ライフ 第5話

Last-modified: 2010-04-25 (日) 00:45:34

「トップは篠塚!98点!」
歩がまだ中学3年生の時だったとき。
 
「歩っ!どうだった」
篠塚はクラスの中でかなりの優等生だった。
そんな篠塚を泣きべそかいて見つめる歩。
「しーちゃんたすけてぇぇ!!あたしヤバいよぉぉ」
歩と篠塚は非常に仲がよかった。どちらかというと姉妹関係みたいな存在だった。
 
「私達、西館高校いこうね!」
「うん!」
二人で決めた希望の約束。しかし…それが全ての始まりだった。
 
1月の実力テスト
 
歩は初めて数学で88点を取った時だった。
「はじめてだよぉ!数学で80点台とるなんてっ!」
 
歩は大はしゃぎだった。 しかし篠塚はなんとも微妙な表情をしていた。
「あたしはあんまり…歩より悪かったよ」
「うっそーん!ほんとはよかったっしょ?」
歩は篠塚のテストを見てみた。そこに見たのは歩より6点低い82点だった。
しかし歩は篠塚をみて笑顔で答えた。
「でもたいして変わんないじゃん!また次で頑張りなよ!」
「そっ…そだねっ」
篠塚はテストを持って向こうへ行ってしまった。
「………」
その時からか、歩の人生が狂い始めたのは…。
 
そして西館高校受験日当日。
歩と篠塚は西館高校の入り口に入ろうとしていた。
 
「しーちゃんさぁ?」
「ん?」
「もし高校離れても友達でいてくれる?」
篠塚は歩の言葉はすぐに反応した。
 
「友達に決まってんでしょ!!」
篠塚の言葉に歩はとても嬉しかった。もう迷うことはないと。
 
受験も終え、卒業式が終わり同級生たちがみんな別々の道へ行こうとしていた。 しかし篠塚だけが何故か浮かない顔をしていた。
 
「しーちゃん?どしたの?」
「あのさ…自己採点、ラインギリギリだったんだよ?240しかなかった……」
「……」
歩は少し間を置いてこういった。
「あたし、235だよ?」
「ほんとに!?」
篠塚は安心したのかため息をつき、その場に座りこんだ。
「よかったぁ!ばかみたいだねあたし…」
篠塚から涙がこぼれた。それを見て、浮かない表情をする歩。
 
そして合格発表の日。
ドクンドクン!
歩と篠塚は合格者一覧の看板に立っていた。緊張してか、心臓の高鳴りがどんどん強くなる。
 
「286…」
歩は自分の受験番号である286番を探した。
すると
あ っ た … なんと歩は番号は看板に記載されていた。
 
「歩!!おめでとー!すごいっ!」
 
歩は感動して涙が込み上げてきた。受験番号がにじんで見える。
 
「しーちゃんは?」
歩は篠塚の方へ向いた。しかし
 
な ん で ?
「352…352…」
篠塚の番号である352番が看板には記載されていなかった。
そう…篠塚は不合格だったのだ。
(え っ ?)
 
歩は信じられなかった。あんなに頭のよかったしーちゃんが…。私だけうかって…しーちゃんが落ちるなんて…。
 
篠塚の目から涙が込み上げ、今にも浴びれそうだった。
 
「な ん で あ ん た な の よ !!」
 
篠塚は歩をこれでもかと泣きながら睨みつけた。今まで感じたことのない憎悪の念が歩に襲いかかった。
 
篠塚はすぐに歩から去っていった。
 
歩はなんの言葉をかければいいかわからず、茫然とその場をずっとたっていた。
歩はとりあえず、合格の報告をしに学校へ行った。
 
その廊下で偶然篠塚に遭遇した。
歩は何か言えばいいのか分からす硬直したが、篠塚は歩を見るとニコっと笑った。
 
「歩はやさしいね」
「えっ?」
「自己採点、ほんとはあたしよりよかったんでしょ?言い出せなかったんだよね?」
 
「うっ…うん…ごめん」
実は歩が自己採点をした結果、篠塚を上回る247点だった。それを親友である篠塚を悲しませないように嘘をついたのだった。
 
「やさしさのつもり?」
篠塚は歩の目の前で今まで一緒に撮ったプリクラを全て地面にばらまくと、それらを無残にも踏みにじった。
 
「歩は楽でいいよね…人を頼るだけ頼って同情してりゃいんだもん」
「ちがっ…」
 
歩がこれまで篠塚に依存し続けた結果がこの結末だった。
 
すると篠塚は涙を浮かべた。
「あたしはあんたがうざかった」
 
篠塚は歩を嘲笑うかのように歩を見下した。
「あ ん た な ん か い な け れ ば よ か っ た」
 
! ! ! !
そう言うと篠塚は歩から去っていった。 これが歩と篠塚の友情崩壊の瞬間だった。
頭の中に今までの記憶が走馬灯のように駆け巡った。しかし、それらがどんどん黒く染まってゆく。
歩はその場で泣き崩れて今までのことを悔やんだ。いや、悔やんでも悔やみくれなかった。
 
その果てに…
ザク!
歩は自分の部屋で自分の腕をカッターナイフで切り始めた。
 
 
 
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こ ん な ん じ ゃ な い ! !
し ー ち ゃ ん が 受 け た 痛 み は も っ と も っ と ! !
 
歩は錯乱しながら手を切り続けた……。
その時からだった。歩が自分で自分を傷つけるようになり、人と友達になるのを恐れるようになったのは…。
……………
 
「言わないで…。」
克己の前で頭を下げる歩。
しかし克己はニヤニヤ笑っている。
「“言わないでくださいご主人さま”だ」
克己は歩の髪の毛を掴んで睨みつけた。歩は涙を流しながらボソッと言った。
「…い…わないで…くだ…さい…ご主人さま…」
すると
「よくできました!!」
克己は嘲笑うかのように見下すと、歩の服を切り始めた。
非常に屈辱と精神的苦痛を受けた歩は今にも消えてしまいたいと思い始めた。
 
し に た い
…………
「サイコーだなコレ!アユムちゃんのおもらし画像♪」
歩は下着(しかもパンツだけ)以外は全裸という状態で座らさせれていた。
 
克己は携帯を歩に向けた。
「ラスト一枚!こっち向いて笑わないと帰れないよ?」
 
歩は携帯の方を見るとニコっと笑った。しかしその笑いには全く生気など感じさせられなかった。
手錠は外され、解放された。
 
「アユムちゃんはさ、友達に幸せになってほしいんだよね?いいよ♪愛海とやり直してあげる♪
これは二人だけの秘密だからね♪」
 
帰り道
歩は茫然自失となりトボトボ歩いていた。
歩はふと、自分の傷をみた。
 
ドクンドクン…ドクンドクン…ド ク ン ド ク ン !
あの忌々しい出来事がフラッシュバンクと甦ってきたのだった。
 
「あ゛あ゛ーーー!!」
歩は自分の頭をこれでもかと言わんばかりに殴り始めた。まるで記憶を消し去ろうとしているかのごとく…。
歩はもう…目にクマができるぐらいにやつれていた。しかしそれでもなお、涙が止まらない。
 
消 し た い 歩は家に帰るとすぐに風呂場に行き、汚れたパンツをゴシゴシ洗い始めた。
(消すんだ!全部…全部…)
…………………
 
次の日
 
歩は昨日の出来事のせいで眠ることができなかった。忘れようとしても忘れられず、脳裏に焼きついてしまった。
歩は机に置いてあったカッターナイフを取り出すと、ズボンを下げた。
そして何かに取り憑かれたかのようにカッターナイフの刃を自分のふとももに押し当てた。
プツっ…プツ…
中途半端に切りつけたせいか、傷が浅く血がにじみ出てきただけだった。
 
(…痛くて…怖くて…深く切れない…死ぬ勇気なんかない、こんなことしかできない…。)
歩の目から一滴二滴、涙が流れ落ちてきた。
 
そ れ で も こ ん な こ と で も し な き ゃ 生 き て け な い よ !
そ ん な に お か し い こ と な の ?
 
………  
愛海からメールがあり、内容は克己とやり直すことの決まったというメールだった。
歩はメールをうつろ見る。
 
そして
「ア~ユ~ムぅ!!」
あれほど元気がなかった愛海が復活してハイテンションで歩に向かってきた。
 
「マナのためにカツミくんにいろいろ言ってくれたんだってね?
ありがとうっ!アユムだけに話してよかった!!」
ニコニコしながら抱きしめる愛海に対し、複雑な気持ちの歩。
 
「じゃあマナは先に行くね!カツミくんと会ってくるし、学校でまた会おうね」
そうゆうと愛海は歩から去っていった。
(言えない…)
 
すると
「いつつっ!」
向こうから傷だらけの竜馬がやってきた。
歩は見て、びっくりした。
(なっ…なんで傷だらけなの…?)
 
竜馬は歩を見つけると
「よう!どうした浮かない顔して」
「……」
 
竜馬は不思議そうにこちらを見ている歩に疑問を持った。
すると
「ああ!この傷か?これは昨日な、岩鬼組ってぇ極道一味相手にカツアゲしようとしたらこのざまよ!
死闘だったけどな、途中でサツがきて喧嘩は中止になっちまった!ワハハハ!」
竜馬は傷を押さえながら向こうへ行っててしまった。
 
そんな竜馬を歩は呆れて見ていた。
(ヤクザにカツアゲっ…?ばっ…バカじゃないの?
けどなんでかな?流君を見るとなんか安心するような気が…?)
 
一方、竜馬も
「ちっ…あの岩鬼将造って野郎!マシンガンだのショットガンだの重火器ばっか使ってきやがってっ…
もう少しで死ぬところだったじゃねえか!」
 
(けどなぜだ?椎葉を見ると何か懐かしい感覚がするが…)
竜馬は不思議な感覚に包まれつつ、傷を押さえたまま学校へ向かっていった。