第七話「ゼーレ・ダイナミック」

Last-modified: 2008-11-09 (日) 19:57:38

536 :第七話1:2008/10/25(土) 21:56:32 ID:???
今回は割合マジメパートに相当してしまいました。ハイ

「…現在の復旧率は60%というところです。が、やはり安定しません。戦闘に使うには厳しいでしょうな」
「構わん。業務に支障がない限り続けたまえ」
 いつものやりとりだ。だが珍しく神君が「私用がある」という。
「ご覧下さい。これがジオフロント。ネルフ本部区画内のゲッター値です」
「ほう」
 神君の持ってきたパーソナル・コンピュータを覗き込む。うむ。聞いた事があるぞ。
「知っているのか冬月?」
 知らんワケがないだろう碇。
「うむ。ゲッターロボの動力源であるゲッター線の量を示した数値のコトだな」
「その通りです冬月副指令。ゲッター学科に転向なさっては如何です?」
「老人をおだてるものではないよ。神君」
 ゲッター光線。つまりゲッターエネルギーとは、かつて日本の科学者、早乙女博士が発見した光線だ。
 宇宙から少量ながら地上に降り注ぐ光線…しかし微量でもエネルギーとして莫大な力を発揮した。
 無公害にして無限のエネルギーとして騒がれ、研究が急がれたものだ。
「そうです。しかし三つの悲劇が起きた」
「うむ。一つはセカンドインパクト」
 南極に眠っていた第一使徒アダムの発見。その時ゼーレは「神」を見つけたと喜んで手を伸ばし、そして…破滅が起きた。
 アダム覚醒は葛城探検隊がロンギヌスの槍で防いだが、覚醒の余波は世界を一度完膚なきまで破壊した。

537 :第七話2:2008/10/25(土) 21:57:13 ID:???
「当時は酷いものだった。世界各地が崩壊したのみならず、モラルまでも崩壊した」
「ええ。昨日までの隣人が今日の敵。そんな時代でしたな」
 セカンドインパクトによる被害は全世界に及んだ。特に日本は島国ゆえ特に水害が酷かった。
 が、島国ゆえ水害に手馴れた対処を施すことが出来た。何より…重機やロボットなどの研究に秀でていたから再建は割合早かったのだが…。 
「それゆえに戦火が起きた」
「そうだな。二つ目にして最大の悲劇。日本海戦争。資本と技術。それを喉から手が出るほど欲しがった国が群がるように日本を襲った…」
 同様にロボット工学に秀で、それを応用した重機技術に優れた西側諸国はむしろ懐柔するように手を伸ばした。
 が。それとは他に、もっと直接的に手を伸ばしてきた国もあった。
「まさに、戦争の時代だったな」
「…話がすっかり逸れましたね。それよりコイツを見てください」
「うむ。…106?」
「100がゲッター線濃度の通常値と思っていただければ結構です」
 ふむ。つまりジオフロント内のゲッター線濃度は通常より若干高いのか?
「…そしてこれが本日日本標準時0700時時点での地上のゲッター線値です」
「172?」
 何かおかしくないか神君?
「そう。おかしいのです。明らかにおかしい」
「ゲッター値が増えている…だと?」
「そうです。およそ十五年前。ちょうどセカンドインパクトのその時から、徐々にゲッター値が増しているのですよ」
 言って軽く一礼すると、神君は懐からタバコを取り出し一服の紫煙を味わった…沈黙が場に落ちる。
「…そしてその勢いは、第三の悲劇である浅間山事件後、更に拡大傾向にあるようです」

538 :第七話3:2008/10/25(土) 21:57:58 ID:???
「ブフフフ。では予定通りに。失礼します。行こうスティンガー君」
「そ、そうだね。行こう、こ、コーウェン君」
 暗闇の会議席。それは今は誰も座るものが無いハズの会議席である。
 だが今、議席には暗闇に浮かぶ七体の石柱が着席し、そして座席に着かぬ二人の男を見送った。
『槍の確保に成功した』
『忌々しくも恐ろしきはゲッター。ゲッターGシリーズ。あの生産性でこうも高い戦果をもたらすとはな』
『左様。ならば戦争だ』
『我らゼーレが再建も、彼らが前大戦時のプラントを発掘提供してくれなければこうもうまくはいかなかった』
『だが現状で使徒に通じるとは限らん。未だ数が揃わぬ今、槍を手に入れた我らにとっては保険に過ぎぬ』
 彼らの名はゼーレ。
 旧世紀以前に人類が作り上げた結社であり、人の世を影から動かしていた存在であり、そして十三年前、神隼人の手により失われたはずの結社であった。
 石柱に模した立体映像には、同時に強面の老人達の顔がゆらゆらと浮かんでいる…。
『いずれにせよゲッターなど文書<シナリオ>に無い存在に過ぎん。使徒は碇が殲滅を果たすであろう』
『我らの手で為したいところではあるが、な…』
『だが当面追加予算は見込めぬ』
『左様。当面襲えるだけの銀行は全て襲った』
『何より問題は、今、エヴァが全て奴の手にある事のコトだ』
『だが既にエヴァの製造ノウハウ、そして根本たるアダム細胞も我々は確保しておる』
『しかし研究施設たるネルフドイツは碇の手で解体された』
 雰囲気に似つかわしくない重低音が響く。
 腹に響くような連続音。会議場中央に据えつけられた石柱へ、ゼーレ全員が発砲した音であった。
 もちろん石柱には碇ゲンドウ、そして神隼人の顔写真が貼り付けられている。

539 :第七話4:2008/10/25(土) 21:58:34 ID:???
『忌々しきは碇、そして神隼人か……』
『左様。もはや戦争しかあるまい』
『落ち着け諸君。だがイレギュラーにはイレギュラーだ。既に巴武蔵、そして流竜馬の排除には成功している』
『それもあの二人の手柄かと思えば忌々しいがな』
『だが我々は時計の針を進める力を手に入れた』
『人類補完計画の鍵。その多くは既に我らの手にある』
『裏死海文書。槍。ゲッター。だが全ては本当のエヴァの完成を待たねばならぬか』
『左様。その時こそ戦争だ』
『しかし最後のカギは我々の手にある』
『鍵たる者よ』
『タブリスよ。君に聞きたい事がある』
 見つめる先に浮かぶのはLCLで満たされたカプセルである。
 その中には白い人影が浮かんでいたが、彼らの中に『彼』が人であると思う者は居なかった。
 彼の名は、タブリス。最後のシ者であり、また最初の使徒である…

540 :第七話5:2008/10/25(土) 22:00:24 ID:???
■特務機関ネルフ/司令室
 第3使徒『サキエル』、第4使徒『シャムシェル』、第5使徒『ラミエル』、第7使徒『ガギエル』。
 そして第8の使徒である『イスラフェル』を撃破……使徒殲滅は順調に進んでいる。が。
「ゲッター線の異常増大か。全く厄介ごとばかり起きるな」
 神君はセカンドインパクト…アダム爆砕の現場に、ゲッターロボがあったコトが何らかの影響を与えているのではないか
 という大胆な仮説を立てていた。確かにアダム絡みなら不思議現象などお手の物だが…。
 しかしその影響が読めん。
「ともあれ碇。次のシナリオはどうなっている?」
「見ての通りだ」
「またか……」
 碇が呈示したシナリオは丁度虫食いになった部分だった。
 使徒が現れるのか、それとも何か事件があるのか。いずれにせよ何かが起こる。しかし我々には知る由も無い。
 我々にとって重要ではない事件であることを祈るばかりだ。

 我々が『シナリオ』と呼ぶ裏死海文書。
 これは本来ゼーレが持つ石版の事なのだが、残念なコトに我々はその一部を失っているのだ。
 まあそれも当然。我々ネルフは本来ゼーレの「E<エヴァ建造>計画」及び「人類補完計画」実行機関でしか無いのだから。
 いわば現場専門の出先機関に過ぎず、碇が非合法手段によって得ていなければ本来ならこのシナリオさえ持ちうるハズが無いのだ。
 だがこの「シナリオ」があるおかげで、ゼーレ無き今も「我々の」人類補完計画は遂行へと向かいつつある。
 多少欠けていたとしても文句など言えた義理ではない。

 とはいえ警戒をするに越したことは無い。パイロットの位置だけでも把握しておくかね。
 チルドレン達の提示連絡映像を確認する。そういえば碇。お前の息子はようやく退院したのだったな。
「…いや待て碇。お前の首に首輪がついている気がするのは気のせいかね」
「問題ない。おそらくはそういうプレイだ」
 最近の若い者は解らんな。これでも年の割りに理解はある方だと思っておったのだが
「では先生、性教育学科へ転向なさってはいかがです?」
 だが断る。

541 :第七話6:2008/10/25(土) 22:01:20 ID:???
■第三新東京市/碇シンジ病室
 第三新東京市に来てから、僕は色々あってずっと入院していた。でもようやく退院できた。
 当然だけど、父さんに呼び出されてココに来た僕には家なんて無いから個室が用意されることになったんだ。
 ミサトさんは『一人でいいの?』『申請すればお父さんと一緒に暮らすことも出来るわよ』って気遣ってくれたけれど
 でも僕は一人でいいと思った。気楽だと思ったから。でもそれを正直に言ってしまったのがいけなかった……。
『もー。無理しちゃって。親子なんだから一緒の方が』
 と明るく言ってきたミサトさんに
『ミサトさんには関係ないでしょ。ほっといてください!』
 ……言わなければ良かった。

『暗い……暗すぎる……その性格あたしがなおしたる!』
 あれよあれよという間にミサトさんと同居する事になり
『ミサトぉ、何よシンジも一緒に住むの!? まあいいわ。どうせシンジはあたしの下僕なんだしィ』
 既にミサトさんと同居していたアスカとも一緒に。
『肉。嫌いだから』
 綾波。引っ越し祝いありがとう。でも誰に聞いたの?
『転校生。ワイはお前の引っ越し祝いをせにゃならん!』
『よ、碇』
 トウジとケンスケも。
『引越しおめでとう。これ差し入れのスイカな』
 加持さんも。でもホントに誰が言って回ってるんだろう……
『わ、私じゃないわよ?』
 リツコさん。別に何も事言ってませんよ。
『不潔です』
 え?
『シンジ。時間が空いたらアジテーションのやり方とバリケードの造り方を教えてやろう』
 ハヤトさん……その、いえ。何でもありません。

542 :第七話/ゼーレダイナミックス(終):2008/10/25(土) 22:04:22 ID:???
 こうして何故か期せずしてミサトさんの……いや、僕らの家に集まり、そのまま宴会になった。
 僕は、こうして大勢で集まって騒ぐのは生まれて初めてだった
 こんなに、楽しいと感じたのも初めてだった…でも。「こんなに楽しいことは長くは続かない」「すぐに苦しみはやってくるだろう」と
 心の隅では、そう思っていた。
 
 他方。「シンジ退院祝い」と書かれた風呂敷包みが転がる司令室。
 勇んで第三新東京市へ出かけようとした所を、保安部にとっ捕まった碇司令が無言でカキフライを食べている。
「碇。いい歳なのだからヤケ食いは止めろ。だいたいお前は一応司令なんだぞ?」
「問題ない。続ける」
「今回の件は多めに見よう。だが解っているハズだ。そろそろ覚悟を決めろ」
 お前がお前の計画を続ける限り、お前は最期の時まで息子と解り合える事は決してないのだ。
 いや、むしろお前は息子を傷つけなければならぬのだよ。碇。
 それが我らの補完計画に必要な事なのだから…。          次回第八話「静止してくれない闇の中で」に続く。

という事で今回お開き。前回たくさんのご支援、反響をマコトにありがとうございました
それを励みに次回はノリがいつものパターンに戻ります。多分。

543 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/25(土) 22:21:20 ID:???
乙です~

しかしどこも予算は厳しいんだな・・・お前らまで銀行襲うなよwww

544 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/25(土) 22:46:55 ID:???
竜馬死んだん!?
虚無った後ってことか?

545 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/25(土) 23:07:12 ID:???
ゼーレの貧乏っぷりに全俺が笑死したwww

そうか、竜馬も武蔵も……所で弁慶は?

546 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/25(土) 23:56:19 ID:???
でも連中なら殺したと思っても安心できない。
十三年後にタイムワープした例もあるし、賢ワールドなら火力偏重サイボーグになって復活も十二分にあり得る。

547 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/26(日) 00:24:29 ID:???

546
そりゃ武蔵違いw

548 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/26(日) 01:21:57 ID:???
貧乏ネルフに貧乏ゼーレ…そしてゼーレがなんかいろいろと変になってるwwww
シリアスパートらしいけど、それでもツッコミが追いつかないとはwwwww

549 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/26(日) 01:28:24 ID:???
左様のおじいちゃんすっかりボケちゃって・・・

550 :>>540一部訂正:2008/10/26(日) 01:37:21 ID:???
「…いや待て碇。お前の息子の首だがな、首輪がついている気がするのは気のせいかね」
「問題ない。おそらくはそういうプレイだ」
 最近の若い者は解らんな。これでも年の割りに理解はある方だと思っておったのだが
「では先生、性教育学科へ転向なさってはいかがです?」
 だが断る。

言葉の意味が完全に変わっている部分があったので訂正。首輪つけてるのはシンジ君です。決してゲンドウおぢさんではありませんよムォォ
色は…………………ファンの人に怒られたら困るのでとりあえず白と赤のツートンカラーというコトでひとつ