ライフ 第6話

Last-modified: 2010-04-25 (日) 00:46:51

第1回中間考査の結果発表
 
第2位 佐古克己 495点
並みいる学年のトップの名前が書かれた紙に、あの男の名前があった。
 
「キャー!カツミくんが2位だ!」
愛海は克己を引き連れてはしゃいでいた。
照れる克己と無邪気にはしゃぐ愛海。
その横で複雑な気持ちで見つめている歩がいた。
 
(聞きたくないっ)
すると
「佐古ーがんばったなァ!お前は西館の希望の星だぞッ!期待してるからな!」
担任教師から褒められる克己。それを見て歩が気分が悪くなった。
(……なんで…こんなヤツが……)
 
歩がそう思っていると、愛海達が歩の方へやってきた。
 
(どきっ!)
「…気分でも悪い?」
あの時の醜い表情からは考えられないとても爽やかな顔をしていた。
 
「アユムゥ!マナの克己くんすごいでしょ!!」
あんな趣味があるとは全く知らず、満面笑みを浮かべている愛海。
「……」
 
怯える表情で見る歩に克己がニコニコしていた。
「愛海のことをこれからもよろしくね」「………」
 
すると克己が顔を近づけて小声で言い放った。
(たっぷりかわいがってあげるね…ボクのカワイイ奴隷ちゃん)
「………」
歩はその言葉に、体が恐怖で震えてきた。
も う ヤ ダ
 
するとこんな声が…「一位のヤツ知ってる?全教科満点だとさ」
「まじで!?全然知らねえ」
「知ってるよ!コッチのクラスでヤツでとても物騒なヤツだよ!!けど全教科満点てヤバいだろ?」
歩はふと、結果発表を見てみると
第4位 羽鳥未来 472点
(えっ?羽鳥さん?)
それでも驚いたが一番驚いたのが…
第1位 流竜馬 500点
(うっ……うそっ…?流君が全教科満点…?)
歩はすごく驚いた。進学校であるこの高校で全教科満点となるとそれこそ将来を約束されるエリートだ。
それを取ったのがあの見るからにワイルドで不気味な雰囲気を持つあの男、竜馬だったのである。
 
「流竜馬ってどんな人?」
「なんかさぁ、顔が学生ぽくないんだよね。なんか恐いんだよ」
「まさかあの人?」
1人の生徒が廊下に指を指した。
指した方向には例の竜馬がこちらへ歩いてきた。
 
「あんたスゴくね?満点とかすげーな」
生徒達が竜馬に集まってきた。
しかし
「こんな狭めぇとこでワラワラ集まんじゃねえ!かち殴っぞ!」
 
竜馬は生徒達をなぎはらって向こうへ行ってしまった。
 
「けっ…なんだあいつ?しらけるなぁ」
こんなことをいう生徒や
「ちょっ…ワイルドでカッコいいかも…」
と言い出す女子生徒までもがいた。
歩はそれを唖然て見ていた。
(人は見かけによらないんだな…)
 
歩のクラスでも結果の話題でもっぱらだった。
 
「見たァ?羽鳥」
「マジかよ?クラスナンバー2かよ?」
「カッコいいよなー!学校、あんま来てねーのになー」
羽鳥は1人で机へ向かって小説を読んでいた。
しかし、もっと話題になっていたのはやはり
「けどあの流はやべーよなァ!」
「全教科満点とかあの佐古を上回っているなんてなァ」
「あいつ授業中は全部寝てるくせになんで満点とれるんだ?ありえねーだろ?」
「羽鳥といい流といい、二人してカンニングとかしてんじゃねえの?」
「ぎゃあははは!どんな連携プレーだよ!」
と悪口が飛び交うなか
 
「グガァァ…」
竜馬は机で大きないびきをかいて寝ていた。
歩は自分の成績を見て落ち込んでいた。“学年順位 301/320”
「……」
(“無理してレベルの高い高校に入ったらあとで苦労する”
先生に散々言われた…あの時やめとけばよかったのかな?)
………
その夜、歩は変な夢にうなされていた。
………
『ナビゲーター、指示を』
(えっ…ナビ…ゲータ…?)
 
歩は何やら不可思議な空間の中にいた。
……
「左舷より敵の大艦隊接近!」
「惑星ダビィーン消滅!」
 
(なっ…なに…これっ…?)
歩の目の前に広がる世界…それは…。
 
「敵母艦ラ・グースまで辰刻∞482時の距離!!」
(ラ…グース…一体何を言っているの…?)
すると
「歩様!ゲッターエンペラーがこれ以上戦わば、この次元は破壊されます!」
(キャー!あたしには全くわかんないヨーー!)
 
―これは超未来の世界なのか?それとも別次元の世界なのか?そもそもここはドコなのか?なぜ自分が戦っているのか?
ラ・グースとは…?ゲッターエンペラーとは…?
歩…いや人類が理解するには永劫の時を待たねばならなかった。そして!!
 
“チェェェンジ!ゲッタァァァァエンペラァァァァワンぅ!!”
宇宙を震撼させるその声(ボイス)は 流 竜 馬 の も の だ っ た。
………………
 
  戸建  マンション  賃貸  不動産
 
「わあああああああ!」
歩は目を覚ますとベッドの上だった。
「つっ…まだ4時じゃん…」
外はまだ暗く、6月と言うのに肌寒かった。
(何だったの今の…?ラ・グース…ゲッター…エンペラー…?しかもあの声は…)
歩は息を切らし、胸を押さえた。
(けど…なんでだろ?夢なのにリアルな感じがして…?)
 
歩は不思議な感覚に襲われ、冷や汗をかいていた。
 
6月 浅間山キャンプ 2泊3日
 
みんなは野外キャンプで大はしゃぎ。カレーを作ったり、みんなで遊んだりして、まるで子供のようにはしゃいでいた。
その夜
歩と愛海の友達の4人はジャンケンで負け、食器洗いをしていた。
 
「あーダリィ!食器洗いなんか!」
みんかふてくされて食器洗いを洗いをしていると
「トイレ行ってくる」
1人がスポンジを放して去っていった。すると
「うぅ~!オナカイタタタタ!!」
もう一人も腹部を押さえて出て行ってしまった。
残るは歩ともう一人!
 
段々気まずくなった歩はもう一人に
「あっ、あたし全部やるよっ!」
するともう一人は歩の方を向いてニヤっと笑った。
「サンキュー!あんたできるね!」
歩はホッと安心した。
するとその友達が他の食器洗いをしている人を呼び集めた 。
「あとはもうこっちが引き受けるからさ!もう終わっちゃいなよー!」
 
友達と他の人たちは去っていった。歩をただ一人残して。
 
歩はもくもくと一人食器洗いに専念していた。
 
(あたし嫌われてる?)
その念が頭をよぎった。まず大量の食器を片付けるには一人では相当な時間がかかる。しかし、誰も戻ってこないのは明らかに歩にやらさせている証拠だ。
歩はやっている内に切なくなってきた。
(……あたし、ハブなんだよね…つづいたらどうしよう…こ わ い よ)
 
すると
カチャ…
(えっ?)
音がしたので横を振り向くと
「はっ羽鳥さん…?」
知らない内に羽鳥がもくもくと食器を洗い始めていた。
 
「羽鳥さん!いいよ!私がやるよ!」
歩は慌てて止めようとしたが
 
「あたしのことはいいから早くやりな!早く終わらそ!」
羽鳥さんに一喝され、しゅんとなり洗い始める歩。
しかし、歩は正直嬉しかった。
 
「羽鳥さん…ありがとう」
歩が感謝を述べると無表情でこういった。
「いいよ、暇だったし」
 
歩は洗いながら目を閉じた。閉じた目から涙が一粒流れた。 (ありがとう…)
 
一方、外では
抜けていった愛海達は歩が頑張っていることを知らずにみんなで花火で遊んでいた。
 
「そーいやアユムは?」
「あとから来るっしょ!」
クラスのほとんどが集まってギャーギャー騒いで花火を撒き散らしていた。
 
「マナ!チョー楽しいー!
「もうアユムのぶんもやっちゃおうか!」
「多分終わりっこないからやっちゃおうか!ぎゃあははは!」
突然!
バッシャアアアア!!
「!!!!」
突然水をかけられて、状況がわからない愛海達。花火は途中で消えてしまった。
「誰だ!こんなことをするのは!」
そこに立っていたのはあの男、竜馬だった。
 
「あっ…あんたは…」
竜馬は無表情で愛海達を見つめていた。
「椎葉1人に食器洗いをやらしといてよく遊べるなぁ!なんて卑しい女共だぁ?」
その言葉が愛海達のしゃくにさわった。
「あ゛ァ !?」
1人が竜馬の胸ぐらを掴んだ。すると1人の生徒がこう言った。
 
「あの量を1人で!?女子全員分だよ!?」
 
「あいつがやるって言ったんだよ!!」すると竜馬は胸ぐらを掴んでいた手を手に取ると、
 
メキメキ!
「ギャアアア!イタタタタ!イタい!」その細い手を関節部の限界まで回し始めていた。
 
「サイテー!!何考えてんのよ!」
「やめろよ!痛がってんじゃない!!」罵声が飛ぶなか、竜馬はニヤニヤしながらこう言い放った。
「貴様ら、女だからって俺にナメた真似してみろ?殺すぞ?」
「ひっ…!」
竜馬は手を放すと愛海達を見下した。
 
「やるって言ったんじゃなくてやらせてんじゃねーの?」
そう言うと竜馬は宿舎へ戻っていった。
……
「ムっかつく!!流のやろう!!」
「!」
愛海達がぶち切れた状態で戻ってきた。 それを見て、びっくりする歩。
 
「どっどしたの?」
「何でもねーよ!」
しかし、洗い物が全くなく、愛海達は歩を見つめた。
 
「洗い物がないけど…あんた1人でやったの?」
歩はもじもじ体を震わせた。
 
「羽鳥さん…に手伝ってもらった」
すると、愛海達の顔もっと険しくなる。
「何ぃ!羽鳥のヤツ…」
(ひっ!)
歩はどうしていいか分からなかった。
すると1人がこういった。
 
「流のヤロー!野蛮で下品でいやだぁ!いっそのこと、あいつと羽鳥もムカつくなから嫌がらせしちゃおうよ!」
「いいねそれ!!」
ドクン!
「…えっ…?」
 
「あいつらを断然にシカトして…靴とかに画鋲を入れたりとかねww」
「ぎゃあははは!それ賛成!」
 
歩は嫌な予感がした。このあと酷いことになると…。
愛海は歩は見てこういった。
「アユムゥ、裏切らないでね!指切りげんまんしたもんね」
歩の心が冷たくなる一方だった…。