ライフ 第8話

Last-modified: 2010-04-25 (日) 00:34:40

“強 く な り た い”
キャンプも終え、再び学校生活が始まった。
歩はその言葉を秘め、いつもより顔を上げで登校した。
 
「おはようっ!」
歩は笑顔で愛海の所へ行った。が
 
! ?
愛海達は歩の挨拶に反応しない。まるで歩をシカトしているがごとく。
 
「……えっ…」
すると愛海達は歩を変な目で見つめた。
「予行練習“リハーサル”。」
歩はその言葉に恐怖を感じ体が震え始めた。
 
突然
“キャッハハハハハハ!!”
愛海達は甲高い声で笑いだした。
 
「ビビってんじゃぁねーーよ!本番は流と羽鳥だよ!」
「あいつら無視って決めたじゃんっっ!」
「…あぁ…」
歩がうなづいたが複雑な気持ちだった。
(やっぱりこわい…けどっ…ハブにはなりたくない)
 
ガラ!
教室に入ってきたかのは標的の1人、羽鳥だった。
 
ドキッ!
すると羽鳥は教卓につくなり、正面に立った。
 
「一限目の体育は先生は休みなので、教室でチーム決め」
「……。」
すると愛海達はひそひそと話しを始めた。
「なんでアイツが仕切ってんの?」
「体育委員だからじゃん?うぜえーっ」
ガラっ!
教室に入ってきたのは標的のメイン、竜馬だった。竜馬はいつもの通りに机に座った。
 
(来たよ!メインディッシュ!)
(お楽しみはとっておいて、今日は羽鳥からいこーかぁ)
「……」
歩はどうすればいいか分からず、ただタジタジするだけだった。
 
一限目
 
「席ついてくんない?」
羽鳥がみんなを仕切ろうとするが、女子達は全く聞かず、色んなところをぶらついて友達同士で喋っていた。
 
(…どうしよう……)
歩は羽鳥を気にして、見つめた。羽鳥は全く顔色を変えない。
ガタン!
何かが倒れる音した。見るとそれは羽鳥の机だった。机の中身が辺りに散乱する。
羽鳥は無言で教科書を拾っていると歩と目があった。
 
「…あ……」
歩は拾おうかどうしようか焦っていたら
ガン!カランカラン…
歩の頭になぜか空き缶が飛んできた。空き缶はそのまま転がっていった。
「ごぉめんごめん!アユムっちー!ミスっちゃったよ」
女子達は笑っていたが歩にはわかっていた。「わざと」だってことを…。
 
「アユム」
 
読んだのは愛海だった。睨みつけるような表情で歩を見ていた。
「『本番』だよ!」歩は複雑な気持ちになりながらも愛海達のところへいった。羽鳥はただ一人、イスに座って外を眺めていた。
………………………
歩は急いでトイレの個室に駆け込むとその場で泣き崩れた。
最 低 だ あ た し
………………………
崩壊後
 
「聞いて聞いて!羽鳥の裏情報ゲットーー♪」
愛海の友達の1人が大喜びで教室に帰ってきた。
愛海達は一斉に集まる。
「えー!どんなぁー!?」
「アユムちゃんもよーく聞きなさい!」
「…………」
(なんだろう………)
 
聞く気にならず、不安でしょうがない歩。
「援交の話はマジみたい!その上バイトまでして金を集めまくってるらしーよ!」
「げっ!そこまでして遊びたいワケ!?ホストにでもミツイでんじゃねーの?」(え…)
「うっわサイテー!!死ねよ!」
(ちがうのに…)
歩は本当のことを言いたかった。バイトをしているのは生活のため、遊ぶためにしているんじゃない…。
 
「まぁーたどっか行ってるし、授業なんか出てるヒマもねーってか?」
過言はピークに達し、
「あいつのカバンもあることだしぃー、金奪おっか?」
「いーねぇ!」
羽鳥もカバンを持ち上げると、それをグルグル回し始めた。
「なにが出るかな♪なにが出るかな♪」バサバサ!
カバンの中身を床にぶちまけた。財布、化粧品、メモ帳、色々な物が次々に発見される。
 
「サイフ見ーーっけ♪」
「これでみんなで遊ぼーっ!」
愛海達はまるでハイエナのごとく、羽鳥の所持品をアサリ始めた。これはもう犯罪である。
 
「ちがうよ!!」
歩は耐えきれなくて大声を出してしまった。
突然の出来事で歩を見つめる愛海達。
 
「あっ…」
「アユムっち、なんか情報知ってんのぉ?」
歩は体も震えながらも、勇気を出してこういった。
 
「なんで羽鳥さんと流君なの?」
歩の勇気も虚しく、愛海はニコっと笑ってこういった。
「ムカつくから。」
ド ク ン … …
愛海の一言で歩は絶望を感じた。
………………………
歩は自失し、玄関から出ようとしていた。すると近くにいたクラスの男子生徒がこんな話をしていた。
「なぁー!オマエ知ってる?羽鳥さん無視されてんの?」
 
! ?
「ウチの女子全員だってさぁ?女ってコエーなー!」
「あとさぁ、流もアブナいらしいぜ?あいつらの標的って噂だぜ?」
「確かになぁ…あのキャンプの出来事だろ?」
 
(キャンプ…?なにかあったの?)
歩はたまらず、勇気を出して男子生徒の方へいった。
 
「ちょっと…いいかな…?」
………………………
歩は男子生徒からキャンプで起きたことを聞かされた。
自分のために、食器洗いをしなかった愛海達に水をかけたことを。
それが元で、標的にされたことを…。
歩は急いで羽鳥と流を探しはじめた。
 
(知らなかった。あたしのせいで…なのにあたしー…っ)
歩は図書室に行くと、羽鳥は静かに本を読んでいた。
歩は周りの目を気にせず、羽鳥の所へ駆け寄った。
 
「ごっ…ごめん…なさい…今日の朝のことを」
しかし羽鳥は歩の呼びかけに反応せずに、本を読み続けていた。
 
「な…なにか言って……」
歩は泣きべそをかいて、何度も謝った。しかし
 
「声、大きいよ」
それだけだった。無表情でその一言だけだった。
その一言が歩の心を突き刺した。
 
“あ た し 羽 鳥 さ ん に 話 し か け る 資 格 な ん て な い”
………………………
歩は廊下で途方に暮れていた。
 
(なにが“強くなりたい”だよ…ぜんぜんダメじゃん…ば か み た い)
 
ポン!
後頭部に何かが当たる感じがしたので振り向くと
 
「なぁにへこんでんだ?」
「あっ…流君…」
そこにいたのは竜馬だった。竜馬も帰る途中だった。
 
「あぶねぇぞ?こんなトコでふらふらしてっと?」
(おっ…お礼を言わないと…)
竜馬は歩の前を歩き出し、帰ろうとしていた。
 
「あ……」
歩は勇気を出して、大声で叫んだ。
 
「ありがと!」
竜馬は止まり、歩の方へ振り向いた。
「キャンプの時、あたしなんにも知らなくて…」
「ふん…。当たり前のことをしたまでだ…じゃあな」
 
竜馬は手を振り、去ろうとした。しかし歩は感をきわだってこう言ってしまった。
 
「あなたも愛海達にイジメの標的にされちゃう!」
 
 
歩は涙を浮かべて言い放った。
竜馬はすぐに立ち止まった。
 
「だからどうした?」
「えっ…」
 
竜馬の意外な一言に歩はあっけを取られる。
 
「あいつらが何かを企んでいるとしても、俺はあいつらと違ってガキじゃねえかなぁ。」
(なっ…かっ…こいい…)
 
歩は竜馬から何かたくましさを感じ、少し安心した気持ちになった。
 
「しかしなぁ」
 
竜馬は振り向いて歩を見つめた。
「俺ぁ、気が短えんだ。
安西達がもし俺のしゃくに障ることをしてきたらな、その時はあいつらは生き地獄を食らうハメになるがな」
 
「えっ…生き地獄…?」
 
竜馬はニヤニヤしながら言い放った。その顔はかなり狂気的なオーラを纏っていた。
「どうしよか?あいつらの両手を二度と使いものにならなくしてやるのもいいし、
あいつらを顔面をつぶして一生、外に出れなくしてやるのもいいな。俺のダチみてえに『目だ!耳だ!鼻!』ってな!」
ゾクッ!
 
歩は嘘かどうかもわからない事で一瞬とてつもない恐怖と寒気が襲った。
この男はやりかねないと…。歩の直感だった。
 
「…ははっ…」
歩は苦笑いをした。
「お前、安西達のところにずっといるが、 俺が前言った忠告を信用してなかったんだな?」
「えっ?」
 
竜馬は歩を睨みつけた。その目から殺気立っていて、今にも殺しそうだった。
 
「ひっ!」
歩の体中から震え、その場にへたり込んだ。
歩は口はガチガチになり、涙もこみ上げてきた。
 
「おめぇがこれからも安西達のそばにいるんなら、あいつらが俺にしゃくの障ることをしてみろ!
その時はお前も安西達の仲間だと見なして、お前も生き地獄をあじあわせてやるかな!!覚えておきやがれ!」
竜馬は歩から去っていった。
 
歩はまだ震えが止まらず、頭の中は真っ白だった。
 
(そっ…そんなぁ…こわい…こわいよ)
歩は恐怖でいっぱいになった。
嫌われたくなくて安西達につくか、生き地獄を喰らいたくなくて竜馬につくか……。
歩には究極の選択を迫られた。
 
“ど う し よ う … … と ん で も な い こ と に な っ て き た …”