?昨日捕まえた西館高校の女ってまさか…椎葉さん!?”

 

「よっしゃ行くか!?楽しい楽しいゲームの始まりだ。」

 

男達は羽鳥を車にのせるとそこから去っていった。

 

“羽鳥さん…ということは…二人ともその廃病院に連れていかれたってことか…ていうことは二人が危ない!!”

 

薗田は乗ってきた自転車を全力でこぎ出した。
H市は表通りから近いと考え、すぐに向かった。
「はぁ…はぁ…急がないと!」
表通りに差し掛かったところ、

 

「お前、薗田じゃねえか?やけに急いでどうしたんだ。」

 

すぐそこに竜馬が通りかかり、薗田は自転車のブレーキを握った。

 

「なっ流、椎葉さんと羽鳥さんが危ない!!」
「……どういうことだ?」
薗田は竜馬にさっきあったことを伝えた。

 

「……そうか。場所はH市の廃病院だな!!わかった。」
竜馬はH市とは逆反対の所へ去ろうとするが。

 

「流、どこいくんだ!?H市は逆だよ!!」
すると竜馬は薗田の所を向いてニッと笑った。

 

「いいんだよこれで!!お前は早くそこに向かえ!!」
そういうと竜馬はものすごいスピードで薗田から去っていった。薗田は呆れた顔をしていた。

 

「流、一体なに考えてんだ…?つかこうしちゃいられない!!早く向かわないと!!」

 

薗田はすぐに自転車をまたこぎ出して、表通りに入っていった。
……………………………
その頃、歩は何とかドア付近まで這いずり、ドアに体当たりしていた。
幸い足は自由だったため、何とか移動することができた。

 

“羽鳥さん!!”

 

渾身の力でドアに体当たりをかます歩。しかしいっこうに開こうとしなかった。
それでも歩は必死でドアに体当たりを続けた。

 

《バァン!》

 

今までの努力が実り、閉ざされたドアがついに開いた。しかし…。

 

“!?”

 

そこにはあの男たちの姿があった。一番前の男の肩に女性らしき人が担がれている。
気絶しているらしく、歩の隣に下ろされる。

 

「………はっ…羽鳥さん……」

 

歩はすぐにわかった。その女性が羽鳥だったってことが。
男が手錠を使い、歩の隣に羽鳥を拘束した。

 

「おとなしくしとけや。」
そう言い残すと男たちはまた部屋から去っていった。

 

「う…ううん…」
「はっ羽鳥さん!!」
気を失っていた羽鳥は少しずつ目が覚めている。
「しっ…椎葉…?こっ…ここは…。」
「………。」
羽鳥の問いに歩は無言で首を横に振る。

 

「ケータイは…?」
「こわされた…。」

 

二人は黙り込んだ。これから何をされるのだろう…それしか考えられなかった。

 

すると、

 

《ブオン!ブオン!》

 

騒音と言うべきほどの車とバイクをふかす音が歩逹の所まで鳴り響いている。
二人はその音を聞いて絶望感がどん底にまで突き落とされた。

 

「…きのう羽鳥さんの働いてるお店に行ったの…。」

 

ぼそっと言った歩の言葉に反応する羽鳥。

 

「ただちょっと…会いたくて…それだけだったのに…店の前で…。」
歩は顔を伏せて、今にも泣きそうな声でさらに話を続ける。

 

「……あたし、気づかなくて…羽鳥さんまで狙ってるなんて…もっと早く気づいてれば羽鳥さんだけでも助かったかもしれないのに…。」
羽鳥はその言葉に体を震えていた。

 

「あんた…バカじゃないの…?こんなとこに閉じ込められて…ずっと一人で…それなのに他人のことを考えてるなんて…。」

 

「羽鳥さんだからだよ!」
歩は涙を流しながらそう答えた。
「…椎葉。もっと自分を大切にしなよ…お人好しすぎる。」
歩の目に大粒の涙が溢れて顔を伝って流れていく。
すると、部屋の片隅で何か光るモノが飛んでいるのが分かった。

 

「…ホタル…?」
二人はその光るモノを見ているとそれがホタルであることが分かった。

 

「どこから入って来たんだろ…?初めて見た。」羽鳥はホタルを眺めながらこう口にした。
「…小さいころ夏休みにね。お父さんの実家で見たことがあるよ。ホタルの群れ。」

 

少し黙り込んだ後、あと歩はこう言った。

 

「あたし、またホタルを見れるかな…?」

 

その言葉に羽鳥は少し笑った。
「あんた、何今から死ぬようなこと言ってんのよ。あの約束はどーするんよ?」
歩は思い出していた。夏休み、一緒に旅行すると決めたことを…。

 

「楽しいかな…夏休み…」。
涙を流しながら問いかける歩に対して、羽鳥は笑顔でこう答えた。

 

「あたりまえじゃん!!」

 

《カツーン…カツーン》
向こうから複数の足音がこちらに向かって来ている。あの男逹がついに戻ってきたのだった。たくさんの飢えた奴らを引き連れて…。

 

「羽鳥さん…夏休み…いっぱい遊ぼうね…。」
二人は心を一つにして互いに手をぎゅっと握りあった。

 

「うん。」
そして二人はドア窓を見つめると大人数の男逹がニヤニヤと歩逹を見ていた。
……………………………
その頃、竜馬は町はずれの山中に来ていた。もう夜なので真っ暗だったが、懐中電灯ひとつで一人で山を歩いていた。
必死で歩いていると竜馬は立ち止まる。そこには家が二軒入るほどの大穴があった。

 

「久々にお前を動かすぞ。」
竜馬は大穴を滑るように降りていく。途中で竜馬は飛び移り、謎の金属板に捕まった。
竜馬はすぐそこにあった端末をカタカタ動かすと金属が“ガシュー!”と大きな音を立てて、縦に開いていく。

 

竜馬は中に入っていくと座席があり、座ると上のボタンを押した。

 

《ガシュー!パチ、ウィーン!!》

 

電源が入り、ライトアップ。さらに周りに色々なレバーが触手の如く出現する。
「システムチェック…よし、ゲッター線数値…よし…よっしゃあ!!」

 

竜馬はコックピットとかした空間でかなりウキウキしていた。両レバーを握ると力強くレバーを引いた。

 

《ゲッタァァァァウィィンングゥ!!》

 

次の瞬間!

 

《ドンっ!!》

 

大穴から巨大なモノが超高速で空へ上昇する。その余波で大穴の周りにあった樹木逹が一瞬で吹き飛んだ。

 

巨大なモノが高度500メートル辺りで止まる。
それはずんぐりとした腕と脚部、漆黒に染まった禍々しく風になびく巨大なマント、そして悪魔のような、鬼とも言える顔を持った巨大なロボットの姿があった。

 

そのロボットの中から空に鳴り響くボイスは正しく流竜馬のモノをだった!!

 

《 ゲ ッ タ ー ロ ボ ! ! 発 進 ! !》

 

《ドギャアアっ!!》

 

マッハを越えるスピードでゲッターロボというロボットは月明かりに照らされた夜空を駆けていく。竜馬は超高速の中、レバーを握りながらニヤニヤと笑っていた。

 

「椎葉、羽鳥、待ってろよ。特に椎葉、お前に前の借りを返すからな。」
ゲッターロボの向かう先は歩逹が拉致されているH市の廃病院。竜馬は歩らを救うことができるのか!?