真!!ゲッター伐折羅

Last-modified: 2009-02-05 (木) 21:03:02

それは、異質な空間であった。

大小さまざまな計器が並び、いくつもの配管が通った機械の遺跡。
SF漫画の古びたUFOのような、冗談みたいな内観。
しかし、見るものが見れば、それらは現在の人類では到達し得ない、
未知の技術で溢れている事に気付くであろう・・・。
 
そんな、化物じみた瓦礫の回廊を、これまた異彩を放つ二人の男がずんずんと突き進む。
一人の男は細身の金髪。
その場に似合わぬ洒落た黒のスーツ姿。
だが、物腰柔らかそうな外見とは裏腹に、鋭い眼光が裏世界の住人を思わせる。
 
もう一人は、よれよれのコートに身を包んだ異常な巨漢。
デカイ顔に不釣合いな小さな丸縁のサングラス。
・・・そして額には、フランケンシュタインのようなリベットがふたつ。
 
「結論から話そう Mr.クラワキ
 この世界は 我々の住んでいた世界では無い」
 
正面から目を逸らさず、歩みを止めずに金髪が語りかける。
 
「この世界の地名や固有名詞の多くは 我々の知っているものと変わらない
 だが 歩んできた歴史、持っているテクノロジー、何もかもに少しづつブレがある!
 にわかには信じがたい事だが あの時の衛星からの一撃で
 我々はSF小説で言うところの 【パラレル・ワールド】のような世界に飛ばされてしまったのだ」
 
「そんな小難しい話はどうでもいい」
 
それまで無反応だった大男が、そこで重い口を開いた。
 
「つまり 話をまとめるとだ・・・
 こっちの世界に将造はいねぇ! 自動的に最強の極道はワシっつう事じゃ! そうだろ」
 
大男のグラサンが怪しく瞬く。その言葉を聞き、金髪がニヤリと笑う。
 
「その通りだミスター しかもツキは我々にある!
 飛ばされた異世界で 古代アトランティスの遺産と立ち会うことが出来たのだからな」
 
やがて二人は巨大な鋼鉄の扉の前に辿り着いた。
金髪が側面の仰々しいレバーを一気に引き倒す。
ブワっとした誇りまみれの風が二人を襲い、軋んだ金属音を響かせながら、ゆっくりと鉄扉が開いていく。
 
「ここに何があるってんだ? シャルロ」
 
「最高の玩具だよ ミスター
 あなたを名実ともに 最強の極道へと変えてくれる究極の兵器・・・」
 
やがて、二人の前に巨大な金属のシルエットが現れた。
 
「これこそが アトランティス帝国叡智の結晶・ウザーラ!」
金髪の叫びに合わせ、巨神の両眼がギランと真っ赤に光る。
 
「・・・!? 何だと!! これがアトランティスの!?」
 
「・・・? どうしたクラワキ?」
 
「こんな バカな! これではまるで・・・
 フ・・・ フフ フハハハハハハハハ!! すばらしい!!
 日本人じゃないアンタにゃあ分かるまい! こいつは確かに究極の兵器じゃあ!!
 クアアー ハッハッハッハッハッハハハアアアア!!」
 
脳をいじくりすぎたか・・・?
そんな事を考えながら、シャルロは彼・・・倉脇重介の突然の変貌を、呆然と見つめ続けた・・・。
 



 
早乙女研究所。
日本のロボット工学、エネルギー工学界をリードする、最先端の研究機関。
そんな日本の頭脳とも言うべき浅間山の司令室に、今、ズタ袋に入れられた一人の男が放り込まれていた。
 
「よく来たな・・・ ワシはこの研究所の所長をやっとる早乙女じゃ」
 
「よく来たな じゃあねぇだろ! こっから出しやがれ!」
 
袋詰めにされた男の抗議を意にも介さず早乙女は言葉を続ける。
 
「春野遥 将来を嘱望されるアマチュアゴルフ界期待のホープ・・・
 ――と 呼ばれていたのも3ヶ月ほど前までの話か・・・
 大木を根こそぎなぎ払い バンカーを爆破する規格外のパワーゴルフで 現在は追放中の身」
 
「うっ」
 
「ここ一番での勝負度胸の無さは気になるが 選り好みしとる余裕は無い
 人類の未来のため さっそく一働きしてもらうぞ ハルカ!」
 
「そ そんな事が・・・」
 
「フ ザ け た 事 を 言 う ん じ ゃ な い ワ イ !!!!」
 
遥の怒りを代弁するかの如く、傍らの黒のゴミ袋が吠え、中から老婆の顔がニュッと飛び出した。
 
「ばあちゃん!? いたのか!!」
 
「お前さんがどんなお偉方か知らんが ワシの孫はオーガスタを目指す大事な身じゃ!
 ワシの目の黒いうちは指一本触れさせんぞ!」
 
「・・・フム オーガスタ、か」
 
早乙女は机の上のアタッシュケースを抱えると、無造作に二人の眼前に放り投げた。
衝撃で蓋が跳ね上がり、中から大量の札束が飛び出してくる。
 
「・・・・・・・」
 
「とりあえず賞金の倍額用意した 文句はあるまい?
 ワシが必要といったら必要なんじゃ お前さんには『敵』と闘ってもらう 文句はゆるさん」
 
「・・・のう ハルカ」
 
「なんだ ばあちゃん・・・」
 
「お前も日本男児の端くれなら 見事散ってこい!
 大丈夫! 骨だけはこのババァがちゃんっと拾ってやる!!」
 
「フザけんじゃあねえええ~!!!!」
 
さすがに今度は遙が吠えた。
 
「だいたいアンタら さっきからおかしいぞ! 敵だの闘えだの!?
 一介のゴルファーの俺に この平和な日本で何をしろってんだ!?」
 
「ハルカ・・・ お前 テレビは見とらんのか?」
 
「だったらどうした!?」
 
「・・・よかろう ならば教えてやろう これからワシらが戦うのは コイツらじゃあ!」
 
叫びながら早乙女がリモコンを構える。
壁面の巨大なスクリーンに、直ちに巨大なビル群が現れる。
 
「なっ!? これは・・・」
 
「現在の新宿じゃ」
 
ハルカの眼前にあったのは、崩れ落ちる都庁と逃げ惑う人々。
そして、その中央で暴れ狂う巨大なロボット。
 
西欧の甲冑を模したと思われる独特な頭部。
ズシリと安定感のある樽のような腹。
背中には二門の巨大ロケット。
日本人なら誰もが郷愁を覚えるノスタルジックなデザイン。
その勇姿を、男根のような極太の鼻と、股間の巨大な砲身が台無しにしている。
 
それはまさに、『最悪』という言葉の意味を体現したかのような兵器であった。
 
「な な な・・・ 何なんだッ!? アレは!?」
 
「 鉄 マ ン 2 8 号 じ ゃ ! ! 」
 
「敷島博士!」
   
背後のドアがプシューと開き、マッドサイエンティストを具現化したような白衣の老人が現れる。
  
「まさか アレを完成させた者がおるとは・・・
 間違いない! アレは太平洋戦争の折にワシが設計し 27度に及ぶテストの果て
 遂には作り上げる事ができなかった幻の兵器 【 鉄マン28号 】 じゃ!!」
 
「徹マン・・・って 麻雀の事か?」
 
「そうではない! 見ろ! ハルカ
 あのロボの 巨体には見合わぬ繊細な動きを!!」
 
確かに画面上のロボの動きは見事なものだった。
10本の指と二本の張型を巧みに操り、12人の乙女を瞬く間に昇天させていく。
 
「それだけじゃあないぞ あのロボの瞳は透視能力があり 遮蔽物の裏の女性も見逃さない!
 長い鼻は嗅覚センサー付きで 100Km先の美女の臭いも嗅ぎ分ける!
 鉄マンロケットは10万馬力! そして 鉄マンイヤーは地獄耳じゃ!!」
 
「・・・・・・・・」
 
「アイツがひとたび本気を出せば 三日の内に日本中の女性が篭絡されてしまうじゃろう
 女が堕ちれば 男共は否応無しにやつの軍門に下らざるを得ない
 素晴らしい! やはり ワシの理論は間違っていなかった!!
 誰が完成させたのかは知らんが アレこそまさに最高の兵器じゃ~!!」
 
「 何 が 最 高 の 兵 器 だ あ あ あ ~ ~ ~ !!!!」
 
遙が叫び、怒りに任せてズタ袋を引き裂いて立ち上がる。
 
「早乙女博士! アイツをブッ潰すにはどうすればいい!?」
 
遙の言葉を聞き、早乙女が邪悪に笑う。
 
「すぐに準備をしよう! 敷島博士 彼らを地下に案内したまえ」
 



 
研究所の地下は、ロボット工学の最前線であった。
その道のエキスパートであろう所員達があわただしく動き回り、様々な兵器を組み上げていく。
 
「すごいロボットだ」
 
「うむ 日本中のゴルフクラブでキャディをしてきたワシじゃが
 浅間山にこんな秘密基地があるとは知らなんだ」
 
「じゃが それらのロボット群も 究極のスーパーロボットを作り出すためのモルモットに過ぎん」
 
前を行く敷島が、二人の感想に応える。
 
「スーパーロボット?」
 
「状況に応じて3つの機体へと変形し
 ゲッター線の持つ無限のエネルギーで敵を討つ・・・
 今日 お前さんが乗るのは その試作機じゃ」
 
敷島が足を止める。3人の眼前に、白い布にくるまれた巨体が現れた。
 
「そう これこそが早乙女研究所初のゲッター線エネルギー採用機
 プロトゲッターじゃ!!」
 
敷島の言葉に合わせて布が落とされ、ロボの全容が露わになる。
 
おそらくは鳥類をイメージしたのであろう、プロレスのマスクマンのような頭部。
スーパーマンのようなマント。
塗装の施されていない灰色の金属色のボディに、リベットがむき出しになった無骨な外装。
何と言うか・・・実に普通なロボであった。
 
「うむむ シブい シブすぎる・・・」
 
「うむ・・・ 仮にコイツが世界の平和を救ったとしても キャラグッズは売れんじゃろうのぅ」
 
「・・・実はワシも その点は気になっとった
 兵器という物は もっと美しくなきゃあアカンのじゃが・・・」
 
「だが ゲッターロボが完成しておらん以上 我々に選択の余地は無い
 対ハチュウ人類用の決戦兵器であるゲッターを マフィアとの抗争に使うハメになるとはな・・・」
 
「さ 早乙女博士・・・? その格好は」
 
後ろから現れた早乙女のあまりの出で立ちに、遙が立ち尽くす。
 
ボテ腹を強調するピッチリしたボディスーツに、科学忍者隊のようなマント。
鋭角的なゴーグルが特徴的なヘルメット。
時代錯誤の上、明らかに無理のあるヒーローがそこにいた。
 
「言ったであろう 選択の余地は無い・・・と
 ゴルフウェアではコイツのパワーには耐えられん
 お前も早く このスーツに着替えるんだ!」
 
「うう~~ ダセ~~」
 
早乙女の到着を確認し、所員のひとりが近づいてくる。
 
「父さん プロトゲッターの最終調整が完了しました」
 
「わかった 各員に通達を出せ 達人
 ゲットマシン 出撃用意じゃあ!」
 



 
一方その頃、歌舞伎町界隈の美女をあらかた味わい尽した鉄マン28号は
ここいらで趣向でも変えようかと、秋葉原方面に歩を進めていた。
 
「おいシャルロ! もう一度聞くが コイツが本当にウザーラなのか?」
 
『ああ 間違いない アトランティス帝国のデータバンクによれば
 ウザーラは半人半竜のロボットと書いてある』
 
倉脇からの通信に、東京湾洋上で待機していたカルロが応える。
尤も鉄マン28号の場合、半分は青大将と言った方が的確であろうが・・・。
 
「フン! まあどっちでもええワイ!
 究極の極道に日本最強のロボット コイツでワシが世界を取ったる!
 ハーッハッハッハッハッハアアア~~!!」
 
道行く女性を片っ端から昇天させながら、倉脇が、鉄マン28号が高笑いする。
 
「フザけた事抜かしてんじゃあねえええ!!」
 
中天に怒声を響かせながら、やがて、3体のゲットマシンが飛来した。
 
「ホウ 地球防衛軍のお出ましか!
 ちょうど女は食いあきとった所じゃ お前を試してみるか」
 
新たに出現した敵目掛け、28号が『指』を伸ばす。
 
「ムッ イカン! 無闇に近付くな!!
 奴はゲットマシンのブースター噴出孔をレイプするつもりじゃ!」
 
「何だとォ~~!? あのロボは 穴なら何でもいいのか~~!?」
 
からくも28号の魔手を逃れ、貞操を守り抜いたゲットマシン。
再び距離をとって、編隊を組み直す。
 
「いいかハルカ! まずは自動操縦で合体を試みる
 変形のタイミングを体で覚えるんじゃ!」
 
「わ わかった!」
 
「それでは行くぞ !!
 チ ェ ェ エ エ エ ェ ェ ン ジ ッ ! ! ゲ ッ タ ア ア ア ァ ァ・・・」
 
『ダメだ!! 父さん! ジャガー号の調子がおかしい!?』
 
「何じゃとおおおおおお!?」
「ヒエエエエ ナンマンダブ! ナンマンダブ!」
「うわああああああああああああ!!」
 
合体を目前にしてジャガー号がひっくり返り、大きくつんのめる形で3体が玉突き事故を起こす。
直後、周囲が閃光に包まれた。
 
「こ・・・ これが・・・ ゲッター・・・ ロボ?」
 
「日本軍め・・・ 何という・・・」
 
閃光が収まると同時に周囲の時間が凍りついた。
さもありなん。卑猥なロボから都民を守るために現れた機体が、さらに卑猥なロボだったとは・・・。
 
「ウ・・・ム  ハルカ ゲッターは・・・ ゲッターはどうなった? ハルカ」
 
「・・・ゲッターは無事です 博士・・・でも・・・ゲッター2が・・・」
 
「何? うっ!?」
 
状況を把握し、早乙女もまた即座に凍りつく。
強引な合体は、最悪な変形を引き起こした・・・。
 
ゲッター1の股間で、ゲッター2の上半身が、ぶらんぶらん、と風に揺られていた・・・。 
 
『父さん 凍り付いてる場合じゃないです!
 今の合体で、ゲッター線レベルがどんどん低下していってます!』
 
「何じゃとおッ!?
 ―ちょっと待てッ 達人! 何でお前がオペレーターやっとるんじゃ!?
 ジャガー号は・・・ ゲッター2は誰が操縦しとるんじゃ!?」
 
「 ワ シ じ ゃ ~ ~ !!!! 」
 
「 ゲ ェ ~ ~ ッ !!   ば あ ち ゃ ん !? 」
 
モニターに映し出されたのは、バッチャマンと形容せざるを得ない、ド派手な出で立ちの老婆だった。
 
「フザけとる場合か!! バアさん! 何でアンタが乗り込んどるんじゃ!?」
「ワシだってこんなん乗りたくなかったワイ!! なのにッ! アンタの息子がムリヤリ」
『ゴメンよ! 父さんが連れてきた人だから てっきり超人的な老婆なのかと・・・』
 
「「「 そ ん な ワ ケ あ る か ~ !!!! 」」」
 
ゲッターチームの渾身の漫才が、やがて、凍り付いていた戦場の刻を動かし始めた。
 
「・・・面白いッ!! 面白いぞ! ゲッターロボとやら
 いいだろう!! ワシの竜と貴様らの魔羅ロボ どっちが強いか勝負じゃあ~~!!」
 
股間のウザーラをいきり立たせ、砂煙を巻き上げ28号が風になる。
 
「ヤバイ!! アイツ ゲッターの下腹部を狙ってやがる!?」
 
「バアさん 右手のレバーじゃ! ゲッタードリルで迎撃するんじゃ!!」
 
「ヒエエエエエ 南無三!!」
 
ロボとロボ、一物と一物の激突に、大気が振るえ、閃光が煌き、衝撃波が建物を吹き飛ばす。
 
「フン! フン! フン! フン!」
 
「アワワワ!! オタッ おたすけ~~!!」
 
敵を討ち取らんと、28号が決死の形相で腰を振るう。
ゲッターが股間のドリルを我武者羅に回し、それを弾く。
あまりにも凄絶で、そして、見苦しい戦闘だった・・・。
  
「やるな! だが これなら!!」
 
28号がゲッターの両肩をガッチリ掴み、渾身の頭突き・・・ もとい、自慢の天狗鼻で一撃を見舞う。
衝撃と屈辱のダブルパンチで、ゲッターの外装が大きく歪み、ガックリと腰を落とす。
 
「フハハハ どうした? どうした ゲッター!?」
 
28号の全身が啄木鳥の如く動き、上に下にと交互に突きを繰り出し始める。
激しい連続攻撃に、頭部が砕け、ドリルが弾け、股間の装甲が突き崩されていく。
 
「これ以上は持たんぞ! ハルカ! オープンゲットじゃ!!」
 
「ダメだ! 出力が上がらねぇ!?」
 
「そ そうじゃ! こんな時こそ・・・」
 
「フハハ 貰ったゾォッ!! ゲッタアアアアアア!!」
 
ボロボロになったゲッターの純潔を貫かんと、28号が思い切り腰を引き、一気に突き上げる。
 
―刹那。
 
      『 伐 折 羅    光 臨 ! ! ! 』
 

バアさんの叫びと共に、遙の中の何かが爆ぜる。
そのパワーに呼応するかのように、ゲッターを中心に、緑色の光柱が立ち上り、ブ厚い雲を突き破る。
膨大なエネルギーの渦で、28号の体が大きく弾かれる。
 
「何だ!? このパワーは一体・・・?」
 
「オォプウウウゥウゥゥゥンッ!ゲェエエエエエェェェエット!!!!」
 
光柱の中心から遙の叫びが轟き渡り、
次いで3本の光の矢が、猛スピードで天へと駆け上がっていった。
 
「この力・・・ ゲッター線が 地脈に宿る神々のパワーを吸い上げておるのか!?」
 
「博士! バアちゃん! 八百万の神々の力を借りて合体を敢行する!!
 イーグル号にタイミングを合わせてくれ!!」
 
「まかせとけ! 年寄りの底力を見せちゃるワイ」
 
『チェェエエエェェエンジッ  ゲッタアアアァアアァァァ   バ サ ラ ッッ!!!!』
 
上空でのドッキングに成功し、ゲッターが急速に落下してくる。
衝撃で、大地が激しく揺れる。
 
「ゲッター・・・ ばさら、だと・・・?」
 
倉脇の眼前に現れたのは、先程より、ゆうにふた周りは大きい、
鬼のような角の生えた真紅の機体だった。
 
「それが・・・ それがどうしたあああ!!
 何度やっても同じ事だああああああ!!!!」
 
「貴様らとはパワーが違うッ!!」
 
勇気を総動員し、倉脇が突撃に移ろうとする。
その先を捉え、ゲッターが恐るべき速度で接近する。
 
「 伐 折 羅 ・ 昇 竜 脚 !!」
 
雲まで突き破らんとするゲッターの前蹴りが、28号の股間を砕き
その大業物を完膚なきまでに破壊した。
 
「ぎ ゃ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! !」
『落ち着け クラワキ! やられたのはウザーラだ! おまえじゃ無い』
 
股間を押さえてその場にうずくまる28号。
カルロの言葉を受け入れるには、倉脇は28号とリンクし過ぎていた。
 
「とどめだ! 喰らえッ!? ゲッタービー・・・」
 
「待て! ハルカ!  ゲッターのパワーが上がり過ぎている!!
 今ビームを撃てば 関東が丸ごと吹っ飛ぶぞ!?」
 
「何だと!? それじゃあ どうすりゃいいんじゃ」
 
『安心せい ハルカ』
 
コックピットに、突如、敷島の声が響いてくる。
 
『こんな事もあろうかと思って ワシが特別製の武器を射出しておいた
 そいつを使ってトドメを刺すんじゃ!』
 
「武器・・・? うおッ!?」
 
直後、爆音が鳴り響き、ゲッターの左脇3mの地点に得物が突き刺さった。
浅間山から新宿まで、恐るべき精度といえよう。
 
引き抜いたブツを確認し、遙が再び驚きの声を上げる。
 
「こりゃあ ゴルフクラブじゃねえか!?」
 
『気に入ったか! 樹齢1500年 直径15mの屋久島の御神木を 
 丸ごと切り出して作った 特別製のドライバーじゃ
 ロボットだろうが悪霊だろうが一撃でぶっ飛ばせるぞ!』
 
「ゲッ! なんちゅうバチ当たりな・・・」
 
「だが これならやれるぜ!!」
 
ダイナミックに素振りを繰り返し、インパクトの瞬間をイメージするゲッター。
 
「準備OKだ! いくぜええええ 28号!!」
 
「や やめろおおおおおおおおお!!!!」
 
「ゲッタアアアァァァ  ホォオオオオォォル  インッッ  ワァアアァァァアァンッ!!!」
 
全身全霊を篭めたゲッターのパワーショットが、28号の鋼鉄の巨体を上空へと吹き飛ばす。
凄まじい勢いで加速していく28号は、東京湾を越え、デス・ドロップマフィアの母艦へ・・・。
 
「こ こ こ こっちへ来るなアアアアアアアアア!!!!」
「おのれえ ゲッタアアア これで勝ったと思うなよおおおおお!!!!」
 
 
ドワオオッ!!
 
 
洋上にて、激しい爆発が巻き起こった。
 



 
「フゥ 何はともあれ これで一件落着じゃのう」
 
「ああ こんな事は これっきりにして欲しいもんだぜ」
 
「フフ 大丈夫だよ ハルカ君 今回は君のおかげで・・・
 ん ちょっと待ってくれ ・・・どうした達人? よく聞こえん」
 
『ですから大変なんです!?  日本各地で大事件が起こってるんです!
 
 小笠原諸島には女性型の巨大ロボが出現し 性病を撒き散らしながら本土へと迫っています
 大阪では乱交用ロボの大軍が反乱を起こし 人類を性奴隷にして建国に勤しんでいます
 広島ではUFOに乗ったヤクザが襲来し 現地で一大抗争が勃発しているそうです
 名古屋には木造戦艦に乗った忍者が襲来 手裏剣に乗った侍と激しく争っていると・・・
 えっ!? 東北の学園祭にターミネーターが現れ 穴という穴を犯しまくってる!?
 
 とにかく! この未曾有の危機に対応できるのはゲッターしかいません!
 父さん! とにかく手当たり次第に現地へ飛んでください!!』
 
ザー
 
「・・・・・・・・」
 
「・・・ハルカ 聞いての通りじゃ 君にはもうしばらく働いてもらう」
 
「そ そんな・・・」
 
「とりあえずは小笠原諸島じゃ!! 念のため ドリルにもゴムを付けておけ!」
 
「いつになったらゴルファーに戻れるんだ!?」
 
「・・・と言うか いい加減 このババァは降ろしておくれ~!」
 
「つべこべ言うな 行くぞ!!」
 
 
「 ゲ ッ タ ー バ サ ラ    発 進  ! !」 
 
 
                    (完)