第九話「奇跡の姿は」

Last-modified: 2008-11-09 (日) 19:59:06

570 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/28(火) 22:04:17 ID:???
誰も突っ込まないのであえて言おう。
ゼーレのマフィア抱込み計画=ゼーレのデス・ドロップマフィア化=極道兵器参戦フラグか?

571 :名無しが氏んでも代わりはいるもの:2008/10/28(火) 22:42:26 ID:???
あっちまで参入してきたら本当に全部壊れちゃうビクンビクン
しかしゼーレと将造の仁義なき戦い日本死闘篇エヴァが
勝手に歩けるいうなら歩いてみいやはちょっと見てみたい。

572 :第九話:奇跡の姿は:2008/10/28(火) 23:51:24 ID:???

570-571よ。全てを説明しようとしても無理なのだよ。おそらく全てを理解するのに永劫の時が流れてしまうのだ
我々にわかっていることは、読んでくださっている方がいるかぎり、その為だけにでも書き続けるというコトだ!
…って三丁目の角で早乙女博士が言ってましたよ

『国軍…日本海を埋め尽くしている……ザザ…海が3分、敵が7分だ…』
『ハヤト、さらば…後のコトは頼むよ……』
 スピーカーがけたたましく音を立て、そしてそれっきりノイズ以外流れなくなった。友が死んだ。
 だがその犠牲で戦争を止めるコトが出来た。そう俺は俺に言い聞かせて涙を止めた。
『アバヨ、ダチ公!』
『後は…!』
 黒い海が広がる……また、友が消えた。だが涙を流している暇は無い。だから俺は戦った。
『早乙女研究所に命ずる。ゲッターロボは我々が預かる!』
「汚い手でそいつに触れるんじゃあね~~~~~~~ッ!」
 そして俺は、作業場の汚い寝床で目を覚ました。黒い姿が俺に影を落とす。
 自分で自分の叫びで目を覚ます、か。
「…子供か、俺は…」
 暗闇の中、神隼人は自嘲するように呟いていた。

573 :第九話2:2008/10/28(火) 23:52:07 ID:???
「…相変わらず常識外れな姿だな」
 さてネルフには今日も今日とて使徒が迫っている。例によって一風代わった使徒であった。
 モニターに浮かんでいたのは巨大な三つ目の化け物と言うか、3つ目しかない巨大なオレンジ色のアメーバである。
 その姿も問題だが、最大の問題は、遥か頭上も頭上、衛星軌道上に存在するというコトだ。現在、使徒は自身の一部を切り離し
 ATフィールドで包んで質量爆弾として落下させている。その一撃は海を蒸発させ大地をえぐりとるほど。
 国連軍も新型のN2航空爆雷で攻撃を加えるものの、やはりATフィールドの前には無力である。
 その落下位置は…落下のたびに、確実にネルフ本部へと近づきつつあった。
「以前出現した第五使徒は「圧倒的な防御力」と「超射程かつ高火力」を持っていました。
 しかし今回の使徒は衛星軌道上という距離こそが防御力であり、衛星軌道上という距離が武器ともなっているようです」
「使徒のATフィールドがジャミングとなり、現在電波探索が行えない状態です。しかし」
 まあ順当に考えて次あたりはネルフ本部に落ちてくるな。
 使徒も毎度毎度アプローチを変えて来るが、さてどうしたものか。
「……」
 おかしい。いつもの伝ならそろそろ碇が
『レイ。ドグマに降りてプログレッシブ・バットを使え』
『シンジ。落ちてくる使徒をホームランしろ。でなければ帰れ』
 とか無茶を言い出す頃合だが…そうか。そういえば入院しておったな。

574 :第九話3:2008/10/28(火) 23:52:44 ID:???
 数日前。司令室。
「…来るべき時が来たのだ。私にとって試練の時が…」
 先日ドイツから空輸させた第一使徒『アダム』。爆散し魂を失い、胎児まで還ったその本体を呑み込み取り込むコト。
 これが碇の、そうゼーレではなく「碇の人類補完計画」の重要事項であった。が。
「落ち着いていないでご飯だ。ご飯を飲み込むのだ碇」
 丸呑みにしたアダムを喉に詰まらせるとはこのうっかり者め。せめて油で一晩漬け込めば喉に詰まりにくくなったろうに。
「先生、後は頼みます」
 こんなコトで諦めるな碇。
 大体私に貴様と関節キスをしろというのかね

「…まったく。老体にジャイアントスイングまでさせおって…そういえば発令区要員が足りんようだが」
「葛城一尉と日向三尉でしたら、先日の停電事件の際に事故に遭って…」
 そういえばそうだったな。国連軍の暴走車両にひかれたそうだ。全く連中ロクは事をせん。
「なら特殊作戦課の神君はどうした? なに碇の用足しで留守?」
 このタイミングでか。全く碇の奴もロクな事をせん。
 やむをえん。私が作戦を考えねばならんか。

575 :第九話4:2008/10/28(火) 23:53:20 ID:???
「…以上の3点にエヴァを配置した。使徒の落下予測地点は以上だ。諸君らのエヴァの手で使徒を受け止めて欲しい」
「使徒のジャミングが続いている為、正確な位置は予測できません。サポートは逐次MAGIで行います」
 無茶な作戦に対し当然のように少年たちが反論する。当然だ。無茶を言って本当に済まない。
 しかしだ。相手がATフィールドで電波妨害をかけている以上、コアを正確に打ち抜く必要がある狙撃作戦はもっと無茶だ。
 そして相手がATで防衛を行っている以上、的を絞らず広範囲を攻める作戦では火力が追いつかなくなる。
 また相手が衛星高度に居る以上、AT中和領域での格闘戦に持ち込むには…他に手が無いのだ。
 ロケットでエヴァを打ち上げる手もあるが、今度はエヴァを回収する手段が無い。
 己の無力さを痛感するとしか言いようが無いが、もはや猶予も無い。
 不在の碇に代わり、作戦を宣言する。
「スーパーキャッチ作戦開始!」

576 :第九話5:2008/10/28(火) 23:55:03 ID:???
「了解。スーパーキャッチ作戦、開始します」
 不在の碇司令及び葛城作戦部長に代わり冬月副指令が宣言する。使徒の落下は既に始まっているのだ。が。
 その第三新東京市に一足早い激震が響いた。
「…エヴァ全機、給電<アンビリカル>ケーブル切断に失敗! 全機転倒!」
 見るとエヴァ全機が顔から地面に突っ込む形で地面に半ば突き刺さっている。
「パターン足。足ズッコケです!」
「何? いかん。各機、急いで体勢を立て直せ!」
『動いて、動いて、動いてよッ!』
『何どうなってんの!?』
『これは涙? 痛いと感じているの、私?』
 一瞬発令区も暗くなり、通信機から悲痛な叫びがこだまする。
 各機は立ち直るとエヴァ自らの手でアンビリカルプラグを取り外し、遅れたスタートを切る。
「各機再起動。使徒へ向かいます」
「メインコンピュータMAGI及びエヴァ3機のフル稼働によりブレーカーが作動したのが原因のようです」
「このタイミングでかね」
 冬月の「おのれ第二東京電力め、まだ3ヶ月分しか滞納しておらんというのに」という呟きが皆に聞こえたかどうか。
 数秒遅れでエヴァ全機が発進するが、既に頭上には迫り来る使徒の姿がある。

577 :第九話6:2008/10/28(火) 23:55:51 ID:???
『間・に・合・ええええええええええええええええええええええええええええッ!』
 使徒は市街からやや離れた場所へと落下して行く。だが、その落下の衝撃はジオンフロントまでも抉るハズだ。
 パイロットの、いやネルフ職員全員の叫びが唱和する。
 いや、一人、一人違う叫びを上げる者が居た。
「目標付近、ち、地下に高エネルギー反応!?」
「何!?」
 郊外へと落下する使徒。その地下から突如轟音が響き渡り、飛び出した影がある。腕に巨大なドリルを持つ人型である。
 飛び出した影は一旦3つに分かたれ、そして一つへ結ばれた。
『チェンジ・ドラゴン! スイッチオン!!』
 それはまさしく先日エヴァンゲリオン初号機と対峙し、N2爆雷によって爆破処理されたハズのゲッターロボの姿であった。
『今の声…』
『ハヤトさん!?』
「神君か!」
『急げ三人とも。こっちはガラクタだ。そんなにもちそうもないぜ』
 回線が開く。コクピットに居たのは作業服姿の男。紛れも無き神隼人その人である。
 ゲッタードラゴンは目玉状の使徒へ取り付くが、ATフィールドに押されて次々と指がもげ、装甲も推進装置も悲鳴を上げる。が

578 :第九話7:2008/10/28(火) 23:57:10 ID:???
「「う、受け止めた!!」」
 発令区のリツコが、青葉が、マヤが歓声を上げる。
 使徒を受け止めるゲッターロボの腕が崩壊をはじめ、脚部も潰れてゆく。だがそれでもゲッターは使徒を支え続けた。
『フッ…機体が保つかどうか』
『フィールド全開ッ!』
『弐号機、フィールド全開!』
『やってるわよッ!』
 三機がかりで使徒を押さえ、弐号機がトドメのプログレッシブ・ナイフをコアへと見舞う。
 全ての衝撃をATフィールドで抑えていた巨大な使徒は、コアを失いフィールドを張れなくなった事でそのまま爆砕する。
「やれやれ切り札のハズだったのだがな……だが使徒のジャミングで国連軍共に悟られなかっただけマシかね…」
 ゲッターGの回収を命じ、発令区は使徒殲滅により沸き返った。
 しかし冬月副指令はゆっくりと頭を振り、また技術本部長である赤木リツコ女史は、無言で発令区を後にするのだった。

 さて一方。突然の停電でネルフ機能の一部はマヒしていた。
 地下都市の停電とはすなわち闇である。その闇、ネルフ本部の闇、ネルフ本部最下層「ターミナルドグマ」に二つの影があった。
「特務機関ネルフ特殊監察部所属 加持リョウジ。同時に日本政府内務省調査部所属加持リョウジでもある訳ね」
「バレバレか…葛城、お前入院してたんじゃなかったか?」
「ネルフを甘く見ないことね」

579 :第九話8:2008/10/28(火) 23:57:52 ID:???
 葛城ミサトに銃を突きつけられたまま、それでも加持リョウジは飄々としていた。
 ありていに言うと、彼は「司令直属の特使」という役割を負いながら、日本政府のスパイとしての役割も隠し持っていたのである。
 更に言うなら「葛城ミサト」はまだ気付いていないが、彼は更にゼーレのスパイとしても活動していた。
 特に機密情報を扱う部署でのスパイであるからその罪は重い…が。

「まだいけるさ。碇司令は俺の正体に気付きながらも利用している…だけど葛城に隠し事をしていたのは謝るよ」
「謝られても嬉しくないわよ!」
 その一言に飄々とした加持の顔が一瞬だけ曇る。
 もっとも銃を突きつけるミサトからはその表情は見えないが。
「じゃあ良いことを教えてやろう。司令もリっちゃんも君に隠し事をしている。それが…これさ」
 本部最下層施設ターミナル・ドグマへの扉が開き、白い巨人めいたものが闇の中に見えた。
「これ…」
『最下層ターミナルドグマには、十五年前の元凶と同質の使徒「リリス」が存在する』
 当然ミサトは、いやネルフ職員全員はその存在については聞かされていた。
『リリスと使徒との接触はセカンドインパクトの再来をもたらす。それを未然に防ぐのがネルフの役目だ』
 そう。それは知っていた。資料としてその姿も知っていた。だが
「これ……」
 ミサトが地下空間に見たもの。
 それは十五年前の南極同様の赤い海。彼女が全てを失う場となった原風景であった……

580 :第九話9:2008/10/28(火) 23:58:29 ID:???
「よく、頑張ってくれたな」
 操作盤を撫で、隼人は誰にともなく呟く。
「お前も立派なゲッターロボだ…こないだは悪かったな」
 一方通信回線からはにぎやかな声が聞こえ始めている。
『バカシンジ』
『なんだよアスカ』
『アンビリカルケーブルを外すタイミング、コンマ2秒遅かったわよ』
『そういうセカンドはフィールドの展開にズレがあったわ』
 一旦。適当な電源ビルでアンビリカルケーブルを再接続し、ゆっくりと歩くエヴァ3機。 
 その眼前にあるのは、各坐したゲッタードラゴンの姿である…。
『ハヤトさん、無事ですか?』
「ああ…ムチャをさせたな………聞きたいか?」
 敢えて「何を」とは言わなかった。シンジ達はしばし待ったが、好奇心が勝った。
『はい』
「後で話してやろう…お前達もこれだけエヴァを乗りこなせるようになったのだ…話してやろう…」
 通信を切りコクピットから立ち上がる。もはやこの機体は指一本動かぬのだから、後は回収班に任せるほかあるまい。
 しかしコクピットの外には立ちはだかる影があった。

581 :第九話10(終):2008/10/29(水) 00:02:30 ID:???
「神大佐。少々……お話をお伺いしたいのですが」
 そこに待っていたのは、未知の科学に対しきらきらと少女のように瞳をきらめかせた赤木リツコ女史その人。
「…構いませんよ。俺はボインちゃんが好きですからね」
 神隼人。この男は重い状況ほど軽口で受け流す…そんな男だ。だが今回の苦境はその軽口に始まったといっても過言ではない。
 その後、彼は目を輝かせる赤木女史へ延々ゲッター技術論を語らされる破目に陥ったのだから。
 そう。眠る間もなく軽く五日五晩ほど、だ。

本日これまで。半分くらいで切ればよかった気もします。
なおゲッターチーム及び早乙女研の行方については今回はただのフラグ立てなので、詳しくは次回。