ライフ 第25話

Last-modified: 2010-12-22 (水) 20:27:59

「…あうぅ…。」
ゲッターのスピードに翻弄されてボロボロになっり、フラフラになりながらも家に帰宅した歩。

 

「……歩……!」
玄関には歩をみて震える母の姿が。

 

“…お母さん…”
「…なんともないのね…?」
心配そうに歩に寄り添う。
「…警察から電話があって…びっくりして…。」泣き崩れる母に寄り添う歩。

 

……次の朝、安西邸では…。
“次のニュースです。昨夜、H市の外れにある廃病院で大火災が発生し、現場にいた少年らが建造物侵入、放火の疑いで逮捕されました”

 

《ガチャン!!》
昨日の出来事についてのニュースを朝食を摂りながら見ていた愛海は持っていたマグカップをテーブルに落とした。
そして少しずつ、顔を青白くしていく。

 

「どうした愛海?」
心配そうに聞く父親に対して、焦り顔で話す。

 

「なっ…なんでも…。」すると

 

《ヴィーー!!》

 

「ひいっ!」
突然の携帯のバイブにビクッと驚き、一目瞭然にトイレに駆け込む。
トイレに入るとドアに寄りかかり携帯を開けた。
「アキラ…!!」
着信元はアキラだった。
「マナちゃん?体調悪いの?」

 

心配になった母親が駆けつけてきた。

 

「ーーーーっ!!」
さらに電話からも…。

 

「もしもしマナミ?今から会ってくれよマナミ~っ!」
左右からの返事に慌てふためいく愛海。

 

……………………………愛海は奇跡的に左足の骨折で済んだアキラと街角で会っていた。

 

「ごめんな…。」
アキラから言われる謝罪の言葉。

 

「願い…叶えてやれなかった。」
落ち込むアキラに首を横に振る愛海。

 

「マナのことは誰にも言わねえから安心しろ。」
「アキラ…!」
その言葉に愛海はアキラに寄りかかる。

 

「カンベツもネンショーもこわくねーよ。」
アキラは昨夜の出来事を思い出していた。あの恐ろしい力を持った化け物のことを…そして自分をも畏怖した薗田のキレた時の顔のことを…。

 

「あんなヤツらと比べたらな。」
そしてお互いまた会うことを約束し、別れた二人だが…。

 

駅前交番。そこには泣きじゃくる愛海の姿があった。

 

「コワい人にナンパされたんです。『オレぁ今、サツから逃げてんだ。病院抜け出してきたんだぞ』って…。」

 

そして大声を上げてこう叫んだ。

 

「『廃墟に火ぃつけたのオレなんだからなっ!』って!」

 

次の瞬間、警察はアキラを追いかけて取っ捕まえにかかった。アキラは地面に倒れて骨折部位をモロに地面に叩きつけてしまった。

 

「いってえぇぇ!!!」御用となり連れていかれるアキラをよそにほくそ笑みを浮かべる愛海。

 

帰る最中、歯ぎしりを立てて苛立づかせる愛海。そして、

 

《ガアーン!!》
そこに配置していたゴミ箱を蹴散らしながらドカドカと去っていく愛海。
《役立たずがぁ!!》
……………………………………
その頃、歩は学校に登校途中だった。夏なので日差しが強いがそれと同時に心地よい風が歩を突き抜けた。

 

“あたし…生きているんだ…。”
歩を歩いていると目の前に人らしき姿が歩の方へ立っていた。近づく程、それが誰なのかわかった。

 

「アユム」
そこに立っていたのは羽鳥だった。笑顔で歩を迎える。
「羽鳥さん!」
二人とも無事に生還したことを感じ取った歩は羽鳥に向かって飛び付いた。

 

……………………………………
学校。
歩と羽鳥が教室へ向かう途中、羽鳥がこんなことを口にした。
「なんだったんだろうね。アレ。」
「えっ?」
「巨大ロボット。気がついたら公園のベンチに座っていたし、薗田も…。」

 

歩はあの時竜馬に言われたことを思い出した。

 

“羽鳥たちにはこのこと内緒な!”

 

歩は間を置いて羽鳥にこう言った。

 

「多分夢だと思うよ、ハハハ…。あのあと流君が駆けつけて気を失ったあたし達を助けてくれたらしいから。」

 

「夢…?そうかぁ。けど夢にしてはリアルだったような気がしたんだけど…。」

 

「……。」

 
 

そして自分の教室の前に立つ歩と羽鳥。

 

《ガラっ!!》
ドアをあけると、大人数の冷たい視線が歩達に向けられる。その中に愛海達も含まれていた。
それを無視しながら教室に入っていくと。

 

「椎葉さん。」

 

二人の男子が心配そうな表情で話しかけてきた。
「…薗田から少しだけ聞いたよ。大変だったね。」
予想もしなかったその言葉に驚きと喜びが混ざって涙が込み上げてくる。
すると薗田も照れながら歩の前に立った。

 

「…来てくれてよかった。」

 

歩はニコっと笑ってこう返した。

 

「…ありがとう。」

 

すると薗田はこう言った。

 

「そう言えばあの巨大ロボットって…。」
「あ…。」
歩は羽鳥と同じようにあれは夢だと教えた。

 

「夢か。けどどうも夢とは思えない感じがあったんだけどね。」
「ハハッ…。」

 

仲良く話をしていると。
《ガラッ!!》

 

教室に入ってきたのは竜馬だった。しかし顔の表情はかなり不機嫌そうな顔をしていた。
竜馬は席にドガッと座ると外を見つめていた。

 

「………。」
歩達は竜馬の席に向かった。

 

「流君、昨日は本当にありがとう。」
「流、ありがとね。」

 

竜馬は振り向こうとしないが間を置いてこういった。

 

「…おう。今は一人にしてくれねえか?機嫌が悪いんでな。」
「?」

 

不思議がる歩に空気を読んで羽鳥が歩の肩に手を置く。

 

「アユム、薗田行こ。」「……。」
歩達は竜馬から去って行った。しかし竜馬はまだ眉間にシワを寄せていた。

 

(将造のヤロー…あいつ、俺らを巻き沿いやがって…)
…実はあの廃病院の火災は将造のせいであった。同時刻、将造は同じH市の人気のない山道でこの時代世界一の強さを持つマフィア、《デスドロップ・マフィア》の犬、倉脇重介と対峙。
森が地獄の業火に包まれる重火器同士の超対決の中、ロケット砲と化した将造の右膝から放たれた弾頭の内の一発があの廃病院に直撃。
こういうわけであった…。

 
 

歩達を送った後ボロボロになった将造と会い、そのことを聞いた竜馬は火災の原因はそれにあると断定。
そのことで竜馬はぶちギレ、将造と殴りあいのケンカにまで発展し、警察がきたとこで未解決のまま終了となった…。
ちなみにその超対決は政府がもみ消してくれたので大事にはならなかった。
……………………………
話は戻り、体育の時間。今日はプールでの水泳授業。男子更衣室では…。

 

「すげえ……。流の体。」
「どうしたらあんな筋肉になるんだよ。ボクシングでもやってんのかな?」
男子全員が着替え途中の竜馬の身体をみて驚いていた。
鍛えぬかれた身体は非常に絵になっていて男の憧れの的だった。

 

「ちっ、じろじろ見やがって。あいつらホモか?」
しかし竜馬は逆にイライラしていた。

 

一方、女子更衣室では歩は泳ごうか迷っていた。それはやはり腕の傷を配慮してのことだった。

 

すると

 

「今は無理してみんなの前でさらけ出すことない。あんたの心の部分なんだから。」
羽鳥が歩の腕を優しく触った。

 

「ゆっくりでいんだよ。」
笑顔で返す羽鳥に歩のニコって笑い、頷いた。

 

《バァーン!》
愛海達が不機嫌そうにドカドカ更衣室に入ってくる。

 

「…あーあ、なんか男に襲われたらしーよ。」
「うらやましーね。ミリョクテキな女は。」
明らかに歩達のことを言っている。それを聞いて歩は愛海達を冷たい視線で見つめた。

 

「ねーマナ♪神様ってちゃーんと見ててくれたんだねっ♪」
仲間のチカが歩に寄り添ってこう告げた。

 

“まるでマナに代わって天罰下してくれたみたいじゃナイ?”
《ぴくっーー…》

 

その言葉に歩と愛海になんとなくだがへんな感が突き抜けた。

 

「…キモいこと言わないでよ。」
チカを振りほどいて着替え始める愛海。

 

「行こっ。」
プール場へ向かうと仲間たちとは別に愛海は歩の荷物ロッカーに手をさしのべた。

 

《ドサーーッ!!》
歩の荷物を床にばらまいた。辺りにスプレーや財布が散らばっている。

 

「……。」

 

それを見た歩と羽鳥は無言で拾い始める。最後のスプレーを拾うと手を差しのべる。が

 

《バキッ!》

 

突然、スプレーが足で叩き潰され使い物にならなくなった。

 

「ザマーミロ。」

 

歩が見上げると狂喜とも言える笑顔で見下す愛海の姿があった。

 

「酷い目に遭えばよかったのに。」

 

愛海はそのまま去って行った。しかし歩は何かに気付いた。

 

(…もしかして…あのときはまさか…!)

 

《ドクン!!)

 

歩はガタガタ身体が震え始めた。あの廃病院の事件に愛海が絡んでいるのでは…と。

 

「アユム!どうしたの!?」

 

羽鳥が駆け寄るが歩は震えたままだ。

 

「……マナミ…もしかしてあの男達と…かかわっていた…?」

 

《! ! ?》

 

その言葉に羽鳥は強い衝撃を受ける。

 

(もし…ホントにそうなら…マナミの企みだとしたら…)

 

歩は心に強くこう叫んだ。

 

《絶 対 許 さ な い !》