歩達の目の前に現れた『ゲッターロボ』。三人は何がなんだか分からず、しかしこれだけは分かった。
自分達の目の前には非現実的な産物があることを。絶対ないと思っていた架空のモノが現実に目の前に存在していることを…。
「あっ…あっ…。」
「ろっ…ロボット…うそでしょ…?」
「………。」
《ガシューン!ウィーン!》
ゲッターの巨大な手が歩を病院の破片と共にすくい上げた。
「わわっ!なんだ!?」
「あたしらをどうする気なの…」
「まさか…食べるつもりじゃあ!」
三人は固まって巨大な掌で膝をついていた。少しでも掌の水平を保てなければ三人とも何十メートルの地の底にまっ逆さまに落ちるだろう。
ゲッターの口部分に到達すると掌は止まる。
《ガシューン!》
ガスが抜けると共にマスクが開いた。そこには…。
「ようこそ…我が愛機、ゲッターロボへ…てか?」
《! ! ?》
三人とも驚愕した。マスクの中には張り巡らした機械のレバーの中央に座りレバーを握って笑みを不敵の笑みを浮かべている竜馬の姿があった。
「なっ流君!?」
「流!?これは一体…!?」
「いまはそんなこと言ってる暇なんてねえ!
早くこの中に入りやがれ!」
三人はびっくりして、急いでコックピットの中に入る。
「狭いが我慢しろ。」
《ガシューン!》
マスクが閉まると周りのモニターが一斉に起動する。
「「「……。」」」
三人ともあまりにも新鮮な出来事に気分を悪くする。
「よし。下にもう野次馬が集まってきてやがる。知られるとマズイ。行くぞ。」
下を見ると火災を聞きつけ、おびただしいほどの人だかりが集まっていた。消防車やパトカーなどを含めるとかなりの数だ。
「お前ら、死にたくなかったらシートにしがみついて力を入れろ。」
《えっ?》
次の瞬間!
《ドギャアアア!!》
《むぎぃぃぃぃ!!?》
ゲッターは一気に上空へ飛び上がった。その余波が地上にも影響が…。
《うわあああっ!》
突然の突風に人々は吹き飛ばされた。パトカーは横倒れになったりと被害は増大した。
一方、歩達も…。
《○★&@♭℃§★!!》
ゲッターのとてつもないスピードにかなりのGがかかり、三人の顔が酷く歪んでいた。
「もう少しだけ我慢しやがれ!!」
超高速で上空をかけていくゲッターロボ。しかし、明らかに向かうところはあった場所ではない。竜馬は一体、どこに行くつもりなのか…………。
……………………………。
数分後、ゲッターはとある山中に着陸した。
《ガシューン!》
マスクが開くと、竜馬はマスク部分に乗り出した。
「お前ら着いたぞ。ん?」
竜馬は振り替えると羽鳥と薗田は目を回して気絶していた。無理もない。あんな殺人的なスピードの中、訓練を全くしていない人間が耐えられるハズがなかった。しかし、
「はあっ…はあっ!!」なんと歩ただ一人が身体はガクガク震えていたものの、正気を保っていたのだった。
「ほう…お前、ゲッターパイロットの資格あるかもな?」
「げっ…ゲッター…?。」
すると竜馬は歩に手を差しのべた。
「この二人は起きなさそうだからお前だけに見せたいものがある。ついてこい。」
「………?」
歩はわけが分からぬまま竜馬の手をとる歩。
すると、
「きゃっ!!」
竜馬は歩をお姫様のように抱き抱えた。そして、
《とっ!》
なんと竜馬はマスク部分から飛び降りた。ゲッターはしゃがんでいるので立っている時よりは低いハズだがそれでも十数メートルはあるハズだ。
「ひゃあああっ!」
歩はびっくりして声を上げてしまった。歩は竜馬のコートをぎゅっと抱きしめた。
《すとッ!》
竜馬はどこまで超人的なのか、何事もなかったかのように着地すると歩を地面に下ろした。
「歩けるか?行くぞ。」竜馬は森の中を歩いていこうとする。
「ちょっ…流君!待ってよぉ!?」
歩は急いで竜馬についていく。夏とはいえ、夜の山中は肌寒い。ましてや歩の服装ではもろに肌を露出しているため、さっきの灼熱の火災から一転して非常な寒く感じた。
「流君、ここはどこ?あのロボットはなに!?」
「黙ってついてくれば分かる。」
二人はどんどん山道を歩いていく。歩は寒いのか少し震えていた。
「寒いか?」
すると竜馬は自分のコートを脱いで、歩に羽織った。
「あっ…。流君は大丈夫?」
「ああっ。悪かったな。こんなとこに連れてきて。」
「……。」
歩いていくとある所に辿り着いた。それは。
「…早乙女研究所…建設予定地…。」
巨大施設が入りそうな広大な平地に一つの看板が立っていた。
「こっここは…。」
竜馬が看板の前に立つと、空を見上げた。
「お前、ニュースでここに研究所が立つって知ってたか?」
竜馬の問いに、歩はコクッと頷いた。
「…ここに来ると嫌気がさすぜ。あの嫌な思い出がじわじわとな。」
竜馬の不可思議な言葉についに歩も黙っているわけにはいかなかった。
「流君、ちゃんと説明してよ!あなた、一体何者なの?
ゲッターゲッターって一体なんなの!?」
歩の問いに、竜馬は振り向いて歩を見つめた。
「いいぜ。もう見られた以上、隠す必要ないからな。」
竜馬は敷地の中に入ると地面の土を握りしめた。
「お前、ここに建てられる研究所の所長は誰か知ってるか?」
「えっと…確か、『早乙女賢』て人でしょ?」
「ああ、そうだ。」
「その人とあのロボットと何の関係が…?」
「関係もなにも、あのロボットはそいつが造ったんだからな。」
《! ?》
歩は驚いた。
「けっけど、あの人は確かエネルギー分野の権威って言ってたよ!あんなマンガとかアニメに出てきそうなロボット、なんで存在するの!?」
「………。」
竜馬は歩にこう語り出した。
……………………………
今から5年後にここに早乙女研究所が建設され、早乙女賢氏のもと、来るべき資源の枯渇化に備え、地球の新たなるエネルギーを産出しようと研究が進められた。
しかし思うようにはいかず、 研究は難航をきわめた。。
…それから十数年後。ある日のこと、早乙女博士は宇宙から降り注ぐ謎の光体を発見した。
それは微量で膨大なエネルギーへと変換し、人類には無公害だったため、早乙女博士はその光体の研究を急がせた。
そして博士はそのエネルギーをこう名づけた。『ゲッター線』と。
そのエネルギーの活用性は素晴らしく科学は発展が進み、いつしか宇宙開発まで発展した。
しかしその時にそのゲッター線を食い物にし、地球を棲みかにする生物が現れた。
不定型宇宙バクテリア種『インベーダー』である。
当初、インベーダーは月面に現れ、瞬く間に月を占拠した。
インベーダーは物理的衝撃では一切通用しなく、さらに有機物はおろか、無機物すら寄生して自分のモノにしてしまう化け物だった。
このままでは地球に進出し、地球をも奪われてしまうと世界各国は結集して『世界機密連合』を発足。
各国の科学の忰を結集して作られた超兵器『スーパーロボット』を開発し、対インベーダー用戦力として月面で約10年間、歴史に残る激戦を繰り広げられた。これを『月面十年戦争』と呼んだ。
激戦が続く中、早乙女博士は『インベーダーは多量のゲッター線を浴びると吸収しきれず、崩壊する』ことを突き止め、すぐさまゲッター線を動力とし、ゲッター線を兵器として転用したスーパーロボットを開発した。
それが『ゲッターロボ』である。
元々、宇宙開発用として設計されていた機体だが、インベーダーの出現により急遽、戦闘用に開発された。
ゲッターロボはゲットマシンという3機の戦闘機で構成され、空戦用『ゲッター1』、陸戦用『ゲッター2』、海戦用『ゲッター3』の3タイプに変形できるのか特徴だ。
これは宇宙開発前提で設計された名残である。
開発されたのはいいがまた新たな問題が発生した。それは『パイロット』であった。
ゲッターロボはその殺人的な機動力を持ち、耐えうる強靭な身体能力を持った人間がいなかった。
そこで早乙女博士はパイロットを日本各地で探すことにした。
その過程で抜擢されたのが後に英雄と呼ばれる者たち、『流竜馬』、『神隼人』、『巴武蔵』、『車弁慶』であった。
この四人は常人を遥かに超えた身体能力の持ち主で早乙女博士に見込まれたのであった。
そしてこの四人のもと、ゲッターロボを駆り、月面において鬼神の如く力を発揮し、見事インベーダーを打ち倒し、十年間に及ぶ大戦争に終止符をうったのであった。
……………………………
「じゃ…じゃあ流君は未来から来たってこと…?」
「まっ、そーゆうことかな?」
歩は信じられなかった。未来から来たと言われてもすぐには信じられるハズがなかった。
しかしあのロボット「ゲッターロボ」が存在することは本当に…。
複雑な気分でしかなかった。
「あのあと、ちいといざこざがあってな。どうゆうわけかこの世界に来たって訳よ。」
「………。」
歩はその場に座りこみ、指で砂に文字を書き出した。それは「未来」という字だった。
「…未来かぁ…あたしの未来はどうなってるんだろ…?」
すると。
「あの重陽子ミサイルの爆発からして、逃げ遅れた日本人の大半は消し飛んだかもな…。隼人達はどうなったことやら…。」
「えっ…?」
「いや、何でもない。さあ帰るか。椎葉の親やあの二人の親が心配してるだろ?」
「あっ!そうだね。」
二人はその場から離れていった。
歩く最中、歩はこう言った。
「流君の聞く限り、未来はろくでなさそうだね…。」
「けっ、そんなのお互い様だ。俺だって好きでゲッターに乗ったわけじゃねぇ。むしろこいつとはもう関わりたくもないね。」
その言葉に歩の心は複雑になった。しかし歩は納得していた。
竜馬が不思議な感じがしてたのはどうもただ者ではなく、未来から来た救いのヒーロー的な存在みたいな感じがしたからだった。それなら辻褄があうと…。
すると竜馬は歩にこう言った。
「あっ、そうだ。さっきの話、羽鳥達には内緒な。
言っても信じてもらえねぇだろうし、イチから説明すんのはめんどくせーからな。何か聞かれたら『夢でも見てたんじゃね?』でも言ってやれ。」
「うっ…うん。」
歩いていると
「あーーーっ!!」
突然大声を上げる歩。
「どうした?」
「てことは…またアレ…げったぁに乗っていかないとダメってコト!?」
「その通りだな。」
「流君!ゆっくり行ってよ。またあんなスピードだったら今度こそあたし達死んじゃうよ!」
「わーったわーった!」
しかし…その後、歩はまた死ぬ思いをしたのは言うまでもなかった。